「――と、言う感じで今後は想定していますが……聞いてますか、賀陽さん」
「……えぇ」
無事、ライブが終わり。平常どおりに戻ったはずの事務所で、彼女は何故か、機嫌が悪かった。
「……何か言いたいことがあるなら、是非そのまま言っていただきたいのですが」
「べっつにー? あなたこそ、もっと言いたいことをはっきり言えばいいじゃない。担当アイドルが月村手毬よりも下のパフォーマンスをしてしまったんだもの。不満たっぷりでしょう?」
「あぁ……そこですか……」
そういうの、意外と気にするのか、賀陽さんでも。少し意外に思いながら、弁明をする。
「結果、上手くいったでしょう? あの後、月村さんと秦谷さん、お二人としっかり話し合われたとか」
「まぁね。各々、認識が違うところもあったみたいだし。……結局、『SyngUp!』は解散のままだけど、おかげで一区切りは出来たわ」
やはり、判断は正しかった。折角、二人をゲストにまで呼んだのだ。これで進展がなければ、お手上げだったところだった。
「まさか、そのために嘘を吐いた、なんて言い訳するつもり?」
「言い訳というか……事実ですので。賀陽さんが勝ってしまったら、結局話を先に進めないでしょう。秦谷さんも同上です」
「そんなこと……ないわよ?」
「あります。変なところで臆病ですから、あなたは」
こればかりは、断言できる。何だかんだ言って、彼女は一歩目を踏み出すことを恐れるきらいがある。
きっと、彼女が勝ってしまっていたら、話はこうスムーズにいかなかったことだろう。
「最初は、月村さんに『SyngUp!』の再結成なんて命令をされるんじゃないかと思い、震えていましたが――ライブを見て確信しました。彼女はもう、ソロアイドル『月村手毬』だと。なら、頼みたいことと言えば、ひとつでしょう」
「へぇ……あの子が何て言ったか、当てられるってわけ?」
「逃げずに話をして……とか、そんなところでしょう、恐らく」
……正解らしい。
いや、彼女は頷きすらしないが。悔しそうな顔が、そう言っていた。
「じゃあ……なにかしら。本当に順位をつけるなら、私が――」
「一番ですよ。……というか、『主観で』と言われて、自分の担当アイドルの名前以外を挙げるプロデューサー、この世に居ますか?」
「いたじゃない」
「ですから、あれは必要があったから嘘を吐いただけです。担当アイドルに良い影響を与える嘘を吐くのも、俺の役目ですので」
嘘偽りなく。あの日のライブで最も感動したのは、賀陽燐羽のステージだった。
スカウトからあんなに大変で、レッスンやらなんやらを一緒にこなしていったことを考えれば、人間誰だってそうなるだろう。
……まぁ、きっとそんな色眼鏡が無くたって、俺は彼女が一番だった気もする。恥ずかしいから、本人には言わないが。
「……そういうことにしておいてあげる」
「まだ疑っているんですか? ……仕方がないですね。ではこれから、ライブ映像を見ながら感想会をしましょう。もちろん、完全な主観で」
「そういうことにしてあげるって言ってるでしょう! いいわよ、もう!」
「そうですか、残念です」
なんだ。感想会は、是非したかったのだが。
頬を染めた彼女は、遂に目すら合わせてくれなくなって――暫くして、ボソリと独り言のように呟いた。
「……ねぇ」
「はい、なんですか」
「……約束、ちゃんと守りなさいよね」
約束。……彼女をプロデュースする上で、絶対に破ってはいけないもの。
……急に言われて、ドキリと心臓が跳ねた。――どれだ? いや、どれでも破っているつもりはないのだが。
一瞬迷って……あぁ、最初のアレか、と気づく。
「あ、あぁ、もちろんです。H.I.Fで負ければ、全力で引退ライブをセッティングしましょう」
「そっちじゃないわよ……あぁ、もう」
そっちじゃない、とは。それは、つまり――
「トップアイドル! 目指すんでしょ」
「え――は、はい」
『俺があなたを――誰もが認める、トップアイドルにしてみせる』
始まり日。確かに俺はそう言った。俺のエゴにまみれた、俺だけの約束。……しかし。
「しっかりしなさいよ、
彼女は初めて、俺を