【南雲視点】
工房の扉を閉めた瞬間、僕は唯一の「安全圏」を失った。一歩踏み出し、最初に感じたのは、手記に書かれていた「獲物の気配」そのものだ。僕はここまで墜落してすぐ工房に逃げ込んだから、外にいる魔物の姿を見るのは、これが初めてだった。
「……ッ、来た!」
通路の先にいたのは、白くて速い、異様な姿の魔物――蹴り兎だ。
墜落直後の暗闇で、僕を殺そうと迫ってきた恐怖の正体。兎が跳ねた。視界から消えるほどの速度だ。
(速すぎる……! でも、ステータスにはもう『これ』があるんだ!)
僕はステータスプレートに刻まれた**【天歩】、そしてその派生と思われる【空力】と【縮地】**という文字を脳裏に浮かべた。使い方はわからない。でも、生きるために必死にイメージを叩きつける。
地面を蹴る瞬間、爆発的な推進力を生む『縮地』。空中を蹴った瞬間、反動を逃がさず捉える『空力』。
「うわっ……!?」
制御しきれない速度に体が振り回されるが、間一髪で兎の蹴りを回避した。空中で無理やり体勢を入れ替え、ドンナーの銃口を突きつける。
「――死ねッ!」
轟音。精密錬成で組み上げた弾丸が、自分を殺しかけた恐怖の対象を肉塊へと変えた。
歩を進めるほどに、魔物の質は上がっていく。
次に現れたのは、全身から放電する二尾狼。目にも止まらぬ速さで突進してくるが、今の僕の目にはその動きが追える。
(タウル鋼の銃身を、電磁加速のレールにするんだ!)
ステータスにある**【纏雷】**をドンナーへ流し込む。
火花が散り、強烈な磁界が発生。放たれたのは、弾丸というより光の柱――レールガンだった。一撃は二尾狼を胸から消失させ、背後の岩壁までをも消し飛ばした。
だが、次に接敵した一層の主とも呼べる爪熊は別格だった。
巨躯から放たれるのは、不可視の真空刃――【風爪】。
「なっ……見えない刃!?」
避けたはずの斬撃が頬を切り裂く。距離を詰めれば細切れにされる。
僕はあえて距離を取り、ドンナーとシュラークの二丁を交互に抜き放った。
最後は眉間への一撃。精密な弾丸が、その巨躯を永遠に眠らせた。
戦闘後、僕は爪熊の肉を食らい、魔力による激痛を耐え抜いた。ステータスに新たな文字が刻まれる。
「……【風爪】。これ、飛ばせるのか?」
指先を振ってみるが、薄い風の刃が発生するだけで、魔物のように飛ばすことはできなかった。魔力操作の習熟が足りないのか、それとも性質か。
(……飛ばせないなら、無理に飛ばす必要はない。こうすればいいんだ)
僕は左手の圧縮剣鉈を抜き、その刃に風爪の魔力を流し込んだ。
キィィィィィィィン、と高い音が響く。
刃先に不可視の鋭利な風が纏わりつき、刃渡りが数センチ伸びたように見える。
「これなら……鉄だって紙みたいに切れるはずだ」
ドンナーの雷光と、風を纏った剣鉈。
僕はウォーカーさんの遺した知識を「理想」としながら、今の自分の実力に見合った「現実」の戦い方を磨き上げていく。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:12
天職:錬成師
筋力:200
体力:300
耐性:200
敏捷:400
魔力:350
魔耐:350
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成] [+圧縮錬成][+鉱物系探査]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・言語理解
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