破壊の黒炎   作:ぐちロイド

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第35話 襲撃者と吸血鬼の覚醒

旧校舎の会議室に、凍り付くような沈黙が流れた。

連の「宣告」が、三勢力の首脳陣に重くのしかかっていたその時――。

 

ガガガガッ……!

 

窓の外、夕闇に染まりつつあった駒王学園の空が、突如として赤紫色の不気味な光に塗りつぶされた。

 

 

一誠「……何だ!?」

 

 

一誠が窓に駆け寄ると、そこには絶望的な光景が広がっていた。学園の上空を埋め尽くすほどの、巨大な魔法陣の群れ。その中心から、禍々しい魔力の奔流が旧校舎へと牙を剥いていた。

 

ディーネ「……あはっ、お喋りはここまでみたいね。連、ほら、招かれざる客よ」

 

 

ディーネが窓の外を指さし、可笑しそうに肩を揺らす。

連は無言のまま、漆黒の鱗が波打つ左腕を静かに下ろした。その瞳には、乱入者への怒りよりも、冷徹な「観測者」としての光が宿っている。

 

突如、室内の空気が一変した。

 

 

一誠「……っ!? 体が……重い……?」

 

 

一誠が呻き、膝をつく。隣にいたリアスや朱乃、アーシア、そして小猫までもが、まるで時間が止まった石像のように、その場に固定されてしまった。

 

アザゼル「これは……『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』!? ギャスパーの力か!」

 

 

アザゼルが鋭い声を上げる。

だが、その力は本来のギャスパーが出せる出力を遥かに超えていた。強制的に増幅され、暴走した魔力が、学園内にいる「力なき者」から順に、世界の時間から切り離していく。

 

バリィィィィンッ!!

 

会議室の窓が粉々に砕け散り、その破片が宙で静止する。

割れた空間から、優雅に、しかし底知れぬ悪意を纏った女が舞い降りた。

漆黒のドレスに身を包み、かつての魔王レヴィアタンと同じ名を継ぐ女。

 

?「――久しいわね、偽物の魔王たち。そして、羽を毟られた堕天使に、天界の傀儡」

 

サーゼクス「カトレア・レヴィアタンか……。旧魔王派の残党が、何の用だ」

 

 

サーゼクスが静かに立ち上がる。その周囲には、連とディーネ、ミカエル、そしてアザゼルのような、圧倒的な魔力を持つ者だけが、停止の呪いを弾いて動けていた。

 

カトレア「用? 決まっているわ。……この弱者の馴れ合い、和平会談という名の茶番を終わらせに来たのよ。真の支配者は、我ら旧魔王の血を引く者のみ。……貴方たちのような、平和に毒された腑抜けは、ここで一掃してあげるわ」

 

カトレアの背後には、テロ組織『禍の団(カオス・ブリゲード)』の紋章が浮かび上がる。彼女の魔力は、本来の魔王級をさらに底上げするように、禍々しいオーラで膨れ上がっていた。

 

ディーネ「……連。あいつ、さっきのあんたの台詞をパクってるわよ? 殺しちゃう?」

 

 

ディーネが耳元で囁くが、連は動かない。

 

 

連「……まだだ。あんな三流の狂言回しに、俺が手を汚す価値はない。……それに、あそこには『主役』がいるだろう」

 

連の視線の先には、停止したリアスの前で、必死に指を動かそうとしている一誠の姿があった。

一誠は、ドライグの加護によって、辛うじて意識とわずかな可動域を保っていた。

 

一誠「……部長……アーシア……ッ! ふざけるな……こんなところで、終わらせてたまるかよ!」

 

アザゼル「……おい、赤龍帝。行けるか?」

 

 

アザゼルが、あえて手を出さずに一誠に問いかける。

 

 

アザゼル「ギャスパーがあそこにいる。旧校舎の別室だ。テロリスト共は、あいつを拉致して増幅装置に繋いでやがる。……あの子を救い出さない限り、この静止(ポーズ)は解けないぞ」

 

一誠「わかってますよ……! ゼノヴィア、行けるか!」

 

 

ゼノヴィア「……ああ。私のデュランダルが、この程度の呪縛を許すはずがない」

二人は、カトレアの猛攻をサーゼクスたちが防いでいる隙に、ギャスパーが監禁されている部屋へと走り出した。

 

---

 

 

 

旧校舎の最奥。魔法陣によって幾重にも封印された部屋の中で、ギャスパーは装置に繋がれ、絶叫を上げていた。

 

 

ギャスパー「嫌だ……怖いよ……! 止まって……みんな、止まってえええ!」

 

彼の目から放たれる「停止」の光が、世界を蝕んでいく。

そこへ、一誠とゼノヴィアが扉を蹴り破って突入した。

 

一誠「ギャスパー! 今助けてやるぞ!」

 

だが、ギャスパーは恐怖に支配され、救いの手さえも見えていない。

 

 

ギャスパー「来ないで! 僕は、僕は化物なんだ……! お父様にも捨てられて、みんなを困らせるだけの……」

 

その弱気な言葉に、一誠の堪忍袋の緒が切れた。

一誠は、ギャスパーの元へ歩み寄り、自身の左腕の籠手(ブーステッド・ギア)を解除した。そして、剥き出しになった自分の腕を、ギャスパーの口元へ突き出す。

 

一誠「……飲め」

 

ギャスパー「……えっ?」

 

一誠「お前は吸血鬼だろうが! 化物? だったら俺はエロの化物だ! ……いいか、お前には俺の、男の先輩の血が流れてるんだ。……お前のその力は、誰かを止めるためのもんじゃない。大事な仲間を守るために、お前自身が動くための力なんだよ!」

 

一誠の腕から、鮮血が滴り落ちる。

ギャスパーは、吸血鬼としての本能に抗えず、その血を一口、喉へと流し込んだ。

 

ドクンッ……!

 

龍の因子を含んだ、あまりにも濃厚で熱い「生」のエネルギー。

ギャスパーの瞳が、金色から鮮烈な紅へと染まる。

 

『……お前が、それを望むなら……我の力を、貸してやろう』

 

ギャスパーの内側に眠る真なる吸血鬼の始祖、バロールの断片が一誠の血に呼応した。

 

ギャスパー「……一誠、先輩……」

 

 

ギャスパーが、震える手で自分の目を押さえる。

 

 

ギャスパー「……僕、もう怖くありません。……みんなを、止めたくない。……みんなと一緒に、動きたいんです!」

 

ギャスパー「――『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』、制御解除(コントロール)!!」

 

ギャスパーの絶叫と共に、部屋を満たしていた黒い魔力が、一気に彼の中へと収束していく。

暴走していた力が、彼の「意思」という核を得て、整然とした魔力へと変換された。

 

---

 

 

リアス「……っ、動ける……!?」

 

 

会議室で石像となっていたリアスが、大きく息を吸い込み、魔力を解放した。

アーシアも、朱乃も、小猫も。

学園全体を覆っていた「静止」の呪縛が、霧が晴れるように消え去っていく。

 

ディーネ「……あははっ! 素晴らしいわね、あのチビ吸血鬼。……連、見た? 自分の呪いを飲み込んで、糧に変えたわよ」

 

 

ディーネが楽しげに手を叩く。

 

連は、割れた窓から地上を見下ろした。

そこには、自由を取り戻したオカルト研究部の面々と、彼らを指揮するリアスの凛々しい姿があった。

 

連「……準備は整ったようだな」

 

 

連は、自身の左腕に纏う漆黒の鱗を、愛おしそうに撫でた。

 

 

連「……カトレア。お前が望んだ『真の支配』とやらが、どれほど安っぽいものか……一誠たちが教えてくれるだろう。……だが、その後で残ったカスは、俺がすべて消してやる」

 

リアスが空を指さし、紅蓮の魔力を爆発させる。

 

 

リアス「――オカルト研究部、反撃開始よ! 駒王学園を、私たちの場所を汚す輩に、グレモリーの滅びを教えなさい!」

 

「「「おおおおお!!」」」

 

一誠の咆哮が、夜空に響き渡る。

和平会談は、もはや外交の場ではない。

世界を破滅へと導く「禍の団」と、新たな時代を切り開く若き悪魔たちの、総力戦へと変貌した。

 

連とディーネは、まだ動かない。

神話の崩壊を、特等席で見つめる観客のように。

だが、連の左腕から漏れ出す「無」の波動は、この戦いの結末が、誰にも予想できない深淵へと向かうことを予感させていた。

 

 

転スラの二次創作主人公でやって欲しい種族は?

  • 精霊
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  • 吸血鬼
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  • その他(他作品とのクロスオーバー)
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