神山高校の文化祭。賑わう廊下を、どこか浮世離れした雰囲気の少女たちが歩いていた。案内役は、1-Bの背景担当・星名の姉である絵名だ。
「……もう、星名ったら。背景だけ描けばいいって言ったのに、どうしても一つだけ『自慢の妖精』を入れたいって聞かなくて……」
絵名が頭を押さえながら、1-Bの教室「人形劇シアター」へと一行を導く。
1. 圧倒的な「風景」への感嘆
教室に入ると、照明が落ち、プロジェクターによって星名の描いた背景が映し出された。
『……。……すごい……』
奏が、思わず立ち止まって画面を見つめる。
『……光の粒子が、……音楽を求めてるみたい。……星名さんの絵には、……救いがある……』
奏の瞳には、星名が描いた深い森の、圧倒的な透明感が映っていた。
まふゆも無機質な瞳を画面に向ける。
『……。……空気の冷たさが、伝わってくる……。……嘘がない、いい風景……』
瑞希は興奮気味に身を乗り出した。
「えななん、これ本当に星名ちゃんが描いたの!? プロの資料かと思ったよ! 10万イイネじゃ足りないくらい、ボクたちのMVに今すぐ欲しい!」
絵名は少し鼻を高くしながらも、「……でしょ? 背景『だけ』なら、私の自慢の妹なんだから」と付け加えた。
2. 混入した「異物」への衝撃
劇のクライマックス。美しい夕焼けの背景の中、物語の鍵を握る「森の主(妖精)」が登場した。
『……。……?』
奏の表情が凍りつく。
まふゆの瞳に、わずかなハイライトが戻った(驚愕のため)。
瑞希は、持っていたクレープを落としそうになった。
「……ね、ねえ、えななん。……あの、画面中央で、……幸せそうに触手をうねらせている……目玉が左右に動いてる『アレ』は……何?」
「……星名が描いた『妖精さん』よ。……あの子、どうしてもこれが『最高の出来だ』って譲らなくて、草薙さんが泣く泣く一瞬だけ映すことを許可したの……」
『……。……怖い……。……でも、……なんだか、……目が離せない……』
奏が震えながら呟く。
『……。……理解、できない……。……どうして、この美しい景色に、……この『呪物』を置けるのか……。……星名さん、……深い……』
まふゆは、星名の精神構造に興味を持ち始めたようだった。
3. 展示後の交流
劇が終わり、受付にいた星名、冬弥、寧々が駆け寄ってくる。
「あ、姉さん! 奏さんたちも、来てくれたんだね!」
星名は満面の笑みで、クリーチャーを描いた時と同じ純粋な瞳で一行を迎える。
「……星名さん。……背景、……すごく、よかった……。……曲が、……書きたくなる、風景だった……」
奏が、妖精の衝撃を必死に抑え込みながら、星名の手を取る。
「……星名ちゃん。……ボク、本気で相談があるんだけど。……あの『妖精さん』、……アクスタにしてもいいかな? ……一部の層に、めちゃくちゃ刺さりそうなんだけど」
瑞希がスマホで撮ったクリーチャーの写真をまじまじと見つめる。
「本当!? 瑞希ちゃん、分かってくれるんだね! 嬉しいな!」
神高の文化祭。星名の極端な才能は、ニーゴという特別な観客たちをも、驚愕と感動の渦に巻き込んだのだった。