魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
藤丸たちがベリル地区に着く前、ボートに乗る頃の話
「パレエルモニアに潜ませたスパイから連絡があった。現在、旅人たちは最高審判官の救助に向かい、藤丸立花とその仲間はガラル地区内部に向かっているらしい…一体何のためだ?」
「おそらく、『カルデアの者』に会いに行くためだ。居場所がわかったのなら、私はそこに向かう。狭間の奥にはまだ奴がいるだろうから、面倒だが直接向かうしかないな。」
「その者たちは今どこに?」
「ボートで向かうそうだ。まだ出発していない。ファデュイも向かわせよう。」
「いいや、それなら問題ない。スカーク一人で十分だ。」
それまで黙っていたジェイコブは召使の提案に意を唱えた。
(ここからあそこに向かうには、それなりに時間がかかる。餌は巻いておいた。スカークと合流する前に奴ら辿り着くな。)
「ほう、根拠は?」
「スカークの戦力を見てだ。それより、ファデュイは旅人たちを止めるべきなのでは?」
「確かに、その指摘は正しい。」
話がまとまると、スカークはカルデアを追い、ベリル地下に向かった。
「貴様はどうする?」
「私もメロピデ要塞の方向に用事がある。途中までファデュイと同行するさ。とはいえ、武器は欲しいな…そこの木剣、もらっていくぞ。」
ジェイコブはフレミネが持ってきた木剣を拾った。召使は何度も調査したが、ただの木剣であるという以外の結論は出なかったので、それを認めた。
しかし去ろうとしたジェイコブを、召使は引き留める。
「待て、あの鯨の遺体をどこにやった?」
「処理させてもらったよ。あんなところにあっても仕方ないだろう。」
「貴様のアビスの力が強まっているように見えるが、まさか貴様。」
「不便な体でね、普通の人間の食事じゃ満足できない。稲妻の一部の地域には鯨を食べる習慣があるらしいぞ。人間の食への探究心は素晴らしいな。」
ヌヴィレット救助の妨害については、リネ、リネットとそのほかに公子を向かわせた。本人たっての希望だ。思うところがあるらしい。
「ふぅ、」
召使は一息つくために、紅茶を淹れた。自分のを一つと、もう一つ。
敵側の戦力も未知数。特にあの藤丸立香、少なくともあの盾の騎士や、呑星の鯨を一撃で仕留めた謎の女は彼によって呼び出されたものだ。
そして、彼はカルデアから来たと言っていた。あの時は意味がわからなかったが、フレミネの調査ノートを見るとどうにも捨て置けない。
その記述にははっきりと、『カルデアの者』という言葉が出ている。あの狼狽様をみるに、ここに書かれた人物そのものとは考えにくいが、関係があるのは間違いないであろう。
(それにしても、きな臭い連中だ。)
目的のはっきりしているスカークはまだしも、あのジェイコブという男。
救済を目的としているという言葉に嘘はないようだが、どうにも好かない。まるで、博士を相手にしているかのような感覚だ。
フレミネが発見した書類には、主にルネという名前の人物について書かれていた。書き手はアランの弟子、カーター。彼はまさしく、世界の救済のために動いていた。ジェイコブという名も出ている。公子には、彼の動きに目を光らせておけと言ってある。
一体どうやって世界を救済…つまり、フォンテーヌ人の原罪を打ち消すつもりなのか。
「なんて難しい顔をしているのかしら?アルレッキーノ。」
挑発じみた声がする。召使にそのような口ぶりで話しかけるのは一人しかいない。
「よく来てくれたな、サンドローネ。」
「ふん、仕方ないでしょう。私も、部外者ってわけでもなさそうだし。『あの子』の行方を探してる最中だったのに。」
ファデュイ執行官第七位が、到着した。
「それで、どういうことよ。メリュジーヌが、なんて。私そんな話きいて…」
「とにかく、現状について細かく話す。その上で君の考えを聞かせてくれたまえ。」
「ジェイコブ、ですって?」
「だめよ、あいつを野放しにしちゃ。今すぐ向かわなきゃ!ヌヴィレット?カルデア?そんなの今はどうでもいいわよ!」
「ねぇ、そこで何をしているのかな?」
イーストオトンヌキ近くの建造物の元で、公子はジェイコブに尋ねた。
「ファデュイの坊やか。君はあちらに向かったのでは?」
「俺もそうしたかったんだけどね、どうにも気になっちゃってさ。」
「あの女の命令か、貴様も嘘をつくのが下手なようだ。」
「バレちゃってるならこっちもやりやすくていいや。それで、もう一度聞くけど、何をしにここまで?」
「ちょうどいい、君にも手伝ってもらいたい。なに、ただ友人を探すだけさ。」