(GBフェスタから1か月が経過しています。しかし、あのバトルイベントの話題は今でもSNSでやむことがありません。中には、将来実装されるといわれている新たなガンプラバトルシミュレーターのための…)
「みんな好き勝手言ってるね、公式でちゃんと本当のこと言ってるのに」
「それだけあのバトルのインパクトが大きかったということだよ。そうなると、もう一人歩きだ」
綾渡商店街付近の公園で一緒にスマホで動画を見る勇太とミサは改めてGBフェスタでの事件を思い出す。
確かに、彼のやり方は間違っていたが、それでもあの時の戦いの記憶は人々に、そして戦った勇太たち自身の記憶に深く焼き付いている。
「それにしても、私までターゲットにされたのは勇太君のせいだよ!あんなこと言ったら…」
「…ごめん」
あの事件の後、改めてミサは途中で見るのをやめたアメリカでの大会での勇太のインタビューを見た。
そこでの勇太の言葉が今も忘れられない。
GBフェスタでのプロポーズも含めて。
『それから…実は、もうすぐ僕の大切な人の誕生日なんです。だから、このトロフィーをどうしても持ち帰りたかったんです。誕生日には間に合わないかもしれないけれど、だから…この場で言わせてください。誕生日、おめでとう。本当に…その、本当に、愛しています』
「まぁ…うれしかったけど…」
顔を赤く染めるミサは首にぶら下げているネックレスに触れる。
ネックレスには勇太からもらった指輪がかけられており、勇太も同じネックレスをかけている。
まだ指にはめて過ごすのは恥ずかしいから、ひとまずはちゃんと結婚式をするまではその形ということで二人で決めている。
なお、双方の両親からは即刻許しをもらっている状態だ。
「それにしても、カドマツまだなのー?もうすぐ出発の時間なのに」
「確かに…渋滞に巻き込まれたのかな?」
ヨーロッパ各地で行われるガンプラバトルの大会。
勇太とミサはそれに参加するために、今日出発することになる。
それに合わせて、カドマツがどうしても会わせたい人がいるから時間を作ってほしいといわれてここにいる。
「おーい、お前ら!待たせたなー」
声が聞こえ、その方向に2人が顔を向けるとカドマツが歩いてきて、二人に対して手を振る。
「カドマツさん…」
「おっそーい!飛行機乗り遅れちゃうじゃん!」
「悪い悪い、こっちも…その、いろいろあんだよ」
「カドマツさん、会わせたい人というのは」
「ああ…あそこにいる」
親指で後ろを差し、二人に視線が向く。
カドマツからかなり離れた場所にいて、なぜか近くに来ようとしない。
「カドマツ、あの人って…」
「真原健太郎…」
「え…?あいつが??」
「ま、嬢ちゃんはあの仮面の姿しか印象に残ってねえかもな」
ハイテンションに機体とAIの紹介をし、勇太への憎しみを全力でぶつけた男。
だが、ミサから見た今のケンタロウはコスプレがないためか別人かもと思ってしまう。
勇太はケンタロウのそばまで歩く。
今のケンタロウはアメリカの大会での服装になっている。
「…」
「…」
真正面からお互いの顔を見るケンタロウと勇太。
どちらも口を開かず、時間だけが過ぎていく。
「もう、何なのアイツ!!時間を作って待ってるのに!!」
「待ちな、嬢ちゃん。今はあいつに任せるんだ」
「…」
沈黙の中、最初に動いたのは勇太だ。
彼の下へ行こうとする彼にカドマツが口を開く。
「勇太、あいつには話してる。これからのことを…。俺たちが始めようとしていることも。だから…お前からも頼んでくれないか?」
「カドマツさん…」
カドマツもただケンタロウの謝罪のためだけに時間を作ったわけではない。
ガンプラバトルの未来のために始めようとしていること。
それには、彼の力も必要だとカドマツやミスターガンプラ達は感じていた。
だが、カドマツがそう言っているということはどういうことか、察しが付く。
少しだけ表情を和らげて、右手を差し出す。
「…ダメ、かな?」
「あ…」
ケンタロウの眼が勇太の手に向けられる。
だが、いつまでもその手を取る様子が見られない。
(くっ…それ以前にやらねばならんことがあるというのに、それができないとは…)
ケンタロウの脳裏に、今日までの1か月間で起こったことの記憶がよみがえる。
拘束されたケンタロウはそのまま今日まで日本で過ごすこととなり、その間に機体のことやAIのことなどを事情聴取された。
時に聞かれたのはマスフレームのことで、それについては一時はガンプラマフィアとの接触が疑われ、必死に説明したことでどうにか疑いを晴らすことができた。
そして、勇太がミサとともにヨーロッパへ行くと聞かされた際、ケンタロウはミスターガンプラ達に必死に頼んで、今日のこの時間を作ってもらった。
(今でも思う、お前がいなければと…だが、俺の行動で迷惑をかけたのは事実だ。謝らなければならない。ならないのに…)
頭を下げて、しっかり謝りたいのに、今のケンタロウの身体は言うことを聞いてくれない。
長い時間の取り調べやそのあとで今回の事件の話を聞いて駆け付けたリンドウによるとてつもないシゴキを受けたことでの疲労で疲れ果て、筋肉痛でボロボロになっていた。
もっとも、リンドウに特訓を頼んだのはケンタロウ本人で、勇太へのリベンジを果たしたいという思いがあったためだが。
「…」
やむを得ず、ケンタロウは差し出された手を取る。
手から伝わる勇太の体温と肌の感触。
アメリカの大会では対戦相手と握手することがなかったため、勇太とこうしてじかに触れあうのは今回が初めてだ。
「沢村、勇太…。俺は、その…」
「いいよ、もう。終わったことだし、大事には至らなかったんだから」
「…」
「やっぱり…後ろめたい…とか?」
「お前に指摘されると、癪に障るがな…」
取り調べの中、カドマツやモチヅキ、そして途中から参加したミスターガンプラから言われたことを思い出す。
間違ったことに使ってしまった力を、今度は正しく使ってみないかと。
ミスターガンプラから聞かされた、彼らが始めようとしていること。
それはケンタロウにとって、魅力的に感じられた。
だが、自分はGBフェスタでとんでもないことをしてしまったという自覚が芽生え、自分本位にあんなことをしてしまった自分に果たしてその中に入る資格があるのかという疑問が芽生えている。
だから、何度も請われたその協力要請をはねのけてきた。
「僕は…さ、一緒にやってほしいって思うんだ」
「…勝ったことでの余裕か?」
「そんなんじゃないよ、だって…好きなんでしょ、ガンプラが。その気持ちに素直になってほしいんだ」
「沢村…」
「上手には言えないけどさ…今の君となら、もっといいバトルができると思う。今日はできないけど、僕が帰ってきて…もし、時間があったら、またやってほしい。バルバトス同士で」
ようやく顔を上げたケンタロウの目に映るのは勇太の笑顔。
戦いの中で聞いた言葉と今、目の前で見せる笑顔。
そこでケンタロウの中から重苦しいものが消えていくのを感じた。
それと同時に、あきらめも。
「…かなわないで元々、だったか…」
「え?」
「いいだろう、力を貸す。だが…その代わりに、日本に戻ってきたら、俺と戦え。リベンジをさせてもらうぞ」
「…分かった。じゃあ、行くよ。会えてよかったよ、マハラ君」
話を終え、ミサの下へ戻った勇太はちょうど到着したバスに一緒に乗る。
カドマツとともに出発を見送るケンタロウの表情は和らいでいた。
「…ありがとうございます、カドマツさん」
「…ま、いいってことよ。じゃ、これでお前も自由の身だな」
今回の件でのケンタロウの拘束を解く条件、それはこの件で迷惑をかけてしまった人々への謝罪であり、勇太が最後だった。
それが終わった以上、もうケンタロウを縛るものはない。
SNSなどでこれからも言われ続けるかもしれないが、それについてはケンタロウ自身も納得の上だ。
「じゃ、まずは一歩目だな。俺の仕事を手伝ってくれ。お前のAIに関する知識が頼りだ」
「それもですが、カドマツさん。バトルのことで俺から一つ提案が…」
車へ戻ろうとする中、ケンタロウが口にした内容をカドマツがうなずきながら聞いていく。
車に乗り、ようやく長く話し続けたケンタロウのその考えをさっそく出発前にスマホでミスターガンプラに伝えた。
ガンダムブレイカー3外伝バトローグ、ひとまずここで終わりになります。
あくまでも主人公は勇太ということで、モバイルから登場していたリュウセイ達の本格的な登場は4からになります。
今後、ガンダムブレイカー5、6とどのようにガンダムブレイカーシリーズが進化していくか、楽しみにしています。
ガンダムブレイカー4フロンティア戦記もどうにか時間を見つけて書いていくので、よろしくお願いします。