魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス   作:旅人さんた

18 / 60
ダブルベッドの部屋

「これは...」

 

フリーナとのあいさつをすました後、案内されたホテルへと向かった。

 

用意された部屋は、ダブルベッドのスタンダードタイプ。

 

従業員からは、できるだけ良い部屋を用意したかったが、フォンテーヌ各地から逃げ込んできた人が多く、2人で泊まれる部屋は他になかったらしい。

 

「あ、あのトネリコ。俺はソファーでいいから...」

 

「なぜ?これは二人で寝るためのものでしょう?お疲れでしょうしわざわざそんな無駄な事しなくても...」

 

「そういう問題じゃ...」

 

「一応言っておきますが、この私は基本的にカルデアに召喚されたモルガンと霊器を共有しています。えと、その、夫なのでしょう?」

 

「それに...」

 

「誰かと一緒に寝るというのは、久しぶりなので少し安心できます。」

 

ということで、そういうことになった。

 

ここのホテルの料理は絶品だと聞いていたので、楽しみだったが、営業時間外となっている。無理もない。パレエルモニアについた頃にはもう外は暗くなっていたのだから。

 

トネリコがシャワーを浴びている間、俺は外の散策をすることになった。

断ってからだとダメだと言われそうなので、黙って。

フォンテーヌ廷の治安はマシナリーのおかげである程度安定しているという。

 

(正義の国か...)

 

それを聞いた最初の印象は、抑圧された国だったが、多少不思議な法律があるだけで国民はある程度自由に暮らしている。

 

(とりあえず情報の聞き込みかな。)

 

ホテル・ドゥボールを出ると、左方から声が聞こえた。

階段を降りると、夜だというのに騒がしい。

 

告知版を読んでみ...読めない。

 

やっと気付いた。この世界の文字は読めない。

となると、ノックするしかない。

 

「ん、なんだ?」

「おい、お前出て来いよ。」

「おーい!空いてるよ!」

「ちッ面倒だな。」

 

歓迎されてはいなさそうだ。しばらく待っていると、白髪の男が出てきた。

 

「ん、なんだ子どもじゃねえか。どうした、迷子か?」

 

「ここはなんのお店なんですか?」

 

「店っつーか、サロンだよ。わかる?サロン。」

 

そういえば誰かから聞いたことがある。

あれはサンソンだったか。中世ヨーロッパにおけるサロンとは貴族が教養を深めるための会合との話だ。

情報収集の場としてはこれ以上ない。

 

「あの、少しお話を聞いても?」

 

「はぁ?何言って...でもあれか、迷子の子ども放っておくのは...」

 

「戦時中だぜ!んなこまけぇ裁判開かれっかよ!」

 

男たちがもめている。どうやら自分の所在について話しているらしい。

すると、奥から少し大柄な男が出てきた。

 

「まぁいいだろ、よそと違ってうちらは別に身分の制限は設けてねぇ」

 

「だから人すくねぇんだけどな。」

 

「口をはさむな白髪!おれはこのガキと話してんだ。おい、話を聞きてぇんだったな?ならお前の素性を一つはなせ。おっと名前はいい。生まれもいらない。最近したことについてだ。フォンテーヌ廷はこんなんでも一応戦時下だ。最近の行動さえわかれば大体のことはわかる。」

 

最近したことと言っても、彼らに話せることは何だろうか。

 

「あ、フリーナ様とお話しした。」

 

奥に座っていた二人は崩れ落ち、ちかくの大柄と白髪は口をポカンと開けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャワーを終えると、マスターは部屋から消えていた。

 

「味な真似しますね、なんて」

 

細かいところに気が回るというか、細かいマスターだ。だからこそ、数多の英霊と心を通わせられているのだろう。

 

「とはいえ、サーヴァントを置いて夜遊びなんて帰ったらお仕置きです。」

 

いっそ宝石にでも変えてしまおうか。

いや、そんなことをしたら、きっとあの少女から殺されるだろう。

 

ホテルの用意された寝間着に着替え、常備された水を飲んだ。

故郷の水よりおいしい。こだわっているのだろうか。

 

さて、と。一呼吸終えたのち先ほどの出来事を思い出す。

水神と名乗る少女。寂れた妖精眼で見ていた。彼女は嘘をついている。

 

その嘘とは、水神であるということだ。

 

ならば、なぜ。

 

水神と身分を偽ることにどれだけの徳があるのだろう。

 

そりゃいい生活はできるだろう。だが、周囲からの期待は計り知れない。

 

『水神は自らの神座で涙を流す。そうして初めて、フォンテーヌ人の罪は洗い流される。』

 

神の目の力を通じてこの世界に召喚されたトネリコには、ある程度の知識が与えられていた。

 

その中でもやっぱり目を引くのはこの予言。

 

どうしても重ねてしまう。あの妖精國と。

 

「なら、きっと何か意味がある。でも、ある程度親しい間柄にも話せていない...」

 

胸が痛む。どれほどの苦痛だろう、それは。

 

この国でそんなことをする『意味』とは、予言の回避に他ならない。

 

 

 

でも、それがどうだっていうの。私の時は、誰も助けてくれなかった。

 

私が守ろうとした者たちは、私の仲間を殺した。

 

私も殺した。次の私も殺した。娘も殺した。

 

 

嫌な感情がわいてくる。知っている。これは破壊衝動だ。

 

なにもかもめちゃくちゃにしたい。

 

今の『私』は、ロンディニウムの一件を経験した『私』だ。

 

もしこの世界の人間が、妖精のような存在だとして...

 

私はちゃんと、彼らの味方ができるのだろうか。

 

 

 




カルデアのトネリコより、暗い性格です。
あちらは救世主と雨の魔女の中間とのことですが、こちらは正常なカルデアの召喚ではないので妖精国の知識をほとんど持ってる状態だからです。
藤丸の神の目が、その状態が必要と判断したのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。