魔神特異点 水獣敵対異国 フォンテーヌ・エリナス 作:旅人さんた
情勢は圧倒的だった。
召使は命を取るほどではないが、棘薔薇の会を次々と薙ぎ払っていった。
黒服たちは、召使によって命の契約を与えられ、もはや立っていられるものすらいない。
藤丸にとってこの世界の人間の戦闘レベルは非常に高いものだと思っていた。一般兵でも脅威たりえる武器を持ち、リネやリネットなど、特殊能力を持つものも見受けられる。
その上で、この圧倒的な差。
フォンテーヌ国側の人間で、立っていられているのは金髪の旅人と、ナヴィアと呼ばれていた女性だけだ。
その2人も、召使には防戦一方となっている。
旅人が岩元素によって足止めし、ナヴィアがその隙に岩元素の砲弾をぶつける。
コンビネーション自体は悪くない。
しかしそれら足止めは二手に割れた召使の幻影である煉獄の倒影によって破壊される。
旅人の水元素による露雫によってダメージを回復しようとするが、二人に付与された命の契約によって、それも阻まれる。
「新蕾貫土!」
ならばと設置した草元素の塊に水元素を当て、草原核を生み出し、雷元素をぶつけ超開花を起こす。ナヴィアもそれに続き、セレモニアル・クリスタルショットを放つ。
旅人による多数の元素攻撃によって、ロースラ晶弾のスタックは十分だった。
しかしそれも、
「却下する。」
鎌によって、ほとんどを撃ち落とされた。
「なるほど、その戦い方、確かに末恐ろしいな。」
旅人にとって、これは時間稼ぎだ。ヌヴィレットが間に合うまで持ちこたえればいい。
適度に実力を示し、興味を引く。それでよかった。
「大審判官との手合わせも捨てがたいが、大義を優先する。まずはこの歌劇場ごと燃やし尽くそう。」
召使が炎の片翼を広げ、宙に浮いた。
「命が惜しくば退け。子供たちの手前、猶予は用意する。」
大気が震えている。ファデュイ側にすらその余熱は伝わってくる。
「旅人!逃げよう、あれはまずいぞ!」
「ダメだよパイモン、あれを迎え撃たないと...」
旅人はナヴィアの方を見る。今立ち上がっているモノのみ逃げることはできるかもしれない、だが、ナヴィアはきっとそれを許せない。
「相棒、あんただけでも逃げて。」
見ただけでわかる。あれはダメだ。きっと力の出所が違う。
この世界は元素力を戦闘のエネルギーとしているらしいが、きっとあれは別物だ。
──赤い月が昇る。
きっとあの一撃で、決着はつくのだろう。
そしてそれは、あの二人と黒服たちの死を意味する。
「ほう」
「あんた、なんで!」
気が付けば、彼女らを背に立っていた。
「きっかけはわからない、自分にはどちらが正しいのかわからない。」
藤丸の右腕に熱がこもる。全身に激痛が走る。
「だけど、だからこそ、ここで終わらせちゃいけない。」
きっとここがターニングポイントだ。彼女たちが死ねば、この戦争はもう後戻りできないものとなる。
「君には旅人たちとの面識などないはずだが?」
「そんなもの関係ない。オレたちカルデアは、敵だからと簡単に見殺しにするようなやり方をしていない。」
カルデアから直接電力供給はない。だが起動に問題はない。
旅人と召使の戦争の際散らばった雷でできた手裏剣のようなものを踏んだ時、礼装は準備状態になっていた。
「おい、旅人あれ!」
「うん、よくわからないけど彼に託してみよう、飛影!」
雷元素の塊が藤丸に向け射出される。
「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」
「これはあらゆる善意を焼き尽くした刃」
思い浮かべる光景は一つだけ、
どんな窮地も一緒に駆け抜けた、ファーストサーヴァント。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
「さあ、見届けるといい!」
「来い!シールダー!」
召使の落下が始まる。命の契約によって瀕死においこまれた棘薔薇の会メンバーはもちろん、地形そのものを変えかねない熱量が迫りくる。
ナヴィアは目を閉じず、顛末を見届けようとした。
一瞬で蒸発するとしても、せめてみんなのことを視界に入れたままでいようと。
黒服のうちの二人──シルヴァとマルシラックがこちらに気付いた。きっと彼らも同じ考えなのだろう。
ただその思いも虚しく、降り立つ寸前、圧倒的なまでの光が視界を遮った。
「楔たる人理に問う、この高き波堤を見よ。」
必殺の一撃を迎え撃つは白亜の城。
異国、もはや異世界において、あらゆる汚れを許さぬ鉄壁の守り。
「ハイロード・キャメロット」
ついに藤丸が参戦!
ここまでほとんどただ巻き込まれただけの人でした。