プロセカ反応集・短編集   作:白雪琉衣

13 / 25
短編集エピソード:『黄金の肉汁と、解けない魔法のギャップ』

日野森志歩は、今もなお自分のベースケースの隙間から「黄金の触手」が生えてくる幻覚に悩まされていた。そんな彼女のもとへ、咲希がピンク色の可愛らしいランチボックスを抱えてやってくる。

1. 警戒:美しすぎる「普通」

「しほちゃん! せーちゃんから、今度こそ本当にお詫びの品だよ! 」

「……。悪いけど咲希、私はもう……あの人の作ったものは、形があるだけで怖い」

志歩は拒絶反応を示したが、咲希に押し切られる形で蓋を開けた。

そこにあったのは、昨日見た「深淵の精霊」とは対極にある、あまりにも完璧で、あまりにも「普通」なハンバーグ弁当だった。

「……。……普通ね。……普通すぎて、逆に怖いくらい」

「でしょ!? せーちゃん、風景画の時と同じ集中力でこれ作ったんだって!」

彩り豊かな副菜。ふっくらと厚みのあるハンバーグ。どこにも多すぎる目玉も、物理法則を無視した触手も存在しない。

2. 実食:細胞が視る「風景」

志歩は、念のためにハンバーグを箸で割り、中に「何か」が仕込まれていないか確認してから、意を決して一口食べた。

その瞬間。

志歩の脳内に、衝撃が走った。

「(……っ!? なに、この……圧倒的な、美味しさ……)」

口の中で溢れ出す、暴力的なまでの肉汁。しかしそれは決してくどくなく、どこまでも透き通っている。

目を閉じると、脳裏には広大な、見たこともないほど澄み渡った「青空と草原の風景」が広がっていく。

星名の風景画にある、あの圧倒的な包容力と透明感が、味覚となって志歩の全身の細胞に染み渡っていくのだ。

「(……おいしい。……悔しいけど、今まで食べた何よりも、美味しい……)」

これを作った人間が、あの「呪物」を描いた本人だとは到底信じられない。このハンバーグは、純粋に「志歩に元気になってほしい」という優しさだけで構成されていた。

3. 結論:理解不能な「東雲星名」

完食した後、志歩はお皿を見つめたまま、深い溜息をついた。

「……どうしたの、しほちゃん?」

「……咲希。……あの人のこと、やっぱり理解できないわ。……こんなに優しくて、美しいものを作れる手が、どうしてあんな『名状しがたきもの』を生み出せるのよ……」

「あはは! それがせーちゃんの魅力なんだよ! 料理も絵も、せーちゃんにとっては『全部本気』なんだって!」

志歩は、胃袋を満たす幸福感と、脳裏にこびりついたクリーチャーの残像のギャップに、めまいを覚えた。

あの恐ろしい絵も、この奇跡のように美味しいハンバーグも、同じ一つの源泉から溢れ出したものなのだ。

「(……負けたわ。……あんなもの(クリーチャー)を描けるからこそ、この味に辿り着けるのかしら……)」

志歩は、自分の価値観が根底から揺さぶられるのを感じながら、心なしか軽くなった足取りでベースを担ぎ直した。

結局、彼女は「東雲星名」という巨大な才能のグラデーションに、完全に飲み込まれてしまったのだった。

  その後の反応

• 日野森 志歩: 「……ハンバーグは、また食べたいわ。……でも、絵だけはやっぱり、遮光カーテンで隠してほしい」と、複雑な評価を下す。

• 天馬 咲希: 「せーちゃんの料理で、しほちゃんの魂が浄化されたよ! よかったぁ!」と大喜び。

• 東雲 星名: 「志歩ちゃん、美味しかったかな? 次は、志歩ちゃんがハンバーグを食べてる時の幸せな気持ちを、また『絵』にして持っていこうかな!」

「「絶対にやめろ(やめて)!!!」」(彰人・志歩)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。