魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス   作:旅人さんた

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戦の理由

「やぁ、こんにちは。そこにかけたまえ。」

 

自分を呼んでいるという女性は、テントを出てすぐのところにいた。

 

「リネットからある程度話は聞いているよ。私のことは…そうだな、ひとまず召使と呼んでくれ。記憶がないのだろう?災難だったな。」

 

出会ったばかりの人を騙すのは心苦しいが、そっちの方がある程度スムーズなのだろう。

 

「はい、藤丸立香と」

 

「動くな」

 

体が、燃えている。

立ち上がり、自己紹介をしようとしたところだった。

 

「うっ、ぐ…」

 

「ほう、悲鳴は上げないか。全くリネもまだ青い。」

 

テントから慌ててリネが駆けつける。

 

「お父様!彼に害意はありません!どうして『印』を!」

 

「わかっているよリネ。出力も抑えてある。ただ、人を欺こうとする者にはまず警戒から入るべきだ。」

 

「欺く…?」

 

「彼は記憶喪失などではないよ。混乱はしているようだが。」

 

「え、でも彼はこのテイワットについて何も」

 

「おかしな話ではない。記憶を保持しているのにこの世界のことを知らない。となると、考えられる可能性は一つだ。前例ならある。君も出会っていただろう?」

 

「それは…」

 

リネは苦しそうな顔だが、納得したようであった。

 

「わかっているとも。はなから欺こうとしたわけではないのだろう。だが、この状況でそのような嘘をつくということは、自分の身柄についてうまく話せないということだ。」

 

「申し訳ありません。僕が勝手に判断してしまいました。でも印を解いてください。彼には元素力を感じられない!」

 

「リネ、元素力の有無が実力を示すものではないよ。目を見てみろ、ただの一般人はこのような目をしない。君以上、もしかしたら私以上の戦いをしてきたような瞳だ。」

 

焼けるように熱いが、命の危険を感じる程ではない。あえてそうしているのだろう。この女性は、いつでも自分を殺せる。

 

「質問を問いかけよう。答えるかどうかは君の自由だ。その後の君をどうするかは私の自由だが。」

 

「君はどこからきた」

 

「カルデアから。」

 

「稲妻との関わりは?」

 

「雷を操る知り合いはいる。」

 

「…ほう、もしかして本当に君も。まぁいい。次だ。君自身に戦う力はあるかい?」

 

「ない。」

 

「…そうか。」

 

最後の問答を終えると、体から印は消えていた。

それと同時に熱さは消える。

 

「興味深いな。戦えないという自認を持ちながら、悲鳴をあげず、そのような目で私を睨むか。力を失った?それとも…」

 

「自分からも質問をしてもいいですか。」

 

「構わないが、この仕打ちに対する文句はないのかな。」

 

ないというわけではない。しかし、今は優先すべきことがある。

 

「マシュとソロモンという名前に心当たりは?」

 

「ほう、知り合いも来ているのか。だが知らない名だ。」

 

あの二人が目立たないということはないはずだ。この場で最も偉いとされる人間が知らないのなら、二人はどこに…?

 

「それと、戦いの理由を。今この国は戦火にさらされてると聞いた。」

 

「なるほど。リネが記憶喪失だと思うのも無理はない。」

 

「戦争の理由はメリュジーヌだよ。」

 

驚いた。なぜあの妖精国の騎士の名が出てくるのか。

となるとカルデアに召喚されたあのメリュジーヌなのか。まさか、妖精国でであった本人が出てくるとは思えない。あの妖精はあの地で、厄災になったのち聖槍で貫かれたのだから。

 

「メリュジーヌのことは知っているのか。なら話は早い。我々はとある研究によりあれを人間に仇なすと判明した。それに反発したフォンテーヌの最高審判官ヌヴィレット殿率いるフォンテーヌ国民との戦いだよ。」

 

つまり、要するに

 

カルデアのせい?

 

 

 

 

 

一時的に藤丸は解放され、退出させられた。

リネのみ、その場に残っている。

 

「どうするのですか?」

 

「放っておく理由もない。雑兵とはいえ、使えるモノなら使うべきだろう。」

 

「そう、ですが」

 

「それに誰が見ても彼をファデュイとは思うまい。それだけで利用価値はある。おっと、君の前でこれを言うのはいささかデリカシーに欠けていたかな。」

 

「いえ、気にして...ないというのはうそになりますが、終わったことです。」

 

リネは、あの旅人を思い出した。あの法廷以降、まともに話せていない。

 

当たり前だ、今はもう敵同士なのだから。

 

旅人とはメロピデ要塞で再開すると予想していた。最高審判官も公子の行方を追うと踏んでいたからだ。実際、メロピデ要塞の入り口までは行っていたらしい。そこから先の行方は、知らずじまいだ。とはいえ、それはファデュイの捜査網の上での話。あの旅人が今どのような状況にあるかは予想がつく。

 

「リネ、たった今伝令が入った。最高審判官が現在メロピデ要塞にいるらしい。不測の事態でも起きているのだろう。決闘代理人も一緒とのことだ。」

 

「急ぎ、兵をあげる。エピクレシス歌劇場を落とし、メロピデ要塞の出入りを困難にする。大幅な時間稼ぎになるだろうな。」

 

現在、敵の最高戦力は間違いなく最高審判官だ。比べるべくもない存在ではあるが、厄介な存在である決闘代理人、そしてあの監獄長もろとも封じ込められるというのはあまりにも美味い話だ。

 

そして、そのような隙を晒す意味も理解している。不測の事態、というのはおそらく予言についてのことだ。やはりあのメロピデ要塞には何かしらの役割があるのだろう。

 

「わかりました。先行隊は僕たちですね。」

 

「理解が早くて助かるよ。あの男も連れてくといい。斥候として使うにはもってこいだと思うが。」

 

「お父様は?」

 

「私は万が一のため、待機だ。フレミネ率いる調査隊が調べてはいてくれているが、いつ予言が本当のものになるかわからない。我々の敵はフォンテーヌ人ではないのだから。」

 

「わかりました。至急準備に取り掛かります。」

 

「まぁ待て、まだ敵の戦力についての話をしていない。」

 

見落としていた。確かに、あの最高審判官がこの事態を読んでいないはずがない。となると、おそらく歌劇場にはそれなりの戦力が…

 

「エピクレシス歌劇場に配置されてる兵だが、殲滅特化型マシナリー100機、攻堅特化型マシナリー2000機、氷風組曲、棘薔薇の会。これがフォンテーヌ国側の勢力だ。執務室警護用のマシナリーまで持ち出すとは、相当だな。」

 

「となると僕たちは棘薔薇の会と氷風組曲の対処でしょうか?」

 

「基本的にはそうなる。ただ未確認情報があってね、もしそれが確認され次第連絡をよこして欲しい、私が出向く。」

 

「勘付いたな?さすが我が子、優秀だ。そう、旅人だよ。」

 




妖精騎士に関しては、終章でのストーリーでカルデアにいるのは別人だと解釈したので、そのつもりです。(ふわっと)

マシュがメリュジーヌと聞いて勘違いをしなかったのは、メリュジーヌはフランスの伝承に登場する精霊を指すものだと知っているからです。

藤丸も聞いてはいますが、彼にとって特異点で知り合いが現れるのは日常なので。
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