文化祭の片付けが終わった週末。東雲家のリビングは、かつてないほどの密度に包まれていた。
彰人と絵名の仲間たちが集まり、星名の「お疲れ様会」が開かれることになったのだ。
1. 東雲家の台所、フル稼働
「……よし。これでデコレーションは完璧」
キッチンで星名が最後の一仕上げを行う。目の前にあるのは、テーブルの半分を占拠するほどの巨大なスクエアケーキ。
ビビバスのロゴ、ニーゴをイメージした紫のグラデーション、そしてワンダショらしいカラフルな装飾が、見事な「風景画」のように配置されている。
リビングからは、すでに騒がしい声が聞こえてくる。
「フハハハ! 星名、手伝うことはないか! スターはこの通り、胃袋の準備は万全だぞ!」
「司先輩、座っててください。……彰人、みんなに飲み物出して」
「……分かってんだよ。ほら、オレンジジュースでいいか?」
彰人が不器用にもてなす中、冬弥は真剣な眼差しでキッチンを見つめていた。
「……星名。あのケーキ、……遠くから見ても、一つの『完成された舞台』のような調和を感じる。……食べるのが惜しいほどだ」
2. ケーキ、お披露目
「みんな、お待たせ。文化祭、本当にお疲れ様でした!」
星名が慎重に運び出した巨大ケーキに、全員が息を呑んだ。
「……すごい。……食べるのが、もったいない……」
奏が、宝石を見るような瞳で呟く。
「わあ、可愛い! 星名ちゃん、これ全部一人で作ったの!? センス良すぎでしょ!」
瑞希がスマホを構えて連写する横で、杏も「これ、売り物にしようよ!」と身を乗り出す。
寧々は、ケーキの端にある小さな装飾を見て、少し肩の力を抜いた。
「……あ、……あの妖精さん、……砂糖菓子(マジパン)になってる……」
「あ、気づいてくれた? 寧々ちゃんたちの劇の成功を祈って、真ん中に置いてみたんだ」
美しい風景の真ん中に鎮座する、『砂糖で精密に再現された、ピンク色の多足クリーチャー』。
「……。……星名。……これだけは言わせてくれ。……味は最高だが、この『主』だけは……噛み切るのに勇気が要りそうだ」
冬弥が、大真面目にクリーチャーの首(?)をフォークで狙い定めた。
3. ユニットを超えたひととき
ケーキを切り分け、全員で頬張る。
星名の作ったケーキは、見た目以上に繊細で、甘さ控えめの優しい味がした。
「……ん。……美味しい……。……冷たくて、……温かい味がする……」
まふゆが、珍しく自分からおかわりを求めた。
「でしょ!? 私の自慢の妹なんだから!」
絵名が自分のことのように胸を張る。
「……おい、司先輩。……セナのケーキ、勝手に二個食うなよ」
「何を言う、彰人! これは芸術への敬意だ! ……しかし、星名。この妖精のマジパン、……なんだか、食べていると力が湧いてくる気がするぞ!」
司がクリーチャーを一口で食べると、なぜかリビング全体に妙な一体感が生まれた。
違うユニット、違う学校。けれど、星名の料理と、その少しだけズレた愛すべきセンスを中心に、誰もが笑顔になっていた。
「……よかった。……彰人も、姉さんも。……みんなが笑ってるのが、私にとって一番のご褒美だよ」
星名は、空になったお皿を回収しながら、幸せそうに目を細めた。
東雲家のお疲れ様会は、甘い香りと、絶えない笑い声と共に更けていった。
打ち上げの様子(ダイジェスト)
• 天馬 司: ケーキを「スターの輝き」と絶賛し、クリーチャーマジパンを真っ先に完食。
• 青柳 冬弥: ケーキの断面の層を「地層のような歴史」と称え、分析しながら味わう。
• 草薙 寧々: 「……美味しい」と呟きながら、クリーチャーが消えたことに密かに安堵する。
• 宵崎 奏: 星名のケーキで、作曲のアイデアが浮かんだと感謝する。
• 東雲 彰人: 文句を言いながらも、一番最後まで残ったクリームを片付けるのを手伝う。