魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
「私が呼んでない人は、本来来れないはずなのだけど?」
アビゲイルは、その空間に現れた青い人影を睨む。どうにも今回は、乱入者が多い。
「そうみたいだね。でもあの旅人に水元素の力を与えたのは僕なんだ。その足跡を辿るくらい、わけないことさ。」
「簡単に言わないでくださる?そんなの、神様でもなければ…そう、あなた」
アビゲイルは、そのものがまとうものに気がついた。カルデアではよく見かけるもの。それは、神性だ。
「あぁ、僕はフォカロルス。水神だよ。」
「彼を連れてきたのはあなたね。もう、びっくりしたわ。」
本当はびっくりしたなんてものではない。だが、そこは虚勢を張る。
「ごめんね。ただ挨拶に来ただけさ。最初は驚いたけど、この世界は、間違えた道筋を辿っているんだろ?」
「えぇそうよ。でもそれもじきに…」
「うん。修正される。だから、感謝を伝えに来たのさ。」
「そんな、感謝だなんて。私は。それに、本来の歴史に戻れば予言は」
そう、フォンテーヌの予言は遂行される。そして、修正後の世界に手出しはできない。
「何はともあれ、救ってくれたのは間違いない。修正された後は…うん。僕の出番さ。」
フォカロルスは、少し寂しげに笑った。その笑い方を知っている。それは、死にに行くものの笑いだ。
「……ごめんなさい。」
「ふふ、泣かないで、お嬢さん。僕はこれから、大の大人をおそらく泣かせてしまうんだ。どちらの方が困るかという話には、議論の余地があるかもしれないけどね。」
「そう、強い人なのね。」
「そうさ、だって僕は、水神、だからね。」
そう言い残し、フォカロルスは去っていった。
アビゲイルは、それを見つめることしかできなかった。
「あぁ、そろそろかな。じゃあ俺は一足お先に退去させてもらう。」
「あ、まっ」
呼びかける間もなく、オベロンは退去した。
「…感謝を、伝えそびれちゃったな。」
トネリコの戦いは終わっていない。
「だから、私は、絶対にあのナルツィッセンクロイツを」
「うん、一緒に倒そう。」
オベロンに立ち替わるように、新たな人影が現れた。
「旅人さん?」
藤丸から呪いを吸収しようした彼女は、マスターに吸い込まれるように消えていっていた。
その彼女が、急に現れた。
「あ…あ!旅人!旅人ぉ!」
傍でパイモンが旅人に抱きついている。泣き腫らした顔だ。先程まで自分に必死で見えていなかったが、旅人の不在に心を痛めていたようだ。
「ごめんね、パイモン。待たせて。私は大丈夫。」
妙な点に気がつく。確かに旅人は戻ってきた。だが、その体は…
「あなた、まさか。」
言いかけた口を、旅人は人差し指で止めた。パイモンを胸に抱きながら、ウインクしてくる。これは、黙っていろということか。
(なるほど、そうですか。あなたは、もう。)
複雑な思いに耽っていると、背後から声が。
「あ…トネ、リコ?」
「…ッ!」
マスター藤丸が、目を覚ました。
本当は、抱きつきたかった。体温を感じたかった。無事を確かめたかった。だが、そんな思いをなんとか押し殺す。
「よかった、目が、覚めましたか。」
理由は単純。先程パイモンが旅人に飛びつく姿を見て、可愛らしいと思ってしまったからだ。そう思ってしまった以上、同じ事をするのは気が引ける。というか、恥ずかしい。
トネリコは少し、パイモンを恨んだ。
「ありがとう、トネリコ。」
そんな気持ちを知らずに、藤丸は呑気に感謝を述べた。
「あと、旅人さん…あれ?」
おそらく、気がついたのだろう。今の旅人はサーヴァント。そしてそのマスターは藤丸立香だ。
トネリコは、追求しようとする藤丸を止めた。きっと、何かがあったのだ。そして、旅人はそれを受け入れた。パイモンがあんなになってる以上、余計な話はしない方がいい。
「パイモン、ここにいて。行ってくる。」
「マスター。指示を。私は、あなたを守ってみせる。」
旅人とトネリコは、武器を構える。
敵はただ一人。ナルツィッセンクロイツ。
「あぁ、いつも通り、あんなやつやっつけちゃえ!」
「令呪を以て命ずる。勝て、キャスター!」
キャスターとフォーリナーは、それぞれが大事と思う存在に後押しされ、ナルツィッセンクロイツへと、向かっていった。
旅人のクラスはもちろんフォーリナーです。サーヴァントになって何が変わったかは、次回。