月明かりが雲に遮られ、駒王町の外れにある廃工場は、まるで巨大な獣の死骸のように静まり返っていた。
鉄錆の匂いと、微かに残る火薬、そして――不快なまでの「狂気」の残滓。
暁連は無造作に工場の中心部へと足を踏み入れた。その後ろでは、ディーネがシアン色の髪を揺らしながら、つまらなそうに鼻を鳴らしている。
連「……遅かったか」
連が地面を見下ろすと、そこには無数の魔剣の破片が散らばっていた。木場祐斗が必死に抗った跡だ。しかし、そこに当の本人の姿はなく、ただ空気を汚染するような不快な笑い声の残響だけが、冷たい鉄骨に反響していた。
ディーネ「あはっ! あの変態神父、逃げ足だけは一級品ね。木場も木場で、あんな挑発に乗って深追いするなんて、本当におバカさん。……ねぇ連、あの子、このままだと本当に『腐食』して死んじゃうわよ?」
ディーネはポニーテールをいじりながら、連の横顔を覗き込んだ。連は右腕のブレスレット――『真説・エクスカリバー』の脈動を感じ取り、視線を闇の奥へと向ける。
連「……木場の生死は、あいつ自身の覚悟次第だ。だが、あのフリードとかいう三下、俺の黒炎を汚した罪は重いぞ。……ディーネ、あんたの『あの方』は、この状況をどう見てる?」
連が「イザナギ」の名を伏せて問うと、ディーネは肩をすくめた。
ディーネ「『あの方』は、もっとぐちゃぐちゃになるのを期待してるわよ。……でも、あんたの『あの人』だって、自分の授けた聖剣が紛い物の聖剣(エクスカリバー)と並べられるのを、一番嫌がってるんじゃないかしら?」
連「……フン。イザナミ様は、プライドが高いからな。あの方は、偽物を焼き尽くす瞬間のカタルシスを求めているだけだ」
二人の転生者は、互いの神の名を「あの人」「あの方」と呼び変えながらも、その意図を正確に共有していた。
連は足元に落ちていた魔剣の破片を、黒炎で一瞬にして塵へと変えた。
連「行くぞ。……主役(一誠)たちが、面白い場所を見つけ出す頃だ」
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一方、その頃。駒王町の繁華街。
そこには、昼間の凛々しい姿からは想像もできないほど、魂が抜け落ちたような表情の紫藤イリナが、ベンチに座り込んでいた。
イリナ「うぅ……神様、どうしてですか……。あんなに信心深そうな骨董品屋さんが、私を騙すなんて……」
彼女の手元には、数万円を支払って購入したという「聖遺物の燭台(自称)」があるが、どう見てもただの古びた真鍮の置物だ。全財産を注ぎ込み、今や夕食代はおろか、宿泊費すら怪しい状況。
一誠「……おい。何やってんだ、お前」
聞き覚えのある声に顔を上げると、そこには特訓の帰りに通りかかった兵藤一誠が、呆れた顔で立っていた。
イリナ「イ、イッセーくん……! うわぁぁん! 騙されたよぉ! 無一文だよぉ!」
一誠「……はぁ、お前なぁ。そんな怪しいモン買う方がどうかしてるぜ」
一誠は溜息をつき、泣きじゃくる幼馴染を放っておけず、近くのファーストフード店へと連れて行った。
店の隅のテーブル。トレーの上に並んだハンバーガーを、イリナは涙目で頬張っている。その向かい側では、ゼノヴィアが腕を組み、不機嫌を絵に描いたような顔で座っていた。
ゼノヴィア「イリナ、恥を知れ。……我々は聖剣回収の任務中だ。悪魔の施しを受けるなど、本来なら許されんことだぞ」
イリナ「でもぉ、ゼノヴィアちゃんだってお腹空いてるでしょ? ほら、ポテト食べて落ち着いてよ」
ゼノヴィア「……断る。……むぐっ」
イリナにポテトを口に突っ込まれ、ゼノヴィアは咀嚼しながらも、一誠を鋭く睨みつけた。
ゼノヴィア「……兵藤一誠。貴様に一つ、聞きたいことがある」
一誠「……なんだよ。俺はまだ、アーシアを侮辱したお前らを許したわけじゃねーぞ」
一誠の言葉に、ゼノヴィアは僅かに目を伏せた。
ゼノヴィア「……分かっている。だが、今の我々の敵は共通しているはずだ。……はぐれ祓魔師、フリード・ゼルツァ。そして、その背後にいる『バルパー・ガリレイ』。……あの男こそが、聖剣計画の首謀者であり、エクスカリバーを奪った張本人だ」
バルパー・ガリレイ。
その名を聞いた瞬間、一誠の脳裏に、木場の絶望した顔が浮かんだ。
一誠「あいつが、木場の仇……。……だったら、話は早い。場所は分かってんのか?」
ゼノヴィア「ああ。……イリナが骨董品屋で騙されている間に、私はこの街の魔力密度の偏りを調査していた。……町外れの廃寺。あそこに、不自然なまでの聖力と、それを塗り潰すような堕天使の気配が集中している場所がある」
ゼノヴィアは立ち上がり、一誠を見据えた。
ゼノヴィア「不本意だが、共闘を申し込む。我々だけでは、堕天使の幹部が介入してきた場合、エクスカリバーの回収が困難になる可能性がある。……貴様のその『赤龍帝の籠手』、盾として使わせてもらうぞ」
一誠「……盾だと? 笑わせんな。俺がバルパーを、そして木場を弄んだ奴らを、この拳でブッ飛ばすんだよ!」
一誠の熱い闘志に、ゼノヴィアは少しだけ意外そうな表情を見せた。
ゼノヴィア「……いいだろう。なら、行くぞ。……イリナ、もう食い終わったか?」
イリナ「ふぇ!? まほ、まっふぇ(待って)!」
こうして、本来は敵対するはずの「悪魔」と「聖剣使い」の奇妙な協力関係が成立した。
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深夜の廃寺。
そこには、狂気に満ちた空間が広がっていた。
白装束に身を包んだバルパー・ガリレイが、複数のエクスカリバーを融合させるための装置を起動させ、その傍らでフリードが、木場をいたぶるために舌なめずりをしている。
フリード「ヒャーッハハハ! お出ましだぜ、本日のゲストたちがよぉ!」
フリードが叫んだ瞬間、本堂の扉が破壊され、一誠、ゼノヴィア、イリナの三人が突入してきた。
ゼノヴィア「バルパー・ガリレイ!! お前の野望も、ここまでだ!!」
ゼノヴィアが『ディストラクション』を抜こうとしたその時――。
天井から、ドロリとした「黒い影」が降り立った。
地面に着地した衝撃で、本堂の床が煤となり、周囲に漆黒の炎が立ち昇る。
連「……よぉ。随分と盛り上がってるじゃないか」
暁連。そしてその横に、シアン色の魔力を指先に纏わせたディーネ。
一誠「連! お前まで……!」
一誠の驚きを他所に、連はバルパー・ガリレイを冷徹な瞳で見つめた。
達「お前が、バルパーか。……聖剣を融合させて、唯一無二の剣を作る、ねぇ。……イザナミ様が言っていた通りだ。お前のやっていることは、本物の『聖剣』への冒涜ですらない。……ただの、ゴミ集めだ」
連の右腕に輝く銀のブレスレットが、今までで最大の咆哮を上げた。
黄金の光が漏れ出し、バルパーが持っていた融合中のエクスカリバーたちが、まるで恐怖に震えるように激しく火花を散らす。
バルパー「な、なんだその光は!? 私のエクスカリバーたちが……怯えているだと!? 馬鹿な、そんなことはありえん!!」
連「……ありえないことを現実にするのが、俺たちの仕事だ。なぁ、ディーネ?」
ディーネ「ええ、連。……このジジイの腐り果てた脳みそ、私の水で綺麗に洗い流してあげましょうか?」
ディーネが不敵に笑い、ヴェパール家伝来の魔力を解放する。
一誠、ゼノヴィア、そして連とディーネ。
異なる勢力、異なる目的、そして異なる世界の住人たちが、この廃寺という名の舞台で、ついに交差した。
連「……さぁ、カオスの時間だ。……バルパー、お前の作ったゴミを、俺の本物の『聖剣』の燃料にしてやるよ」
連がブレスレットに手をかける。
黄金の光が本堂を白昼のように照らし出し、狂気の夜は、真の破壊へと加速していく。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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