ユースチームにデビューしてからはそりゃもう活躍しまくった。
転生特典というか、ゲームのプレイヤーを操作してる感じというか。
視覚、聴覚、空間認識能力もこの体段違いに良さ過ぎて、
三人称視点でサッカーしている感じ。チートだろこれ!
メタ・ビジョンは使い勝手が良いけど、普通の人間じゃここまで俺みたいに情報収集できないと思う。
いや、凄い転生特典だこれ。
その後も頑張って練習していたら、
頑張ってトップチームと帯同して練習ができることになったぜ!
偶然空いた席に入れたという感じだけど…。
ノアも凄いけど、全員が俺より年上だし体格じゃまず負けるし、そりゃ大変だった。
お金も少しではあるが余裕ができたので、休みの日は、今は国外行って才能の原石(?)探しに行ってる。
この前イタリアに行ったら、ロレンツォと会えた!
今度のオフシーズンは、何処に行こう。世界って本当に広いんですね(無知の極み)。
17歳の時U-20W杯のために出場してくれないか?とJFUから依頼があったが、
断った。勿論だれか知っている人に会えるかなと思ったけど。
転生特典でそれなりに活躍できるとこれまでの経験から判っていたけど、
冴は確か「(日本でサッカーなんて)死んでも 嫌っすね」なんて言ってたような…。今世でまだそう言ってるところみたことないけど。だから俺も断ったんだ。
…U-17も断ってたから、正直、JFUとの仲はあまり良くはなかった。
お前(有馬)が出場を断ったから糸師冴も断ったんだろう!と難癖付けられた。
次のU-20には参加します!!!絶対!!!とは言ったが…。
海外での活躍の割には日本では俺の事は殆ど報道されていないらしい。日本語話者向けの雑誌のインタビューとかしばらくやってないし(依頼が来てない)。
あと、何故かファンに刺された。
痛すぎ!見たことのある顔だったような?気のせいか。
俺何かした??
☆
【Side:ミヒャエル・カイザー】
ケイは16歳になって即仮契約に移行からは、生活はガラリと変わり、
寮以外では会う機会が減ってしまった。
…なんというか、不思議な気持ちだ。
ここに来た当初は、俺からは殆どあいつに話しかけることはほぼなかった。必要があればその時話すくらいだった。
ケイはサッカーに関係のないなんてことない事を話に来たりする。
それが楽しいという事に気が付いて、俺からも色々と話してみたいと思ったが、何を話せば良いかわからない。
楽しいという感情に気づいたのもその時だ。
俺は生きるため、自身の存在証明のためにやれるだけのことはしていた。
これに加えて、ケイに追い付きたいという理由が、俺の行動力にもなった。
そんな事から半年後のバスタードミュンヘンの公式戦。
俺はノアから今日の試合を見学するように言われ、コートへ来ていた。
…俺は正直言ってノアのことをそこまで良くは思っていない。
クソ指導者面しやがるのと、こいつがいることで俺はトップチームでの活躍の場がないということだ。
そういえばケイとこんな話をしたんだっけ。
『俺もノアを正面から叩き潰すのは難しいしほぼ不可能だと思うんだけどな』
『…ムカつく』
『多分この世界中の人間で誰一人とチームの内側からノアの居場所を奪うのは無理だよ。あーでも世一くらいか』
『?(何言ってんだこいつ)お前は違うじゃねーか』
『いや。俺はノアのシステム壊したんじゃなくて適応しただけ』
まぁ、確かにこいつがいることでノアのプケイの幅が広がったのは確か。
『壊すのはチームの外から。現状、これしかないと思うよ』
『…』
『不満そうな顔も本当に美人過ぎる…』
『おい』
『俺もずっとこのチームいるわけじゃない…というかサッカー選手のキャリア的に移籍なんてよくある事だし…いつかノアのこと倒せるかなー』
これまでは生きるためのサッカーが、俺の存在を相手に刻み証明するサッカーになりつつあるので、同意はできる。
ノアに俺という不可能という存在であることを突きつけたい。
『お前は、そういうオファーないのか』
『魅力的なのはあったけど、まだここで学べることも多くあるからね』
『そうだな』
クソムカつくことだが、俺もまだまだ改善の余地がある。
…もし仮に、ケイが移籍したら、俺は────。
『ミヒャがそういう選択取っても、俺はいつまでも応援してるぜ』
☆
試合はバスタードミュンヘンの圧勝だった。
相手は別に弱くはない。CLでもベスト16に入るチームだから。
それでも、圧倒的なストライカーの前には成す術はない。
ノアが4ゴールを決めて勝利した。
ノアが最強なのはそうだが、今回はMFが優秀だからなのもある。
可憐なテクニック、ポジショニング、高サッカーIQが無いと成せない技。
ケイは本当に凄かった。
まだトップチームに合流してからそんなに経っていないのに、観客席には彼の名前入りのグッズを掲げている人間がちらほらいる。
あの笑顔、本当に人を惹きつけやすいんだろうな。
『この顔、今のデフォルト設定』
そういえば設定って言ってたけど。
作り笑顔なのか?
~~~~~
試合も終わり、選手はインタビューが行われていた。
ケイは一足先にベンチ奥バックヤードへ向かおうとしているところは見えた。
俺も、今日はもう帰ろう。
…そうだ。この後ノアに呼び出されていたんだった。
立ち上がって、もう一度コートを見下ろした時。
そこで俺は群衆の隙間から見えてしまった。
通路脇に立つ女が、あいつに近づいて。
あいつはよろけて。
女が手に持つ銀色のそれを、再度あいつに突き刺したところを。
あいつがいつも身に着けていたリストバンドは赤に染まり、横たわる体。
『ケイ…?』
駆け出して群衆の間を突き抜けてあいつの元へ行く。
沢山の人が騒いで喚いている。
血だまりに横たわる何か。
顔がこっちを向く。
『ミヒャ…?』
『ケイ!!!ッ何があった』
『…うーん、ちょっとヘマしただけ』
丁度その時救急隊が到着し、あいつは応急手当を受けて運ばれて行った。
『一時は危険な状態でしたが、現在は峠を越したので安定しています』
向かった病院で告げられた言葉。
数日経ってケイは目を覚ました。
『よ、ミヒャ。来てくれてありがとうな』
『ケイ…!』
どうやら、あの時会っていたアジア系の女性に刺されたらしい。
誰か分からなかったということだ。
しかもまだ逃亡中だといった。
『…お前って、そんな風に泣けるんだな』
『んだよ…ッ!俺、凄く怖かった。お前が、傷ついて』
『やっと人間らしいところ見れた気がする』
物理的な痛み以外で泣くのは、クソ親父が警察に連れてかれていった時以来の、2回目だ。
ケイ、俺にとってお前は────。
笑うな世一、、、