【完結】日本国召喚IF〜フェン王国邦人救出劇〜   作:特殊匿名群

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第二話

三日後

フェン王国 ニシノミヤコ

 

 廃墟となったニシノミヤコの町を、二人の歩哨が警戒していた。町の外周を回りつつ、何かあったら魔導通信で連絡を入れるのが彼らの役割だった。

 

「はぁ……夜間に警戒なんてめんどくせぇ」

 

 二人のうち、若い男は気だるそうにそう言った。十ほど歳が上の男の方がそれを注意する。

 

「文句言うな。フェンの蛮族相手なら夜襲もあり得るだろうが。気を緩めるなよ」

「んな事言ってもよぉ。俺たちゃ皇国軍だぜ?蛮族共が夜襲したところで、俺たちに敵うとは思えんがな」

「それは言えてるが……」

 

 年上の兵士は、彼の言葉の一部を肯定した。確かに、今朝の戦闘の時もそうであったが、我が皇国軍はフェン王国軍など敵ではないかのように快進撃をした。

 フェン王国軍には魔導銃が存在しない。銃がなければ戦列歩兵の前にバタバタと薙ぎ倒されるだけなのは明白。

 だが、フェン王国はそれを学習しているのか、奇襲を狙うようになっていた。夜襲だってあり得るかもしれない。

 彼らが歩哨として警戒にあたっているのはそんな訳だ。

 

「それよりよぉ。ニシノミヤコのフェン人は締まりが良かったぜ?終わったらお前もどうよ」

「やめとく。俺には妻がいるんだ」

「けっ、愛情深い奴だ。にしても例のニホン人共の方が良い身なりしてたな。若い奴もいたし、あっちもあっちで楽しめそうだぜ」

「おいおい、ニホン人には手を出すなって将軍さまから言われてるだろ?」

「はっ、三日の猶予が過ぎれば俺たちの好き放題よ。まぁ、そんな時間でニホンがなんとかできるとは思えんがな」

 

 彼らがそんなたわいの無い会話を続けていると、年上の兵士の方が、すぐ側を流れる川の方で草が擦れる音がしたのを聞いた。

 

「──んっ」

「どうした?」

「いや、川の方から何か音が……」

 

 もっと近くで見ようと、ランタンを川の方へ向けようとしたその時、彼の意識は途絶えた。

 

「お、おいっ──」

 

 倒れた兵士を見て、何があったのか理解する間もなく、もう一人の兵士も倒れ伏した。

 

「クリア」

「クリア」

「急ぐぞ。この先だ」

 

 彼らが覗こうとした川の方から、迷彩服に身を包んだ黒い影がいくつか。ゆらりゆらりと、まるで川の妖怪のように水辺から這い出てくる。その手に真新しい小銃を持って。

 


 

日本国 首都東京 首相官邸地下

 

 首相官邸の地下にある対策本部では、武田首相以下、日本の首脳陣が作戦の報告を受けていた。

 

「総理。特殊作戦群隊員48名、現着しました。ドローンの映像入ります」

 

 作戦を担当する幹部自衛官がそう言うと、会議室のメインモニターに、現地を飛行中の無人機の映像が入ってきた。

 無人機には赤外線カメラが搭載されており、夜間でも作戦隊員たちの様子が見てとれた。

 

「これは……」

「すごいな。ここまで気づかれずに入れたのか」

「しかし、まだ邦人の隠し場所がわからないのでは?」

「これから指揮官を捕え、尋問します。それに賭けるしかありません」

 

 幹部自衛官はそう言う。

 作戦にあたって、一番の懸念だったのは邦人の隠し場所であった。ニシノミヤコの何処かに居ることは確実であったが、詳しい隠し場所に関してはこの三日で調べきれなかった。

 一番手っ取り早いのは、現地の人間を尋問することである。彼らはそれに賭けるしかなかった。

 

「(どうなるかは彼らに掛かっている。私は責任を取り、祈るしかない。頼んだぞ……)」

 

 彼らがニシノミヤコの城跡に接近する様子を見守りながら、武田は祈るように固唾を飲んだ。

 


 

フェン王国 ニシノミヤコ

 

 パーパルディア皇国軍に占拠されているニシノミヤコの城砦へ潜入するべく、川伝いに進んでいた特殊作戦群の各分隊は、それぞれの配置につく。

 冷たい川に足が冷えるのも気にせず、時折敵が上を通るのも平然とした表情でやり過ごし、隊長は報告を待った。

 

『こちらランサー、配置よし』

『こちらバーサーカー、配置よし』

『こちらアーチャー、配置よし』

「配置完了です」

 

 暗視ゴーグルの緑色の視界の中、副官が小声で伝える。

 隊長は暗闇の中で静かに頷くと、インカムに手を添えた。わずかな声でも拾ってくれる高性能インカムへ、状況を知らせる。

 

「HQ、こちらセイバー。配置完了」

『了解。作戦開始を許可する。通信オワリ』

 

 洋上で待機している護衛艦〈いずも〉に設置された、作戦司令部からの許可を受け、隊長は各分隊へ端的な指示を下した。

 

「こちらセイバー、全分隊、行動開始」

『了解』

 

 それを合図に、一部の隊員が持っていた射出機でグラップリングワイヤーを射出した。撃ち出されたワイヤーは城壁の屋根に引っかかる。

 それが大人が乗り降りできる強度であることを確認すると、特殊作戦群の隊員たちは一人ずつ慎重に、そして素早くワイヤーを登って行った。

 

「んっ、なんだぁ──」

 

 勘のいい兵士がその物音に気がついたが、暗闇の中で隊員を視認する前に、サプレッサー付きのUSP拳銃で撃ち殺された。

 

「クリア」

「クリア」

「ゴーゴーゴー」

 

 屋根に登った隊員たちは、周囲の敵を排除すると、一斉に展開。そして、足音を立てにくい特殊な走り方でダッシュ。

 

「なんだっ──」

「て、てきっ──」

 

 ダッシュと同時に彼らは手に持ったHK416で射撃。なんと走りながらであるにも関わらず、正確無慈悲な精度で皇国兵を倒していく。

 ここからは時間の勝負だ。

 敵をとにかく速攻で排除していき、本丸まで走り抜ける。暗闇に紛れていることもあり、敵が対応する隙はほとんどなかった。

 暗視ゴーグルのアドバンテージもあり、彼らはあっという間に本丸に侵入し、寝ぼけた皇国兵を皆殺しにしていく。

 そして、本丸の会議室らしき場所に来た。

 

「なんだ、今物音が……?」

「外が騒がしいですね。見てきます」

 

 指揮官らしき人間の声が聞こえたのを、隊員たちは襖の影に隠れて待ち構える。

 そして、兵士が一人出てきたのを射殺し、即座に突入する。

 

「な、なんだ!?」

「くそっ、敵だ──」

 

 対応が遅れた兵士たちが銃を向けるが、その前に射殺される。部屋の中の皇国兵は、わずか5秒で鎮圧された。

 

「動くな!」

「な、何者だ貴様ら!?」

 

 やけに身なりのいいその人物は、手に持った拳銃を弾き飛ばされた状態でこちらを睨んだ。周りにはテーブルがあり、その上にこの地域の地図とランタンが置いてある。

 

『こちらランサー、北側を制圧』

『こちらバーサーカー、南側を制圧』

「こちらランサー。本丸を制圧した。捕虜六名」

 

 同時に各分隊からの報告が入る。隊長は本丸を制圧したことを短く伝えると、手に持ったHK416を、一番派手な服装をした人物に対して向けて問いかける。

 

「お前らが司令部の人間か?いくつか聞きたいとこがある」

「くっ……こ、この私が答えるとでも!?」

「ああ、お前が将軍か。お前は答えなくていい。おい、そこのお前ら──」

 

 隊長は震えながらも軍人として忠実であろうとする敵将ベルトランを、冷めた目で一瞥すると、傍に伏せていた若い連中に顔を向ける。

 

「お前ら参謀だな?こっちに来い」

「な、なぜ──」

「来い!!」

「ぐっ、や、やめろ!放せ!!」

 

 隊長は参謀のヨウシともう一人を連れていくと、その場に押さえつけて拘束し、ヨウシの足にナイフを突き立てた。

 

「がっ、あ"ぁぁぁぁぁ!!」

「や、やめろ!やめてくれぇぇぇ!!」

 

 もう一人の参謀にも、手を縦に切り裂いて苦しみを与える。これは一種の拷問だ。地球では到底許されない行為であるが、ここは異世界である。

 

「き、貴様ら……!」

「日本人のいる場所を答えろ。さもなくばお前の大切な部下をもっと痛めつけるぞ」

「くそっ!卑怯者!」

「ちっ……おい、そいつの目を抉ってやれ」

 

 隊長の指示を受け、頷いた隊員は、参謀ヨウシの右目にナイフを突き立て、抉り出すようにグリグリと回す。

 

「あ、あがぁぁぁぁぁぁ!!」

「ひ、ひぃぃぃぃ!!」

「わ、分かった!もうやめてくれ!話すから!!」

 

 あまりに猟奇的な行動に恐れをなしたベルトランは、ヨウシをこれ以上痛めつけられないよう、秘密を暴露した。

 恐れからか、涙と涎が滴り落ちる。体の震えも止まらない。ベルトランは目の前に立つ四眼の人間を、恐ろしい魔物を見るかのような目つきで見ていた。

 

「こちらセイバー、指揮官が口を割った。二の丸、三の丸の地下だ」

『了解した。制圧する』

 

 隊長の指示により、部下たちが制圧しにかかる。邦人の救出が急がれていた。

 


 

同時刻 ニシノミヤコ城 二の丸

 

 地下は薄暗く、松明やランタンがなければ何も見えない。

 だが特殊作戦群の隊員たちは、暗視ゴーグルを活用するためそのランタンを撃ち壊し、暗闇の中に姿をくらました。

 

「がっ──」

「くそっ、どこだっ──」

 

 真っ暗闇の中、四つの緑色の目が光る。サプレッサー越しの銃声は静かに響き、牢獄に続く周辺を制圧した。

 

「クリア!」

 

 隊員の一人が、ライトを持って牢獄の方を照らす。その中には、何十人もの日本人が老若男女問わず押し込められていた。

 

「皆さん、自衛隊です!救出に来ました!」

「あぁ、よかった……」

「助かった……」

 

 隊員が自衛隊であることを明かすと、安堵から日本人たちはほっと胸を撫で下ろした。

 中には子供の姿もあった。この牢獄の中は寒く、十分な食事や睡眠は取れていないだろう。急いで解放しなければならない。

 

「こちらランサー、邦人を確保」

『こちらバーサーカー、こちらも邦人を確保した』

『こちらセイバー、了解した。人数の把握急げ』

 

 隊長からの指示を受け、各分隊は邦人たちを一グループずつ外へ連れ出し、城の中庭にまとめる。隊員の一人が声を張り上げ、周りに伝えるべきことを伝える。

 

「これからヘリコプターを呼びます!皆さんはそれに乗ってもらいます!それまでは我々が護衛します!いいですね?」

「わ、わかりました……」

 

 民間人たちは助けに来た自衛隊員を見て一度は安心したが、彼らがかなり少人数なのを見て、少し不安を感じていた。

 

「やけに少人数だが、大丈夫なのか……?」

「一体どこの部隊なんだろうな?」

「おかーさん……」

「大丈夫よ。自衛隊の人たちが守ってくれるから」

 

 ヘリを呼ぶまでの間、彼らは無防備な状態で城の中で待機してなければならない。それまで護衛するのは特戦群隊員たちの役目だ。

 作戦は第二フェーズに移行しつつあった。

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