一度謀反を起こし、敗れた信勝は、信奈に許された。
その叛意は、消えるどころかむしろ以前より増大していた。
その原因は
「信勝様・・・これぞまたとない好機です!!」
「秀貞殿の言う通りです!!これこそ、信勝様が織田の・・・尾張の主となるまたとない機会です!!」
「さよう!!信勝様こそ、主に相応しい!!」
津々木蔵人、林秀貞、そして佐久間信盛が中心となって信勝を煽っていたからだった。
三人は、未だに信奈の事を認めていなかったのだ。
その結果、信勝の叛意の火は再び激しく燃え盛ったのだ。
信勝「前回は馬鹿正直に戦を仕掛けてしまったから失敗した。なんたって戦上手の兄上が相手だったからね。」
信勝「けど今回は違う!!手段を選ばず、確実に姉上を仕留める!!そして、その死を今川の策謀とさせて、兄上を欺くんだ!!」
信勝は、信奈を殺し、その犯人を今川にさせて信忠を欺こうと考えた。
「流石信勝様!!素晴らしい知謀でございます!」
秀貞は、信勝の計略に流石と持ち上げた。
「しかし信勝様。此度の計画、玄蕃殿には内密に進めましょう。」
すると、津々木はこの計画に盛政に秘密にしようと言った。
信勝「何故なの?」
「奴は、信忠様に心が移っております。」
「確かに彼奴は、信忠様寄りの言動が目立ちますな。」
津々木の発言に、信盛は計画を密告される危険性があると察した。
「さよう!もし計画を話し、密告されたら終わりでございます!」
信勝「良し!この計画はお前達と共に行おう!」
「「「御意!!」」」
そして、信勝らは謀反の計画を始めた。
そんな中、信勝は盛政と話していた。
信勝「盛政。君は、兄上をどう思う?」
盛政「素晴らしいの一言です!戦において武に長けてるだけでなく、戦場を広く見渡せる視野の広さをお待ちになられてる!まさに類い稀なる将才です!」
盛政は、信忠の武将としての実力を賞賛した。
信勝「・・・そうか。そこまで尊敬してるなら、いっその事兄上に仕えるのはどうなんだ?」
盛政の信忠に対する尊敬の念を感じ、信勝は信忠に仕えるのを勧めるも
盛政「ははは、何を言われますか!某は一生、信勝様にお仕えする所存で・・・」
盛政は終生信勝に仕えると言うが、その途中信勝は立ち上がり、津々木とその場を後にした。
その際
盛政「っ?」
盛政(何だ・・・今の津々木の笑みは・・・?)
津々木の不敵な笑みに違和感を感じた。
その時
土田「盛政殿・・・最近、信勝が津々木殿や秀貞殿、そして其方の親戚の信盛殿らと何やら密談ばかりしてるらしいのです・・・」
土田「もし・・・もしまた謀反なんて考えてたら・・・」
土田御前が、最近の信勝の様子のおかしさと、最悪のケースを考えて怯えていた。
そんな彼女に
盛政「大方様・・・」
盛政は一抹の不安を感じ、様子を探ろうと決めた。
その夜
「盛政様!探ってまいりました!」
盛政「どうだった?」
盛政は、部下を使って信勝らを調べた。
その部下が帰ってきて
「それが・・・信勝様と津々木殿!他に秀貞殿に信盛殿らが再び謀反を企てているとの事でした!」
信勝が再び謀反を企んでいるという事が分かった。
盛政「そんな・・・なんて馬鹿な事を・・・!」
盛政は、再びの謀反に驚き
盛政「急いでお止めしなければ!」
信勝を止める為、屋敷を後にしようとすると
「お待ちを!まだ続きが!」
「どうやら信勝様は・・・盛政様を殺す計画まで立てているようです・・・!」
盛政「っ!?」
自身の暗殺計画を立てている事を知り、目を見開いた。
盛政「・・・と、取り敢えず・・・下がれ。」
盛政は、動揺しつつも何とか抑え、部下を下がらせて一人になった。
盛政「・・・」
盛政は、一人部屋の中に座り
盛政(先の謀反で、信奈様は信勝様や我らをお許しになり、その思いに応え、某は今後も信勝様を命懸けでお守りし、支える覚悟だった・・・それなのに・・・)
盛政「これがこの仕打ちか・・・あんまりではないか・・・某は・・・某は一体・・・どうすれば・・・!」
まさかの主君の裏切りに涙を流した。
そんな時
「盛政様。柴田様が参られました。」
盛政「・・・権六殿が?通せ。」
勝家「理助!」
勝家がやって来た。
盛政「・・・権六殿。」
すると
勝家「どうした理助?目が腫れているが・・・泣いていたのか?」
勝家は、盛政の目が赤く腫れていた事に気付いた。
盛政「い、いや・・・これは・・・!」
盛政は、慌てて目を隠すも
勝家「何かあったのか?お前と私の仲だ・・・話してみろ。」
勝家は、優しく声をかけた。
すると
盛政「・・・分かりました。」
盛政は、全てを話した。
勝家「何と・・・信勝様が・・・!」
勝家は、信勝の再び謀反を企んでいる事に驚くばかりだった。
その時
盛政「申し訳ありません権六殿!かくなる上は、某が責任取って・・・!」
盛政が、腰に差してある脇差を抜いて腹を切ろうとした。
しかし
バシイッ!!
盛政「っ!?」
勝家「馬鹿な事をするな理助!!」
勝家がすぐ様盛政を叩き、脇差を取った。
盛政「何をするのです権六殿!某は信勝様を裏切ったのですぞ!!」
盛政は、どんな形であれ主君の秘密をバラした不忠の責任を取ろうとしていた。
しかし
勝家「理助・・・謀反の計画を漏らした事が裏切りだと思うなら、それは大間違いだ!」
勝家「お前の主君は確かに信勝様だ。しかし、姫様を頂点とし、その姫様をお支えする信忠様がおられる織田家の一つだ!」
勝家「謀反を防ぐ事は、主家を守る忠義の行いなんだぞ!!」
勝家は厳しくも優しく盛政を諭し
勝家「私と共に信忠様の所へ行き、全てを話すんだ!姫様は勿論、取り分け信忠様はお前の事を高く評価し、認めてる!悪いようにはしない!」
勝家「もしもの事あれば、私がお前を守る!!」
全て打ち明けようと言った。
勝家の説得を聞き
盛政「権六殿・・・宜しく頼み申す・・・!某は・・・某は・・・信奈様、信忠様に付く!!」
盛政は、信奈達に付くと涙を流して言ったのだった。
そうと決まり、勝家はすぐに盛政と共に那古野に戻った。
そして、盛政は信忠に全てを打ち明けた。
信忠「・・・分かった。玄蕃、ひとまずここに来た事は誰にも知らされずに末森に戻れ。」
盛政「・・・はっ・・・」
信忠は、全てを聞き盛政を末森に戻した。
そして、勝家と二人っきりになり
「「・・・」」
暫く無言だった。
その沈黙を破ったのは
信忠「・・・六。信勝の事、どうすべきだと思う?」
信忠だった。
勝家「・・・先の謀反では姫様はお咎め無しにしましたが、今回はそうもいきません。」
勝家「・・・城を没収の上に尾張から追放・・・というのは・・・如何・・・で・・・」
勝家は、尾張から追放という提案をするも
勝家「申し訳ありません。心にも無い事を言いました・・・」
本心では無いにも関わらず余計な事を言ってしまった事を詫びた。
信忠「いや・・・こっちもすまなかった・・・」
信忠も、気を遣わせた事を詫び
勝家「でしたら、この事を清洲の姫様に報告し、判断を任せますか?」
勝家は、信奈に伝えるかを提案した。
信忠「いや、これ以上姉上を煩わせたくない・・・俺がやる。」
信忠は、自ら解決すると言い
信忠「城の没収で追放は、姉上ならやりそうな事だが、言われて大人しく出て行くとは限らない・・・仮に大人しく出て行ったとしても、他国にて保護され、尾張の内情を話される危険性が高い・・・」
信忠「かと言って先手を打って末森を攻めて戦を起こしたら、かえって表沙汰になって他国に弱み見せられてしまう・・・」
信忠「何より・・・これ以上の甘い処分は皆に示しが付かない・・・」
これ以上は皆に示しが付かないと加えた。
すると
信忠「・・・戯けが・・・何故・・・何故矛を収めなかった信勝・・・何故俺達兄弟は争わねばならないんだ・・・」
信忠は歯を食いしばりながら顔に手を当てて涙を流し
信忠「今度こそ・・・これで本当に終わりにしてやる・・・」
信勝の粛清を決めた。
そんな信忠に
スッ
勝家はそっと寄り添い、抱き締めたのであった。