エルフの義妹とSF研⭐️これは全てのSF愛好者へ捧ぐ文芸ジャンル戦争の物語だ!   作:やまもりやもり

14 / 36
第14話 そこにSF魂はあるのか

「いただきます」

 

 合宿所で出る朝ご飯は一般的な日本の朝食だった。

 つまり卵、海苔、納豆にご飯。そして塩じゃけに味噌汁。

 

「そうそう、萌萌ちゃんはハードSF読んでみてどう思った?」

 

 味付け海苔の封を開けながら、黒髪眼鏡の部長が何気なく質問をしてきた。

 ご飯茶碗を手にしたまま、眼鏡姿の妹は頭をかしげる。

 

「えーとですね、設定に凝ってて謎の事件が起きて、最後にオチがある感じとか、確かにミステリーに似てるかもですね」

「そうね。理系のオタクが無理して群像劇を書くから、人間ドラマも薄くなりがちだしね」

 

 手に持った海苔を一口齧った部長は、納豆のパックを手にして混ぜながら語る。

 

「実際のところ、大衆を啓蒙してやるという上から目線と、分かる人だけ分かればいいという選民思想がベースとなって、そこにアイデア一発からの雑なストーリーテリングが入り混じる感じがハードSFの醍醐味なのよ」

 

 納豆を混ぜながら長い説明を部長が終える。

 妹が卵を割りながら棒読みで答える。

 

「そうなんですね」

「でもSF魂があればロマンスがあってもいいのよ。例えば性別が三つある鳥型宇宙人の恋愛とかも素敵ね」

「えーと……」

 

 きっかり五十回、納豆を混ぜ終えた部長がそこで話題を変えてきた。

 

「それで創作会だけど、二人とも何を書くか決めた?」

 

 卵掛けご飯をモグモグと食べていた妹が、ぴょこんと顔を上げる。

 

「あのー私は、昨日言ったように、冒険ものにしようかと思うんですけど……」

「スペオペね。うん、いいんじゃない、萌萌ちゃん」

 

 部長が優しい声で言う。ちょっと安心した。

 

「それじゃ僕は」

「あ、言い忘れてたけど今回の合宿、二年生はハードSF縛りだからね」

「SFって自由じゃなかったんですか!」

 

 実は話題変わってなかったよ。

 ニヤリとした顔で部長が僕の顔を見てくる。

 

「隆史君も先輩になったんだし、後輩に君のセンス・オブ・ワンダーを見せつけてやりなさいよ」

「後輩ったって妹だし、みせつけるって、なんですかそれ」

「ほらほら、ハードSFの範疇なら好きに自由に書いていいから」

「自由っていったい??」

「俳句だって五七五という枠があっての自由じゃない。そういうものよ」

 

 ていうか待って、ハードSF縛りって何?

 ラブコメにしようと考えていたのに。一体どうしよう……

 

 

 ・・・

 

 

 もちろん創作会と言ってもこの合宿中に長編を書けるわけはない。今回はプロットを考えてキーになるシーンを書いてみるだけだ。

 

 それにしてもうーん、ハードSFってどうしたらいいんだろう……

 正直僕はエンタメよりなのでその辺には疎いのだ。

 

 ノートにメモを書きながら唸りつつ、三階建ての研修所をウロウロしていると、同じく自習室でうんうん唸っている妹を発見した。

 

「どう萌萌、小説は進んでる?」

「あーおにいちゃん、ちょっとここ困ってて、どうしようかと」

「どれどれ」

 

 萌萌の書いている小説はこんな感じだった。

 

 ――――

 深い森に住むエルフの少女が、迷い込んできた人間の青年と出会う。

 少女は、記憶を失っていた彼と徐々に心を通わせていく。

 一方そのころ、ゴブリンの群れがエルフの森に向かって進軍を開始していた。

 ――――

 

「なるほど、いいんじゃない? 冒険っぽいよ」

「でも部長、なにか言わないかな?」

 

 眼鏡っ子になった妹はちょっと心配そうな顔をしている。

 確かに気持ちは分かる。

 

「だったらこの辺にちょっと付け足して……」

「なるほどね。さすがおにいちゃんだ」

 

 感心した目の妹に見つめられて、なんだか背中がこそばゆくなってきた。

 

「そういえば、おにいちゃんはどんな感じ?」

「あーうーん、ちょっと悩んでるんだけど見てくれる?」

「もちろん、見せて見せて!」

 

 ノートに書かれた僕のプロットを、萌萌はふんふんうなずきながら読んでいる。

 

「そうねおにいちゃん、主人公が男子高校生なのはいいんじゃない? 読者も感情移入しやすいし。でも、このヒロインが幼馴染っていうのが、ちょっと……」

 

 妹は唇をアヒルにして微妙な表情だ。

 

「駄目かな?」

 

 萌萌は首をひねりながらうなずく。

 

「幼馴染とか古くない? 負けフラグが付いてるっていうか、やっぱりヒロインは妹じゃないといけない気がする」

「そっかなぁ」

「うん、おにいちゃん。ヒロインは絶対妹だよ」

 

 黒髪の妹は力強く断言した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。