天馬 咲希:『太陽のダイブ』
「せーちゃぁぁぁん!! やったよ! 私たち、今までで一番の演奏ができたよぉぉっ!!」
一番に飛び出してきた咲希が、勢いそのままに星名の正面から抱きついた。ライブの熱で上気した肌と、興奮で早まった鼓動が星名にダイレクトに伝わる。
「咲希ちゃん、おめでとう。……今の咲希ちゃんは、真夏のひまわりが100本いっぺんに咲いたみたいな、眩しいオレンジ色をしてるよ」
「えへへ、せーちゃんのおかげだよ! あの時手を握ってくれたから、魔法にかかっちゃったんだもん!」
小豆沢 こはねの場合:『ハムスターの猛進』
「星名さん……! 私、私……っ!」
一番に駆け寄ってきたのは、いつもはおっとりしているこはねだった。彼女は勢いそのままに星名の胸に飛び込み、その小さな身体をぎゅっと抱きしめる。
「こはねちゃん、お疲れ様。……今のこはねちゃん、身体の中から『黄金の火花』がパチパチ跳ねてて、すごく格好いいよ」
「……っ! 星名さんの手の温かさが、ずっと残ってたんです。……勇気をくれて、本当に、ありがとうございます……!」
こはねは星名の服を掴んだまま、幸せそうに目を潤ませていた。
白石 杏の場合:『ユニット仲間の妹への独占欲』
「 ちょっとこはね! 私も混ぜてよ!星名ーー!!」
杏がこはねごと星名を包み込むように抱きしめる。ライブの熱気で火照った杏の体温が、星名に直接伝わってくる。
「星名ちゃん、見てた!? 私たちの最高の夜! あんたがいてくれたから、私、今までで一番自由に歌えた気がする!」
「うん、杏ちゃん。……杏ちゃんの声はね、シブヤの夜空を切り裂く『青いレーザー』みたいに見えたよ。……最高に綺麗だった」
「あーもう、可愛いこと言ってくれるんだから! 離したくないなぁ、もうこのまま打ち上げに行っちゃおうよ!」
青柳 冬弥の場合:『冷静な確信犯』
「……。……失礼する」
二人に揉みくちゃにされている星名の背後から、冬弥が静かに、けれど逃がさないという強い意志を持って腕を回した。
「おい、冬弥!? お前まで何やってんだ!!」
彰人の制止も、今の冬弥には届かない。彼は星名の肩に顎を乗せ、深く息を吐いた。
「彰人、静かにしてくれ。……今、ライブで高揚しすぎた俺の脳が、星名の放つ『静寂の色彩』を求めているんだ。……。……星名、君の手の熱は、間違いなく俺たちの音楽の一部になっていた。感謝する」
「……冬弥くん。……冬弥くんの心臓、まだダンスしてるみたいに速いね。……よしよし」
星名が冬弥の背を優しく撫でると、冬弥は満足げに目を閉じた。
東雲 彰人の場合:『守護者の決壊』
「お前ら……! セナをなんだと思って……っ、おい杏! 冬弥! こはねも離れろ!!」
彰人が必死に三人を受け流し、ようやく妹を取り返そうとした時。星名が、ふらふらになった兄に向かって両手を広げた。
「彰人。……一番頑張ったお兄ちゃんにも、『お疲れ様』のハグ、あげる」
「……ッ!!」
その瞬間、彰人の防衛本能は音を立てて崩れ去った。彼は毒づくことも忘れ、三人を押し退けて星名を力いっぱい抱きしめた。
「(……クソ。……こいつの匂い、落ち着きすぎて……ライブの興奮が全部……涙になりそうじゃねぇか……)」
彰人は妹の肩に顔を埋め、誰にも見せないように、けれど一番切実に、その温もりを独り占めしようとした。
草薙 寧々の場合:『歌姫のデレ・モード』
「……ちょっと、二人ともうるさいわよ。……星名さんが、困ってるじゃない」
そう言って二人を遠ざけようとした寧々だが、彼女もまた、興奮で頬が上気していた。寧々は星名の正面に立ち、少しだけ躊躇した後、自分からそっと星名の首に手を回した。
「……星名さん。……ありがと。……あんなに高い声、出せたの、初めてかも。……あなたの手の温かさが、喉の奥に残ってたから……」
「寧々ちゃん。……寧々ちゃんの声はね、今、月まで届いて『銀色の雨』を降らせてるよ。……素敵な歌を、ありがとう」
星名が寧々の背中を優しく撫でると、寧々は「……、……もうちょっと、こうしてて」と、星名の肩に顔を埋めた。
宵崎 奏の場合:『命の帰還』
「……できた。……届いたよ、星名さん……っ」
モニターの光を背負い、膝から崩れ落ちた奏。星名が駆け寄り、その細い身体を受け止めると、奏は力なく星名の首にしがみついた。
「奏さん、お疲れ様。……今の奏さんは、真っ白な光のなかで『虹色の涙』を流してるみたいに、すごく綺麗な色がしてるよ」
「……。……。……星名さんの、心臓の音を聴かせて。……私が、……まだここにいてもいいって、……証明して……」
奏は星名の鼓動を音楽のように聴きながら、自分の生を確かめるように強く、折れそうなほど強く星名を抱きしめ返した。
朝比奈 まふゆの場合:『感覚の逆流、再び』
「……東雲、さん。……。……胸が、苦しいの。……熱くて、……壊れそう……」
感情が「色」となって押し寄せ、パニックに近い高揚に震えるまふゆ。星名は何も言わず、まふゆの背中に腕を回し、彼女の頭を自分の胸に引き寄せた。
「まふゆさん。……それはね、『嬉しい』の欠片が暴れてるんだよ。……私が、全部受け止めてあげるから」
「……。……。……あなたの腕のなか、……やっぱり、あつい。……。……このまま、……あなたのなかに、……溶けてしまいたい……」
まふゆは初めて「いい子」の仮面も、虚無の瞳も関係なく、ただ一人の人間として、星名の温もりに執着するように縋り付いた。
暁山 瑞希の場合:『秘密の瓦解と、無邪気な抱擁』
「あはは……! やったよ、星名! 今日の動画、最高に『ボクら』らしい出来だよ!!」
瑞希は涙を拭いもせず、星名の腰に抱きついてぐるぐると回転した。その明るい声の裏には、自分をさらけ出した恐怖と、それを受け入れてもらえた快感が混ざり合っている。
「瑞希ちゃんの色彩が、世界中の夜を塗り替えてるよ。……格好いいね、瑞希ちゃん」
「……っ。……。……もう、本当に星名ちゃんはズルいなぁ……! 今日だけは、ボクを離さないでよね! この『最高』の気分のまま、君を独り占めするんだから!」
瑞希は星名の首に腕を回し、子供のように無邪気に、そして切実にその肩に顔を埋めた。
東雲 絵名の場合:『姉の誇りと、妹への全肯定』
「……見た!? 星名! 私の絵、あんなにたくさんの人が……っ、認めてくれた……!!」
絵名は震える手でスマートフォンを握りしめたまま、星名に向かってダイブした。
「姉さんの情熱が、みんなの心の深淵に届いたんだね。……おめでとう。……私はずっと、姉さんのファンだよ」
「……。……。……あんたに言われるのが、一番……くるのよ。……。……星名、……私の妹でいてくれて、……本当にありがとう……」
絵名は星名を抱きしめながら、溜まっていた不安を涙と一緒に全部吐き出した。それは姉妹の枠を超えた、魂と魂の共鳴だった。