魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
そこは「とてもあったかい場所」。
猛スピードで移動する魔獣の内側。
多くのフォンテーヌ人を溶かし、自らの行いを悔いた水棲生物たちと、
愛したが故に己を殺して欲しいという、盾の英雄への願い。
そして、ほんのばかりの、未来からの後押し。
フォンテーヌの地に、盾の英雄の霊器を代償に、新たなる英霊が召喚される。
(あれは、だめだ。今の私じゃどうにもできない。)
せめて、マスターを逃すことだけ…
一筋の光が、エリナスを貫いたように見えた。
それは致命傷にならない。
たが───それは、内側から、エリナスの肉体を食い破って現れた。
見覚えがある、「私」ではなく、この霊器が。
そして、その光はトネリコにも希望であった。
そうあるべきと決められた生き物が、それでもと想い願った結末。
「
「め、りゅじーぬ?」
内側から突き破れたエリナスは、軌道を逸らし、海中へと沈んでいった。
「やぁ、陛下。いや、その姿じゃ陛下と呼ぶのもおかしいね。」
「あなたは、あの、メリュジーヌなのですか?」
「基本は、ね。でも、少し違う。本来、あの宝具は一度きり。でも、この私は、『メリュジーヌ』としてのあり方を強く意味付けられている。アルビオンの時ほどの火力は出ないけど、それでも消滅はしない。少なくとも、あのエリナスが存在し、あの娘たちが願いを止めない限りね。」
「では、貴方のマスターは、」
「そう、私のマスターは、私の同胞、メリュジーヌ。彼女たち全体。」
海中から、エリナスが這い上がる。食い破っただけでは、その魔獣は息絶えなかった。
「わたしは、私のすべきことをする。陛下、君は君のすべきことを。ひとまずは、そのマスターを治すところからだね。」
「ダメ、なんです。私じゃ、彼の傷を…」
「こんな気弱な陛下が見れるだなんて、バーヴァンシーに嫉妬されそう。仕方ない、じゃあ、彼を使いな。もぎ取っておいたから。」
メリュジーヌは、懐から、それを差し出した。
「なっソロモン!」
赤い石に封じ込められていたソロモンを、どうやら無理やりもぎ取ってきたらしい。この世界の巨獣もとんでもないが、彼の国の竜も大概だ。
「あとは上手くやりなよ、じゃあね。」
竜は飛び去る。メリュジーヌたちの願いを叶えるために。
「では…」
ソロモンの意識が目覚めない。
「あ、そろ…」
「マスター!」
気が付いたようだ。
「令呪を持って、命ずる。起きよ、ソロモン。」
令呪によって縛られたものは、同じく令呪によって解かれる。
パリパリと、付着していた石が落ちていく。
「む、そうか。すまない、苦労をかけたな。」
そんな元気はなかったが、少しぶん殴りたかった藤丸であった。
…これやりたかっただけだろと言われると、何も反論はできません。