魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
盾と鎌と鯨
全く気にかけていなかったわけではない。少なくとも、数多の戦場にいなければできないような目をしていた。
ただ自己申告の通り、直接の戦闘力があるとも思えない。
こうゆう手合いには大抵、何かがある。
「誰だ貴様、どこから現れた。」
「どこから、と聞かれると難しいな。カルデアからと言うわけでもないし、強いて言うならブリテンから、か。」
強い衝撃の後、召使は宝具によるダメージを受けてもなお、いまだ臨戦態勢をくずしていなかった。
「俺にはマスターを守る義務がある。まだ続けるのなら容赦はできそうにないが。」
「優しさか、強さゆえの余裕か。」
召使はしばし逡巡した後、意を決したのか獲物を構えた。
「そうか、なら仕方ない。」
召喚時のショックで気を失っていた藤丸が目を覚ますと、盾の英霊と召使の激戦が繰り広げられていた。召喚されたのはもちろんマシュではない。令呪による移動ならともかく、今回のは確実に召喚だった。ならば、それはマシュ以外の英霊を指す。
「まさか、ギャラハッド!」
「目覚めたか、マスター。召喚早々酷い状況だな。」
藤丸のよく知るラウンドシールドとは別物だが、ついこの前の特異点で見た、あの英霊だった。
「少し約束があってね、君を守らなくてはならない。」
状況はギャラハッドの方が優勢だ。召使は大技を披露した直後というのもあり、消耗している。ただ、まだ何かを残しているような雰囲気もあった。
「君はその力をつわないのかい?出し惜しみしている状況ではないと思うが。」
ギャラハッドは召使の与える命の契約を全て盾で受け切っている。召使にとってそれは、戦闘をする上でかなり致命的なものだった。
「仕方あるまい、こちらも退けぬ理由があるからな。」
再度、赤い月が昇る。
一体が嫌な気配で包まれる。
「なるほど、人間に仇なす類の力か。」
ギャラハッドもラウンドシールドを地に立て、構える。
そこで
ブォォォォォン
と、化け物の声が聞こえた。
「これは…まさか」
召使が赤月の力を止めたと同時に、ギャラハッドも盾を構え直した。
直後、召使とギャラハッドの間の世界が、割れた。
「旅人、あれは!」
「うん、タルタリヤの技に似てる。でも、もっと大きい!」
召使の使う赤月の力は、アビスによるものだ。
それに反応したのか、呑星の鯨が顕現した。
「お前はカルデアから来たものか?」
涼しい声が鯨から聞こえた。正確には、その割れ目の中からだ。
「そうか、では殺さなくてはならない。」
「極悪騎スルトロッチが弟子、スカークだ。殺される相手の名前は知りたいだろう?」