うつけ姫の弟   作:ホークス馬鹿

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譲り状です。


譲り状

正装で現れた信奈とその後ろに控える信忠。

 

道三「ど、ど、ど、どうして?いやしかし、何という美少女と美少年。」

 

二人の予想外の格好での登場に驚きを隠せない道三は

 

信奈「うふっ。度肝を抜かれちゃった?」

 

信奈の言葉に対し、素直に頷いた。

そんな彼の反応を見て

 

信奈「デアルカ!」

 

悪戯成功と言わんばかりの表情だった。

良晴は

 

良晴(何なんだよチクショー!?ぶっちぎりじゃねーか!)

 

信奈の美貌に見惚れていた。

すると

 

長可「よっ!待ってました信忠様!!」

 

忠正「ヒュー!!カッコいいですよ、殿!!」

 

横にいる二人が、信忠を見ては立ち上がって称賛の声を上げた。

それを聞き

 

秀隆「やめなさい、二人共!!信忠様の顔に泥を塗るつもり!!」

 

秀隆は必死に二人を止めた。

この二人に勝家は

 

勝家(・・・あの戯けが!!後で三左衛門殿と説教だ!)

 

可成と共に説教しようと思っていたのだった。

 

信忠「・・・申し訳ない。あの二人、がさつな者でな。」

 

信忠は、苦笑を浮かべながら道三らに謝った。

 

道三「良いのじゃ。彼奴らは中々な実力の持ち主のようじゃし、その二人を抑えているあの女子も然り。気にするでない。」

 

道三は、気にしてないと返した。

 

道三「そんな事より、二人共何故着替えを?」

 

信奈「美濃の蝮に会うんだもの。いつもの格好じゃマズイでしょ?」

 

信奈の敬意を表した行動に

 

道三「・・・成程な。」

 

道三は納得した。

すると

 

信忠「しかし、その道中我らの様子をコソコソと見ていた者がいたのを感じたのだが、誰だったかなぁ?」

 

信忠「どうやら、道三とその後ろに控えている姫武将に良く似ている特徴だったんだが・・・まさか二人ではあるまい?」

 

信忠は、密かに自分達を見ていた者がいたと言う事を話し始めた。

信忠の発言に、周りの空気の温度が下がり、ハラハラした。

 

道三「はっはっはっは!!これは一本取られたな!!スマンのう、どのような者か見て見たくて、あのような事をしたのじゃ。許してくれ。」

 

すると道三は、高らかに笑い謝罪した。

 

信忠「・・・そうか。ならば、良いとするか。」

 

信忠は、道三の白状に少し笑みを浮かべて答えた。

 

良晴(ま、まさか、信忠は気付いてたのか!!気付いてたから、俺の指示を聞いたのか・・・!!)

 

良晴は、信忠の冷静さに驚いていたのだった。

そんな中で、会見がスタートした。

 

道三「随分と鉄砲を揃えたようじゃな。加えて、噂通りの異様な長さの槍じゃ。」

 

信奈「これからは鉄砲の時代よ。弟の信忠も同じ考え。加えて、あの三間半の槍は、弟が考えた武器よ。」

 

道三「槍はともかく、鉄砲は南蛮の玩具だと揶揄する者も多いぞ。」

 

信奈「そういう大口を叩いた自称豪傑野郎も、ウチの足軽が一発で倒すわよ。あの武器は、上手く有効活用して使えば、たちまち最強の兵になるのよ!実際に私達を裏切った山口親子との戦で証明したわ!」

 

信奈の話を下座で聞いていた良晴は

 

良晴(鉄砲の有効活用・・・この考えが、いずれ戦国最強と謳われた武田騎馬軍団を滅ぼすのか!)

 

武者震いが止まらなかった。

 

道三「成程・・・なら、ワシと同盟した後、狙うは駿河の今川かのぉ?」

 

道三は、今後は駿河を攻める予定なのかを尋ねた。

しかし

 

信奈「・・・いいえ、美濃よ。」

 

信奈は美濃を切り取る予定だと言った。

光秀と勝家は、信奈の発言に絶句し

 

道三「・・・何故美濃に拘るのじゃ?」

 

道三は特に動じず、何故かと尋ねた。

 

信奈「蝮が美濃を取った理由と同じよ。」

 

信奈「美濃を制する者は、天下を制する。美濃は東と西を結ぶ、日本の中心よ。ここに難攻不落の城を築けば、天下は貰ったも同然。」

 

信奈「そこに商人が自由に働ける豊かな国を作る、それが斎藤道三の野望だったんでしょ?」

 

道三「フフ・・・全てお見通しか。」

 

道三は、信奈の発言にお手上げだった。

そして、信奈は立ち上がると

 

信奈「美濃は私が貰うわよ。」

 

道三に宣戦布告をした。

これには、双方武器を構え一触即発の雰囲気になった。

信忠は、勝家らを手で制し

 

道三「・・・渡すと思うてか?」

 

道三は、光秀を止めながら尋ねると

 

信奈「蝮の夢を引き継ぐと言っても?」

 

道三「何じゃと?」

 

信奈「日本を乱れさせた古い制度なんか全部壊して、南蛮にも対抗出来る新しい国に生まれ変わらせてみせる!!」

 

信奈「私が見ているのは、世界よ!!」

 

信奈は、自身の野望を力強く言った。

信奈の野望を聞いた良晴は

 

良晴「おお!!クソ生意気だけど、お前なら天下を取らせても良いぜ!!」

 

興奮しながら言った。

 

道三「ふははははっ!!そなたの目は既に海を飛び越えておったのか?」

 

道三「そなたは正しい。だが誰もついて来まい。うつけ呼ばわりされているのがその証拠よ。」

 

道三は、高笑いしながら彼女の見る目は正しいと言いつつ、ついてくる者は誰もいないだろうと言った。

 

信奈「・・・それでも進むだけよ。けど、誰もと言うのは間違いよ。弟がいるわ。」

 

信奈「弟は、私を信じてくれてるわ。」

 

しかし信奈は、誰もではなく、信忠が信じてくれていると返した。

 

道三「成程・・・」

 

すると、道三も立ち上がり

 

道三「手始めが美濃ならば、受けて立つぞ。」

 

彼女の宣戦布告を受け入れた。

 

信奈「・・・臨むところだわ。」

 

その時

 

良晴「待て待て待てえーっ!!」

 

良晴が突然声を上げて会見に割り込もうとしてきた。

咄嗟に

 

勝家「この馬鹿!斬られたいのか!?」

 

勝家が止め、光秀が道三を庇うかのように刀を構え、信忠は片膝を立てながら良晴を見た。

 

信奈「下がりなさいサル!」

 

信奈が下がるよう言うも

 

良晴「斎藤道三!俺にはアンタの考えが分かる!美濃の将来が見えている癖に、ひねくれてるんじゃねー!」

 

良晴は構わず言った。

 

信奈「何言い出すのよ!」

 

信忠「コイツ・・・!」

 

二人は、良晴が突然何を言ってるのか意味が分からなかった。

道三は

 

道三「座興じゃ。言わせてみようぞ。」

 

特に怒鳴らず、良晴に言わせようと思った。

 

勝家「サル・・・」

 

良晴「大丈夫だ、任せてくれ。」

 

良晴は、道三の前に立った。

道三は、光秀から刀を受け取ると、彼に刀を突きつけ

 

道三「デタラメを抜かせば、首が飛ぶぞ。」

 

本気だと言わんばかりの気迫で言った。

 

信奈「詫びなさいサル!今なら・・・」

 

信奈は、道三に謝るよう言ったが

 

信忠「姉上・・・」

 

信奈「信忠!」

 

信忠「好きにさせましょう。これで首が飛んだら、その程度の奴だったという事ですよ。」

 

信忠が止め、良晴の好きにさせようと言ったのだった。

 

信奈「・・・分かったわ。」

 

信奈は、良晴を心配そうに見守った。

この時信忠は

 

信忠「・・・」

 

天井にいる何かに気付いているかのように一瞬視線を見上げていた。

そんな中

 

良晴「道三、アンタはこの後家臣にこう言うんだ。『ワシの子供は、尾張の大うつけの門前に馬を繋ぐことになる。』ってな!」

 

良晴は、道三の心の内を喋ると

 

道三「な、何と!?」

 

道三は驚きの声を上げた。

 

良晴「つまり息子は信奈に勝てないと分かってるんだ。アンタ自身がな!」

 

そのまま黙ったまま両者睨み合った。

天井裏では

 

??「・・・」

 

一人の忍び風の少女が、いつでも攻撃出来るようスタンバイしていた。

彼女の名は蜂須賀五右衛門。色々あって良晴とは主従関係の間柄だ。

先程信忠が一瞬視線を天井に上げたのは、彼女の気配に気付いたからだ。

因みに言うと

 

??「・・・」

 

床下には、一人の忍びが隠れていた。

彼は百地三太夫。伊賀の忍びで、信忠に仕えている。

すると

 

道三「ふはは。小僧、どうやって我が心を読んだ?」

 

道三は笑いながら心の内に考えてる事を認め、何故分かったのかと尋ねると

 

良晴「・・・俺はただ知っていただけさ。」

 

道三「何?」

 

良晴「俺は未来からやって来た。アンタは信奈に美濃を譲る事になる。そうしなきゃ、これまでの人生が無駄になっちまうからな。斎藤道三の夢を継げるのは、織田信奈だけだ!」

 

良晴は、自分は未来からやってきたから分かる事と、道三の夢を継げるのは信奈だと答えた。

彼の言葉を聞いた道三は

 

道三「ワシの完全な負けじゃな。」

 

負けを認め、刀を下げた。

 

信奈「え?蝮・・・」

 

信忠「・・・」

 

道三「まさか、未来から来た男とはのう。」

 

良晴「今から約五百年程先さ。そこじゃ斎藤道三は、戦国の有名人だよ。」

 

道三「そうか?ワシは後世にまで名を残せたのじゃな。」

 

そして

 

道三「この蝮、貴様のおかげで最後の最後に素直になる事が出来たわい。」

 

道三は信奈に目を向け

 

道三「信奈ちゃんのためじゃ。この場で、譲り状をしたためよう。」

 

道三「ワシはそなたに、我が義娘信奈に、美濃を譲る!」

 

美濃を譲る事を宣言した。

信奈は

 

信奈「・・・デアルカ!」

 

少し涙ぐみながら答え

 

信忠「・・・ふぅ。」

 

信忠は、少し笑みを浮かべたのだった。

こうして、尾張と美濃は同盟を結ぶ事となった。

この結果に納得出来ない者が美濃にいるのだったが。

そして、会見が終わり

 

信奈「一応、褒めてあげるわ。アンタのおかげよ。」

 

信忠「お前、中々な度胸だな。普通だったらとっくに首が飛んでたぞ。」

 

良晴「いやぁ、つい身体が動いちゃって・・・」

 

信奈「まったくもう・・・!ほら、さっさと草履、帰るわよ!」

 

信奈は、照れ臭そうに顔を背けながら言うと

 

良晴「ああ、これか?」

 

良晴は自身の懐から信奈の草履を取り出した。

 

信奈「な、何でそんなところに入れてんのよ!?」

 

信忠「お、おい・・・お前そんな趣味あったのか・・・」

 

良晴の行動に、信奈は気味悪そうに、信忠は顔を僅かに引き攣らせてドン引きしていた。

 

良晴「ご、誤解だ!履いたときにヒヤッとしたら可哀相だなって!」

 

良晴の言い訳に

 

信奈「私の足の匂いに興奮してたのね?そんな高度な変態、初めて見たわ!」

 

信奈「最早生きているのが罪!ここで手打ちよ!」

 

信奈は刀を抜き、追いかけたのだった。

 

信忠「あんな姉上の顔、久しぶりに見たな。」

 

勝家「そのようですね。」

 

信忠と勝家は、信奈の久しぶりに見る楽しそうな笑みを見て言った。

 

勝家「しかし信忠様。会見前に道三に言った発言には驚きましたぞ。」

 

秀隆「本当ですよ!もしもの事があったらどうするおつもりだったんですか?」

 

勝家と秀隆は、信忠の会見前に言った発言に肝が冷えたと言うと

 

信忠「ああ、そんな時は・・・三太夫。」

 

三太夫「はっ!」

 

三太夫を呼び

 

信忠「最悪三太夫に任せようと思ったんだ。」

 

彼に任せるつもりだったと返した。

 

勝家「・・・そうですか。」

 

すると

 

長可「結局戦いは無しかよ・・・良い雰囲気だったのにつまんねーの・・・」

 

忠正「ホントだぜ・・・あーあ、暴れたいぜ・・・」

 

長可と忠正が、退屈そうに背伸びしていた。

そんな二人に

 

勝家「お前達・・・帰ったら後で三左衛門殿と共に説教だ・・・」

 

勝家は、少し怒り顔で説教をすると言い

 

長可「な、何でさ権六殿!?」

 

忠正「そうですよ!何で私達が・・・!?」

 

勝家「当然だ。今日は大切な会見だ。にも関わらず、お前達は恥ずかしい行動をして・・・!」

 

長可「そ、そんな・・・!」

 

忠正「勘弁してよ権六殿・・・与四郎も何か言って!」

 

長可と忠正は、慌てて秀隆に助けを求めるが

 

秀隆「二人共・・・三左衛門様にしっかりお灸を据えられなさい・・・」

 

「「与四郎!?」」

 

秀隆は特に助けず

 

勝家「さぁ、帰りましょう信忠様。皆がお待ちかねです。」

 

信忠「そうだな・・・」

 

「「待って権六殿!!待ってよー!!」」

 

・・・皆無事に那古野に帰ったのであった。

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