魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
遠い未来の話
「逆説構造体、形成。刻寿測定針、セット。生命距離弾、逆説から真説へ。レイヤー、セーフロック。」
別世界で生み出されたその輝きは、目前の巨獣へと狙いを定める。
ヌヴィレットさん、フォカロルスさん、ありがとうございました。そして安心してください。この剣をきっと、先輩に届けてみせます!
『希望証す人理の剣(レイプルーフ・キリエライト)』
発射されたそれは、時空を正す剣である。
その余波は現代にとどまらず、過去を打ち抜いた。
その衝撃をもって、特異点は修正される。
これは、その過去を描く物語である。
レイシフトを終えると、見知らぬ場所にいた。
私にとって、知っている場所というのはまだ少ないけれど、ここは本当に一切の知識のない場所だった。
歌劇場、だろうか。それを見下ろす場所に私は立っていた。
目の前には小さな椅子に、一人の少女が眠っている。
閉じた瞼から、涙を流して。
「すいません、あなたは...」
「ごめんね。起こさないであげてほしい。」
遮る声がする。背後には、眠る少女とうり二つの少女が立っていた。
「観光客かな?それとも救世主?どっちにせよ、残念ながら、来るのが遅かったようだね。ここにはもう希望も何も残っていないよ。」
「あなたは、一体?」
「僕の名前はフォカロルス。あれ、これで通じない?水神フォカロルスだよ。」
私は目を見開く。自らを神と名乗ったことだけではない。その少女の瞳には光が一切なかったからである。
「どうやってここに来れたか、あの壁を越えてきたかは聞かないよ。少し、独り言に付き合ってくれるかい?もうすぐヌヴィレットが帰ってくる。まだエリナスを倒せば元に戻ると思っているんだよ。かわいいよね。炎を消しても、灰になったものは元に戻らないというのに。」
「状況を、教えてもらえますか?力になれるかはわかりませんが、きっと、お困りのようなので。」
フォカロルスと名乗る少女は少し悲しそうな笑みを浮かべ、
「うん、状況説明も独り言のうちさ。まずは君の名前を教えてくれるかい?」
「はい、私はクラス、シールダー・パラディーン。マシュ・キリエライトという者です。この世界を救うために、カルデアより訪れました。」
「まさか本当に現れるなんてね。占星術師の読みというのは偽物じゃないらしい。彼女には悪いことをしてしまったかな。」
これが私とフォカロルスさんとの出会い。
終わってしまったフォンテーヌにおいての、最後の分岐点です。
「つまり、この国にはもう人間は存在しないということですか?」
「うん、まぁもともと人間と言えるかは怪しかったけど、自分たちを人間だと思っていたフォンテーヌ人たちはみんな溶けて居なくなったよ。」
マシュは険しい表情を浮かべる。「遅かった」という言葉の意味を理解してしまった。
ここはテイワット大陸と呼ばれる世界の一国家である、フォンテーヌという国らしい。
ここに住んでいた人々はもともと精霊のような存在で、それらを原始胎海という名の特殊な海水が飲み込み、溶かしてしまったのだという。
「といっても、もうだいぶ昔の話さ。いまはそれ以外の種族が住んでいるよ。」
「その、人間のほかにも種族が?」
珍しい話ではない。異聞帯でのはなしになるが、ロシアではヤガと呼ばれる獣人の国だったし、ブリテンでは妖精がほとんど、ミクトランではディノスという恐竜?だった。
「うん、彼らの名前はメリュジーヌ。迫害を乗り越え、共生をなしたとたんに霊長を獲得してしまった。種族さ。」
「メリュジーヌ、ですか。」
その名を聞いて、マシュは一つ合点がいった。ダヴィンチちゃんの言う通り、ここは
つまり、レイシフト先に間違いはない。わたしがこの地、この時に飛ばされたことには、理由がある。
それが、先輩とはぐれ、カルデアとも連絡を取れない私の唯一の救いだった。
「先輩、どうか無事でいてください...」