破壊の黒炎   作:ぐちロイド

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第28話 暁家、黄泉の香りと家庭の味 

駒王町に、普段よりもずっと重々しく、それでいてどこか浮足立ったような夜が訪れた。

魔王サーゼクスとその『女王』グレイフィアが一誠の家に泊まるという、天変地異の前触れのような事態が起きている一方で、暁連の自宅前には、不敵な笑みを浮かべる一人の美少女が立っていた。

 

姫島朱乃。

彼女は、コカビエルの一件から数週間、後処理や教会の残党への対応、さらにはグレモリー眷属としての公務に追われ、連と触れ合う時間を飢えるほどに渇望していたのだ。

 

カチャリ、と合鍵(いつの間にか連から預かっていたのか、あるいは魔術で複製したのかは定かではないが)を使ってドアを開ける。

 

朱乃「ふふ……、おかえりなさいと言えるのは、もう少し先かしら?」

 

朱乃は鼻歌を歌いながら、手慣れた様子でキッチンへと向かった。

 

---

 

一時間後。

連とディーネが、学園での魔王との対面を終えて帰宅した。

 

連「……おい。玄関から、妙に『甘い匂い』がするぞ」

 

連が不審そうに眉を寄せ、リビングのドアを開ける。そこには、いつもの制服ではなく、少し大きめのワイシャツ一枚にエプロンという、狙い澄ました「彼シャツ」スタイルの朱乃が、お玉を持って立っていた。

 

朱乃「あら、おかえりなさい、連くん。それにディーネさんも」

 

ディーネ「あはっ!? 朱乃じゃない! なんであんたがここにいるのよ? ここは私と連の愛の巣よ、不法侵入で腐食させてあげようかしら?」

 

ディーネが即座に牙を剥くが、朱乃は余裕の笑みでそれをいなした。

 

朱乃「そんなに怖がらないで。最近、連くんとゆっくりお話しする機会がなかったでしょう? だから今日は、心を込めて夕食を作らせてもらったの。……ねぇ、連くん? 私の料理、嫌いかしら?」

 

朱乃が上目遣いで、シャツの裾を少しだけ持ち上げる。

連は大きく溜息をつき、ソファに身を投げ出した。

 

連「……好きにしろ。腹は減っている」

 

朱乃「ふふ、うふふ。そう言ってくれると思ってたわ」

 

テーブルに並べられたのは、和洋折衷の豪華な料理。だが、どの皿からも微かに「魔力」の波動が感じられる。朱乃は、連の中に眠るアザトースやイザナミの気配に合わせ、滋養強壮と魔力回復に特化した食材を、彼女なりの愛(と独占欲)で調理していた。

 

---

 

 

ディーネ「連、こっちの肉を食べなさいよ! 私が昨日仕込んでおいたんだから!」

 

朱乃「あら、ディーネさん。連くんには私の作った、この少し刺激的なスープの方が合うわよ? 堕天使の血を少しだけ隠し味に入れているの……うふふ、ゾクゾクするでしょう?」

 

ディーネ「あんた、料理に何混ぜてんのよ! 変態巫女!」

 

食卓は、シアン色の髪の魔女と、雷光の巫女による静かな、しかし苛烈なマウントの取り合いへと発展していた。

連はそれを完全に無視し、淡々と食事を進める。

 

アザトース『……くかか。連よ、賑やかなことだ。この女たちの執念、もはや並の悪魔を超えておるな』

 

連の脳内でアザトースが愉しげに笑う。

連は心の中で(……お前が喜ぶな。ただの食事だ)と毒づくが、朱乃が甲斐甲斐しく取り分けてくれる料理の味は、確かに悪くなかった。

 

食事が終わり、浴室から湯気が立ち上る頃。朱乃が連の隣に座り、その白い腕を彼の首に回した。

 

朱乃「ねぇ、連くん。今夜は……魔王様もいないし、ゆっくりできるわよね? コカビエルの時、あんなに格好いい姿を見せてくれたご褒美、まだあげていなかったわ……」

 

朱乃の瞳が、サディスティックな欲望と、それ以上に深い情愛で潤んでいる。

だが、そこを割って入るのがディーネだ。

 

ディーネ「ちょっと! 連のお風呂は私が一緒に入るって決まってるのよ! あんたは予備(サブ)なんだから、隅っこで指でも咥えてなさい!」

 

朱乃「まぁ、ディーネさん。私、一度に複数を相手にするのも嫌いじゃないわよ? 連くんなら、私たち二人がかりでも……耐えられるでしょう?」

 

連「…………」

 

連は無言で立ち上がり、右腕のブレスレットを一度だけ光らせた。

黄金の威圧感がリビングを支配し、二人の魔女が一瞬だけ言葉を失う。

 

連「……うるさい。俺は一人で入る。お前たちは勝手に外で寝てろ」

 

ディーネ「えぇーっ!? 連、ひどいわ!」

 

 

朱乃「ふふ……、冷たくされるのも、それはそれで……ゾクゾクしちゃうわね……」

 

---

 

 

 

結局、浴室でも一悶着(ディーネが壁を透かして覗こうとし、それを朱乃が雷光で阻止するという不毛な争い)があった後、三人はリビングで夜を過ごすことになった。

 

連がソファに横たわると、右側にディーネ、左側に朱乃が、当然のように潜り込んできた。

 

連「……お前ら、自分の部屋はどうした」

 

ディーネ「連の隣が私の部屋よ」

 

 

朱乃「あら、私は今日はお泊まりだって言ったはずよ……うふふ」

 

外では魔王が宿泊し、世界が歴史的な会談に向けて動き出しているというのに、この家の中だけは、救いようのないカオスと甘い毒気に満ちていた。

 

連が眠りに落ちた瞬間、夢の中でイザナミが現れた。

 

イザナミ『……連よ。御主の周りには、実によく肥えた魂が集まるものよ。あの雷の娘、妾への供物にするには惜しいほどの執着心だ。……アザトースも目覚め、御主の器は完成に近づいておる』

 

イザナミは連を抱き寄せ、冷たい、しかし確かな慈愛を持って囁く。

 

イザナミ『三勢力会談……。神を失った哀れな羊たちの集い。そこで御主がどのような「絶望」を振るうのか、妾は楽しみでならぬぞ』

 

連は夢の中で、黄金の聖剣と黒炎の魔剣を構える自分の姿を見た。

隣にはディーネ、そして今夜からは朱乃も。

自分を縛るものなど、この世界にはもう何もない。

 

翌朝。

眩しい朝日と共に目が覚めた連の左右には、幸せそうな寝顔のディーネと、寝言で「……っ、連くん……もっと……」と呟く朱乃がいた。

 

連は大きな溜息をつき、右腕のブレスレットを一度だけ撫でた。

 

 

連「……さて。魔王の言う『公開授業』とやら、せいぜい派手に引っ掻き回してやるか」

 

暁家の朝。それは、神話の終焉と新たな混沌へと続く、穏やかな、しかし決定的な一日の始まりだった。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

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