エゴイストの成長を見届けたかった   作:miyata

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汚い言葉ってソロでFPSやってると自然と浮かんでくるので書きやすいですね。
氷織はゲームで他責しないし着実に改善点見つけるタイプっぽさそうでFPS上手そう


【ネオエゴイスト編:第五試合】

 

【ネオエゴイスト編:第五試合】

 

 

 

 

 

ドイツVSイングランドの試合が終わって、各々の反省会も終わって、さあ次の試合に向けて頑張ろうと指導者から通達されたのであるが…。

体調を崩しました(笑)いやー、本当に今までが快調だったけど、ここに来て一気にガクッときたというか。寧ろ今までよく頑張ったと思う。それでも、体調管理できないのはプロとしていけないんだよね。失格・脱落ということにはならないが、3日間ベットに縛り付けられた。途中で帝襟さんが来て、どうやら雪宮が見舞いに来たいとお願いしに来たそうだった。とても嬉しかったが、当然こんな姿を見られたいわけもなく、断った。

で、次の日から練習に参加したけど、当然最下位スタートだった。

 

 

「お前がいない間に俺は最下位から脱出できたぜ!」

 

 

「…おう」

 

 

復帰早々にイガグリは満面の笑みでそう言ってきたが、イガグリも彼なりに頑張っているようなので、早くスタメンに選ばれるといいよね。何気にここまで生き残ってるんだし、応援してるけどさ…。

 

 

「江戸川!お前大丈夫か」

 

 

「おう、ありがとう潔君。ただの風邪だったから大丈夫。…てか、俺はお前の泥船発言に心配している。あれがお前の本性だったとはな…」

 

 

「あ、いやあれはなぁ…」

 

 

潔は困った顔をしながら目線を泳がせている。咄嗟に出た言葉だと言う潔だが、お前もやっぱりそっち側になっちゃったか。

その後始まったトレーニングではあるが、3日間全く動いてなかったからか、体の感覚がちょっと鈍ったような気もしたが、右耳の聞こえが更に悪くなっていて、得られる情報が少なくなった感じになってしまった。今まで、不足分が出ればそれを補うように他の感覚を補強する感じでやっていたが、正直もうどうしようもないのでは、と思ってしまった。

 

 

「こりゃもう駄目だな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。トレーニングを終え、風呂も入り、いつもより夕食も早く済ませたので、寝室でスマホを弄っていた。スマホを眺めていると、SNSはブルロのトレンド一色だった。

ただやっぱりミヒャと潔が話題に上がっていることが多かった。”互いに精神的な未熟さが残るが世界一のストライカーなり得る存在だ”なんて投稿が万バズしている。あと、潔がミヒャの胸倉を掴んでお互いが至近距離になっている写真もバズってる。今度は潔の方から近寄るパターンか。

 

 

「…あいつ大丈夫かな」

 

 

ミヒャは別に煽りなんて普段からやってるそうだけど。なんとなく、何時にもまして子供っぽいというか。自分の勝利を捨ててまで煽っている姿は正直見たことがなかった。自チームの面子を煽ることはあっても、最後は自分できっちり勝利していたと思ったが。

…ちょっと心配だから電話してみようかな。そんな軽い気持ちで連絡してみた。

部屋にはカメラは当然ないけど、医務室付近の電波の繋がり悪いんだよな。ということで部屋を出て、人が来なさそうな物置付近で電話をかける。もしかしたら寝てるかも、と思ったが、3コールしないうちに出た。良かった、ちゃんと日本でも携帯使えるようにしてもらっていたようだ。

 

 

『もしもし、俺だけど』

 

 

『ッああ…。何の用だ』

 

 

そういえば、最後に会った時、ミヒャが俺の事見て顔を顰めて驚いていたのを思い出した。俺、もしかしたら嫌われているかもしれない。なんというか、気まずくてちゃんと話せていなかったな。

 

 

『急にごめん。いやさ、最近どうかなって』

 

 

『お前は、今どこにいる』 

 

 

『秘密。てかそれよりも!BLTVみたよ』

 

 

『…そうかよ』

 

 

『潔と凄く仲良くやっているようで』

 

 

『世一はそんなんじゃねえ』

 

 

『俺からはそう見えたぞ。でさ…』

 

 

続きを話そうと思ったが、潔達の話声が聞こえてきた。珍しいな、このフロアに来るの。

一旦電話を切ってから移動しようかな。

 

 

『なんだ』

 

 

『えっと。ちょっとかけ直しても良い?』

 

 

『お前、俺からの電話には出ない癖に、随分勝手だな』

 

 

電話相手のミヒャは、イラつきながらそう話しているが本当にその通りなので申し訳ない。

 

 

『いや本当にごめん。それには深い事情が────』

 

 

[ピンポンパンポン~士道龍生君、至急管理室へお越しください]

 

 

館内放送で、近くのスピーカーから帝襟さんの声が聞こえる。あ、やっべ。割と大きい音なので音が入ってないと良いが…。

 

 

『お前、まさかブルーロック(ここ)にいるのか?』

 

 

『え、いやそれはない、ちょっと用事ができたから切るわ』

 

 

電話は切ったものの、本当に運が悪い。これかけ直したら追及されちゃうよな。色々とミヒャと話しをしておきたいと思ったが、断念した。

 

 

 

 

 

 

 

昨日はびっくりする出来事はあったものの、普段通り練習は行われるので、参加しなければならない。

潔はまた進化したよな。本当に見ていて飽きない。休憩時間にボーっと潔のことを見ていると、隣に雪宮がやってきた。

 

 

「アイツマジでバケモン染みてきたよな」

 

 

「ホントそれ」

 

 

そう言う雪宮も、この前の試合から着実に能力を伸ばしているようだった。

 

 

「そういえば体調はもう大丈夫なのか」

 

 

「大丈夫。あ、そういえば見舞い来ようとしてくれたの帝襟さんから聞いた。ありがとう」

 

 

雪宮にお礼を言っていなかったのを思い出したので、ちゃんと伝えた。確か、雪宮も試合に出て成果を示したことで入札があったよな。おめでとうと言ってやりたいところだが、俺に入札がないことを突っ込まれても困るので黙っている。

ていうか、雪宮と潔ってそれなりに仲良くなっててどうしたの?と聞いたら、互いに暴言については謝っていたらしい。なんだ、良かった。

 

 

「なぁ、そういえば聞いても良いか」

 

 

「ん?何が」

 

 

「…俺とお前、似てるって。つまり、そういうことなのか」

 

 

「あー…」

 

 

「時間がもうないのか?それなら、俺にも何か手伝わせてくれないか」

 

 

「…ありがとう。何か困ったことがあれば相談するよ」

 

 

雪宮の気遣いに感謝しつつ、俺も今後どう立ち回るか考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二戦目を終えた俺達ではあるが、訓練内容は変わらず、ハードなものを熟している。ここに来て20日以上は経ったわけだが、普通にクラブで練習しているよりも一層良い体験が出来ているのは確かだ。

 

 

「ッはぁ、はぁ…」

 

 

「お疲れ」

 

 

「…おう」

 

 

自主練時間。練習相手だった雷市に声をかける。雷市と出会った当初は、怒鳴ってばかりで怖くて関わりにくいなんて思っていたけど、それは今も変わらない。ただ、コイツめっちゃタフなんだよな。見ていた感じ、1on1デュエルも得意そうだったし見ていて面白い。そうだ。

 

 

「DMFの極意を教えてあげるよ」

 

 

「はァ?!俺はストライカーだし、そんなん必要ねえよ!!!」

 

 

「でも、現状、カイザーと潔中心にこのドイツはまわっているわけだけど。FWとして入り込める?」

 

 

「そのために今特訓してんだろうが!!」

 

 

「潔とカイザーからボール奪える?それとも相手からボールを取るチャンスは現状作れるかな…?」

 

 

「ぐぬぬぬ…」

 

 

「DMFでもゴール狙うチャンスは勿論あるし、1on1制すればそのまま、ね」

 

 

DMFというポジションに不満はあるようだが、雷市も理解はしているようで、不満を堪えているようだった。ここまで生き残って足掻いている雷市のためにDMFの極意を伝授しておこう。これで雷市がスタメンになったらごめん、アリ。

雷市は要領は良いのか、教えたことを次々と飲み込んでいく。コイツ、DMFとかDFあたり向いてるんじゃね、良い体格しているし、なんて思っていたら。

────背後から風切り音がした。

 

即座に振り返ると、ボールがこちらへ飛んできていた。万全だったらもう少し早く気が付けたのに、なんて思ってる場合ではなく、もうここまで近いならば適切に受け止められない。というわけで、しゃがんだ。

 

 

「ア”ッ!!いってぇなコラ!!!!誰だよ!!!」

 

 

俺が避けたことで雷市にボールがヒットしてしまった。ごめん。ていうか、誰が蹴った?と、相手を見ると…は???

 

 

「ノア?」

 

 

「何すんだよクソ指導者!!!」

 

 

『すまない、怪我はないか』

 

 

何故ノアが?いやいや、危なすぎる。ノアがこんなミスをするとも思えないし、わざとか?

 

 

「俺は大丈夫、雷市は…」

 

 

「これくらいどうってことネぇよ!!クソが!!!」

 

 

元気そうで良かった。けど、世界一のストライカーが撃った球なので、当たった場所は念のため医務室で診てもらった方が良いのでは、というのは後で話すとして。

 

 

『俺の予想では、お前ならあれを受け止められると思った』

 

 

「はい…?」

 

 

『体調不良なんてプロの世界じゃ通じない。早く元に戻せ』

 

 

雷市のこと言っているのかと思ったが、どうやら俺に向けて言っているようだった。俺、今日は元気いっぱいなんですけど…。あ、でも視野が欠けていなければ、きっとちゃんと受け止められていたのも確かだ。ノアが求めているレベルに存在した俺はもういない。

というか、何故ノアはあのボールを、俺なら取れると思ったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side:・・・・】

 

 

新英雄大戦に参戦することがチームのオーナーによって決定された後、参加する選手はU-20VSブルーロックの試合を観ることとなった。ノアも勿論観ていたが、そこに江戸川という青年はいなかった為、新英雄大戦にて初対面となった。

初めて見た印象は、そこら辺にいる選手とは変わらない。身長の割にちょっと痩せていることを除けば、特筆すべき事情はない。プレーに関しては、彼は有馬のファンなのかは知らないが、彼を模倣する動きが多いという印象であった。ノアは江戸川がただの有馬のファンにしては類稀なる才能持っていることには気が付いていた。しかしながら、時折見せる動作や仕草までもが有馬を彷彿とさせるものがあった。これまでの20日間と、2回の試合を通して、実は彼こそが有馬なのではないかと疑念を抱いていた。

 

 

『あのクソ野郎が、ここにいるようだ』

 

 

カイザーから、有馬がここにいるかもしれないと話があった時、ノアは絵心に聞いた。いないと突っぱねられたが、絵心は隠している可能性もあった。

江戸川は間違いなく有馬と何かしらの関わりがあるとノアは考えていた。まだ試合は残っているし、余計な要素はカイザーに伝える必要はないと判断し、誰にも話さなかった。

だからこそ、自身の目で確かめようと思った。彼ならば、背後に向かって飛んできたボールに対しても、問題なく対応していたのだ。その時と同じように、彼に向かってボールを蹴った。

────結果は外れだったわけだが。

それでも、あのボールに反応できただけ、将来に見どころがある。稀有な才能を持つ人間が日本で他にもいたのか、とノアは感心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side:・・・・】

 

 

ミヒャエル・カイザーにとって、江戸川という男は、精々端役という認識であった。ブルーロック側でありながらも、11人のスタメンに選ばれる能力を有しており、そこら辺の雑草よりかはマシであるという感じであった。

 

 

「いってぇ…」

 

 

『…何をしている』

 

 

恐らく、足が物に引っかかって転んでしまった江戸川を見下ろすカイザー。江戸川はサッカーはそれなりだが、試合以外はポンコツであるという印象だった。よく転ぶ、ぶつけている。

 

 

「またぶつけた…いてて」

 

 

『みっともないな。試合でコケて俺の舞台を汚すなんてことするなよ』

 

 

カイザーは辛辣なことを言いつつ、軽く相手が問題ないか確認した。どうやら本当にただぶつけただけだったらしい。

軽くのぞき込んで、そのまま立ち去ろうとした。

 

 

「カイザーが他人の怪我に興味持つとは思わなかった」

 

 

『…ハァ?お前の事なんざクソどうでもいい。さっきも言ったが今度の試合で問題を起こしたりして中断させるような真似はするなよ。…お前にはいい端役になってもらうからな。お前は世一にくっ付く金魚の糞というわけではないからな』

 

 

前回江戸川はドイツ組にもパスを出していたことから、中立的な立場であるとカイザーは想像していた。雪宮ほど見た目に花がないので、俺元に付けとは言わなかったが。それよりも、カイザーには潔を喰う、そしてもう一つやらなければならないことがあった。恐らくここにいるであろう有馬を見つけ出すことだ。

ノアや他のBMのメンバーに聞いたが、当然知らないし、帝襟とかいう管理スタッフに聞いてみたが、教えてもらえなかった。それでも。

 

 

(絶対見つけ出す…!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

【Side:有馬】

 

 

 

いつも通り練習を終え、食堂で潔たちと食事をしていたところ、背後からねっとりした視線が向けられているような気がして、振り返った。

 

 

「…?」

 

 

「どうした?」

 

 

「いや、なんでもない」

 

 

気のせいかな。ここじゃ憎み妬みの視線を向けられたりすることなんざよくあるし、きっとここにいないBMの誰かからだったんだろう。食事を続けつつ、潔たちと今後の事について話し合う。

 

 

「ミィツケタ♡」

 

 

「?!」

 

 

振り向く前に、後ろから腕が伸びて、抱きしめられている事に気が付く。耳元で囁かれる。

 

 

「俺、早くお前に会いたくて、ずっとゾクゾクしてて我慢できなくてさァ」

 

 

「士道?!」

 

 

「何でお前ここにいるんだよ!」

 

 

なんとフランス棟にいるはずの士道がいた。俺は別に男に抱きしめられる趣味はないので、咄嗟に振りほどいて立ち上がる。こいつはどう対処すればいいのかは知らない。逃げよう。

 

 

「待てよぉ、一緒にヤろうぜ」

 

 

食べ終わった食器を返却口へ置き走って逃げるが、後ろから士道が追いかけてくる。今朝からそんなに体調も良くなかったこともあり、体力的に走って逃げきる前にこのまま追い付かれるだろう。…追い付かれて襲われる前に、こちらから提案しよう。振り返って士道と向き合う。

 

 

「ちょっと待て、サッカーやりたいんだろ、いいよ、やろう」

 

 

「お、やろうぜやろうぜ…ハァ♡」

 

 

 

ヤバい顔をしている士道と一緒にそのままフィールドへ移動しつつ、1on1を始める。さて、相手をすることにはなったものの、どう逃げきればいいか考える…。体力お化けの士道を完全に満足させて振り切るようなことは俺にはできない。適当にやって途中でトイレと言って抜ければいいかと思って、途中でそう言ったら、士道はトイレにまで付いてきやがった。さり気なく今日はもう遅いから寝ようと言ったら、「俺と一緒に寝てくれる気になった?」だと。何でそうなる。

どうしようもないので、こうなったら疲れて寝たくなるまで付き合ってやるってことで、日付はとうに越して誰もいなくなったフィールドで一緒にずっとやっている。敢えて疲れさせるように立ち回って着実に士道の体力を削っているはずなのに、あの触角は俺の想像以上に粘り強かった。

このままだと明日に響いてしまうな、なんて思っていたら、急に士道がこちらに向かって手を伸ばして肩を掴んできた。

 

 

「俺は、お前の本当の爆発が見たい」

 

 

「…俺も割と本気でやっているんだけど」

 

 

「じゃあ…こうすれば見れるかな♡」

 

 

「ッは」

 

 

士道はそのまま俺に覆い被さり、両手で首を絞めてくる。何故…?。

ギチギチと締め上げられる。え、普通に死ぬ。俺も手で離そうと必死に抵抗するが、士道は力を強める。

どのくらいそうしていたか分からないが、頭がチカチカしてきた。と思ったら、士道はあっさりと手を離した。

 

 

「さァ!!見せてくれ!!生命の爆発を!!お前の真のエゴを!!!」

 

 

「…」

 

 

「俺にはわかるぜ、お前は内に獰猛な獣がいるんだろ!!!」

 

 

「────るせぇな!!」

 

 

士道を思いっきり蹴飛ばした。が、士道はそうなることが分かっていたのか、避けて俺から手を放して退いた。いや、マジで今死にかけていた気がする。士道は俺に向かってボールを蹴ってくる。

頭、いや全身が凄いドクドクする。朦朧とする意識の中ではあるが、でも、この感覚、久しいな。

全能感というか、今なら、更に進化した俺になれるような気がした。

そのまま士道と1on1をし、かつてない爽快感を感じつつ、ゴールを決める。

 

 

「あァ!!!いいねえ!!!最高だ、俺が見たかった素晴らしい生命活動!!!」

 

 

「…ッはぁ、ヤバいなこれ」

 

 

何か要らないスイッチが入った気がする。シュートを決めた爽快感はあるが、今になって体の底から途轍もない不快感が押し上げてきた。いや、駄目だなこれ。

まさしく命を懸けたサッカーというやつだ。

 

 

「お前が何でサッカーのこと生命活動っていうかちょっと理解できたかも」

 

 

「だろぉ!!!さぁもっとやろうぜ!!!俺とヤロうぜ!!!」

 

 

「…ごめん無理かも」

 

 

頭がぐちゃぐちゃしてきた、と思ったらもう立てなくなって、そのままフィールドの上にぶっ倒れた。

俺、士道に変なことされないよな、と不安に思いつつ意識がブラックアウトした。

 

 

 

翌日、俺は医務室のベットで目を覚ましたが、後程帝襟さんから聞いた話だと、

士道が俺の首を絞めだした際は、ちょうど絵心さんと帝襟さんは席を外していたので気が付かず、時間が経ってから監視カメラを観て発覚したらしい。暴力行為については勿論士道に厳重に注意が入ったらしいが、俺も俺が知らない自分が知れたので、士道をそこまで責めないでやってとは言った。正直、士道は怖いが、唯一無二のエゴイストでもあり、今後どうなるかも気になるところではあったからだ。妥協した。ちなみに棟の移動は事前に申請が必要とのことだが、今後士道の申請が承認されることはないそう。

首にくっきりと跡が残ったが、普段全身青タイツ(ボディスーツ)を身に着けているわけなので、それほど目立たなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10日間もあれば、それは色々な出来事も起こるわけで、BLTVで他の棟の切り抜きを見て笑ったり、冴や凛と電話したり色々あった。

潔や雪宮、雷市等のブルーロックメンバーと練習に取り組むだけではなく色々な話をした。氷織とは、ゲームの話で盛り上がった。俺もやってるゲームを氷織もやっていて驚いた。

 

メンバー発表では、俺は案の定選ばれなかった。単純に上位11位に残れなかった。この前から体力がガグッと落ちてしまい、動きも前ほどキレがなくなり、成績も振るわなかった為、スタメンの座から落ちてしまった。代わりに一緒に練習した雷市とかが選ばれて、良かった。スタメンにブルーロックのメンバーが増えたな。

対戦相手はイタリアのユーヴァース。こちらの二つの軸である潔とミヒャを潰してくるが、それが乗り越えられた奴が勝つ、とノアは言っている。

 

 

『この試合の鍵はそれぞれに試される”個人決闘”。潔に執着しすぎるなよカイザー、これ以上非合理的なプレーは許さんぞ』

 

 

『あいあい』

 

 

ストライカーなら、ゴールで示せと締めくくるノア。

 

フィールドに向かう。今回は俺はベンチだ。隣に氷織が座っている。

相手のスタメンは…馬狼、蟻生、二子、愛空がいる。あと、閃堂。

ロレンツォもいる。最後に会った時よりも、背伸びたな。チラッとこっちを見てきたが、もう試合も始まるので、視線は直ぐ外れた。

馬狼と潔は相変わらず仲良くやってんな。おめかし馬狼。プリンセスバロウ。

 

 

────試合開始。

 

 

いきなり、ミヒャ×ネス×グリムで最速で敵陣を突破していく動きを見せる。これは初めて見る。でも、相手には11傑にも選ばれている最強CBのロレンツォが立ちはだかる。ボールを奪い、くねくねした動きでBMのDF陣を突破していく。フィールド上の視線がロレンツォに集中している最中────飢えた狼、馬狼が攻め込む。が、潔にはそれも読めていたらしい。ちゃんとボールを奪えている。

でも、ロレンツォ×馬狼の組み合わせ、なかなか良いね。

 

潔×黒名で攻め込むが、前の試合よりも格段に向上したパフォーマンスをみせる。

ロレンツォはずっとミヒャについているし、ミヒャは薙いだ表情をしているが、少しだけ苛ついていていそうな様子だった。ネスはどうしているのかと見ていたら潔の邪魔してる…。潔はそんなことお構いなしに左脚でそのままゴールを決めた。また新しい武器を身に着けてきたのか。両利きではないのに、よくその武器を使えるまで持ってこれたなと思った。

 

ユーヴァースは組織的連帯が素晴らしいチームだ。細やかなパス回し相手チームを翻弄し、相手が作る隙を、馬狼は的確に突いてゴールを決める。これで1-1。

ミヒャは相変わらずロレンツォに執着されている。普段の余裕の笑みこそないが、同点に追いつかれても感情に流されないプレーをしているようだ。対してネスは思いっきり焦っている。

 

 

「出せオラ!この泥船に!!」

 

 

雪宮が自分で泥船と言っている。

 

 

「自分で泥船って言っちゃうんやね」

 

 

「泥船にパスせざるを得ない状況を作ったのは潔だからね」

 

 

氷織とそんな会話しつつ見ていると、ロレンツォが離れたミヒャがオーバーヘッドでゴールを決める。凄いな。でも、このドイツが有利になる流れは潔が作ったものだ。それもミヒャは判っているようで、明らかにイラついていた。

ここで閃堂、黒名に代わって指導者のスナッフィーとノアが投入された。

 

 

「僕も連れてってくれ…」

 

 

「…氷織?」

 

 

氷織が目をキラキラさせながら試合を観ている。ユーヴァースはこれまでとは違い、攻撃に人数をかける布陣に変化させた。バスタードミュンヘンはそれをギリギリ防いでいく。スナッフィーには雷市がマークするようにしたようだ。いいぞ、練習の成果を発揮してくれ。

 

 

「スナッフィーも脅威だけど、馬狼も放っておけないからなぁ」

 

 

「…うん」

 

 

「…どうした氷織?いつにもなくしおらしいというか。ごめん話しかけすぎたか。集中して見ていたかったよね」

 

 

「あ、ううん。そういうわけじゃなくて、ちょっともどかしいというか。その、潔君のイメージしたプレーを体現したいのに、そのイメージを共有できる人が、足りてないなって思ってた」

 

 

「確かに」

 

 

潔のイメージに連動して動ける選手は、現状ノアくらいだけだ。ミヒャもイメージには共通する部分も多く付いているだろうが、ロレンツォによって自由が効かないからな。実際に協力するかは置いておいて。

 

 

「潔君を見ていると、俺もそこへ行きたいなと思った」

 

 

「ここに来て、初めて氷織が自分でしたいこと言った気がする」

 

 

「…そうかなぁ」

 

 

氷織は練習にきちんと参加しているわけだが、なんというか、サッカーに対して熱を持っていないような感じがしていた。それが、ここに来て目をキラキラさせていた。

 

 

「氷織はなんでサッカー始めたの?」

 

 

「…教えても良いけど、試合終わったあとでええかな」

 

 

「うん」

 

 

純粋に気になったので聞いてみたが、そもそも今試合中だった。後で教えてくれるので聞いてみよう。

 

そういえば。

俺がサッカーする理由。…最近記憶力が格段に落ちているから、もう思い出せないけど。

なんでこんなにサッカーに執着していたんだっけ、と思ったが、かつてスナッフィーと話したことを思い出した。確か、あれはCL期間中に偶然立ち寄った飲食店で会ったときのことだ。

 

 

『サッカーは仕事。戦術家の言う通りに戦場を動かすのさ』

 

 

俺はそれまで個人技でどうこうしていたわけっだが、試合の中で仲間を操作する、ということにも意識を向け始めたきっかけだった。仕事を忠実に熟すことは大事だと思う。そうしなきゃ、この戦場で生きてこれなかったわけだし。

 

 

『君は、自分からサッカーがなくなったら、どうするつもりだい?』

 

 

『…何もしませんよ。俺からサッカーを取り上げたら何も残らない』

 

 

『もし、自分が天才じゃなくなったら、自分を好きでいられるか?』

 

 

『俺は────』

 

 

かつての記憶が蘇る。

そういえば、スナッフィーは死んだ親友との夢を果たすために、欧州五大リーグ優勝を目標としているんだっけ。

 

 

「サッカーがなくなったら、かぁ」

 

 

あまり想像したくないことだ。今の俺にはサッカー以外何も残っていない。失った先が怖いからサッカーを続けてきたのもある。この先、彼らの成長を見届ける為に肩を並べたり傍らに立ち続けることもできないんだ。

 

 

ここにきて馬狼主体のチームに変化したユーヴァースだが、スナッフィーが楽しそうに馬狼に向かって叫んでいる。何か、馬狼のエゴに突き動かされるようなことがあったのだろうか。馬狼がゴールを決めて2-2となり、互いにマッチポイントだ。

 

 

「引退撤回しろスナッフィー!!俺との決着がまだついてねえだろ!!」

 

 

『わーったよ、現役続行だ』

 

 

[なんとスナッフィーが引退撤回宣言…!]

 

 

確か37歳だっけ。まだまだ見れるんだ…凄いな。ロレンツォも、サッカー以外のことで珍しく笑顔だった。

スナッフィーは戦友のことを、死んでも尚覚え続け、約束を果たそうとしている。こんな事言うの不謹慎かもしれないけど、羨ましいと思った。俺が死んだら、誰か俺の事覚えていてくれるのかな…。

 

ここで指導者は3分間が経過したため、入れ替わりとなる。黒名は足を痛めているようで難しそうなので成績順だと、清羅が出ることになるが…。 

 

 

「待ってくださいノア…それじゃ勝てない」

 

 

潔の衝撃的な言葉…には驚いたが、自分のゴールのためには清羅ではなく氷織が必要らしい。清羅は割と大人しそうだと思ったけど、こんなこと言われたら流石にブチギレるのでは。

 

 

「相手からすれば潔君が2体になるみないなモンです」

 

 

氷織からもノアにお願いをし、条件付きで氷織が出ることになった。個人的には練習も一緒にやってきたこともあって、氷織が出ること自体は嬉しい。

 

 

「氷織、目キラキラしているね。頑張って~」

 

 

潔には本当に人を惹きつける才能があるというか。氷織もやる気になって良かった。

 

 

『清羅刃。お前の出番は次の試合で用意する。その瞬間までその刃は腐らすな』

 

 

「…あい」

 

 

清羅は怒らなかった。は?しかもそのまま大人しくベンチに座っていた。…普通の高校生ならば、感情の赴くままに怒りだすだろうに。

 

氷織は今までに見たことないくらい生き生きとしたプレーを体現していた。あんなに楽しそうにサッカーすることができたんだ。潔×氷織のコンビネーションで、このまま潔がゴールするかと思ったら、ミヒャがボールを掻っ攫ってシュートして外した。何やってんねん。

潔と氷織は、失敗しても、次はそれを上回る方法でまた相手を突破していく。最終的に潔がゴールし、ドイツの勝利となった。いやー、凄いコンビネーションだったなぁ。

 

ミヒャめっちゃ怒ってる。試合終盤はずっと不機嫌っぽさそうだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[これより全会場同時中継で年棒市場のランキング発表に移ります]

 

 

同時に行われたフランスVSイングランドの試合も終わり、ランキングが発表された。

今回バスタードミュンヘンのブルーロック側で出場したメンバーには全員入札が入っており、23位以内に位置していた。白熱した試合だったからこそ、相応の結果だろう。潔には1億5000万か。

凛が1億8000万円で1位か。雷市・氷織も値段が付いて良かった。

で、ミヒャにレ・アールからのオファー?!これまでより2000万高い額での入札だ。凄いじゃん!!自分をより一層高い価値で評価してくれるチームが出てくるなんて、良かったじゃん。そう思いながら、彼がいる方向へ視線を向けたら、想定していなかった光景に言葉を失った。

 

 

『なにが3億2000万だ…なにがレ・アールだ…

今の俺は 世一以下のクソゲロゴミ人間だろ?』

 

 

出会って間もない頃。ミヒャは理不尽なことや、過度にストレスが溜まるようなことをすると、自身の首を絞める癖があった。でもそれは良くないし、意味のないことだからやめるように言って、やらなくなったはずだった。

またやっているので止めないと────…あ、でも今の俺は有馬じゃない。彼の隣に立つ俺はもういない。

 

 

「あ…」

 

 

伸ばした手が届くことはなかった。

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