ガンダムブレイカー3外伝 バトローグ   作:ナタタク

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第5話 バルドル

「ふうう…」

コックピットの中で、勇太は呼吸を整えると次弾の発射準備が終わった大型ライフルを今度はサンドロックに向けて発射する。

ビームに匹敵するスピードで飛んでくるその弾丸だが、わずかに上にそれてしまう。

「やっぱり、ぶっつけ本番は厳しいか…」

かつてのバルバトスが装備した破砕砲をダウンサイジングした新型破砕銃ヘズはまだ試運転すらしていないもので、出来栄えについては自信があるものの、それでも最終調整をしているか否かがこの結果で出てくる。

「奴の調整はまだ完ぺきではない!ザンネックは狙撃を開始しろ!グフは私と来い!我々はであのガンダムを倒す」

「了解した!」

早急にイレギュラーを倒すため、最低限の戦力が勇太に向けられる。

後ろ腰にヘズをマウントし、バックパックから取り外された大型メイスを手に取った勇太は上空から降ってくるビームを後方へ飛んで回避し、突っ込んでくるグフのヒートサーベルをそれで受け止める。

「やっぱり、ナノラミネートアーマーに対抗できる機体を動かした…!」

牽制としてザンネックが狙撃を行い、ナノラミネートアーマーに対して効果のある武器を持つグフとサンドロックで仕留める。

AIとはいえ、ガンダム6号機をチームで撃破することに成功したゲラートであれば、有効打を与えられる機体を中心に動かす。

これでひとまずは8機のうちの3機を引き離した。

「パワーは互角…だが!!」

「こちらは2機だ、まずは背中をもらうぞ!」

ヒートショーテルを抜いたサンドロックに刃がバルバトスに迫る。

だが、ゼハートの耳に何かのロックが外れたような音が聞こえ、メイスの柄が本体から離れる。

摩擦音とともに大型メイスから引き抜かれるソードメイスが後ろを取っていたサンドロックの横っ腹に一撃を叩きこみ、機体が側面へと吹き飛んでいく。

のこされた鞘は左手で制御されており、それだけでヒートサーベルをしのいでいた。

「何!?おおおおお!!」

残ったグフの懐にニーキックが炸裂し、力を崩されたグフがそのまま突き飛ばされる。

再びソードメイスを鞘に納め、大型メイスに戻したバルバトスは態勢を直そうとするグフに急接近する。

「終わりだ!!」

どうにかヒートサーベルで受け止めようとしたグフだが、大型メイスの一撃をしのぐことができるはずがなく、粉々に砕けると同時に胸部に重量のある一撃が叩き込まれる。

コックピットが無事で済むはずのない一撃でグフは沈黙し、バルバトスは即座に吹き飛んだサンドロックに目を向ける。

「おのれ…よくもゼハートを!!」

コックピット付近の一撃で、大きなダメージを負っているサンドロックだが、ガンダニュウム合金を採用し、装甲強度については5機のガンダムの中で最大と称されているだけあって撃墜は免れていた。

だが、電子回路に大きなダメージを負っていることは変わりなく、コックピットにいるゲラートも額から出血していて、片目が赤く染まっている。

それでも、行かせまいとホーミングミサイルを撃つが、それでバルバトスを止められるはずがない。

ミサイルの間を走ってすれ違う形で回避し、今度はコックピットにむけて大型メイスを槍のように突き立てた。

パイルバンカーはないが、それでもこの一撃はコックピットを破壊するには十分すぎた。

コックピットだけでは飽き足らず、背中を貫通している状態で、撃破されたことはだれの目にも明らかだった。

「残りは6…いや、7機か…」

「くっ…あっという間に2機を撃破しただと…!」

大型メイスをバックパックに戻すバルバトスを見たケンタロウはギリギリと歯を食いしばる。

ようやくここに来てくれたことについては感謝しているが、まさかバルバトスで出てくるとは思ってもみなかった。

「この俺を相手にするなら、ゲーティアは必要ない…そう言いたいのか、沢村勇太ぁ!!」

怒りとともにツインブレードをふるうバルバタウロスと2本の太刀を手にしたバルバトスがぶつかり合う。

刃と刃がぶつかり合う中、リュウセイ達はこれによって動いた流れに乗る。

「トウマ、少し時間を稼いでくれ!!」

「何をする気だ、リュウセイ!!」

戦場のど真ん中でヘリオスがツインサテライトキャノンの発射態勢に入る。

陸戦型ガンダムやドライグなどの機体がいる中で、その行動は自殺行為といえる。

だが、それがわからずにやるほどの馬鹿じゃないことはトウマも分かっている。

「マイクロウェーブのコース予測よし…ここだ!!」

 

「ゲラート隊長が落とされたか、これはまずいな…」

大気圏外からザンネックキャノンで支援狙撃を行うロックオンだが、それでも冷静に狙撃を続けている。

時には雲にさえぎられたりすることはあるが、それがなければ問題なくジャブローに向けてビームを放つことができる。

だが、そんな彼に警報音が響く。

「熱源…こいつは!?」

ザンネックの背後から襲い掛かる青白い光の矢。

それを受けたザンネックがすさまじい高温で焼かれていく。

地上に存在するガンダムXやガンダムDXにサテライトキャノンのエネルギーを送るマイクロウェーブに存在する膨大なエネルギーはモビルスーツを焼き尽くすには十分すぎるものだった。

 

「よし…うまくいった!!」

既に発射態勢をやめ、ビームサーベルで応戦するリュウセイはそれから上空から飛んでこないビームに、作戦の成功を確信する。

「なるほど、マイクロウェーブを使って狙撃したということか、DXの装備なら、できないこともない」

ツインサテライトキャノンによる攻撃を前提としているガンダムDXのレーダーはこれまでのガンダムと比較するとレーダーに関しては優れた性能を持っている。

コロニーレーザーへの狙撃をも成功させた実績があることから、こうした芸当も理論上はできるとリュウセイは確信していた。

「空からの攻撃がないなら…思いっきりいくわよ!!」

サナはビームライフルを放ちつつ、ドラグーンをすべて射出する。

狙いはフォウのウィングゼロ。

だが、ゼロシステムのサポートを受けているフォウには容易にドラグーンの攻撃予測が可能だった。

「この程度がなんだというんだ!なめているのか、ガンダム!!」

「そんなわけ…ないでしょ!!」

ある程度の攻撃を行ったドラグーンが位置を変えて、ウィングゼロを中心に立体状に展開する。

そして、彼女を薄いビームの幕で包み込んだ。

「ビームバリア!?だが、なぜ私に!!」

確かに弐式となったストライクフリーダムのスーパードラグーンにはキラの技量に依存するとはいえ、ビームバリアを展開させる機能が存在する。

だが、それは自分や仲間を守るためのものであり、なぜ敵である自分にそんなことをするのはわからない。

「ゼロシステム!何か仕掛けがあるのか!!」

「もらったよ!!」

AIだろうと人間だろうと、想定しない行動に出たら反応が遅れる。

最終兵士がそれによってトビアに敗れたように。

この想定できず、ゼロシステムに予測を頼ったことがフォウの勝敗を分けた。

パーフェクトストライクフリーダムの頭部額が展開し、そこから発射される極細のビーム。

バリアを貫き、ウィングゼロの胸部を貫いていた。

爆散するウィングゼロとドラグーンを格納するとともに地上に降りるパーフェクトストライクフリーダム。

「やっぱり、ディスラプターってすごいエネルギーを使うんだ…」

元々はプラウドディフェンダーを装備した状態での発射が推奨されているディスラプターをそれなしで発射した場合、膨大なエネルギー消費に耐えられない。

改造したことで向上しているエネルギーだが、それでも今のパーフェクトストライクフリーダムはエネルギーの大部分を失った状態になっており、フェイズシフト装甲もかろうじて維持できている状態だ。

そんな彼女にレッドフレームが襲い掛かる。

「奇策で勝利するとは見事、なれど、そこから先がないのならば!!我が刃はフェイズシフト装甲であっても切り裂く!!」

右手のみであってもそれができないほど衰えてはいないと刃を振るうブシドー。

だが、その彼を阻んだのはブレイジングガンダムだった。

「盾となりに来たか!!」

「盾なんかじゃ…ない!!」

振り下ろされるブシドーの刃。

だが、その刃をブレイジングガンダムの両手が受け止めた。

「白刃取り…!!」

その瞬間、ブシドーの脳裏を駆け抜けたのは刹那との最後の決闘。

あの時に勝負を決めたのはあの白刃取りであった。

「はああああああ!!」

両手に発生するエネルギーで力を増したブレイジングガンダムが白刃取りした刃を折る。

「これが私の…戦いだぁぁぁ!!」

動揺するアストレイの頭部に向けて頭突きし、わずかに後ろに下がったアストレイ。

絶好の距離となったアストレイを前に、深く腰を落としたブレイジングガンダムが右拳で正拳突きを放った。

腹部にすさまじい一撃を受け、残りの四肢が吹き飛んだアストレイが地面を転がった後で爆散する。

「これで…あと3機!!」

これ機体数は逆転した。

ドライグと陸戦型ガンダム、ファントム。

いずれも厄介な機体ではあるが、それでも5機を退けたことは確かな自信になる。

 

「この…ファントムならば!!」

ファントムライトを展開したファントムのフレイムソードとリヴランスヘブンのビームランスがぶつかり合う。

強いて言えば、ビームの刃を生み出さずに柄だけで受けている状態であり、出来栄えのおかげで折れずにいるものの、仮に少しでも作りこみを怠っていたなら、すでに折れている。

だが、今トウマが相手をしているのはこの機体だけではなく、ドライグもいる。

スピードで上回る2機にリヴランスヘブンは傷つき、アクティブクロークもこれ以上は持たない。

「もらったぞ、ガンダム!!」

「くっ…!!」

発射されたハイインパクトガンの弾丸を受けたアクティブクロークがついに限界を超えて砕ける。

砕けたアクティブクロークの余計なパーツを強制排除し、突っ込んでくるドライグ。

正面からはドライグ、側面からはファントム。

フレイムソードとビームサーベル、どちらを受けても終わり。

「だったら!!」

そうなれば、やることは一つ。

トウマは今まで守ってくれたビームランスをビーム刃を展開させた状態でファントムに向けて投げる。

「何?」

ファントムライト展開中のファントムにそんなものは効かないが、邪魔になる以上はと左腕で弾き飛ばす。

その間にリヴランスヘブンは残りのアクティブクロークを強制排除し、ドライグに向けて突っ込んでいく。

「こちらに突っ込むだと!?」

「うおおおおおお!!!!」

ビームサーベルの振りがこちらに届く前に懐へ入ったリヴランスヘブンがドライグの両腕をつかみ、ドライグを押さえつけようとする動きを見せる。

だが、ドライグにはメガブーストがあり、それで一気に加速すればそのGでパイロットが持たない。

さっそくメガブーストで加速したドライグがでたらめに飛び、Gがトウマを襲う。

システムによって再現されたGはさすがのトウマでも意識を持っていかれるかと思うくらいだ。

「ゼ、ロ…距離、なら!!」

「何!?」

しかし、今のトウマはそのようなことはどうでもいい。

メガソニック砲が展開し、既に発射のためにエネルギーチャージを終えている。

「うおおおおおお!!」

「くっ…!見事…」

蒸発式アップリケアーマーによってある程度ビームへの防御を持つドライグだが、ゼロ距離からのメガソニック砲には耐えられない。

直撃したドライグが爆発し、同時に吹き飛ばされたリヴランスヘブンが地面を転がる。

至近距離から爆発に巻き込まれ、ダメージでメガソニック砲は発射不能となり、機体は既に悲鳴を上げている。

「よくもデュバル少佐を!!」

ファントムライトが終わったファントムがフレイムソードを抜いてこちらに迫る。

どうにか起き上がることだけはできたが、もうこれ以上の引き出しはない。

「ここまでか…」

「トウマ!!」

動けないリヴランスヘヴンをかばったヘリオスがビームサーベルでフレイムソードを受け止める。

モニターに映るボロボロなリヴランスヘブンの姿にリュウセイは苦笑する。

「さっきのやり方、見てたぞ。お前も…かなりの無茶をするんだな…!」

「状況が…状況だったからな…」

どうにか起き上がることだけはできたリヴランスヘブンの生きているレーダーが接近してくるもう1機を見つける。

「陸戦型ガンダムが来るぞ。2体に対してやれるか?」

「やるさ…!それに、俺だけじゃない!」

「トウマ、リュウセイ!!」

合流したパーフェクトストライクフリーダムが陸戦型ガンダムに向けてアグニを放ち、更にドラグーンも放つ。

「サナ、ミサさんは!?」

「勇太さんのところへ行ってる!」

 

「はあああああ!!」

「おおおおおおお!!」

もはや何度繰り返しているかわからない刀とツインブレードのぶつかり合い。

お互いの得物はところどころにヒビが入っていて、あと何度お互いにぶつけあうことができるかわからなくなっている。

「なら…!!」

目の前の相手を見つけた勇太は呼吸を整えていく。

同時にバルバトスが炎のようなオーラに包まれていく。

「覚醒か!!」

「うおおおおおお!!」

距離を取ったバルバトスがバルバタウロスの周囲を飛び回りつつ、大型ライフルによる攻撃を加えていく。

何発か着弾し、そのうちの1発が右手のツインブレードに当たり、それが粉々に砕ける。

着弾したところからは大きな衝撃が発生し、コックピットを激しく揺らす。

「くうううう!!システムに愛されているだけの卑怯者がああああああ!!」

覚醒によって増した機動力だが、どうにか動きを予測できたケンタロウ。

残った左手のツインブレードを両手で持った状態で真正面から突っ込むバルバタウロス。

最後になるかもしれない鍔迫り合いが始まる。

「君はただ、外にだけ理由を追い求めているだけだよ!!目の前の相手がどれだけのものを積み上げてここまで来たのか、見ていないんだ!!」

「システムのブラックボックスを使う貴様が言うことかぁ!!」

ツインブレードを右手だけ保持した状態にしたバルバタウロスの左拳がドリルのように回転し、バルバトスの顔面を狙う。

だが、バルバタウロスにいくつかのビームが襲い掛かったことで拳がわずかにそれる。

「勇太君!」

「ミサ!!」

バルバタウロスから一度距離を取ったバルバトスが大型メイスを手にする。

鞘の部分を外し、それをバルバタウロスに向けて投げつける。

覚醒状態のバルバトスによる投擲スピードはビームに匹敵しており、右手のツインブレードに当たると刃が粉々に砕け散る。

そして、覚醒を解除したバルバトスが真正面から迫り、ソードメイスの切っ先がコックピットに向けられる。

「君の負けだ!君が奪ったガンプラデータを返すんだ!」

「くううう!!」

ギリギリと歯ぎしりするケンタロウの脳裏にあの屈辱的な敗北の記憶がよみがえる。

「貴様、貴様貴様貴様貴様貴様貴様ぁ!!!なぜだぁ!!ファイターとしても、ビルダーとしても、今ならば貴様に負ける要素など、何一つないはず!!」

燃え上がっていく勇太への憎しみでケンタロウの視界が真っ赤に染まっていく。

あとはその刃を突き刺すだけで終わるのに寸止めしていることすらも、憎しみを加速させる。

「貴様がシステムに愛されているというなら、ならば…そのシステムの枠組みを超えてやる!!」

キーボードを出し、特殊なコマンドを入力していく。

何かを感じた勇太はバルバタウロスから離れる。

「まさか…これは!!」

「ハッキングで手に入れた宇宙ステーションでの貴様の戦闘記録、あの機体のフレームを再現させてもらった!!」

ガンプラマフィア、そして彼を通じて手に入れていたであろうマスフレーム。

その力がバルバタウロスを黒い炎のようなオーラとなって包んでいく。

それだけではなく、そのオーラがバルバタウロスの形をとりながら巨大化していった。

損傷していたパーツが修復されていくと同時に、弓を手にしたバルバタウロスは懐から3本のダインスレイヴを引き抜く。

「まずい…!!各機、衝撃に備えるんだ!ダインスレイヴか来る!!」

「おおおおおおお!!!」

上空に向けて放たれる3本のダインスレイヴ。

それ数十本に分身して地上へとランダムに襲い掛かるとともに、上空には赤黒いヒビがいくつもできていた。

「なんなのこれ、キャア!!」

「トウマ!!!」

着弾と同時にすさまじい衝撃波も襲い掛かる。

だが、恐ろしいのは着弾地点で起こっていることだ。

本来のダインスレイヴではありえない、地割れを起こすほどの破壊力がそれにはあり、ジャブローが地殻変動でも起こったかのように地形が大きく変わっていく。

そして、そのダインスレイヴは仲間のはずのドライグや陸戦型ガンダムまで巻き込んでいた。

「味方まで、お構いなしだってのか!!」

リヴランスヘブンを抱えて逃げるリュウセイはその圧倒的な破壊力に戦慄する。

そして、この惨事を引き起こしたケンタロウはその力に笑っていた。

 

当然、この状況はカドマツのモニターにも映っている。

「マスフレームまで再現したってのか、こいつは!システムも何もかもを破壊するつもりかよ」

マスフレームの恐ろしさを知っているカドマツは頭の中を整理しつつ、やるべきことを考える。

ナジールとの戦いではブレイジングストライカーを装備したゲーティアがいたから勝てたが、今のアザレアはブレイジングストライカーを持っていない。

(どうする…?何か打てる手段を…)

 

「フィールドにヒビまで入っている…」

「このままじゃ、せっかくみんなが楽しみにしていたイベントステージが壊されちゃう…!」

ひび割れた空やもはやジャブローだったかさえ分からなくなりかけているフィールド。

狂うように笑うケンタロウと巨大なバルバタウロス。

もはや、今このステージはケンタロウの独壇場かつ彼のゆがんだ心のはけ口となっていた。

「そんなこと…させない!!」

「させないんだからぁ!!」

リュウセイとサナはそれぞれバラエーナプラズマ収束ビーム砲とアグニを放つが、今のバルバタウロスに対してその火力では傷一つつけることができない。

ツインサテライトキャノンなどのさらなる火力でいけるかどうかも怪しい。

「ダメなのか…!!」

「あきらめちゃだめだ!無敵の力なんてないんだ!」

バルバトスが出力を最大にした破砕銃から連続で弾丸を発射する。

破砕砲には及ばないが、それでもナノラミネートアーマーやフェイズシフト装甲を破壊できるほどの火力が1発1発にはあるが、それらの弾丸もバルバタウロスの炎の前には無力だった。

「感じないなぁ…そんなものぉ!!」

「あのオーラをどうにかしなければ…!だが…」

こちらも今すぐにでも動きたいトウマだが、機体ダメージが大きい今のリヴランスヘブンではかえって邪魔になるだけ。

見ていることしかできない今の状況に歯がゆさを感じずにはいられなかった。

 

「カドマツ、なんとかして!!」

「なんとかしてって言われてもよぉ!!」

ミサに言われなくても、なんとかできるならもうしている。

エンジニアや科学者としての意地として、こんな暴挙に対して何もしないわけにはいかない。

必死に頭を回転させ、突破口がないか探し求める。

「…!そうだ、奴に対して何もできないとしても、それ以外なら…!」

 

「アハハハハハ!!どうだ、どうだ沢村勇太!!何もできない屈辱はぁ!!」

弾切れになった破砕銃を捨て、ソードメイスを手にしたバルバトスが側面から突き刺そうとしてくるが、オーラに阻まれた上にメイスが砕けてしまう。

近接武器の中で一番の強度を持つそれを失うことになったバルバトスにはまだ2本の刀が残っているが、それを使ってもオーラに阻まれて失うのがオチだ。

「味わってもらうぞ、俺が受けた屈辱をおおおお!!」

わずかに動きが鈍ったバルバトスに向けて、巨大になった拳で攻撃しようとする。

だが、そのバルバタウロスに対して様々な方向からビームや実弾が襲い掛かってくる。

「何!?これは…!!」

オーラによって阻まれ、ダメージは皆無なため気にする必要はないはず。

それ以上に問題なのはそれらを撃ってきた相手だ。

モニターにはこちらにツインバスターライフルを向けるウイングゼロと地上から狙撃態勢に入っている陸戦型ガンダム、そして飛行しつつガトリングシールドをこちらに向けているグフの姿だ。

「なんだと!?貴様、何をしたぁ!!」

「書き換えたんだよ、AIをな」

ケンタロウのAIはこういうことに使ったことは置いておいたとしても、AIにかかわったことのある人間としては素直にすごいというほかない。

だが、付け入る隙がないわけではない。

ミサたちが戦っていたAIを解析したカドマツは見つけた脆弱な部分から書き換えを現在進行形で行っている。

ちょうど今、書き換えを終えたほかの機体も、バルバタウロスへの攻撃を開始していた。

「各機、目標は巨大モビルスーツ1機、なんとしても奴を止めるぞ」

「了解した…人が人であるためのエデンのために!!」

ゼハートの叫びとともに振るわれるヒートソード。

それを受けてもバルバタウロスにはダメージが発生しない。

だが、バルバタウロスには異変が起こっていた。

「何!?マスフレームの出力が…!!」

「どうだ…!俺特製のワクチンプログラムの味は!!」

ワクチンプログラムをインストールされたAI機体による攻撃。

それがバルバウロスのオーラを減衰させていき、フィールドのヒビも元に戻っていく。

「人形どもがああああ!!」

減衰しているとはいえ、それでもまだマスフレームの力は失われていない。

左腕でグフを弾き飛ばすが、その直後にファントムとレッドフレームの刃が襲い掛かる。

「くううう!!」

「人の犯した過ちは、マフティーが粛清する!!」

「切り捨て、御免!!」

「ウジ虫があああああ!!!」

ファントムとレッドフレームを殴り飛ばすが、ワクチンプログラムによってどんどん力が失われていく。

更に、追い打ちをかけるように大気圏外から襲い掛かってくるビームがバックパックに直撃する。

「うわあああああ!!」

「ロックオン・ストラトス、目標を狙い撃つ!」

 

「やってくれた、カドマツさんが…」

「勇太君!!」

AI達による戦いを見る勇太の元にミサがやってくる。

「ミサ…」

「決めるよ、私たちで!」

接触回線で送られてくるデータ。

それを見た勇太はわずかに目を大きく開くが、すぐに笑みを浮かべる。

「ミサ…分かってるじゃないか!」

 

「その傲慢さを償え!!」

「ドライグの性能、身をもって味わえ!!」

EXAMシステムを起動した陸戦型ガンダムが地上から、メガブーストで加速するドライグが上空から、それぞれバズーカとレールガンで攻撃を仕掛けてくる。

ワクチンプログラムが打ち込まれ、力を失っていく。

「いい加減にしろ…デク人形どもおおおおお!!!バルバタウロスの力を、見せてやる!!」

バルバトス最大の切り札はこのバルバタウロスにも存在する。

コマンドを入力し、同時にバルバタウロスのツインアイが赤々と輝く。

「うおおおおおおお!!!」

再び襲い掛かるザンネックキャノンだが、その場からバルバタウロスが消え、目標を失ったビームが地面に突き刺さる。

消えたバルバタウロスが現れたのは陸戦型ガンダムの背後で、右手でその機体をつかむと上空のドライグに向けて投げつけた。

2機が激突して地面に転落する。

その間に後ろを取ったウイングゼロが放つツインバスターライフルだが、放たれたビームはまるで分っていたかのように横へ飛んで回避するとともに機体を旋回させた。

ブレイジングガンダムが変形してバルバトスの全長に匹敵する大型銃となり、バルバトスがそれを右手で握る。

(右腕と一体化していたアザレアブラスターとは違う形か、それに…)

「勇太君!」

「分かってる、ブレイジングブラスター、コネクト完了。モードチェンジ!!」

増加装甲が強制排除され、同時にブレイジングガンダムからエネルギーがバルバトスに供給されていく。

流れ込むエネルギーによって、バルバトスの装甲がブレイジングガンダムと同じ色へと変わっていく。

「貴様も、つぶれろぉぉぉぉ!!」

破壊されたツインブレードの代わりとして握るダインスレイヴを槍代わりにしてウイングゼロに突き刺そうとしていた。

「ここまでか…!」

ゼロシステムにこの状況を回避するパターンが提示されない。

あるのは自爆して少しでもダメージを与えることだけ。

動かないウイングゼロを仕留めたと思ったケンタロウだが、背後からの警報音に気づく。

「なんだ、このビームは!!?」

気づいたため大きく跳躍して避けるだけだったが、ウイングゼロを取り逃し、同時にこのこのバトル内において発生していないパターンの攻撃に動揺していた。

振り返ったバルバタウロスのツインアイが見たのはブレイジングブラスターを手にしたバルバトスの姿だった。

「貴様ああああああ!!」

「お前の相手は、勇太さんだけじゃない!!」

「!?」

AI達が作ってくれた時間、勇太とミサしか見ていなかった状況。

それがケンタロウの戦いを左右した。

上空にはマイクロウェーブによるエネルギー供給を完了したヘリオスが一斉射撃の態勢に入っており、地上ではリヴランスヘブンとケーブル接続したパーフェクトストライクフリーダムも一斉射撃の態勢に入っていた。

「動力源が無事なのが幸いした…!いけ、リュウセイ!サナ!!」

「ああ、ヘリオス、セスセットキャノン!」

「パーフェクトフルバースト…」

「「シュート!!」」

すべてのエネルギーを注ぎ込まれて放たれる大出力のビーム。

直撃だけは免れたがそれでもその出力による衝撃がコックピットに襲い掛かり、それだけでケンタロウの中に焦りが生まれていく。

「こんな、こんなことでぇ!!」

ダインスレイヴを装填したバルバタウロスがそれをヘリオスに向けて発射しようとする。

まだマスフレームの力は残っているため、この一撃だけでもあの2人を仕留めることはできる。

「よそ見をするな、真原健太郎!!」

レールガンに次々と襲い掛かるビーム。

わざとなのか、いずれのビームも命中していない。

そのことになめられたと感じたケンタロウは狙いをバルバトスに向ける。

「死ねええええええええ!!!」

「ブレイジングブラスター、ブレイドモード、フルチャージ!!」

上空に飛ぶバルバトスが銃口からビームソードが形成され、ダインスレイヴを放つバルバタウロスに狙いを定める。

一気に加速したバルバトスがビームソードですれ違いざまにダインスレイヴを両断し、そのままバルバタウロスに肉薄する。

本来であればビームに対して圧倒的な防御力を発揮するはずのナノラミネートアーマーだが、ビームソードが左腕を切断し、大きくバランスを崩したバルバタウロスが地上に転落する。

「うわあああ、なぜだ!なぜええええええ!!」

起き上がり、体をバルバトスに向けたと同時に胴体に飛んでくるビームソード。

命中と同時に大きく吹きとんだバルバタウロスが岩に激突する。

ビームソードは維持されたままで、ブレイジングブラスターが緑色の光を放った状態になっている。

「いくよ、ミサ!!」

「うん、一点突破!!ブレイジングスマッシュ」!!

ブレイジングブラスターを突き出した状態で突撃するバルバトス。

動けないケンタロウは迫ってくるバルバトスに対してできることがなかった。

ふと、脳裏に浮かぶのはバルバリックを作ってからこれまでの喜びと怒り、悲しみ。

眼を閉じたと同時に、ブレイジングブラスターがバルバタウロスを背後の岩ごと貫く。

バルバトスが離れ、ブレイジングブラスターが元に戻ったと同時にバルバタウロスが爆散する。

シミュレーターの中で、ケンタロウは操縦桿を手放してうなだれる。

「また…負けた。また、貴様に脚光が…」

(またそんなこと言って!)

「え…?」

(仮面をはずして、映像を見てよ。この戦いを見ていたみんなの様子を)

ミサと勇太から入ってきた通信に、敗北したことでようやく落ち着きを取り戻した、もしくは怒りと憎しみに疲れたケンタロウは仮面をはずす。

モニターで会場を見てみると、誰もが歓声を上げていた。

だが、その歓声は勝者である勇太たちに対してだけのものではなかった。

「すごいな、あの黒いバルバトスに、AI機体も!!」

「次にまた戦いがあったら、どうなるんだこれ!?」

「あんな勝負、世界選手権以来だろ!?」

ガンプラデータが戻ってきていないことに困惑する人々もいるが、この試合に熱を感じた人々が圧倒的に多い。

「これは…」

(あなたのやったことは間違っていたけれど、それでも、みんなに伝わったんだと思う。あなたの、ガンプラへの愛が)

「ガンプラへの愛…そんなもの…」

あの大会に出たのも、バルバリックを作ったのも、自分が脚光を浴びるためのもの。

そのための手段に対して、それがあるはずがない。

(そうかな?僕は、あると思うよ。君の熱を、あのバトルで確かに感じたから。今回のバトルでも、誰よりもシステムやAIのことを学んで、個性と機能を両立させたガンプラを作り上げて、技術を磨きぬいた。それは、僕への憎しみだけでは作れないと思うんだ)

「沢村勇太…」

(それにさ、このバルバトス・バルドルの参考になったのは、君のバルバリックなんだ)

「何…?」

(君と戦って、改めて作りたいと思ったんだ。バルバトスを。ミサと一緒に戦った始まりの機体を。これも、君への脚光…ってことに、なるのかな?ちょっと、君が思ってたのと、違うかな?)

(そうだぜ、俺がAIパイロットのデータを書き換えることができたのは、元のデータが残っていたからだ。どれもキャラクターそれぞれの個性を熟知していて、それに合わせたパラメーターになっていた)

(そこまでったら、もう愛、だよね?愛する人は、愛されるって!)

勇太をはじめとした、自分を本来なら怒り、罵倒してもおかしくない相手から受けた言葉。

胸が熱くなり、同時に目から涙がこぼれた。

声を押し殺し、手で顔を隠してケンタロウは泣き崩れた。

 

ジャブローの空と大地が元に戻っていき、夕方の空にフラメンコが飛ぶ。

その様子を勇太たちはそれぞれのガンプラから見ていた。

「これで、解決…だね」

「うん…。って、バトルに集中してたから気にしてなかったけど、勇太君、いつの間に戻ってきたの!?それに…」

「ま、待って!ミサ…その、会場の入り口で待っていい!全部、全部話すから!!」

「待って!逃げんなーーー!!」

ログアウトした姿を消したバルバトスを追いかけ、ブレイジングガンダムもログアウトして姿を消す。

「あっちも、大変だね」

「…だな。いったんログアウトしよう。みんな、ボロボロだしな」

「そうだな…それにしても、あれが沢村勇太、か…」

プロファイターを目指すトウマとして、勇太のあの戦いには魅入られるものがあった。

できれば、こういう状況以外でバトルを見たかったと思ったトウマだが、同時に大きな壁のようなものも感じずにはいられなかった。

「一緒に強くなろう、トウマ」

「リュウセイ…」

「俺たちだって、まだまだこれからなんだから」

「そうそう!転校したからって、仲間だってことは変わらないし!」

「リュウセイ、サナ…ああ…」

 

(真原健太郎は拘束したぞ。データはあいつが自分の手でみんなに返した。反省してるみたいだし、システムの復旧も短時間でできた。大した処分にはならないだろ。あとは任せろ)

「はい、あとはお願いします。カドマツさん」

スマホをポケットに入れた勇太はGBフェスタ会場入り口へ歩いていく。

そこには、ミサの姿があり、壁によりかかった状態で勇太を待っていた。

「…ミサ!!」

つばを飲み込んだ勇太が待っている彼女の名を呼ぶ。

顔を向けたミサは勇太の顔を見た瞬間、すぐにそっぽを向いてしまう。

こういう対応をされてしまうのは当然で、カドマツからはすごく怒っていたとも聞いている。

帰られてしまう可能性も頭をよぎったが、言う通り来てくれただけまだ救いがあると思うべきか。

「その、ごめん!何も言わずにアメリカへ行っちゃって…」

「…」

「怒ってる、よね…だって、被ってたから…ミサの、誕生日…」

「…!そうだよ!私の誕生日!!なんで…」

「分かってるよ!わかってる、でも、それでも…どうしても、行きたかった…優勝したかった理由があるんだ」

勇太が持っているトロフィーはDSSDのコロニーを模したもので、その上には背中合わせとなっているスターゲイザーガンダムが存在する。

それらのウォワチュール・リュミエール部分を外すと、それらは指輪になっていた。

「これって…」

「僕が、欲しかったのは…それ、なんだ…どうしても、それを渡したくて…」

顔を赤く染めた勇太は2つある指輪のうちの一つをミサに差し出す。

それを見つめるミサの顔もつられて真っ赤に染まっていく。

「ゆ、ゆ、勇太、君…それって…!」

「…そ、そういう、こと…すごく、早いけど…」

とうとう直視できなくなった勇太が顔を背ける。

ミサも勇太とほぼ同じタイミングで真っ赤になった顔を背けており、手には勇太から受け取った指輪が握られている。

バクバクと心臓が高鳴り、手が震える。

こぼしそうになるのを必死に耐えながら、ミサは顔を真っ赤にしたまま勇太にもう1度顔を向ける。

「勇太、君…」

「な、なに…?」

「ちゃんと…ちゃんと、ちゃんとつけて、自分で…自分の口で言って!!」

言いたいことはわかっている、受ける覚悟もある。

けれども、今この瞬間を心に焼き付けるには、まだ足りない。

顔をそらしていた勇太が再び唾をのんで首を縦に振り、ミサの手にある指輪を握る。

そして、ミサが差し出した手の薬指に震えながらはめた。

はめた瞬間、ミサは目を丸くしながら指輪がはまった自分の手を見る。

「ミサ…僕と、その…僕と、結婚してください!!」

 

 

 

 

 

 




機体名:バルバトス・バルドル
形式番号:ASGT-00Bb
使用プレイヤー:沢村勇太
使用パーツ
射撃武器:新型破砕銃「ヘズ」
格闘武器:新型ソードメイス「ナンナ」
頭部:ガンダムバルバトス(頭部後方に放熱ユニット装備)
胴体:ガンダムバルバトスルプス(バッテリー内蔵増加装甲「トール」装備)
バックパック:ガンダムバルバトスルプス(「ナンナ」用鞘「フォルセティ」をマウント)
腕:ガンダムバルバトスルプス(ガントレッド「フリッグ」装備)
足:ガンダムバルバトスルプス(両腰に太刀×2をマウント)
盾:新型ガントレッド「フリッグ」

GBフェスタにおける真原健太郎のガンダムバルバタウロスとの戦いで使用したガンプラ。
かつて、ミスターガンプラに勝利し、ウィルに敗れたバルバトス・レーヴァテインにゲーティアのこれまでの戦闘データのフィードバックをしつつ、改修した。
コンセプトはポスト・ディザスター時代のガンダムフレームおよびモビルスーツの原点回帰で、特殊装備の追加を可能な限り行わずに基本設計及び兵装の改良・発展を追求している。
左腕に装備されているガントレッド「フリッグ」はナノラミネートアーマーは施されていないものの、ダインスレイヴを1度きりとはいえ防ぐことができるほどの高い耐久性を誇る。
武装はレーヴァテイン時代に装備していた破砕砲を威力を若干軽減させつつも大型ライフルレベルに小型化した新型破砕銃「ヘズ」や鞘状パーツ「フォルセティ」に格納したままであれば大型メイスとしても機能する新型ソードメイス「ナンナ」が中心で、サブウェポンとして2本の太刀が腰に装備されている。
胴体にはバッテリー内蔵の増加装甲「トール」が装備されており、フリッグほどの防御力の増加はないものの、それでもナノラミネートアーマーのみには頼らない、ナノラミネートアーマーでは防ぎきれない攻撃への対応策になるとともに活動時間の延長が期待される。
当初はレーヴァテインリペアードとする予定であったが、バルバトスの復活を象徴するため、バルドルに変更している。

ブレイジングブラスター
ブレイジングガンダムに搭載されている変形機構。
かつてのアザレアブラスターと同様に機体そのものが超大型ビームライフル兼ビームソードとして機能する。
ブレイジングガンダムそのものは太陽炉を搭載していないため、トランザムは使用不能になっているものの、ブレイジングガンダムからのエネルギー供給を受けた機体はブレイジングモードへの移行は可能であり、その状態になるとブレイジングブラスターそのものを巨大な質量武器として攻撃することも可能となる。
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