WEEKEND GARAGEで行われる、若手イベントの夜。
メインアクトのVivid BAD SQUADの出番直前、杏が不敵な笑みを浮かべて楽屋に現れた。
「ねえ彰人、ちょっと今夜は趣向を変えない? スペシャルゲストを呼んであるんだ」
「あ? 誰だよ。……って、おい、なんでセナがここにいんだよ!」
彰人が指差した先には、スタッフジャンパーを着てドリンクの準備をしていた星名が、杏に腕を掴まれて戸惑っていた。
「彰人の喉の調子が万全じゃないなら、最高のバックアップが必要でしょ? 星名、準備はいい?」
「えっ、杏ちゃん!? 私、裏方でいいって――」
「ダメ! あの時聴かせてくれたハモリ、ここで出さなきゃ一生後悔するよ! ……ほら、彰人も! 妹にいいところ見せなよ!」
1. ステージ:衝撃の第一声
観客の熱気が渦巻く中、彰人と星名がステージに並び立つ。
「……おい。セナ、俺から離れるなよ」
「……うん。分かった、彰人」
彰人がイントロに合わせて、鋭い声を出す。それに重なるように、星名が天を突くようなハイトーンを響かせた。
「――っ!?」
観客席が、一瞬で静まり返った。
彰人の「泥臭く、地面を這うような熱さ」と、星名の「どこまでも透明で、鋭利な冷たさ」。
相反する二人の声が、東雲家特有の完璧なリズム感で編み上げられていく。
「なんだあの女の子……! 東雲の身内か!?」
「ハモリが正確すぎて、一つの楽器みたいに聞こえる……!」
2. 兄妹の共鳴
曲のサビ。星名は隣で必死に歌う彰人の横顔を見て、幼い頃のことを思い出していた。
いつも自分の前を走り、傷ついても立ち上がっていた背中。
「(……彰人が、一番輝ける場所は、ここなんだね)」
星名の声に、さらに力が宿る。彰人の声を「支える」のではなく、極限まで「引き上げる」ための旋律。
それに応えるように、彰人の声も今まで聴いたことがないほど熱く、深く響き始めた。
冬弥はステージ袖で、その光景を静かに見つめていた。
「……。……これこそが、東雲彰人の真のポテンシャルか。……星名がいることで、彼は『王』になれるんだな」
杏も満足げに頷く。
「でしょ? 最高のデュエットなんだから」
3. 終演後の喧騒
最後のロングトーンが消えた後、会場には地鳴りのような拍手が沸き起こった。
ステージを降りた二人は、肩で息をしながら顔を見合わせる。
「……はぁ、……はぁ。……セナ。お前、……やりすぎだ。俺を食うなよ」
「……あはは。彰人があまりに必死だから、つい楽しくなっちゃって」
そこへ、興奮した観客や他ユニットのメンバーが押し寄せてくる。
「星名ちゃん! 今日の録音、ニーゴの次の曲のサンプリングに使わせてもらえないかな!?」
奏が、かつてないほどのスピードで星名に駆け寄り、スマホを差し出す。
「おや……! 星名くん、あの歌唱中のステップ。……君、やっぱりワンダショで『歌う妖精ロボ』を演じるべきだ!」
類もまた、怪しい光を瞳に宿して近づいてくる。
「……おい神代先輩、どさくさに紛れて変な勧誘すんな! セナ、帰るぞ!」
彰人は妹を隠すように、また、彼女の才能が世間に見つかってしまったことへの誇らしさと焦りを抱えながら、足早に楽屋へと引っ込んでいった。
各キャラクターの反応
• 白石 杏: 「やっぱり私の目に狂いはなかった!」と大満足。定期的に星名を引っ張り出そうと画策。
• 青柳 冬弥: 兄妹の絆に感動し、その夜の自習ノートに「東雲家における共鳴理論」を20ページほど書き留める。
• 宵崎 奏: 星名の声の「波形」を分析し、自分の曲の一部にできないか本気で悩み始める。
• 東雲 絵名: 「なんで私抜きで盛り上がってんのよ!」とSNSの動画を見て地団駄を踏みつつ、こっそり何度もリピート再生する。