ポケモンが存在しない世界にポケモンが現れた 作:名無しのトレーナー
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#ポケモン #ポケットモンスター #ドラプリ
【緊急】本当に大切な話です【事態】
チャンネル登録者数 31.2万人
わこつ
こんな時間に配信するとは珍しい
待ってた
またタイトル詐欺?
ポケットモンスターってなに?
背景が外なんだが
おはようございます!
早起き出来てエロい
「おはこんハロチャオ! どうも、ドラゴン☆プリンセスです! 今日は某所の河川敷から配信しています!」
私は登録者数30万人を超える女性配信者だ。いわゆる中堅どころで普段はゲーム実況を中心に雑談や企画配信を気まぐれにやっている。
ちなみにハンドルネームはドラゴン☆プリンセス、略してドラ☆プリだ。名前の由来は単純で本名の
「……今日は、ちょっと大事な話です」
カメラを真っすぐ見つめる。
「これから話すことは信じなくてもいいです。ただ事実として伝えます」
呼吸を整える。
「今から1週間後、この世界にポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれる未知の生き物が現れます」
この世界に『ポケットモンスター』というゲームは存在しない。しかし前世では誰もが知る世界的なゲームだった。
それを知っている私は転生者と言われる存在だ。まあ前世の記憶は朧気なのでポケモンの知識がインストールされた感覚に近いけど。はっきり覚えているのは前世が男だったことくらいか。
もちろん自らが転生者だということを声高に主張するつもりはない。なぜなら転生したことが露見してしまえば、一部の人間が「来世に期待」と思って自殺するかもしれないからだ。そうなれば私は人殺しの片棒を担いだとして世間から大バッシングを受けるだろう。
それだけは絶対に避けなければならない。配信者として当然のリスクヘッジである。もちろん人の口には戸が立てられないので時間の問題だとは思うが。
「私
敢えてアルセウスを「神」だとは明言しない。なぜなら下手に神格化されてしまえば既存の宗教勢力から猛烈な反発を招く恐れがあるからだ。ただでさえ未知の生物が現れるのだ。これ以上、余計な火種を増やす必要はない。
まあ客観的に見てアルセウスは神に近い存在だし信奉する連中は出てくるだろうけどね。私の配慮は焼け石に水に過ぎないが、やらないよりはマシだろう。
「内容は『人間とポケモンが共に生きられる社会を築け』というものです」
その使命とやらが具体的に何を指すのかは分からない。ゲームやアニメのような世界を再現しろということなのだろうか?
しかし、それらはフィクションだ。現実に持ち込めば同じようにいく保証はどこにもない。
それでも止まるという選択肢は無い。なぜならアルセウスの命令に逆らったら何をされるか分からないからだ。
あの存在は何の罪もない
そもそも現代にポケモンを送り込む時点で普通に邪悪だ。生態系への影響など考慮しているとは思えない。
「……今から証拠を見せます」
そう言って私はポーチから赤と白の球体、つまりモンスターボールを取り出した。
「出番だよ!」
モンボを軽く前方へ投げると中から白い閃光が弾けた。
「カゲェ!」
眩い閃光が収まった先に佇んでいたのは鮮やかなオレンジ色の肌と丸い頭、そして燃え上がるを尻尾を持つ1匹の爬虫類だった。それは画面越しで何度も見てきた存在だ。
えっ!?
こいつがポケットモンスターか
とりあえずスパチャ投げとくか
ナイスパ い
ぬいぐるみ?
CG?
どこの製作会社と組んだんだ?
割と可愛い見た目やんけ
「この子の名前はヒトカゲ、アルセウスから授かったポケモンです」
「カゲェ!」
その言葉を証明するかのようにヒトカゲはカメラに向けて手を振る。事前の打ち合わせ通りファンサもバッチリだ。
「今から具体的な能力を実演します」
というわけで私は木材を地面に置いた。ここは河川敷なので周りに燃える物は無い。もちろん万が一に備えて消火用の水バケツも用意してある。
「木材に向けて【ひのこ】!」
「カゲェ!」
そう言うとヒトカゲの口から弾けるように火の粉が放たれ木材へと直撃した。これにより表面は一瞬で赤く染まり炎が舐めるように広がっていく。パチパチと爆ぜる音と焦げた匂いが風に乗る。
私は間を置かずに水をかけた。ジュウッ、と鋭い音が白い湯気と共に立ち上がり、炎はあっさりと消える。
残ったのは黒く焼け焦げた木片だけだった。それを拾い上げてカメラに近づける。表面は炭化し軽く握れば崩れそうなほど脆い。
「ポケモンは怖い生き物です」
ここで嘘をつくつもりはない。綺麗な言葉で取り繕うことはできる。でも危険を伏せたまま広めれば後で必ずしわ寄せが来る。
私はヒトカゲの尻尾の炎を一瞬だけ見た。あれは癒やしでもあるが同時に火事を起こしかねない危険でもある。
「だからといって排除すれば解決する話ではありません。もし1週間後、この世界に彼らが現れたとしても、怖がるだけで終わらせず、敵と決めつけたりせず、私たちと同じ命として接してください」
そう言って私はリンゴを地面に置いた。するとヒトカゲは少し警戒しながら近づき匂いを確かめてから齧りつく。
ワイもドラ☆プリに飼われたい
普通に食べてるな
でも火を吐く生物は危険じゃないか?
人の言葉が分かるの?
感情豊かですね
カゲくん可愛い。燃やされたい。
危険だけど生き物だって感じする
リンゴ代
世の中にはフード理論という考え方がある。それは相手が美味しそうに食事をしている姿を見ると、無意識に好意的な印象を抱いてしまうというものだ。
つまり先ほどのリンゴは単なる餌付けだけではなく印象操作でもある。
「それと私と同じようにアルセウスから使命を課された人間がいます。後日、彼らがポケモンに関する情報をインターネット上で無料公開する予定です」
日本国内にいる転生者だけでも10人以上いる。そして世界全体だと数十人を超える。
おそらく単独では使命を達成できないとアルセウスに思われたのだろう。まあ私としても仲間がいるのは心強い。
「今日は存在の証明だけ。続報は出せる時に公開します」
リンゴを齧るヒトカゲを抱っこしてカメラに向ける。
「信じるか信じないかは貴方次第です」
切り抜き確定
ドラプリが言うなら信じるわ
俺は信じないが?
流石に冗談だろ
なんか書いとけ
推しがおかしくなっちゃった。これなら彼氏が出来た方がマシだよ
よく分かんないけど今日も可愛いく
「それじゃ、また」
「カゲェ!」
そう言って私たちは軽く手を振ってから配信終了ボタンを押す。すると画面が暗転し川の音だけが現実に戻ってきた。それを聞くと手のひらが汗ばんでいることに気づく。
今回の配信が成功したのかどうかは分からない。ただ後戻りは出来ないのは確かだ。
主人公のTS設定は中盤に活かす予定なので当面の間は裏設定みたいなもんです。