公開授業の熱気が冷めやらぬ、夕暮れ時の学園裏庭。
噴水広場に近い茂みの陰で、生徒会副会長の匙元士郎は、今しがた突きつけられた「真実」に絶望し、膝をついていた。
匙「……男。あんなに可愛くて、守ってあげたかったギャスパーくんが……男の子だったなんて……。僕の純情を返してくれよ……」
ディーネ「あははっ! 匙くん、顔が死んでるわよ? この世界の男の子なんて、みんなそんなものじゃない」
ディーネがケラケラと笑いながら、連の腕に寄り添っている。連は相変わらず興味なさそうに空を見上げていたが、不意にその視線が、誰もいないはずの茂みへと固定された。
連「……おい。隠れるのが下手な客だ。いつまでそこにいる」
連の冷徹な声が響いた瞬間、ガサリと草木を分けて一人の男が姿を現した。
無精髭を蓄え、どこかだらしない風体。だが、その背後に透けて見える魔力は、学園全体を覆い尽くすほどに巨大で、禍々しい。
アザゼル「へー、悪魔の眷属共はこんなところでご遊戯か? ……やぁ、悪魔君。いや、赤龍帝。また会ったな」
男――堕天使の総督アザゼルが、片手を挙げて飄々と挨拶した。
アーシア「え……? 一誠さん、ご友人ですか?」
アーシアが首を傾げて尋ねるが、一誠の顔は一瞬で強張った。
一誠「アーシア、下がれッ! ……『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』!!」
一誠の左腕に深紅の籠手が顕現し、重厚な金属音が響く。彼はアーシアを庇うように前に出、全身から闘気を溢れさせた。同時に、ゼノヴィアも背負っていた布を剥ぎ取り、聖剣デュランダルの禍々しい輝きを解き放つ。
ゼノヴィア「……堕天使の総督アザゼル。何をしに来た。ここから先はグレモリー領だ」
ゼノヴィアの鋭い牽制に対し、アザゼルは鼻で笑った。
一方、連とディーネは武器を構えるどころか、欠伸(あくび)すら噛み殺している。連にとっては、この男が「神の不在」を最もよく知る者の一人であることは承知の上だった。
匙「アザゼル……? こいつが、あの堕天使のトップ……!?」
匙が戦慄しながら一誠に問いかける。
一誠「ああ、間違いない。俺はこの数週間、何度もこいつと……いや、この変態ゲーム親父と会ってるんだ!」
アザゼル「変態とは心外だな。私は純粋に娯楽と研究を愛しているだけだ」
一誠「ふざけるなッ!」
匙が自身の神器『黒い龍脈(プロミネンス・ビュー・ポイント)』を展開する。小猫もいつの間にかアザゼルの背後へと回り込み、その小さな拳に絶大な魔力を込めた。
包囲網は完璧だった。だが、アザゼルは動じない。
アザゼル「よせ。いくら下級悪魔が束になろうと、私には傷一つつけられないことぐらい、分かっているだろう? ――特に、そこの黄金のブレスレットの持ち主が動かないうちはな」
アザゼルの視線が連を射抜く。連は冷たい瞳を向け返した。
連「……俺が動くときは、お前の首を黄泉へ持ち帰る時だ。散歩の邪魔をする気はない」
アザゼル「くくっ、相変わらず怖いな。……一誠、そう警戒するな。今日はただの散歩だ。……例の『聖魔剣』の使い手を見に来たんだがな。あいつの神器は興味深い」
一誠「木場なら今はいない。部長と一緒だ」
一誠が突き放すように言うと、アザゼルは露骨に肩を落とした。
アザゼル「なんだ、いねぇのか。つまらんな。……なら、代わりにその籠の中の吸血鬼(ギャスパー)の話でもしようか」
アザゼルは一誠たちの背後にある、ギャスパーが閉じこもる段ボール(という名の聖域)を指差した。
アザゼル「『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』。強力だが、あの子の容量を超えている。制御できずに暴走すれば、自分ごと周囲を消し飛ばすぞ」
アーシア「そんな……! ギャスパーくんを助ける方法はないんですか!?」
アーシアが悲痛な声を上げる。アザゼルは匙の神器を指差して、ニヤリと笑った。
アザゼル「簡単なことだ。その『黒い龍脈』を使って、あの子の体内の余分な魔力を吸い取ってやればいい。キャパを超えたエネルギーを外部に逃がす道を作れば、暴走は収まる」
匙「俺の神器で……?」
匙が目を見開く。アザゼルはさらに言葉を継いだ。
アザゼル「だが、もっと確実で『劇的』な方法がある。……赤龍帝の血を飲ませることだ。龍の生命力は、あらゆる神器の安定剤になる。……もっとも、あの子がそれを『美味い』と感じるかどうかは別の話だがな」
アザゼルは満足げに頷くと、踵を返して歩き出した。
一誠「待てよ、アザゼル!」
一誠が背中に声をかける。
一誠「……何故、俺に正体を隠して近づいた? ゲームをしたり、相談に乗ったり……あんたほどの男が、何でそんな回りくどい真似をしたんだ」
アザゼルは足を止め、振り返ることなく、黄昏に染まる学園の空を見上げた。
アザゼル「――何故かって? 決まっているだろう。……それが俺の『趣味』だからだ」
不敵な、そしてどこか孤独を感じさせる笑みを残して、堕天使の総督は黒い羽を一枚残し、影の中へと溶け込んでいった。
連「……趣味、か。どこまでも食えない野郎だ」
連が吐き捨てるように呟く。ディーネはその背中に顔を寄せ、アザゼルが消えた空間をシアン色の瞳で見つめていた。
ディーネ「あはっ! 連、今の見た? あの人、きっと後で後悔するわよ。連を『観察対象』にしたこと。……神の不在を知る者が、本物の神の裁きを理解していないなんて、滑稽だわ」
連「……行こう。もうすぐ夜が来る」
連は踵を返し、一誠たちを置いて歩き出した。
三勢力会談、そして公開授業。
神話の役者たちは出揃った。
暁連の手の中にある黄金の光が、この世界の歪んだ平和を焼き払う「その時」は、もう目の前まで迫りつつある。
転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?
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精霊
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その他(他作品とのクロスオーバー)
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