とある科学の超電磁砲 -世界クルーズ編-   作:wade

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プロローグ

心地よい風が頬をくすぐり、独特な潮の香りを運んでくる。まだ旅は始まったばかりだが、もし今評価アンケートを渡されたら、満点に近いスコアを書き込んでしまいそうだ。

御坂美琴は、大海原を眺めながらそんなことを考えていた。

 

超巨大豪華客船ディオーネ。日本有数の造船企業と学園都市が開発に携わったこの船は、ギリシャ神話に登場する女神の名を冠するのにふさわしい外観と内装を備えていた。

全長は600m。あのタイタニック号の2倍以上と言えば、その凄さは十分伝わるだろう。

 

現在、美琴がいるのはその最上階デッキ。

広い甲板には、幸運にも今回のテスト航海に当選した人々で溢れていた。その多くは、美琴と同じ学園都市の学生たちである。

時刻は夕暮れ時。水平線の彼方に沈もうとしている太陽と海のコントラストが、実に良い雰囲気を醸し出している。

 

ふと周りを見渡すと、美琴はやけに男女の組み合わせが多いことに気づく。そして、どの組み合わせも甘ったるい、色で言うならピンクの感じを漂わせていた。

瞬く間に先ほどまで感じていた高陽感は吹っ飛び、美琴は急に居心地の悪さを感じ始めた。

 

(…ったく、なんなのよこれ…!)

 

怒りとか恥ずかしさとか、とにかくいろんな感情が混じる。

とはいえ、それを台詞にして吐露するわけにもいかず。

美琴は、ただただ船の手すりを握る力を強くするしかなかった。

そして急激な脱力感、思わず溜息が出る。

 

「はぁ…、私も愛しのあの人と一緒に来たかったなあ」

 

「へ…!?」

 

聞き覚えのある声が自分の溜息をかき消す。びくっと反射的に声がした右方向に顔を向けると、そこには祈るように両手を組んだ佐天涙子がいた。

長い黒髪を靡かせた中学1年生は、美琴の方へ顔を向けると、いたずらっぽくウインクを送ってきた。

 

「み、御坂さん好きな人いるんですか!?」

 

間髪入れず、涙子の反対側、美琴の左方向から初春飾利がひょっこりと顔を覗かせた。

この船旅用に特別にあしらったのか、普段と若干違うデザインの花飾りをつけた少女は、興味津々といった感じでこちらに視線を向けてくる。

 

「ち、ち、ち、違うってば…!えっと…!アイツはそんなんじゃなくて…!いや、違う違う!というか、別に私は好きな人なんて…!」

 

((もー、可愛いなー))

 

あたふたする1学年上の先輩に、涙子と初春は穏やかなニヤケ顔を浮かべていた。

 

「いいえ、お姉さまに意中の方はいらっしゃいます!そして、その方をこの黒子。しっかりと存じていますわ!」

 

突如、ディオーネ号の最上階デッキに響き渡る甲高い声。

振り返った3人の視線の先には、仁王立ちで両手を腰に当てた白井黒子がいた。

 

「は、はぁ!?黒子、あんた一体何言って…!」

 

「お姉さま、私は嘘をつくこと。それはこの世で一番罪なことだと思ってますの。ですから、ここでハッキリとするべきですわ」

 

「ハ、ハッキリってあんたまさか…」

 

「みなさん、ここにいる御坂美琴お姉さまの意中の方!それは!」

 

「ちょっ、ちょっと!」

 

「この私、白井黒子ですの!!!!!」

 

………

 

……

 

…       

 

「は…?」

 

「え…?」

 

「へ…?」

 

「そして、この私もお姉さまを愛していますの。つまり相思相愛!ですから、みなさん!このお姉さまにちょっかいを出そうものなら」

 

バチィィィ!!

 

常盤台の超電磁砲。学園都市に7人しかいないレベル5の少女が体から発している電撃には、誰がどう見ても明確な怒りが込められていた。

 

「あ、あの御坂さん…」

 

「お、落ち着いてください…!」

 

だが友人たちの声は、怒りの沸点を通り越した電撃少女に届くはずもなかった。

 

「お、お姉さま…、どうしてそんな怖い顔をなさって…」

 

「アンタの…せいだろうがあああああ!!!!」

 

「ああああああああああああああああッ…!!!!」

 

船内の隅々にまで響き渡った断末魔が、その後ちょっとしたパニックを引き起こしたことは言うまでもない。

 

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