魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
「要件はわかっているな。私の部下たちを返してもらう。」
「一人で来たのか。」
「ジェイコブだな、悪いが手加減できそうにない。正式な司法の裁きを受けたいのなら、投稿をお勧めする。」
「今更だな、我が身はすでに人間を超えている。そして通すわけにはいかない。世界の救済のためだ。」
「ならば、私が直々に審判を下す。」
「やってみろ。私はもう現在での救済は諦めた。口惜しいが、友の無念を晴らすためだ。今より私は水仙十字結社ではなく、アランの友、ジェイコブとして戦う。」
水龍とアビスの怪物が、衝突する。
男は、暗い廊下を歩いていた。
かの島での出来事を思い出しながら。
「何しに、来たんだ。」
牢の奥では、一人の青年がうずくまっている。
「貴様は、何が為に生きながらえている。親と妹を殺され、友もすでに変容した。今の貴様に何ができる。」
「何も…できなかった。君たちの勝ちだ。」
「貴様の心には炎が見える。暗く、それでいて苛烈な、復讐の炎だ。」
「何が言いたい!お前は結社の人間だろ!冷やかしに来たのか!僕には、もうなす術はない!守りたい人も、もう。」
「訂正しよう。結社の者ではない。そして、マスターに仕えるわけでもない。我はアヴェンジャー、心に復讐の炎を宿す人理の影法師だ。」
「君は、ナルツィッセンクロイツの手の者じゃなかったのか。僕は、奴を倒したい。奴を倒して、フォンテーヌを救いたい。」
「ほう、なおも勇者であろうとするなら、貴様に試練を与える。貴様の標的は仮にも救済を掲げる者だ。それを討つ為には貴様も対価を払わなければならん。試練を果たせたのなら、貴様に我が秘宝を授けよう。。
アランは、唐突に男から発せられた光に思わず目を閉じた。
すると、強烈な寒さが体を包む。
目を開けると、そこは雪原だった。
「ここ、は?」
地面が揺れる。現れたのは巨大な象。
「討ち果たしてみよ。手札は、貴様に与えられている。」
いつのまにか、アランは武装状態であった。アラン自身が作成した、装着型マシナリーだ。
「これで、あの象を倒す?」
「無理だと言うのならそれでも良い。我が固有結界の中で、死ぬこともできぬまま囚われ続けるがいい。」
巨象が放つ雷に撃たれ、アランは絶命した。
気がつくと今度は、目の前に氷と炎を操る巨人がいた。
巨人のふるう炎によって、アランは絶命した。
機械でできた真の人がいた。アランは絶命した。
数多の神を統合した最後の神がいた。アランは絶命した。
雷を放つ全能神がいた。アランは絶命した。
救国を成し得なかった女王がいた。アランは絶命した。
冥界を統べる戦の神がいた。アランは絶命した。
七つの世界、七人の王に、アランは悉く敗北した。
無力を知った。この世界にはこれほどまでに絶望的な力を持つ存在がいるのか。彼らを倒せるのはきっと、それこそ世界を救えるような、そんな存在…
救う必要はない。アランのすべきことはそんなことじゃない。プネウムシア対消滅によるフォンテーヌ人の生活水準の向上?そんなこと最早どうでもいい。ナルツィッセンクロイツが世界救済を掲げるならば、それに仇なす悪人になろう。
「アヴェンジャー、と言ったな。僕はこの試練を越えられない。僕は勇者じゃないんだ。」
「ほう、ならば貴様はなんだ。」
「僕は…復讐者。世界の裏切り者だ。幼い頃は勇者に夢見ていた、力ない人々を守りたいと。」
「ク、クハハハハハハ!そうか、貴様がまだ善人でいると言うのなら、異なる地、異なる世界での救済を模倣した試練を与えたが、復讐者と名乗るなら仕方ない。ならば貴様は勇者に非ず、貴様は───
我が、『共犯者』だ、アラン・ギヨタン。」
アランは、牢獄を抜け出し、エリナスへと向かう。
傍に黒い影を携え、復讐を果たす為に。