破壊の黒炎   作:ぐちロイド

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第16話 木場の過去 期待はずれの聖剣

夕闇が駒王学園を包み込み、校舎裏の森には静寂が戻っていた。

しかし、その静寂は平穏ではなく、壊滅的な敗北と圧倒的な力の差を見せつけられた者たちの、重苦しい絶望の余韻だった。

 

塔城小猫が無言で歩み寄り、意識を失った木場祐斗を軽々と背負う。彼女の小さな肩には、主(リアス)の騎士としてのプライドを粉々に砕かれた少年の、あまりにも重い「過去」がのしかかっていた。

 

部室へ戻ると、アーシア・アルジェントが震える手で聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を展開した。緑色の柔らかな光が木場の傷口を塞いでいくが、心に刻まれた「聖剣への憎悪」と「連に見せつけられた本物の輝き」までは癒やせない。

 

一誠「……部長。木場は、なんであんなに……あの剣にこだわってたんだ?」

 

一誠の問いに、リアスは窓の外、遠くに見える街の灯りを見つめながら、重い口を開いた。

 

 

リアス「……聖剣計画。それは、聖剣の適格者を人工的に作り出そうとした、教会の狂気的な実験よ。祐斗は……その唯一の生き残りなの。仲間たちが次々と薬殺され、処分されていく中で、彼は彼らの『恨み』を背負って生きる道を選んだ。……だから、彼はエクスカリバーを壊すためだけに、今日まで剣を振るってきたのよ」

 

一誠は拳を握りしめた。仲間のために戦うのは自分と同じだが、木場が背負っている闇は、あまりにも深く、冷たい。

 

---

 

一方、その頃。

暁家のキッチンからは、小気味よい包丁の音と、食欲をそそるスパイスの香りが漂っていた。

リビングのソファに深く腰掛け、連は右腕の銀のブレスレットを無造作に眺めていた。台所では、エプロン姿のディーネが

 

ディーネ「あー、もう! この包丁、切れ味が甘いわね。私の爪で切った方が早いわよ」などと毒づきながらも、手際よく夕食を仕上げている。

 

ディーネ「連、お待たせ。今日はあんたの好きな唐揚げ……の、ヴェパール家風特製ハーブ添えよ。朱乃のやつより五割増しで美味しいんだから、感謝しなさいよね」

 

ディーネが皿をテーブルに並べ、連の向かい側に座る。

だが、連は箸を伸ばす前に、自分の右腕に視線を戻した。

 

連「……期待外れだったな」

 

ディーネ「あら、私の料理が?」

 

連「違う。あの教会の小娘どもの持っていた『破片』のことだ。……偽物とはいえ、一応はエクスカリバーの名を冠しているんだろう? ああも一方的に、俺の剣に屈するとは思わなかった」

 

連の声には、勝利の昂ぶりなど微塵もなかった。あるのは、強者と戦うことを望んだ者の、乾いた虚脱感だけだ。

イザナミから授かった『真説・エクスカリバー』。その力は、連の想像を遥かに超えていた。黄金の輝きを放った瞬間、ゼノヴィアの『破壊の聖剣』が、怯える子犬のように震えていたのを連は見逃さなかった。

 

連はブレスレットに、心の中で問いかける。

 

 

連(……どうだった、エクスカリバー。お前にとって、あの『欠片』たちは、同族として目に映ったか?)

 

すると、右腕から温かい、しかし傲慢なまでの自負に満ちた念が伝わってきた。

 

『――紛い物。神の権能を切り刻み、形を模しただけの冒涜。あれらは剣ですらない……ただの、ゴミに過ぎぬ』

 

連「……だろうな。神が死んだ後の世界で、必死に破片を繋ぎ合わせている連中だ。本物の『輝き』を知るはずもない」

 

連は自嘲気味に笑い、唐揚げを口に運んだ。

ディーネはそんな連を、オッドアイを細めて見つめている。

 

ディーネ「連、あんた……あのゼノヴィアって子の目、見た? 自分が信じていた世界の頂点が、あんたのブレスレット一つに否定された時の、あの絶望の色。……あはっ! 最高に『腐食』してたわ。私の魔法を使うまでもなく、あんたが彼女たちの心をズタズタにしたのよ」

 

連「……俺はただ、事実を見せただけだ。本物があるなら、偽物は消える。それが理だ」

 

ディーネ「その理を、あんたが壊しているんだけどね。……ねぇ、明日からどうするの? 木場は十中八九、一人で暴走するわよ。あの子の目は、死人の目だったもの」

 

ディーネの予言通り、翌朝、駒王学園に激震が走った。

木場祐斗は、誰にも何も告げず、部室に自身の学生証と神器の気配だけを僅かに残し、姿を消した。

「仇討ち」のために。

自分を追い詰めたゼノヴィアたちよりも先に、エクスカリバーを奪った犯人を見つけ、その破片をすべて砕き折るために。

 

放課後。部室でリアスが「祐斗を……探しに行きましょう」と沈痛な面持ちで指示を出す中、連は一人、屋上のフェンスに寄りかかっていた。

 

連「……さて。場は十分に引っ掻き回された」

 

右腕のブレスレットが、再び黄金の光を微かに漏らす。

連の視線の先、町外れの廃工場の方角から、黒い翼を持つ者たちの不穏な気配が立ち上っていた。

 

連「堕天使か。……あるいは、もっと大きなゴミか」

 

ディーネ「あら、私を置いていく気?」

 

背後からディーネが歩み寄る。彼女の手には、魔力で生成されたシアン色の水の矢が握られていた。

「木場があっちで死にかけてるわよ。あんたの言う『偽物』にトドメを刺すのは、本物の役目でしょ?」

 

連「……フン。行くぞ、ディーネ。この退屈な演劇を、幕引きにしてやる」

 

連は屋上から迷わず飛び降りた。

背後に展開されるのは、アザトースの12枚の闇の翼。

そしてその手には、神の光を喰らい尽くす黄金の聖剣が握られている。

 

木場の絶望、教会の盲信、堕天使の野望。

そのすべてを黒炎と黄金の光で焼き溶かすために、暁連という名の「終焉」が、戦場へと舞い降りる。

 

ディーネ「カオスを楽しもうじゃないの、連!」

 

ディーネの歓喜の叫びが、夜の空気に高く響き渡った。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

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