問 以下の問いに答えなさい。
『(1)4sinX+3cos3X=2の方程式を満たし、かつ第一象限に存在するXの値を一つ答えなさい。
(2)sin(A+B)と等しい式を示すのは次のどれか、①~④の中から選びなさい。
①sinA+cosB ②sinA-cosB ③sinAcosB ④sinAcosB + cosAsinB』
姫路瑞希の答え
『(1) X =π / 6』
(2)『④』
教師のコメント
そうですね。角度を『°』ではなく『π』で書いてありますし、完璧です
土屋康太の答え
『(1) X = およそ3』
教師のコメント
およそをつけて誤魔化したい気持ちもわかりますが、これでは解答に近くても点数はあげられません。
吉井明久の答え
『(2) およそ③』
教師のコメント
先生は今まで沢山の生徒を見てきましたが、選択問題でおよそをつける生徒は君が初めてです。
鍔守刀夜の答え
『(1)X =絶対、3!』
教師のコメント
自信があるなら計算してください。
教室に戻った直後、化学の再テストというイベントが静かに準備されていた、その直前に
「僕、ちょっと家庭科室行ってくるね」
なぜか明久が、コンビニにでも行くようなノリでそんなことを言い出した。
刀夜は止めないし理由も聞かない。なぜならこのクラスでは、明久が突飛な行動を取るのは平常運転だからである。数分後、何事もなかったかのような顔で、明久は席に戻り、普通にテストを受け直し始めた。刀夜は、その様子を横目で見ながら、なんとなく理解してしまった。
(……ああ、なるほど)
学校中にとんでもない誤解をばら撒いた張本人である須川。それに直接お礼参りをする覚悟を決めたのだろう。
(多分、考えたのは雄二だと思うが……)
その推測は、だいたい合っていた。一瞬だけ、ほんの一瞬。明久の制服の内側から、キラリと鈍い光が見えた。
包丁である。家庭科室から借りてきた(返却予定未定)のだろう。
「明久、良くやった」
雄二が、人生で三回あるかないかというレベルで素直に褒めた。だが――
「やれる……僕なら殺れる……!」
完全に聞いていなかった。
「殺るなっての」
刀夜のツッコミが、いつもより真剣だった。
「止めないでくれ刀夜。僕にとっての最優先事項は―――」
そこで。
「ちなみに、あの放送を指示したのは俺だ」
雄二が、天気の話でもするような軽さで暴露した。
(やっぱり……)
刀夜は、内心で深く深く頷いた。
「シァァァァァァァっ!!!!」
明久が叫び、鋭く踏み込み包丁が振り上げられ
「あ、船越先生」
雄二の一言。
「チィィィッ!!」
明久は即座に方向転換し、なぜか卓袱台を蹴散らしながら、人としてありえない機動力で掃除用具入れに飛び込んだ。
「さて、馬鹿は放っておいて、そろそろ決着をつけに行くとしよう」
雄二は涼しい顔で立ち上がる。
「刀夜、秀吉、ムッツリーニ、頼んだぞ」
「分かった」
刀夜は即答。
「ちらほらと下校している生徒も出てきたし、頃合いじゃろうな」
秀吉は腕を組み、戦の空気を読む。
「……………」
ムッツリーニは無言でコクコクと頷いた。言葉はいらない。彼は察している。そのとき。
「あー……明久」
雄二が、掃除用具入れの方を見て言った。
「船越先生が来たってのは嘘だ」
「え?」
掃除用具入れの中から、間の抜けた声が聞こえた。明久を置き去りにし、刀夜が教室を飛び出して渡り廊下へ向かった瞬間――そこはもう、完全に戦場だった。
下校を始めた他クラスの生徒。HRを終え、今日も平和に職員室へ帰ろうとしていた教師陣。そしてその教師を強制的に立会人に据えて召喚獣をぶつけ合うFクラスとDクラス。
「下校してる連中に紛れろ!気配を消せ!」
「囲め!多対一を作れ!」
「よし!俺はあいつに数学勝負を――」
「じゃあ俺は古典を――」
教師が見ているにもかかわらず、誰一人として自重する気配がなかった。Fクラスの連中は、下校中の生徒に溶け込みつつ、気付いた時にはDクラスの周囲をぐるりと包囲。
多勢に無勢。卑怯?違う。これがFクラスの知恵だ。
「おい!いつの間にこんなに囲まれ――」
「今だ!仕留めろ!」
「ぎゃあああっ!」
あちこちでDクラスの悲鳴が上がり、戦線は明らかにFクラス優勢へと傾きつつあった。その流れの中で、刀夜は静かに狙いを定める。
(前線指揮官……塚本)
Dクラスの頭脳にして現場責任者。ここを落とせば、一気に瓦解する。
「ムッツリーニ、秀吉!」
「.......(コクコク)!」
「了解じゃ!」
「塚本の護衛を頼む!」
二人は即座に頷き、塚本の周囲に張り付いていた近衛役を片っ端から排除しにかかった。
そして刀夜は、塚本の正面に立つ。
「Dクラス塚本に、Fクラス鍔守刀夜が勝負を申し込む!」
その場の空気が、一瞬止まった。試召戦争のルールの一つとして勝負を申し込まれたら、拒否は不可があり、拒否すれば戦死扱いになる。
「くっ……!」
塚本は歯噛みしながらも、覚悟を決める。
「Dクラス塚本、受けて立つ!」
「三上美子も参戦します!」
横から援軍が飛び出す。ちょうど近くにいた立会人は、日本史教師。
「日本史か……!」
刀夜は内心で舌打ちした。
(本当は古典で殴りたかったが……仕方ない!)
「「「
光と共に、召喚獣が顕現。刀夜の召喚獣は、静かに日本刀を構える。空中に表示されるステータス。
⸻
Fクラス 鍔守刀夜 139点
日本史 VS
Dクラス 塚本映司 142点
三上美子 85点
⸻
「Fクラスの癖に点数高すぎだろ!?」
「文系は理系よりかは点数高いんだよ!」
刀夜の召喚獣は刀を構える。
「なめんなよ、Dクラス!」
召喚が完了した瞬間、渡り廊下の空気は、まるで誰かが「戦闘開始!」の札を掲げたかのように急変した。刀夜の召喚獣は、無言で日本刀を構えている。
一方で、敵側はというと。
塚本の召喚獣は、見るからにかっこいい軍服姿。肩章まできっちりついた軍刀持ちで、姿勢も無駄に良い。三上の召喚獣は、貫頭衣に魔法書を携えた魔法使い風。後方に陣取り、安全第一の立ち位置である。
「行けぇぇっ!」
塚本の号令が飛ぶ。
キン――――ッ!!
次の瞬間、塚本の軍刀と刀夜の日本刀が正面衝突し、金属音が渡り廊下に反響した。
「押せ! 押し切れ!」
塚本の召喚獣が力を込める。彼の召喚獣の背後で、三上の召喚獣が魔法書を開いた。
「援護行きます!」
(あ、やば)
刀夜は即座に察知した。
「避けろ!」
その指示と同時、刀夜の召喚獣は横へサイドスクロール移動でスッとずれた。その直後、轟音と共に、魔法弾がさっきまで召喚獣が立っていた場所を吹き飛ばす。一歩でも遅れていれば、直撃だった。
「うわ、危なっ……」
刀夜が、思わず素で呟く。声を抑える余裕すらなかった。
(危なかった……マジで……)
心臓が一拍遅れてドクンと跳ねる。
(俺の召喚獣、防御力なんざ皆無だからな……)
試獣召喚において、召喚獣の能力はテストの点数で決まる。攻撃力が注目されがちだが、それだけではない。服装や装備に見た目。それらもまた、戦闘性能に直結する重要な要素だ。
例えば、現在、補習室で地獄を見ている清水美春の召喚獣。一部が鎧のような構造になっており、そこそこ攻撃を弾いてくれる防御寄りの仕様だ。
だが、刀夜の召喚獣は、根本的に方向性が違った。左腕には、やたら主張の激しい色をしている射籠手。右肩には、白い羽織を一枚、引っかけているだけ。しかもその羽織は裏地だけは妙に凝っていて、華やかな花模様がびっしり入っている。
(……そこ、頑張るとこじゃなくない?)
刀夜が思わず感心してしまったほどだが、防御力への貢献度はゼロである。「ギリギリ怒られないライン」を攻めていると言えなくもない。さらに厄介なことに召喚獣というのは、基本的に召喚者の顔をデフォルメした姿をしている。
つまり、刀夜の目の前には、
・自分そっくりの顔
・ほぼ上裸
・無駄に様になる刀装備
という存在が立っているわけで。
(……もう一人の俺が、ほぼ上裸で戦闘してるって、結構キツいな……)
若干の羞恥心が、精神的なダメージとして積み上がる。だが、そんなことを気にしている余裕はない。
防御力? なにそれ美味しいの?
とでも言いたげな、潔すぎる装備構成。攻撃力は高い間違いなく高水準だ。だが、防御力は紙であり、濡れたティッシュより脆い。おまけに敏捷性も、見た目ほど速くない。派手に見えるだけで、実際はギリギリで避けている。つまり、一発でもまともに食らえば終わり。刀夜は、唇を噛みしめる。
(……やるしかない!)
頭の中で、結論はとっくに出ていた。殺られる前に確実に殺る。コレが刀夜がこの学校で学んだ事だ。それ以外の選択肢は、最初から存在していなかった。
アニメオリジナルキャラで登場した三上ちゃんですが、作者の手違いでDクラスに所属してます。ごめんなさい!