ガンダムブレイカー3外伝 バトローグ   作:ナタタク

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第1話 嵐の前触れ

廃墟の街の中で、いくつもの爆発が起こり、モビルスーツの駆動音が響き渡る。

黒を配置した白と赤のバルバトスが次々と飛んでくる実弾にひるむことなく突っ込んでいく。

時折機体を左右に傾かせて弾幕を潜り抜け、その先にあるガンダムを見てニヤリと笑う。

「来た…」

迎え撃つガンダムの名はゲーティア、パイロットは沢村勇太。

グリモワールウイングを装備したゲーティアがテイルブレードを起動させるが、やはり相手もバルバトスを操縦しているだけあり、反応速度はほぼ互角。

テイルブレードを回避していき、持っているメイスでゲーティアを叩き潰そうとし、ゲーティアは後ろに飛んでよける。

「真原健太郎選手のガンダムバルバリック、そして沢村勇太選手のゲーティア。第13回ガンプラバトル全米選手権もいよいよクライマックスです!!」

女性MCハルの声に観客席から2人の選手への声援が響き渡る。

まさかの日本人同士の対決となったが、それでも彼らにとってこれが最高のバトルであることには変わりない。

左文字と麒麟を合体させたゲーティアだが、メイスによる相手の攻撃に対しては回避に徹し続けていた。

「初出場にして全米優勝!伝説の初手、その踏み台となれ!!沢村勇太!!」

黒のロングヘアーで赤い瞳をした、モスグリーンのパーカー姿の少年であるケンタロウは守りに徹する相手を見て勝利が近づくのを感じていた。

この大会に初出場である彼だが、アメリカ各地での大会に優勝し続けており、その功績から今回の大会の推薦状が来た。

敗北はわずかで、今のガンプラを作り上げてからは連戦連勝を続けている。

あとはこの男を倒せば、伝説が生まれる。

その伝説の主人公となるため、この男を倒す。

「すごい自信だね…君のバルバトスはすごいよ」

「何?相手を褒める余裕があるというのか?」

「でも、勝つのは僕だ!!」

ゲーティアの阿頼耶識のリミッターを解除し、ツインアイが赤く光る。

一気に加速するゲーティアに対してメイスでの攻撃はまずいと考えたケンタロウは左腕の内蔵ガトリングで攻撃を仕掛ける。

これほどのスピードで接近するなら、一発でも当たれば大きく体勢を崩す。

だが、ゲーティアはガトリングに一発も当たる様子はなく、テイルブレードで攻撃する余裕まで見せていた。

「くそっ!!」

テイルブレードが左腕のガトリング砲を切りつけ、破壊されたケンタロウはメイスで正面に来たゲーティアを突く。

だが、その動きを呼んでいたゲーティアは跳躍するとバルバリックの背中を踏み台にして跳躍する。

「踏み台が…俺を踏み台にした!?」

「僕は踏み台じゃないよ!!」

振り返るバルバリックに再び襲い掛かるテイルブレードをメイスでさばくが、その瞬間接近を許したゲーティアが両脚をバルバリックの肩に置く。

麒麟から引き抜いていた左文字を両手で握り、コックピットを狙う構えができていた。

「な、あ…」

「次は、ちゃんと目の前の相手と戦って」

左文字がコックピットに上から突き刺さり、この一撃によってバルバリックが撃墜判定となる。

ゲーティアが離れ、その場に倒れたバルバリックの左アンテナは折れていた。

「勝負あり!第13回ガンプラバトル全米大会、優勝は沢村勇太選手!!」

「ふうう…」

シミュレーターから出た勇太に観客から祝福の声が送られる。

恥ずかしさを感じつつ、手を振って感謝する勇太の元にハルがやってくる。

「沢村選手、優勝おめでとうございます!」

「あ、ありがとうございます…」

「新チャンピオンにお伺いします。今回の勝因は?」

「勝因、ですか…ええっと…」

回答に悩む勇太と笑顔で待つハル。

それをにらむのは同じくシミュレーターから出たケンタロウで、手にはバトルによって傷ついたバルバリックが握られている。

あまりのくやしさと屈辱で彼の顔はゆがみ、ガンプラを握る手に力が入る。

勇太の答えも、ハルの質問も歓声も、今のケンタロウの耳には何一つ届かない。

 

(そうですね…今回の勝利は、その…僕の、チームメイトに、届けたいです。それから…)

「なーにが、僕のチームメイト、よ。白々しい!!」

綾渡商店街のゲームセンターで、ガンプラを作るミサは頬を膨らませる。

ライジングガンダムをベースにした新しいガンプラを机に置き、これ以上は聞きたくないと全米選手権の放送を続けているスマホの動画アプリを止める。

「私のこと、置いていったくせに。それに…今日は…」

「なーに彼氏のことをグジグジ言ってんだい!場所を使わせてやってんだ!さっさと金を落としていきな!」

「分かってるよ!もー…」

カウンターからのイラトの声に生返事をしたミサは体を丸める。

スマホに表示されているこの日はすごく大切な日。

「イラト婆ちゃんには分らないんだよ…私の胸の痛みが…」

「マスター…これが恋煩いというものなのですね…」

「そんなんじゃない!!もー…みんな、私にやさしくない」

できたばかりのガンプラを手に、さっそくシミュレーターに入る。

「このやり場のない怒り…全部、バトルにぶつけてやる!!」

そして、このガンプラはその怒りをエネルギーにして作り上げたものだ。

ゴッドガンダムの兄弟機というコンセプトで作り上げたこのブレイジングガンダムですべてを発散する。

「いくよ、ブレイジングガンダム!!」

 

 

「誰も優しくない…本当にそうかねえ」

シミュレーターの中にいるミサの様子を見つつ、イラトはため息をつく。

「ありがとうございます、沢村選手。ちゃんと、伝わっていますよ。勝利も、あなたの言葉も」

「え、ええ…あとは、これをちゃんと持ち帰ります」

イラトのテレビはまだ全米選手権の放送が続いており、ようやく勇太のインタビューが終わったところだ。

かなり恥ずかしそうにしつつ、トロフィーを手にして笑う勇太が印象的だ。

「ま、あいつもあいつだよ。こんなことしなくても、あの子は十分喜ぶってのに。お熱いもんだよ」

 

「うわあああ!!プロファイターが相手って嘘!?キャッ!」

「フフフ、愚直な前進では届かないわよ」

タクラマカン砂漠でブレイジングガンダムは上空からバックパックがウイングガンダムとなっている紫のインパルスによって蹴りを入れられて地上に転落する。

インパルスベースのガンプラ、エンツィアンのコックピットには紫のノーマルスーツ姿で黒のロングヘアーをした女性、葛葉竜胆が立ち上がるブレイジングガンダムの様子を見つめていた。

父親がプロのビルダーで、母親がプロのファイターというまさにガンプラバトルのサラブレットであり、高校1年生にしてプロファイターの少女。

「ステージも機体の相性も最悪。最近こんなのばっかり!!」

「相性を負けの言い訳にはさせないわ!それに…こんなのばっかりってどの口が言ってるのよ!!」

やけくそで投げつけられたビームトンファーを盾でさばき、ビームサーベルを手に上空から落下してくるエンツィアン。

あえて低空飛行をするエンツィアンのサーベルとキックの応酬に対して、ミサは防戦一方となる。

「これが、プロの実力…。でも、ブレイジングガンダムのデビュー戦、意地でも負けられない!!」

「ブレイジングの意地…プッ」

何かがツボにはまったのか、うっかりリンドウの集中力が切れてしまう。

それが世界と戦いファイターになったミサに対して何を与えるかは言うまでもない。

「そこだぁ!!」

ここで決めると、ミサはブレイジングガンダムの両腕パーツを展開する。

スラスターユニットがそこには内蔵されており、それが追加の推進力となって爆発的な加速をこめたキックがエンツィアンの腹部に直撃する。

ヴァリアブルフェイズシフト装甲でも抑えきれず、腹部に大きなヒビが入ったエンツィアンが吹き飛んで背後の岩石に激突する。

「くう…見事ね。爆発的な加速に、最後の蹴り技…。さすがは、世界選手権に出場したファイターね…」

大きなダメージを負ったエンツィアンのダメージを考えると、これ以上は戦えない。

観念したリンドウのモニターにミサの顔が映る。

「ううん、クズノハプロが地上戦に応じてくれなかったら、私が負けてたよ」

やろうと思えば、上空からバスターライフルやマシンキャノンを使って一方的な攻撃を仕掛けることで完勝できたはず。

にもかかわらず、あえて相手の土俵に立って戦った彼女にミサは彼女がプロである理由を感じずにはいられなかった。

「フフ…うらやましいわ。あなたが」

「え…?」

エンツィアンが爆散し、リンドウとの通信が切れる。

「うらやましいって…どういう…?」

リンドウの言葉の意味がミサには分らなかった。

どうにか考えるが、うらやましく思われるような要素があるとは思えない。

だが、その疑問が警報音でかき消される。

「次の敵!?」

1試合だけのランダムセッティングのはずなのに。

考える間もなく、上空に紫の裂け目が出現し、そこから赤黒い何かが飛んでくる。

「そんな攻撃!!」

単調なそれなら、簡単に破壊できる。

そう思ったミサだが、ブレイジングガンダムの拳が何かに届く前にそれが展開し、右腕を拘束する。

更に他の物体が四肢を一つずつ縛っていき、ミサの操縦を受け付けなくする。

「何!?動かない!!」

モニターがブラックアウトしていき、シミュレーターも停止してしまう。

何が起こったのかわからないミサのスマホにメールが1通非通知で届く。

「何、これ…」

今の異変と関係があるのかと思い、危険を承知でメールを開く。

『お前のガンプラはいただいた。返してほしければ、沢村勇太を連れてGBフェスタへ来い』

 

全米大会会場の外で、勇太はスマホを見つめる。

つい先ほど届いた非通知のメールだ。

『お前のチームメイトのガンプラはいただいた。返してほしければ、GBフェスタへ来い。貴様には裁きを受けてもらう。伝説を、あのような言葉で汚した罪への裁きを』

「ミサ…」

 




機体名:エンツィアン
使用プレイヤー:葛葉竜胆
使用パーツ
射撃武器:バスターライフル
格闘武器:ビームサーベル
シールド:シールド(インパルス)
頭部:インパルス
胴体:ウイングガンダム
バックパック:ウイングガンダム
腕:インパルス
足:インパルス

プロファイターである葛葉竜胆のガンプラ。
設計はインパルスとウイングガンダムをミキシングしたシンプルなものとなっており、ヴァリアブルフェイズシフト装甲とガンダニュウム合金の相乗効果によって圧倒的な防御力を獲得している。
ウイングガンダムのシールドを装備していないことから変形機構を持たないものの、機動力は圧倒的で地上戦に特化した機体ではまず太刀打ちはできない。
シンプルなものほど強いというのがガンプラでも確かであり、彼女はまさにそれを体現しているといえるだろう。
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