放課後のLeo/needの練習室。休憩時間中、咲希がスマホを手に、弾んだ声でメンバーを呼び寄せた。
「ねえねえ、みんな見て見て! 私の心友のせーちゃんが、私の似顔絵を描いてくれたんだよっ!」
「へぇ、咲希の友達の。……東雲さんの妹さんだっけ? 確か、風景画がすごく上手な……」
一歌が興味津々で覗き込む。
「星名さんの絵かぁ、楽しみ! きっとキラキラで可愛いんだろうなぁ」
穂波も優しい笑みを浮かべて、咲希のスマホ画面を見つめた。
志歩はベースのチューニングをしながら、そっけなく呟く。
「……似顔絵でしょ。そんなに騒ぐようなこと……」
しかし、咲希が「じゃじゃーん!」と画面を向けた瞬間、練習室の空気が凍りついた。
1. 沈黙の練習室
そこに映し出されていたのは穂波が言ったような「キラキラで可愛い女の子」ではなかった。
黄金色に脈動する12本の触手が、物理法則を無視して画面を縦横無尽に駆け巡り、中央にある太陽のような眼球から、七色の破壊光線(咲希曰くハッピーパワー)が放たれている――。
背景だけは、レオニの練習室が写真と見紛うほどの美しさで描かれているため、中央の「それ」の異質さが際立っていた。
「…………。……えっ」
一歌の思考が停止し、手からピックが滑り落ちる。
「……あ、あの、咲希ちゃん。……これ、……カメラの故障かな……?」
穂波が、現実を直視できずに震える声で尋ねる。
「違うよ! せーちゃんが描いた『私』だよ! すっごく強そうで、命が爆発してる感じでしょ!?」
2. 日野森志歩の敗北
そして、一番後ろで画面を直視してしまった志歩。
彼女はベースを抱えたまま、目を見開き、口を半開きにして固まっていた。
「…………。……。…………何、これ」
「しほちゃん、どうしたの? 具合悪い?」
「……これ、……人が描いていいものじゃない。……何なの、この……網膜に直接突き刺さってくるような……名状しがたき不条理……」
志歩はガクガクと膝をつき、そのままアンプの横に座り込んだ。
彼女はフェニックスワンダーランドの怪異や、姉(雫)の過剰なスキンシップには耐性があったが、星名の「無自覚な深淵」は、彼女の合理的な精神を根底から揺さぶったのだ。
「……志歩ちゃん、大丈夫!? ほら、よく見て、この触手の吸盤、ニコちゃんマークになってて可愛いんだよ?」
「……近付けないで。……それは、……私たちが触れていい領域の存在じゃない……」
3. 結論:レオニの新たなトラウマ
結局、その日の練習は志歩のリズムがガタガタになり、早めに切り上げられることになった。
「……咲希。……その東雲さん、だっけ。……今度、紹介して」
一歌が、恐怖と知的好奇心が混ざった複雑な表情で言った。
「いいよー! せーちゃん、一歌ちゃんたちのことも描きたいって言ってたし!」
「「「…………っ!!」」」
咲希以外の3人は、同時に「自分たちがクリーチャー化される未来」を想像し、戦慄した。
特に志歩は、その夜、自分のベースから触手が生えてくる夢を見て、夜中に飛び起きることになる。
一方、神高では。
「……はくしょんっ。……誰か、噂してるのかな?」
星名がのんびりとスケッチブックを閉じ、下校の準備を始めていた。
メンバーの被害(?)状況
• 一歌: 星名の「背景の神々しさ」には感動したが、主役(クリーチャー)のインパクトで歌詞が全部飛んだ。
• 穂波: 「これもお野菜……? いや、違うわよね……」と、料理の材料で例えようとして思考を放棄した。
• 志歩: 完敗。星名を「神高の禁忌」として認定し、関わる際は精神安定剤が必要だと判断。
• 咲希: 全く気付いていない。「みんな、せーちゃんの絵に圧倒されて言葉を失っちゃったんだねっ!」と大満足。