魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス   作:旅人さんた

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アランの憂鬱、エマニュエルの憂鬱

「ここは…牢獄か。」

 

気がついたアランは、鎖に繋がれ牢獄と思わしき場所に寝かされていた。

食事も用意されている。鎖と格子に目を瞑れば、人道的な扱いをされている。

 

「そうか、負けたんだ。」

 

武装は全て外されている。

 

「最高審判官様、ファントムハンターのみんなは…」

 

格子から外を覗いたが、他の部屋があるだけでここからはよく見えない。

 

「目が覚めたか。」

 

いつのまにか、同じ牢獄に例の外套の男が入っていた。

 

「なっいつのまに!」

 

「とりあえず、その飯を食え。イフ島に比べたら、まだ居心地の良い環境であろうよ。」

 

そう言って男は煙のように消えた。

 

言われるがままに食事を取った。ここから何が始まるにせよ、体力はあったほうがいいだろう。安心して食べれたのは、あの男がジェイコブといたからだ。もし殺すつもりなら、わざわざここに連れてくる意味はない。

 

「一体ここは…どこなんだ。」

 

「イプシシマスの塔だよ、アラン。」

 

「この声は、ジェイコブ!イプシシマスの塔だって!?なら、マリアン、父さんは!?」

 

塔に向かった彼らも失敗したのか。なら、二人は…

 

「安心しろ、無事さ。なんだよ、私たちが殺したと思っているのか?」

 

「ジェイコブ、話を…」

 

「その前に、彼から君に話があるそうだ。」

 

すると、ジェイコブの背後からあいつは現れた。間違いない。セイモアの写真に映っていたそいつは。

 

「っナルツィッセンクロイツ!」

 

『よろしく、アラン・ギヨタン。用意した食事はお気に召したかな。』

 

「お前の目的はなんだ!なぜ僕をここに連れてきた!」

 

『君に、提案があってだよ。』

 

『私たちと組まないか?君の頭脳があれば、私の計画は万全のものとなる。あの邪魔なヌヴィレットも、もうじき目が覚める。奴は最大の脅威だ。』

 

「あそこにいたみんなは…」

 

『君は少々血の気が多いようだ。我々の目的は人殺しじゃない。世界を救済するために殺しをするなど、本末転倒だろう。』

 

「一つ、答えてくれ。ルネはどこに行った。」

 

『そうだな、唯一手を下したものだ。…ルネ・ドゥ・ペトリコールは消えた。もういない。』

 

話はそこで終わった。頭がくらくらする。ルネがもういない?奴ら、創設者の一人であるルネを排除したのか。涙が溢れる。牢獄のベッドの上で、昔を思い出した。孤児院での日々。科学院での日々。それを、殺した。あの化け物が。

 

「許せない…。」

 

ルネとジェイコブを唆した奴が許せない。だが自分にはどうしようもない。

 

ナルツィッセンクロイツはその後もたびたび僕の元を訪れては、協力の提案をしてきた。無論答えるつもりはない。協力するふりをすることも考えたが、僕は僕の心を誤魔化すほど精神的に器用ではないことを自覚していた。機械いじりの方がよっぽど簡単だ。

 

一週間ほど経った頃だろうか。どうにも日にちの感覚が曖昧になってきた。

 

通路を挟んだ向かい側の部屋に、人が入ってきた。あれは…

 

「父さん!」

 

意識がないようなので、大声で叫んだ。すると、父さんは目を覚ました。

 

「アラン、か。そうか、やはりダメだったか。よかったお前が無事で。」

 

「マリアンは、マリアンはどこに?」

 

「マリアンは奴らの手伝いをさせられている。おそらくもうそろそろ最高審判官様が助けに来てくれる。あと少しの辛抱だ。」

 

「今まで父さんは何をしていたの?」

 

返答がすぐに返ってこない。

 

「何を、していたのか。思い出せない。あの時ナルツィッセンクロイツに敗れたあと、この部屋に閉じ込められてから…だめだ。」

 

「ルネは…ルネは本当にもういないの?」

 

「…あぁ、連中何かしらの実験をしているようだ。その過程でルネは消えたと言っていた。すまない、遅かった…」

 

「父さんが謝ることじゃないよ。」

 

「それと、ここにはリリスがいる。水仙十字結社という名前も、適当なものではないらしい。結社の人間には赤の女王と呼ばれてたがな。」

 

「なんだって!リリスが?」

 

リリス…水仙十字院の院長がなぜここに?

 

もしかして…本当に彼らの目的は世界の救済なのだろうか。

リリスは頭が良いわけではなかったが、とても善い純粋精霊だった。その彼女が彼らの味方をしているとこに、違和感がある。

 

父さんが来てからは、ナルツィッセンクロイツが話に来ることはなくなった。マリアンの安否は未だ心配だが、父さんが来たことで、とても心強かった。

 

見張りは結社の知らない人間と、たまに該当の男が覗きに来るくらいだった。特に何かをしてくるわけでもないので、僕と父さんはよく話をした。

 

そこで色々なことを知った。ここはイプシシマスの塔の地下にある牢獄で、塔では様々な実験が行われていること。目的は依然変わらず、世界の救済を宣っていること。計画はかなり進んでおり、もうすでにあと一歩のところまで来ていること。離反者は処罰されるという噂だったが、実際は殺されるわけではなく、幽閉されるということ。

 

ただ、その話には奇妙な点があった。幽閉されると言っても一体どこにだろうか。少なくとも、僕のいるこの牢獄には、現在僕と父さん以外の人間がいるようには見えない。他の階にも牢獄があるのだろうか。

 

そして、また、ナルツィッセンクロイツが現れた。

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