うつけ姫の弟   作:ホークス馬鹿

37 / 43
岐阜城です。


岐阜城

稲葉山城を落とした織田軍。

勝ち戦となり、尚且つ道三もやって来たにも関わらず、空気が重かった。

その理由は、信忠が義龍の首が入った木箱を持ってきたからだ。

 

信忠「何かご不満がおありか?総大将の首を持ってきたんです。喜ぶのが普通ですが。」

 

信奈「あなた・・・始めから義龍を・・・だから搦手門に・・・」

 

信奈は、弟が始めから義龍を生かすつもりは毛頭無かったのだと察し、少し怒らせていた。

 

信忠「このまま生かせば、此奴は何度も俺達の邪魔をします。そうなる前に討ち取るのが賢明だと思われますが。」

 

信忠は、生かせば後々面倒になると返した。

 

長秀「しかし・・・義龍は道三殿の息子ですよ。」

 

信忠「・・・何が言いたい、万千代?」

 

長秀「道三殿と親子揃って隠居生活を送らせたいと、姫様が願っていたのです。それを殺すなど・・・」

 

長秀は、信忠の対応に信奈同様納得できなかった。

しかし

 

信忠「その甘さが・・・信勝の二度目の謀反となったのではないのか・・・?」

 

信忠は特に動じず、冷静に反論すると

 

長秀「それは・・・」

 

長秀は答えれなかった。

 

信奈「もう良いわ、万千代。悪いわね、蝮。こんな形で再会させて・・・」

 

信奈は、二人を止めると道三に謝罪した。

 

道三「いや、信忠の言う通り此奴を生かしても、屈服せずに虎視眈々と命を狙い、障害となっておったじゃろう。」

 

道三は、信忠の行った行動は正しいと返し、咎めなかった。

 

道三「信奈よ、そなたは甘い。先のそなたの弟の事は話は聞いておる。その甘さは、いずれそなたの命取りとなろうぞ。」

 

道三は、目的を成し遂げるには、時には非情さも必要だと言った。

 

信奈「・・・」

 

信奈は、特に何も言わなかったが苦い顔をした。

 

信忠「もう良い、蝮。」

 

信忠「誰か。」

 

「はっ!」

 

信忠「義龍の首、手厚く葬ってやれ。」

 

「御意!」

 

信忠は、道三を止めると、義龍の首を手厚く葬るよう兵に命じた。

 

道三「信奈よ、よく考えるのじゃな・・・」

 

道三は、その場を後にした。

 

「「「・・・」」」

 

少し重苦しい空気が流れたが

 

長秀「・・・姫様。」

 

信奈「ごめんなさい、万千代。皆、ご苦労だったわね。お陰で美濃を手に入れる事が出来たわ。」

 

信奈「恩賞は、追って知らせるわ。」

 

「「「ははっ!」」」

 

信奈は、努めて明るく対応したのだった。

そして、信奈は稲葉山城を岐阜城と改名したのだった。

改名した名を聞き

 

信忠「・・・実に姉上らしい。」

 

信忠は、一言呟いたのだった。

その夜

 

道三「・・・」

 

道三は一人、天守の上で酒を飲んでいた。

そこへ

 

良晴「こんな所にいたのか。」

 

良晴が現れた。

 

良晴「ようやく美濃を取り戻したってのに、祝賀会にも出ないのかよ。」

 

道三「・・・信奈ちゃんは甘すぎる。本人が言わずとも、ワシへの気遣いで義龍を討つつもり無かったのだと百も承知よ。」

 

道三「じゃが、その甘さが、後の敵を作る事になるやもしれぬ。」

 

良晴「信奈は爺さんに息子殺しの悪名を背負わせたくなかっただけだよ。」

 

良晴は、信奈の想いを道三に言うと

 

道三「それが甘いというのじゃ!情に流され敵を作るなど愚の骨頂じゃ!」

 

良晴「っ!」

 

道三は、すぐさま一喝した。

 

道三「それに、ワシは死に損ないの老いぼれ、『蝮の道三』じゃ。今更どのような悪名を背負っても何とも思わぬ。」

 

道三「フフ・・・やはりワシは長良川で果てるべきだったのう。ワシが信奈ちゃんの父親代わりとは片腹痛い。」

 

道三は、しょぼくれたように呟くと

 

良晴「アホ言ってんじゃねぇよ、爺さん。信奈はこの城と町を『岐阜』と改めた意味、分かるだろ?」

 

良晴は、道三に岐阜の意味を改めて尋ねた。

 

道三「ふむ・・・周の文王が出たと言われる山の名前じゃな。天下を狙う信奈ちゃんが付けそうな名じゃ。」

 

道三は、古代中国の周の文王に関わる由来だと答えたのだが

 

良晴「この耄碌爺!そんなんじゃねぇって!!外を見やがれ!そして、新しい城の名前を唱えてよーく考えやがれ!!」

 

道三「な、何?」

 

良晴「・・・長生きしろよ。信奈が親孝行できる親父は、アンタだけなんだからな。」

 

良晴は、改めて岐阜の意味をよく考えろと一喝し、その場を後にした。

 

道三「外に何が?」

 

良晴に言われるがまま、道三は外を見た。

すると

 

道三「これは・・・?」

 

灯の明かりがだんだんと連なっていった。

 

道三「岐阜の城・・・『義父』の城・・・か・・・」

 

道三は、その意味が分かると、目に涙が流れた。

そして、連なった灯の明かりは、最終的に蝮になった。

こうして、美濃は織田の物となったのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。