ぼく、タツヤ(12)。
今日、学校の帰り道で空から落ちてきた光る石を拾ったんだ。
そしたら石がしゃべって、「キミは選ばれし勇者だよ」って言ってきた。
ぼくはびっくりしたけど、なんか胸がドキドキして、
「よし! 世界を救ってやるぞ!」って思った。

でも、ぼくは運動も勉強もあんまり得意じゃない。
走るとすぐ転ぶし、魔法の練習をしたら石が爆発しそうになって怒られた。
それでも、ぼくはあきらめない。
だって、ぼくがやらなきゃ世界が終わっちゃうんだ。


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第一章 勇者、誕生するんだ!!

 

ぼくの名前はタツヤ。

 

ふつうの小学生で、ふつうに算数が苦手で、ふつうに走ると転ぶ。

 

でも今日はなんか、胸の中がモヤモヤして、

 

「なんかでっかいことしたいなぁ」ってずっと思ってた。

 

 

 

学校の帰り道、夕日がオレンジで、道がキラキラしてた。

 

そしたら、空の上のほうで「ピカッ!」って光ったんだ。

 

雷かなって思ったけど、雲はぜんぜんない。

 

ぼくは「なんだあれ!」って思って、走って……やっぱり転んだ。

 

 

 

でも転んだおかげで、目の前に落ちてきたものが見えた。

 

光る石だった。

 

ビー玉くらいの大きさで、でも中がぐるぐる回ってて、

 

なんか生きてるみたいだった。

 

ぼくが手を伸ばすと、石がふわっと浮いた。

 

「えっ」

 

って言ったら、石がしゃべった。

 

「キミ、タツヤくんだね。今日から勇者だよ」

 

ぼくはびっくりしすぎて、変な声が出た。

 

「ひゃっ……ひゃああああああああああああああああああああああ!!」

 

石はちょっとイラッとした声で言った。

 

「そんなに叫ばなくても聞こえるよ。ボクはピカ。キミを選んだんだ」

 

ぼくは心臓がバクバクして、でもなんかワクワクしてきて、

 

「ぼ、ぼくが……勇者……?」

 

って言った。

 

ピカは光りながらうなずいた。

 

「そう。世界を救うのはキミだよ。がんばってね」

 

ぼくは胸が熱くなって、思わず叫んだ。

 

「よっしゃあああああああああああああああ!!

 ぼく、世界を救うぞおおおおおおお!!」

 

でもその瞬間、足がもつれてまた転んだ。

ピカはため息をついた。

 

「……先が思いやられるなぁ」

 

 

 

 


 

 

第二章 ぼく、修行する!!

 

 

勇者になったその日から、ぼくの毎日はすっごく忙しくなった。

 

だってピカが朝から晩まで「修行だよ! 修行だよ!」ってうるさいんだ。

 

 

 

「まずは走る練習だよ、タツヤくん。勇者は足が速くないとね」

 

ピカが空中でぷかぷかしながら言う。

 

ぼくは気合いを入れて、校庭の端っこまでダッシュした。

 

……つもりだった。

 

三歩くらいで転んだ。

 

しかも派手に。

 

砂が口に入ってジャリジャリした。

 

 

 

「うわあああああああああああああああああ!!」

 

ぼくが叫ぶと、ピカはため息をついた。

 

「タツヤくん、転ぶのはもう才能だね」

 

ぼくは立ち上がって、砂をはらって、

 

「だ、大丈夫だ! もう一回!」

 

って言った。

 

 

 

でも二回目も転んだ。

 

三回目も転んだ。

 

四回目は転んでから転がって、校庭の端まで行った。

 

ピカはちょっと感心してた。

 

 

 

次は魔法の練習だった。

 

ピカが言うには、勇者は光の魔法が使えるらしい。

 

「じゃあタツヤくん、手を前に出して『ひかれ!』って言ってみて」

 

ぼくは胸を張って叫んだ。

 

「ひかれええええええええええええ!!」

 

……何も起きなかった。

 

風すら吹かなかった。

 

ピカはちょっと困った顔で言った。

 

「うーん、じゃあもっと気持ちをこめて」

 

ぼくは目をつぶって、全力で叫んだ。

 

「ひかれええええええええええええええええええええええ!!」

 

そしたら、ピカが突然バチバチ光りだして、

 

「ちょ、ちょっと待って! それは強すぎ……!」

 

と言った瞬間、

 

ドッカーン!!

 

って爆発した。

 

 

 

ぼくは尻もちをついて、髪の毛がちょっとチリチリになった。

 

ピカは黒こげになって、ぷるぷる震えてた。

 

「タツヤくん……魔法は、もっと……こう……やさしく……」

 

ぼくは

 

「ご、ごめん……」

 

と言いながら、

 

でも心の中ではちょっとワクワクしてた。

 

だって、ぼくにも魔法が使えるってことだ。

 

 

 

そのとき、後ろから声がした。

 

「タツヤ、何してるの?」

 

振り向くと、クラスのミオが立っていた。

 

ぼくはあわてて隠そうとしたけど、ピカが勝手にしゃべった。

 

「やあ、ミオちゃん。タツヤくんは勇者の修行中だよ」

 

ぼくは頭を抱えた。

 

ミオは目をまん丸にして言った。

 

「……タツヤ、大丈夫なの?」

 

ぼくは胸を張って言った。

 

「だいじょうぶだ! ぼく、世界を救うから!」

 

ミオはちょっと心配そうにしながらも、

 

「じゃあ……私も手伝うよ」

 

と言ってくれた。

 

ぼくはなんだか急に力が湧いてきて、

 

「よっしゃああああああああああ!! 修行だあああああ!!」

 

と叫んだ。

 

 

 

ピカはまたため息をついた。

 

「……ほんとに先が思いやられるよ」

 

 

 

 


 

 

第三章 敵が来た! ぼく、戦う!!

 

 

修行を始めて三日目。

 

ぼくはまだ走ると転ぶし、魔法は爆発するし、ピカには毎日ため息をつかれてる。

 

でも、なんか胸の奥がずっとワクワクしてた。

 

「ぼく、いつか絶対に世界を救うんだ!」

 

って気持ちが、ずっと燃えてた。

 

 

 

その日の夕方、村の広場がざわざわしてた。

 

子どもたちが泣いて、大人たちが

 

「家に入れ!」

 

って叫んでる。

 

ぼくはミオといっしょに走って(転びながら)広場に行った。

 

 

 

そしたら、そこにいたんだ。

 

黒いマントの男の手下。

 

三人くらいで、全員がトゲトゲの槍を持ってて、顔がこわくて、

 

なんかずっと

 

「グルルル……」

 

って言ってた。

 

犬なのか人なのかよくわからなかった。

 

 

 

ピカがぼくの肩の上で震えた。

 

「タツヤくん……あれは闇の兵士だよ。勇者として戦わないと」

 

ぼくは足がガクガクして、心臓がドンドンして、

 

「む、むりだよ……」

 

って言いそうになった。

 

でもミオがぼくの手をぎゅっとつかんだ。

 

「タツヤならできるよ。だって勇者なんでしょ」

 

 

 

その一言で、胸の奥がドーンと熱くなった。

 

ぼくは前に出て、震える声で叫んだ。

 

「ぼ、ぼくが相手だああああああああ!!」

 

闇の兵士がこっちを向いた。

 

こわかった。

 

めちゃくちゃこわかった。

 

でも、ぼくは勇者だから逃げなかった。

 

 

 

……その瞬間、足がもつれて転んだ。

 

「うわあああああああああああ!!」

 

ぼくは地面を転がって、兵士の足にぶつかった。

 

兵士は

 

「グギャッ!」

 

って言って倒れた。

 

ぼくはそのまま勢いで二人目にもぶつかって倒した。

 

三人目はびっくりして後ずさりして、石につまずいて勝手に倒れた。

 

 

 

広場が静かになった。

 

ミオがぽかんとして言った。

 

「……タツヤ、すごい」

 

ピカは信じられないって顔で言った。

 

「タツヤくん……まさか転んで勝つとは……」

 

村の人たちがわああああって集まってきて、

 

「勇者だ!」

 

「すごいぞタツヤ!」

 

って言ってくれた。

 

ぼくは胸を張って叫んだ。

 

「ど、どうだ! ぼくは勇者なんだぞおおおお!!」

 

 

 

でもそのあと、調子に乗ってジャンプしたらまた転んだ。

 

ピカは頭を抱えてた。

 

 

 

 


 

 

第四章 ほんとの戦いが来た!!

 

 

闇の兵士たちを“転んで”倒した次の日。

 

村はなんだか静かで、空気がピリッとしてた。

 

みんなが

 

「黒いマントの男が動き出したらしい」

 

ってヒソヒソ話してた。

 

 

 

ぼくは胸がドキドキして、でもちょっとワクワクもしてた。

 

だって、勇者ってこういうときに活躍するんだよな、って思ったから。

 

 

 

でもピカはずっと落ち着かなくて、空中でぐるぐる回ってた。

 

「タツヤくん、昨日の戦いで闇の気配が強くなったよ。きっと来るよ……あの男が」

 

ぼくはごくりとつばを飲んだ。

 

ミオは心配そうにぼくの横に立ってた。

 

「タツヤ、無理しないでね。昨日は……その……転んで勝っただけだし」

 

「う、うん。でも、ぼく……勇者だから!」

 

そう言ったけど、足はちょっと震えてた。

 

 

 

そのときだった。

 

村の入り口のほうから、

 

ドォォォォォン!!

 

って大きな音がした。

 

地面がビリビリ震えて、家の窓がガタガタ鳴った。

 

ぼくは思わずミオの後ろに隠れたけど、

 

ミオに

 

「逆でしょ!」

 

って怒られた。

 

 

 

煙の中から、ゆっくりと黒い影が歩いてきた。

 

黒いマントの男だった。

 

マントが風もないのにバサバサ揺れてて、顔はフードで見えなかった。

 

でも、目だけが赤く光ってて、ぼくは背中がゾワッとした。

 

「勇者タツヤ……出てこい……」

 

声が低くて、地面の下から響いてくるみたいだった。

 

ぼくは思わず

 

「ひぃっ」

 

と変な声を出した。

 

ピカがぼくの肩で震えながら言った。

 

「タツヤくん……あれが世界を闇にしようとしてる男だよ……」

 

ミオがぼくの手をぎゅっと握った。

 

「タツヤ、大丈夫。あなたならできるよ」

 

 

 

その言葉で、胸の奥がじわっと熱くなった。

 

ぼくは震える足で前に出た。

 

「ぼ、ぼくが……勇者だああああああああ!!」

 

黒いマントの男はゆっくりと手を上げた。

 

空気が重くなって、風がぐるぐる回り始めた。

 

「勇者……? その弱そうな子どもが……?」

 

ぼくはムッとして叫んだ。

 

「よ、弱くない! ぼくは……ぼくは……世界を救うんだ!!」

 

 

 

でもその瞬間、足がもつれて前につんのめった。

 

「うわああああああああああ!!」

 

ぼくは地面に手をついて、ギリギリ転ばずにすんだ。

 

黒いマントの男は一瞬だけ沈黙して、

 

「……ふん。つまらん」

 

とつぶやいた。

 

 

 

でも、ぼくは立ち上がった。

 

胸の中のワクワクが、今はちゃんと勇気になってた。

 

「ぼく、逃げないぞ!!」

 

黒いマントの男がゆっくりと歩み寄ってくる。

 

空気がビリビリして、村の人たちが息をのんだ。

 

 

 

そして――

 

ほんとの戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 


 

 

第五章 ぼく、世界を救ったかも!!

 

 

黒いマントの男が、ゆっくりとぼくの前に立った。

 

空気が重くて、息をするのも苦しいくらいだった。

 

村の人たちはみんな家の影に隠れて、ミオだけがぼくの後ろに立っていた。

 

 

 

ピカがぼくの肩で震えながら言った。

 

「タツヤくん……気をつけて……あいつは本当に強い……!」

 

 

 

ぼくはごくりとつばを飲んだ。

 

足はガクガクしてるし、手も汗でベタベタしてる。

 

でも、胸の奥だけは熱くて、燃えてた。

 

「ぼ、ぼくは……勇者だああああああああ!!」

 

叫んだ瞬間、黒いマントの男が手を振り上げた。

 

空が真っ黒になって、雷みたいな光がぼくに向かって走ってきた。

 

「うわあああああああああああ!!」

 

ぼくは思わず後ろに下がって――

 

 

 

転んだ。

 

でもその転んだ勢いで、肩の上のピカが空中に飛んでいった。

 

「ちょ、タツヤくん!? ちょっと待っ――」

 

ピカはくるくる回りながら、黒いマントの男の胸のあたりに

 

ドゴォォォン!!

 

とぶつかった。

 

 

 

次の瞬間、まぶしい光が広がった。

 

村全体が白く染まって、風がビュオオオオッと吹き荒れた。

 

ぼくは地面にしがみついて、目をぎゅっとつぶった。

 

 

 

光が消えたとき、黒いマントの男はもういなかった。

 

マントだけがひらひらと落ちてきて、地面に静かに落ちた。

 

ピカは地面に転がって、ぐったりしていた。

 

「タツヤくん……い、今のは……キミの……作戦……?」

 

ぼくは立ち上がって、胸を張って言った。

 

「も、もちろんだああああああああああ!!

 ぼくの……必殺……転び……アタックだあああああ!!」

 

ミオが駆け寄ってきて、目を丸くして言った。

 

「タツヤ……ほんとに……世界を救っちゃったの……?」

 

ぼくはニカッと笑って、空に向かって叫んだ。

 

「やったぞおおおおおおおおおおお!!

 ぼく、世界を救ったんだあああああああ!!」

 

 

 

村の人たちがわああああっと出てきて、

 

「勇者だ!」「タツヤだ!」ってぼくを囲んだ。

 

ピカはまだ黒こげだったけど、ちょっとだけ笑って言った。

 

「……タツヤくん。キミは……本当に……すごいよ……(いろんな意味で)」

 

ぼくは胸を張って、力いっぱい言った。

 

「これからも、ぼくは勇者だあああああ!!

 なんかでっかいこと、もっともっとしてやるんだああああ!!」

 

 

 

空はもう真っ青で、風が気持ちよかった。

 

ぼくの冒険は、まだまだこれからだ。

 


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