バカと刀と召喚獣   作:レゾリューション

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今回は2本投稿します


戦いは、刀の投影という名の力技

刀夜が取る選択肢は、一つしかない。

 

(魔法使いを先に殺る!ていうかあれ生かしたら、俺の召喚獣が紙装甲すぎて蒸発する!)

 

「……行くぞ!」

 

短く、しかし覚悟の決まった指示が飛ぶ。その瞬間。刀夜の召喚獣は、塚本の召喚獣に向かって一直線に突っ込んだ。

 

「正面から来る気か!」

 

塚本の召喚獣が軍刀を振り上げる。

 

キィンッ!!

 

軍刀と日本刀が激突し、金属音が渡り廊下に響き渡る。だが、それはほんの一瞬の接触だった。次の瞬間。刀夜の召喚獣は、右手の刀で受け止めた“直後”その刀を、ポイッと捨てた。

 

「……は?」

 

塚本の口から、間の抜けた声が漏れる。

 

「なっ、そっちが狙いかよ!?ってか刀捨てるとかアホか!!」

 

あまりにも想定外すぎる行動に、ツッコミが追いつかない。だが刀夜は、即座に言い返した。

 

「はっ!言うだけ言ってろ!!こっちは使い捨て前提なんだよ!!」

 

捨てた勢いそのままに、刀夜の召喚獣は三上の召喚獣へ一直線。

 

「え、ちょ、こっち来るんの!?」

 

三上の召喚獣が慌てて魔法書を掲げるが間に合わない。次の瞬、。空中に光が走り、刀夜の召喚獣の左手に、新たな日本刀が投影される。

 

「二本目!?」

 

「何本持ってんだよコイツ!?」

 

観戦していた周囲から、悲鳴ともツッコミともつかない声が飛ぶ。

 

そして。

 

「ハァッ!!」

 

一閃

 

 

二閃

 

 

三閃

 

連続する斬撃が、三上の召喚獣を容赦なく切り裂く。

 

「ちょ、待っ――」

 

言い終える前に、

 

バシュンッ!

 

光が弾け、三上の魔法使い風召喚獣は戦闘不能。魔法書が虚しく宙を舞い、霧のように消えた。そして一拍遅れて、

 

「や、やられたぁぁ!?」

 

三上の悲鳴が響き刀夜は、深く息を吐いた。

 

(よし……最大の死亡フラグは折った)

 

その後も、塚本との戦いは、刀の投影という名の力技で、あっさりと決着がついた。数で殴る。刀で殴る、折れたら出す、以上。

  

『Dクラス塚本、討ち取ったり!』

 

刀夜が渡り廊下に響き渡る大声で叫ぶと、その瞬間

 

「うおおおおおっ!!」

 

「やったぞぉぉぉ!!」

 

「Fクラスでもやれるじゃねぇか!!」

 

Fクラス全体の士気が、三割増しで急上昇した。点数は低いがテンションは高い。それがFクラスである。だが、歓声に水を差す声が上から降ってくる。

 

「0点になった戦死者は補習ぅぅーーーー!!!!」

 

「いやだぁぁぁぁ!!」

 

鉄人が、戦死者扱いとなった塚本と三上を両脇に抱え、そのまま補習室へ強制連行していった。完全に誘拐現場だが、誰も止めない。むしろ皆、目を逸らした。戦場の別地点では、明久たちがDクラス代表・平賀を追い詰めていた。……のだが。

 

「くっ、近衛兵が多すぎる!」

 

「本体に届かねぇ!」

 

どうやら平賀は、近衛兵ガチガチ防衛型らしい。だが刀夜は、妙に落ち着いていた。

 

(……上手く行ったみたいだな)

 

その直後。

 

「え?あ、姫路さん。どうしたの?Aクラスはこの廊下、通らなかったと思うけど」

 

平賀の前に現れたのは、Fクラスの癒し枠――姫路瑞希だった。

 

「い、いえ……そうじゃなくて……」

 

もじもじと、言いづらそうに体を小さくする姫路。

 

「Fクラスの姫路瑞希です。えっと……よろしくお願いします」

 

「あ、うん。こちらこそ……」

 

その場の空気が一瞬、和んだ。だが次の言葉で、すべてがひっくり返る。

 

「その……Dクラスの平賀君に、現代国語勝負を申し込みます」

 

「……はぁ?」

 

平賀の素っ頓狂な声が響く。

 

「あの、えっと……さ、試獣召喚(サモン)です」

 

詠唱完了。表示された数値に、その場が凍りついた。

 

 

 

Fクラス 姫路瑞希 339点

 

現代国語 VS

 

Dクラス 平賀源二 129点

 

 

 

「……え?」

 

「……さ、さんびゃく?」

 

「Fクラス……だよな?」

 

誰もが現実を拒否していた、その瞬間。姫路の魔方陣から現れた召喚獣は、その背丈の倍はあろうかという大剣を軽々と担いでいた。

 

「え? あ、あれ?」

 

姫路本人が一番驚いている。

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

謝罪と同時。

 

ズバァァァンッ!!

 

 

それだけで、平賀の召喚獣は真っ二つになった。反撃?なにそれ?考える暇すら、与えられなかった。

 

「……」

 

「……」

 

「……勝った?」

 

沈黙の後。

 

『Dクラス代表・平賀、戦死!』

 

誰かの声が響いた瞬間、戦場は完全に静まり返った。そして、次の瞬間。

 

「うおおおおおおお!!」

 

「姫路さん強ぇぇぇ!!」

 

「Fクラス最終兵器きたぁぁぁ!!」

 

Fクラスの勝利は、姫路の一撃で確定した。刀夜はその光景を見ながら、静かに頷いた。

 

(うん……やっぱり切り札は、最後まで伏せとくもんだな)

 

Fクラスは点数では負けても、勢いと理不尽で勝利をもぎ取ったのだった。

 

Dクラス代表・平賀源二 討死

 

『うぉぉーーっ!!』

 

その報せは、爆発音よりも速く戦場を駆け巡った。Fクラスの勝鬨とDクラスの断末魔。誰もがDクラスの勝利を疑わなかった試召戦争。だが現実は――見事に、ひっくり返った。

 

「凄ぇよ!本当にDクラスに勝てるなんて!」

「これで畳とも卓袱台ともおさらばだな!」

「ああ、あれは全部Dクラスの物になるはずだったんだからな!」

「坂本雄二サマサマだな!」

 

歓声が飛び交う中

 

「僕も雄二と握手を――」

 

次の瞬間。

 

「――ぬぉぉっ!?雄二……!?どうして握手なのに手首を押さえるのかな……!?」

 

「押さえるに……決まってるだろうが……!」

 

グギッ。

 

「ぐあっ!!」

 

雄二が容赦なく明久の手首を捻り上げた瞬間、カラン、カランと床に落ちる金属音。包丁が一本らさらにもう一本。

 

(二本持ちかよ)

 

側で見ていた刀夜は、心の中で即座にツッコんだ。

 

「やっぱり殺しに来てたな、明久」

 

「お前の考えなんざ、お見通しなんだよ明久ぁ……!」

 

「雄二、刀夜……皆で何かをやり遂げるって、素晴らしいね」

 

「ああ、そう思うぞ」

 

刀夜は明久が罪の軽さを軽減する為にわざわざ自身に声をかけた事を看破した。

 

「僕、仲間との達成感がこんなにいいものだなんて、今まで知らな....間接が折れるように痛いぃぃっ!!」

 

ミシッ。

 

「今、何をしようとした」

 

「も、勿論!喜びを分かち合う為に....手首がもげるほどに痛いぃぃぃっ!!」

 

どうやら明久は、ここで今までの恨みを晴らすつもりだったらしい。結果はご覧の通りである。

 

「おーい、誰かペンチ持ってきてくれ、あと虫眼鏡も頼む」

 

「ス、ストップ!!僕が悪かった!!だから爪を剥いだ後に虫眼鏡で光を当てるのはやめて!!」

 

その横では、まったく別の空気が流れていた。

 

 

「まさか……姫路さんがFクラスだなんて……信じられん」

 

振り向くと、そこには完全に魂が抜けた顔の平賀源二。

 

「あ、その……さっきはすいません……」

 

姫路瑞希が、もじもじしながら駆け寄ってくる。どうやら不意打ちで一撃KOしたことに、罪悪感を覚えているらしい。

 

「いや、姫路さんが謝ることはない。全てはFクラスを甘く見ていた俺達の慢心だ」

 

代表同士の会話は、自然と“設備交換”の話題へと移った。負けたクラスは、クラス設備を総入れ替え。それが試召戦争のルール。平賀は当然、それを覚悟していたが

 

「必要ない」

 

雄二が、あっさりと言い切った。

 

「俺達が欲しいのは、Dクラスの設備じゃない。Fクラスが目指すのはAクラスだ」

 

「……それはありがたい話だが……条件があるんだろう?」

 

「察しがいいな」

 

雄二はニヤリと笑い、窓の外を指差した。

 

そこにあったのはらDクラスの窓の外に設置された、エアコンの室外機。

 

「……Bクラスの室外機か」

 

「学校の設備を壊すことになる。多少教師に睨まれるかもしれんが……悪い取引じゃないだろ?」

 

怪しく笑う雄二。

 

(ああ……次のBクラス戦の布石か)

 

刀夜は即座に理解した。

 

「分かった。それで設備交換が免除されるなら、こちらとしては願ったりだ」

 

「詳細なタイミングは後日だ。今日はもう帰っていい」

 

「ありがとう……お前達がAクラスに勝てるよう、祈っているよ」

 

「社交辞令ってやつか?」

 

刀夜が軽く皮肉を飛ばす。

 

「流石に露骨すぎたか?」

 

「いや、ありがたく受け取っとく」

 

雄二は踵を返し、Fクラスの面々に向かって声を張り上げた。

 

「さて、皆!今日はご苦労だった!明日は消費した点数の補給だ!今日は帰ってゆっくり休め!解散!!」

 

こうして、FクラスとDクラスの試召戦争は――混沌と笑いと犠牲(主に明久)を残して幕を閉じ刀夜もまた、その背中を追って校舎を後にした。

 

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