魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
ジェイコブは、ついにそれを見つけた。
ゲシュタル塔内部、数々のマシナリーに守られたなぞの黒い塊を。
「ふ、みつけた。やっと会えたな、友よ。」
「まて、それが探し物?そんなものが友達なのかい?」
「ん?まだいたのか。そろそろ邪魔くさくなってきたな。」
異常な殺気にタルタリヤは身震いした。この力はアビスのものだ。
「やる気だね。」
簡易魔王武装を展開する。こいつは手加減してはいけない相手だ。ともすれば、あの旅人以上の…
「もはやこの姿は仮初のもの。本当の私を見せてやろう。」
平均的なフォンテーヌ人だったジェイコブは、アビスの怪物へと姿を変えた。そして、手に握る木剣をかかげる。
「そんな木剣、何になる。」
「失礼だな。私たちにとっては思い出深いものなのだよ。水仙十字聖剣は物理世界にこだわらない。そして」
ジェイコブは、大事そうに黒い塊を木剣に近づけた。すると、
「あれは、まずい。」
木剣は、禍々しい闇を放つ剣へと変わった。
「これじゃ聖剣とは言えないな、水仙十字魔剣と言ったところか。」
タルタリヤは魔王武装を完全展開し、ジェイコブへと鯨の形をした水の塊をぶつけた。
しかし、それをジェイコブは同じく鯨の形の力で相殺する。
「それはもう取り込んだよ。そろそろ始まった頃だろう。どいてくれ、私は水神に用がある。」
無理やり引っ張ったところで、ソロモンは岩から離れることはなかった。
すると、
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ」
元いたところから、叫び声が聞こえる。
「トネリコ、行こう!」
「は、はい!マメールさん、失礼します!」
「わっびっくりした。あのね、急に思い付いたんだけど、喉乾か…」
トネリコはマメールを抱え、藤丸、セイモアはメリュシー村中心部へ向かう。あの声は先ほどのエルマイト旅団の声だ。なにがあったのか。セイモアは沈黙を貫いている。
声の元に到着すると、旅団のうちの一人が見るも無惨な姿に変わり果てていた。
体の一部が中途半端に溶けおち、なお溶解は続いている。
喉が溶け落ちているせいで、まともな声は出せていない。
絶句した。一体何が起きたのか。その場にはあのスカークがいる。
「お前の仕業か、スカーク!」
「ち、ちがう、メリュジーヌだ。あいつらの差し出されたものを飲んだら…」
旅団の人間が否定した。スカークは無表情に近付き、
「これ以上苦しむ必要はない。」
悶え苦しむそれを、介錯した。
「本当、なのですか。」
「あぁ、私もこの目で見た。間違いはない。」
トネリコはこれでもかと目を開きスカークを見つめている。
「わ、私はコンツァーナさんに聞いているんです。」
件のメリュジーヌ、コンツァーナには悪びれている様子がない。
「な、なぜですか?なぜこんな」
「だって、喉乾いてそうだったんだもん。大丈夫、これできっと、許してくれるわ。」
「誰が、何の話を…」
「決まってるでしょ、フォンテーヌ人の原罪。そのために、私たちは生まれて来たんだから。」
「あ、いたヌヴィレット!」
旅人とパイモンは、海中を泳いで無理やりメロピデ要塞へと侵入した。
「旅人とパイモンか、迷惑をかけたな。」
「まったく、お前のいない間大変だったんだぞ!」
「パイモン、ヌヴィレットたちが出れなかったのは私たちのせいでしょ。」
旅人はヌヴィレットに知ってる範囲での話をした。
「まて、フリーナ殿が裁判?そんな予定入ってなかったはずだか。」
「ふん、どうせまた変な法律で誰かに突っかかってるんだろうさ!」
「おっと、あんたが旅人さんかい?」
ヌヴィレットの奥から、二人の人間が歩いてきた。片方はクロリンデだ。
「あぁ、紹介しよう。ここの管理者、リオセスリ殿だ。」
「よろしく、おいらはパイモンだ!あれ、誰が寝てるのか?」
「あぁ、うちの看護婦長がな。働きすぎで体を壊したのかもしれない。外の様子は…」
すると、クロリンデがいきなり銃を向けた。銃口は、旅人の背後を向いている。
「そこの物陰にいるな、出てこい。」
「あぁ、わかった。でも話を聞いてほしい。外が大変なんだ!」
出てきたのはリネとリネットだった。息を切らしている。まるでなにかから逃げているようだ。
「君たちはあの裁判の時のファデュイだな。外が大変とは?」
「僕たちはお父様の命を受けて、旅人の行動を阻止するために、君たちの跡を追った。んだ…いや、違う、それより、」
「ヌヴィレットさん、彼混乱してるな。まったく、おい落ち着け看護婦長、は無理か。仕方ない、今お茶を」
「そう、お茶だ。」
「なんだ、待てないのか?」
「違う、メリュジーヌの差し出したお茶で、みんな溶けてしまったんだ!きっとあの、原始胎海のせいで!」
なにが、起きている。
タルタリヤを払いのけ、歌劇場についたジェイコブには、信じられない光景が広がっていた。
「そんなにも、愚かだったとは、これじゃなんのために…私は」
そんなジェイコブに、白髪のフォンテーヌ人が話しかける。
「あぁ、あんた見逃したか。フリーナ様はあの水に溶けちまったよ。さて、一体これからどうするのかね。」
それを聞いた瞬間、ジェイコブは舞台へと走り出した。
「お、おいあんた待て!」「何やってんだ!」「ていうか、外から悲鳴が聞こえないか?」
(水仙十字聖剣はもとより魂に干渉するもの。本来水神フリーナの体を使う予定だったが、まだ間に合うか?)
ジェイコブは剣を原始胎海の水が入った水槽に突き刺した。すると
剣は、水の中に溶けていく。
「危なかった、愚鈍な民衆を持つと大変だな。同情するよ水神。だか安心しろ、こっからは『彼』が救ってくれる。」
「目覚めよ!我が友、『ナルツィッセンクロイツ』よ!」
水槽の中の水が、勝手に動きだし、巨大な怪物へと姿を変えた。
『久しぶりだな、ジェイコブ。』
「あぁ、長かった。本当に長かったよ。でもこの時間のおかげで、アランの目をかいくぐれた。」
『では、カルデアのマスターは既に?』
「あぁ、世界式は完成した。おそらくそろそろ原始胎海は溢れ出す。」
『間に合ったのか。感謝するジェイコブ。』
「何を言ってるんだ。私たちはこの時のために、これまで頑張ってきたんじゃないか。」
『そう、だったな。手始めに』
「あぁ、手始めに、ここにいる奴ら、全員溶かしてしまおう。なに、また後で会えるさ。」