魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス   作:旅人さんた

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火事場の馬鹿力

二人は、走る。おのが戦場に向かうため。「友人」と呼びたかった彼女に報いるため。

主の命は、下されていない。だからこれは「組織」としてではない。ただ自分たちの為すべきを為すため──

 

 

 

 

 

 

 

ナルツィッセンクロイツの攻撃を、旅人は真正面からさばき切る。

先ほどの2種の元素攻撃に加え、時には山を崩す暴風を、時には隕石を、時には知恵を与えるフィールドを、そして時には氷元素による■■を...

途中、ナルツィッセンクロイツは魔術を何度か行使したが、それらはトネリコが対処する。

 

ナルツィッセンクロイツに打つ手はない。

 

「これで、おしまい。」

 

決着は、ついた。

 

聖杯をもってしても、敵わない。

 

「さよなら。安心して、私がきっと、フォンテーヌを救って見せる。」

 

片手剣を掲げる。

 

あとは、振り下ろすのみ。

 

ナルツィッセンクロイツの体は、それのみで消滅するほど弱まっていた。

 

 

 

 

火事場の馬鹿力、という言葉がある。切迫した状況に置かれると、普段以上の思いがけない力が出るというものだが、ナルツィッセンクロイツは本来戦士ではない。

 

であれば、この場合引き出される力は何か。

 

友をアビスに変え、自らも人間の姿を捨てた「彼」。

 

引き出されたもの...それは

 

 

 

『告げる…』

 

その異変に最初に気付けたのは、藤丸だった。

 

普段からなんの気なしにおこなっていること。

 

トネリコも遅れて気付く。

 

だが遅い。

 

『天秤の守り手よ...』

 

 

 

そして、それは召喚された。

 

同時に、ナルツィッセンクロイツの意識は消える。

 

もはや、聖杯によって生かされているだけの存在だ。

 

フォンテーヌを救わんがために奔走した男の末路としては、少しばかり物悲しい。

 

最後の意識の中、もはや何をもって世界を救うかも忘れてしまった彼の呼びかけに答え、

 

現れたもの、それは

 

「主の願い、承った。悪逆非道に与するものは僕の誅罰の対象だ。でも、その命を贖いと認め、僕は主のサーヴァントとして、面前の敵を撃ち滅ぼそう。」

 

 

このテイワットという世界には、人の意思も、他の意思も存在しない。

 

根本的に、カルデアのいる世界とは別の世界である。

 

なので、無論座という概念も存在しない。

 

護国の白騎士は、その場に彼の意思を注ぐものと、彼自身が生み出した存在がいることで召喚されたイレギュラーだ。

 

なので、その前例に倣い、呼び出されうる可能性があるのはただ一人。

 

「あなたは、誰ですか。」

 

トネリコは問いかける。

 

藤丸にも、覚えはない。

 

数々の英霊と縁を結んできた藤丸は、史上最も英霊を知る者であるといえる。

 

その藤丸をして、覚えがない。

 

当然だ。彼は、藤丸の知る世界の英霊ではない。

 

「聖杯戦争では真名を明かさないのがセオリーなのでは?と言っても、これは聖杯戦争じゃないのか。」

 

目の前の少年は、自らの存在を確かめるように両手を見つめている。

 

「成ってみると、色々と見えてくるものがある。最初からこうすればよかったのかも知れない。」

 

覚えはない。覚えはないが、

 

前例を知っている。

 

つい先ほど見たし、それよりももっと前も…

 

「うん、だんだんわかってきた。クラスは…フォーリナー??アヴェンジャーじゃないんだ。せっかく、お揃いになれるかと思ってたのに。」

 

少年は、納得し藤丸を見つめる。

 

「始めよう、正真正銘。君にとって、これが最後の戦いだ。」

 

サーヴァント、ルネ・ド・ペトリコールは宣戦布告の言葉を放った。

 




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