元服
時は戦国。群雄割拠する各地では争いが絶えなかった。
この日の本の統治を担う幕府も最早機能せず、乱世は深まるばかりだった。
そんな中、尾張国にて、二人の姉弟が元服を済ませようとしていたのだが・・・
那古野城
「あの馬鹿娘はどこに行ったんだぁ!!」
城内にて、一人の男が怒りで吠えていた。
その男の名は織田信秀。『尾張の虎』と呼ばれている武将だ。
??「申し訳ございません、信秀様。」
そんな怒り猛る信秀に謝罪する美少女。
どこかお姉さんのようで尚且つ知的な雰囲気を纏っている。
「万千代!お主がいながら何をやっていたんだ!?」
彼女の名は丹羽万千代。吉法師のそばで仕えている者だ。
後に丹羽長秀と呼ばれ、『米五郎左』の異名で頼りにされる武将だ。
??「まぁ・・・本当にはしたない・・・どうして奇妙丸とこうも差があるのでしょう・・・」
その様子を見て、信秀が怒っている原因となっている娘の母親がいた。
彼女の名は、土田御前。信秀の妻だ。
??「如何なされましたか、父上?」
丁度良いタイミングで、一人の少年が現れた。
その少年は、金髪で少し癖毛が特徴の美男子で、どこか隙のなさが窺えた。
彼の後ろには、長い髪をポニーテールにし、青を基調とした普段着で、万千代とは対照的に凛々しくも勇壮な雰囲気のある美少女が控えていた。
「おお、奇妙か!吉法師じゃ!」
少年の名は奇妙丸。信秀の息子で文武共に才気溢れる少年だ。
吉法師というのは、同じく信秀の娘で、奇妙丸の双子の姉で、奇天烈且つ粗野な言動行動を取るため、周りから『うつけ姫』と呼ばれている。
因みに奇妙丸の後ろに控えている美少女は柴田権六と言い、奇妙丸の幼馴染で「六」と呼ばれている。
彼女は後に柴田勝家と呼ばれ、『鬼柴田』の異名で敵に恐れられる猛将となる。
奇妙「・・・またですか?」
信秀の言葉に、奇妙丸は全てを察した。
「そうじゃ!あの馬鹿娘が!」
奇妙「分かりました。俺が姉上を連れて来ますよ。場所は、古渡城に行けば良いのですね?」
「うむ・・・すまんが頼むぞ!」
信秀は、吉法師の事を奇妙丸に任せた。
奇妙「六!」
六「はっ!」
そして、奇妙丸は権六と共にすぐにその場を後にした。
尾張某所
とある場所にて、一人の美少女が城下を見渡せる場所で柿を美味しそうに頬張っていた。
奇妙丸と同じ顔立ちに癖のある金髪を茶筅髷にして、湯帷子の右袖を外し、半袴で腰に太刀を帯び、火打袋と瓢箪を付けていた。
また、ある物を肩に担いでいた。
それは火縄銃で、未だ全国に広まっていない南蛮から伝わった武器だ。
吉法「んんー!この柿甘くて美味しいわねぇ!」
彼女こそ、今回のトラブルの原因となっている吉法師だ。
奇妙「やはり、こんな所にいましたか。」
六「さぁ、戻りましょう姫様。」
すると、背後から奇妙丸と権六が姿を現した。
吉法「あら、奇妙じゃない?権六と一緒にどうしたのよ?」
奇妙「どうしたのよじゃありませんよ。今日が何の日かお忘れですか?」
奇妙丸は、呆れ顔で吉法師に言うと
吉法「元服でしょ。そんなの知ってるわよ。」
吉法師は、何当然の事を言ってるんだと言わんばかりに返した。
奇妙「分かってるなら、早く戻りましょう。場所は古渡城です。」
吉法「はいはい、分かってるわよ。」
そして、奇妙丸は吉法師を連れて帰った。
その頃の古渡城では
「吉法師様はまだなのか・・・?」
「全く・・・大うつけじゃのう・・・奇妙丸様とはまるで大違いじゃ。」
皆がまだかまだかと言う者と陰口を叩く者もおり
「・・・」
信秀は目を閉じているも、怒りでヒクつかせていた。
その時
「申し上げます。若君が、姫様と共に戻られました。」
「戻って来たか!」
奇妙丸が戻って来たという知らせが入り、信秀はホッとするも
吉法「待たせたわね!」
「何をやってお・・・て、何じゃその格好は!!」
吉法師の格好を見て、再び激怒した。
奇妙「申し訳ありません。姉上がこの格好で良いと聞かなくて・・・」
吉法師がこの格好で行くと耳を貸さなかったと言う奇妙丸。
「吉法師!元服の儀に遅れるだけじゃなく、そのようなだらしない格好で来るとは何事か!!」
信秀は、娘の格好に怒るも
吉法「フン!不作法で結構よ!私は大うつけなのだから!」
吉法「さぁ!!私と奇妙に名と冠よ!!」
吉法師は聞き流し、名が書かれた紙を見た。
そこには、吉法師は
『信奈』
奇妙丸は
『信忠』
と書かれていた。
そして、冠を被った吉法師こと信奈は
信奈「今日より私は、織田信奈よ!」
皆に自身の名前を宣言し
信忠「皆、今日から俺は織田信忠と名乗る!!これから宜しく頼む!!」
信忠も同様に名前を名乗った。
こうして、天下に名を轟かす織田信奈と織田信忠が誕生したのであった。