魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
「あぁ、理解したよ。あなたは、悪い人だったんだね。」
「当然だろう。私は一度人理を滅ぼした者だ。」
天使は出し切った。降臨者としての機能も最早無意味。
それでも生命の樹生命の樹としての力は残っている。
「キャスター、フォーリナーのサポートに回れ。あいつはここで確実に潰さなくてはならない。」
「言われなくともわかっています。」
リリスを吸収した旅人が戻ってきた。
「マリアンを…取り戻す。」
「……」
旅人は何も発さない。ただ剣を構えるのみ。
炎神の力を発動させ、ルナへと飛びかかった。
理解している。これは、世界を侵食する概念だ。
炎剣で防ぐ、だがその余波は身に受けてしまう。
最早旅人に対し、絶対無敵の炎耐性は機能しない。
「お前が…お前がもっと早く来ていれば!!」
闇雲に魔術を放つ。それら全てはトネリコに封じられる。
ナルツィッセンクロイツとの戦いにより、二人の連携は向上していた。
このままでは勝てない。
今のルネでは、旅人への打つ手がない。
徐々に、ルネはのダメージは蓄積されている。消滅するまではもう時間の問題だ。
「さよなら。」
知っている。今の旅人はルネの辿った末路、フォンテーヌの予言がどのような形で収束するかを知っている。
だから、旅人は剣を払うことに戸惑いを感じなかった。
これは、ルネへの救いになるのだから。
だが、その惨状に変化が生じる。
藤丸がルネに向かって歩き出したのだ。
「マスター、ダメです。離れて。」
「ごめん、トネリコ。聞けない。」
これまで藤丸は、見てきたのだ。何かを救いたいと願い、行動し、その行いを悪とされ無念にも敗北し、他人がその代わりを成し遂げてしまった事例を、何度も。
「なんだよ、勝てると思って笑いに来たのか。」
「君は結局、なにを助けたかったの。」
「そんなもの、フォンテーヌに決まって…」
原始胎海によるフォンテーヌの滅亡。予言が記した内容については、これまでの現象で予想がついた。
だが、それにしては
「君の宝具はおかしい。」
降臨者としての宝具。フォンテーヌの生物の意思を操作するもの。
だが、確かに。ルネの行おうとしたものと違っている。
「君は、君の仲間たちと一緒になりたかっただけなんじゃない?いつまでも、ずっと。」
意思を操作する。それすなわち心を一つにする。
宝具は、英霊の生涯を象徴するものだ。
「君は、これまで何にも勝てなかった。」
「なら、今の君の勝利条件はただ一つ。君の友達を奪還することだ。」
その発言に、トネリコは理解できないと言った顔をし、ソロモンは、呆れたような顔をし、遠くで天使と戦っているメリュジーヌは誇らしげな顔をし、旅人は意を決したような顔をした。
「だから、だからなんだ!そんなこと、お前に言われなくてもわかっ」
「旅人さん!」
令呪を掲げる。残った一画を旅人に向ける。
「令呪を以て命ずる。俺と、二人で彼を倒そう。」
正しく機能した。これでは、キャスター、トネリコの支援は受けられない。
「なぜ、ですか。」
「ごめん、トネリコ。このままじゃ、彼を救えないような気がして。」
トネリコはかなり不満気だ。当然だろう。このままなら勝てる戦いなのに、わざわざ自らに不利な行動をしているのだから。
だが、
「おいルネ。敵が弱体化したのだ。貴様もサーヴァントであるなら機を逃す手はないと思うが。」
一番冷酷なはずのソロモンが、藤丸に対し疑問の声をあげなかった。それどころか、ルネに対し戦闘を促している。
「あなたまで、そんな、どうし」
妖精國におけるモルガンの末路。
妖精國におけるトネリコの末路。
共通して、救おうとしたものに裏切られ終わった。
救いは為されず、悪として終わってしまった。
「マスター、あなたはまさか。」
ロシア異聞帯でも、北欧でも、中国でも、インドでも、アトランティスでも…南米でも、最後に戦った敵を、藤丸は悪だと認識しなかった。
「後悔しても、知らないぞ。」
「このまま勝っても、後悔してたと思うから。」
聖杯によって生かされているだけのナルツィッセンクロイツ。
ふらふらと立ち上がったルネは、その体から聖杯を抜き取った。それは、ナルツィッセンクロイツの死を意味しており、当然召喚されたサーヴァントは…
「あとは、僕が消えるまでの時間制限付きのラストバトルだ。」
二人の降臨者が衝突する。
先制を仕掛けたのは旅人。無相の一太刀を掲げ、切り掛かった。
今の旅人の攻撃であれば、ルネも気軽に炎剣を抜けまい。
だが、その想定は外れ容赦なく炎剣で防いだ。
先ほどのように、猛烈な過負荷反応が…
起きない。
「ッ!なんで!?」
単純な話、聖杯を取り込んだことで、位階を一つ繰り上げた。
第ニ位階。つまり、神の住まう世界へと。
であれば、炎剣はただの炎元素の塊にあらず。
その剣に、本来名前はない。
無理につけるとするなら、それは
「廻転剣ケルビム」
エデンの東において楽園を守る天使の名を付けられた剣は、本来の力を取り戻した。
であれば、元素反応など起きない。
「くッ!でも!」
負けじと旅人も、元素力を乗せる。
本人は気付いていないだろうが、クリフォトを取り込んだ旅人の放つ元素攻撃には、それぞれ意味が生じている。そしてそれらは、ルネのセフィラを破壊する。
全てを断つ一太刀は第三のクリファ、すなわち拒絶。
「防ぎ…きれない!」
「理解」が消えた。
「天道、此処にあり」
隙を見て旅人は隕石を降らせた。
ルネの体が石化する。司るは第ニと第八、「愚鈍」と「貪欲」。
「知恵」と「栄光」が消えた。
「フォーリナー!そのまま動きを止めろ!」
藤丸が指示を出す。スタンがどれだけ強いか、藤丸は身に染みていた。
水の渦を出し、そこに氷元素を乗せる。
司るはそれぞれ第七と第四、「色欲」と「無関心」。
「勝利」と「慈悲」が消えた。
「まだだァ!」
剣により、凍結の拘束を解く。
そして、
「回転せよ!」
その剣は楽園を守る。つまり、断絶の剣。
その真価を発揮し、旅人と藤丸のパスが途絶えてしまった。
「まずいッ」
トネリコが叫ぶ。このままでは旅人は霊器を保てない。
そうなれば、藤丸は…
「礼装起動!」
藤丸は、体中を巡る激痛に耐える。
時間神殿で使用したもの。それは、神経を魔術回路として使い潰す身を削る礼装。
魔力を放出し、旅人の元へと跳ぶ。
そして…
「告げる!」
最早使い果たした令呪の代わりに、藤丸自身の神経を使って旅人とのパスを回復させる。
「この業火で…裁く!」
そして、旅人は草神の力と炎神の力を使う。
燃焼反応により、ルネの体は燃え続ける。
司るはそれぞれ第六第十と第一第五。「醜悪」「物質主義」と「無神論」「残酷」
「美」「王国」「王冠」「峻厳」が消えた。
「絶対に、僕は、マリアンを!!!」
最後に残されたセフィラ。
第九、
最早廻転剣の力も消えかけている。セフィラをつなげる道は消えた。
守るものはわずかしかない。
「消えろッ!!!変数!!!!!」
その攻撃は最早ただの打撃。
燃焼反応によって焼かれた体で、最後の一撃を放つ。
その炎を
「風神!」
拡散反応によってさらに広げようとする。
だが、その風元素には、水神の力ではない水元素が拡散されていた。
「…ありがとう、マリアン。」
司るは第九「不安定」。悪魔の名は、「リリス」
水元素を拡散させた風により、燃焼の炎は消えるが、蒸発反応で更なるダメージを負った。
「基礎」が、消える。
勝敗は決した。
最早、ルネに体を維持する力は残っていない。
「負けてしまったか…」
風前の灯火。霊器が消滅するまでは秒読み。
「一つ、教えて欲しい。正常な歴史で、フォンテーヌはどうなる?」
「助かる。たくさんの命を犠牲にするけど、フォンテーヌは救われる。」
ルネは、少し寂しげな笑みを浮かべ、
「残念だなぁ。僕が、世界を救いたかった。」
「あなたたち残した意思は、フォンテーヌじゃない、別の場所で私たちの力になった。」
「あなた、たち?」
「アラン・ギヨタン」
そう、フォンテーヌとは遠く離れた地…ナド・クライにおいて、世界式の情報と、アラン・ギヨタンの製作した機械は、とある陰謀を食い止めるための重要な要素だった。
それを聞いて───
「…なら、よかった。」
そう言って、フォンテーヌを救おうとした少年は消えていった。
次回、後日談。