魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス   作:旅人さんた

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罪人共の円舞曲

『これで終わりだ、ゲーティアさん。あなたには、感謝していますよ。』

 

息も絶え絶えなソロモンに、ナルツィッセンクロイツの一撃が...

 

「させない!」

 

当たらない。その腕は、凍り付いている。(・・・・・・)

 

無論、その程度の硬直、聖杯を取り込んでいるナルツィッセンクロイツは簡単に振りほどく。

 

だが、

 

「想定内!」

 

硬直が解かれたすぐの腕を、業火が襲う。(・・・・)

 

腕を再生させたナルツィッセンクロイツは、再度ソロモンの方を見ると、後方に退去させられている。

 

傍らには、キャスターのサーヴァントと、仕留めたはずのマスター。

 

『ならば、この攻撃はッ!』

 

上空を仰ぐ。風の翼とも違う黄色い羽根を生やし、金色に光る剣を振るうのは...

 

『変数!』

 

「タルタリヤの体、返してもらう!」

 

ナルツィッセンクロイツは旅人に対し、水の腕を伸ばすが、上空で器用に飛び回る。

 

様子がおかしい。通常テイワットの人間は、自発的に飛行することはできない。

 

風元素を扱う者や、南方の...戦争の国での特殊な技術を扱う者であれば、それも可能だろうが基本は風の翼を使った滑空のみだ。

 

なのに、目の前の旅人は、その制約を受けていない。風元素を扱っている様子もない。

 

そして、手に握る見覚えのない金色の片手剣。

 

無論ナルツィッセンクロイツはこの世界にある武具をすべて見たわけではない。だが、それはまるで、テイワットに存在しないものに見える。

 

一度退却を試みるが、退路は岩元素による構造物でふさがれている。

 

『なんでも、ありか!』

 

なれば、と体内にエーテル元素...魔力を循環させる。

 

『これこそ、異界の技術だ!』

 

ナルツィッセンクロイツは、水で構成されている。その表面が、鏡のように旅人の姿を映す。

 

本人は知っているか不明だが、水仙を意味する「ナルツィッセン」。それは、ギリシャ神話におけるナルキッソスに由来する。絶世の美少年だったその男は、神々の怒りにふれ、水面に映った自分に魅了されてしまうこととなった。

 

発動した魔術は、その逸話を由来とするもの。

 

ナルツィッセンクロイツの表面に映る自分を見た者は、自らの存在を曖昧にし、自我を失う。

 

旅人の体が硬直する。

 

落下する旅人を始末しようと再度水の腕を伸ばすが──

 

「水による鏡、ですか。おざなりです。」

 

いつの間にか現れた武具によって、その腕は切り落とされる。

 

「視点が、違います。そのようじゃ、よくて三流といったところですよ。」

 

行ったのは、キャスタートネリコ。

 

武具によって攻撃されたナルツィッセンクロイツの表面は、既に鏡としての役割を失っている。

 

「助かった!」

 

旅人の意識が戻る。

 

無論、ナルツィッセンクロイツの魔術はそれにとどまらない。

 

ゲーティアを徹底的に調べた彼は、魔術書『ゴエティア』に由来する魔術を行使できる。

 

これは、その最終系。

 

『いでよ72柱の悪魔。我が肉体を用いて、目前の敵を撃ち滅ぼせ!』

 

魔術が、発動する。

 

魔術書に記載された悪魔共は、聖杯の力と肉体を触媒として.......

 

顕現、しない。

 

『何ッ』

 

先ほどまで、ソロモンと戦っていた際は、その悪魔の力を用いて戦ってきた。

 

その力の源流を顕現させるくらい、わけないことに思えた。

 

しかし、明確にそれは来ない。

 

「言ったでしょう、おざなりだと。テイワットにはテイワットの法則の法則がある。おそらく、それに対応する存在は、既にいるのですよ。」

 

そう、ナルツィッセンクロイツは72柱の悪魔の名前を正確に把握していたわけではない。

 

それができていれば、気付けたはずだ。

 

テイワットの神々の名前との、類似性に。

 

トネリコはちらっとパイモンの方を見るが、相変わらずきょとんとした顔をしている。

 

「今です!旅人さん!」

 

再度飛翔した旅人は、その片手剣にエネルギーを込める。

 

その元素は、炎。異国において「夜魂」と呼ばれる加護。

 

本来、「まだ」根付いていないはずの力を旅人は振るう。

 

そして、それを─

 

「聞け!太陽の咆哮を!」

 

上空からの落下攻撃に込め、ただの人間ではありえないほどの熱量となりナルツィッセンクロイツを襲う。

 

蒸発しきれてはいない、だが、表層は削れている。

 

むき出しになったのは、タルタリヤの肉体。

 

だが、そのほとんどは同化してしまっている。

 

旅人は、自らの元素を切り替える。

 

灼熱を纏うその剣は、紫電を放つ剣に変わった。

 

「稲光、すなわち永遠なり!」

 

それはすべてを断つ無想の一太刀。

 

よって、タルタリヤの肉体はナルツィッセンクロイツから完全に引きはがされる。

 

『くッ、あり、えない。その出力、それは...まるで!』

 

「上出来です!アコーロンクラスター!」

 

タルタリヤを引きはがした旅人を襲おうとする攻撃を、トネリコが跳ねのける。

 

『変数貴様、一体、どこまで取り戻したァァァ!』

 

「言ったでしょ、タルタリヤは返してもらうって。あなたの理想理念なんかどうでもいい。ここからは、敵討ちだよ。」




旅人大暴れ編
サーヴァントとなった彼女は、ありとあらゆる元素を使い、その力を分け与えた源流の力まで扱います。
また、お気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、私自身の魔術観はどちらかというと型月というより、魔術(Magick)から影響を受けています。つまり私もクロウリー式…全ての男女は星なのさ
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