【完結】日本国召喚IF〜フェン王国邦人救出劇〜 作:特殊匿名群
フェン王国 ニシノミヤコ北 小高い丘
狙撃班のアーチャー分隊は、ニシノミヤコの北にある小高い丘に陣を張り、スポッターと共にM24SWS対人狙撃銃を構えていた。
スポッターの耳に他部隊からの通信が入る。
『こちらセイバー、全部隊へ。これよりヘリコプターでの回収に移る。撤収だ』
『こちらランサー、了解』
『こちらバーサーカー、了解』
「こちらアーチャー、了解した」
通信が終わると同時に、狙撃銃を構えていた女性隊員が小声でスポッターに見たものを伝える。
「野営地が動いた。騎兵が動き出してる」
彼女は端的な口調でそう言った。スポッターがそれに追従して、暗視機能のついたターゲットスコープを覗く。
そこには二組の騎兵らしき皇国兵がランタンを片手に馬を走らせていた。向かう先はニシノミヤコ城と思われる。
「伝令だな。流石に騒がしいのに気づいたか」
「あの速さだと辿り着かれる」
「足止めしよう、先頭の馬を狙え。距離は550」
スポッターの指示は短く、そして無慈悲だった。女性隊員は先頭を走る馬に照準を合わせると、ゼロインを調節し、即座に引き金を引いた。
「ヒット。騎手は落馬。もう一発」
「っ……」
暗視スコープの中で馬が倒れるのを見届けて、ボルトを引き、その後ろの騎兵に狙いを定めて引き金を引く。
「……ヒット、後続も無力化。よし、これくらいでいい。行くぞ」
「了解」
そう言ってスポッターは徐に立ち上がると、機材を回収して後ろに待機させていた四輪バギーに乗った。
その後ろに、狙撃銃を担いだ女性隊員が跨る。バギーは誰にも知られずにこの場所を後にした。
同時刻 ニシノミヤコ城
拉致されていた邦人の安全を確保した後、隊長は本丸の塀の上から状況を確認していた。
その隊長の下に、副官がやってくる。
「隊長、ヘリは二十分で来るそうです」
「わかった」
軽く頷くと、隊長は視線を邦人たちの方へ向ける。彼らは数十人のグループに分けられて、ヘリコプターを待っていた。
「皆さん。ヘリは二十分で来ます!一機につき乗れるのは四十人までです!順番に乗ってください!」
隊員の一人が邦人たちに状況説明を行っていた。その様子を確認していた最中、隊長の耳に通信が入る。
『隊長。北側の野営地に動きあり。ランタンを持った兵士たちが続々と来てます』
「連絡がないのに気づいたか……迎え撃つぞ。各分隊、配置に付け」
『了解』
隊長は端的にそう伝えると、即座に各分隊に迎撃の指示を出す。
隊員たちが速やかに移動し、城壁の弓を覗かせる穴から銃口を覗かせる。暗視ゴーグルの視界の中に、数百人規模の皇国兵が映った。
「……撃て」
隊長の言葉を合図に、暗闇の中、皇国兵たちに雨霰の銃弾が襲いかかった。
夜の空を、無数の鉄の箱が飛んでいた。
陸上自衛隊、第一ヘリコプター団所属のCH-47大型輸送ヘリが6機、UH-60JA中型輸送ヘリが10機、そしてその護衛としてAH-64攻撃ヘリが続く。また、編隊の中にはOH-01偵察ヘリの姿もあった。
ターボエンジンとローターの響く重い音とは裏腹に、このヘリの機内はほとんど揺れずに飛行していた。
「あと3分!」
編隊長機に任命されたCH-47の機内で、飛行隊隊長は暗視スコープで窓の外を覗いた。
現場は暗闇に包まれており、暗視装置なしには着陸地点を目視することが出来ない。だが幸いにも第一ヘリコプター団の機体には、全機に夜間作戦能力が備わっていた。
『こちらスポッター01、野営地を複数確認。うち南側にワイバーンが多数』
「了解。アタッカー01、先行して攻撃せよ」
『了解。攻撃開始』
編隊長は攻撃の指示を出す。
護衛担当のAH-64攻撃ヘリがその現場に向かい、軸線上にその野営地を捉えた。
『アタック!アタック!』
攻撃ヘリは翼下に携えたロケット弾を一斉射。夜間でワイバーンが発進できず、対応が遅れていた野営地に死のシャワーが降り注ぐ。爆発は連鎖するように地面に炸裂した。
『無力化完了』
『了解。アタッカーはランディングゾーンの確保に移れ』
『了解』
編隊長は野営地から火の手が上がるのを確認すると、攻撃ヘリをニシノミヤコ城の方角へ向かわせた。
同時刻 ニシノミヤコ城北側
音もなく銃弾が降り注ぐ。
狙いは正確で、暗闇の中で皇国兵がバタバタと倒れていく。
運良くニシノミヤコ城での異変に気がついた皇国兵達だったが、彼らは城まで近づけずにその場に釘付けにされていた。
「がっ──」
「うわっ──」
皇国兵たちは銃声もせずに撃ち殺されていく味方を眺めていくことしかできず、また次々とやられていく。
運のいい隊は遮蔽物に身を隠して難を逃れたが、これでは城まで近づけない。
「くそっ、どこだ!?」
「銃声も聞こえないぞ!?」
「そこっ、ランタンを消せ!消すんだ!!」
小隊長が周囲の兵士たちが持っていたランタンを消させ、暗闇の中に身を隠す。そして合図で一斉に飛び出すが、また音もなく銃弾が放たれた。
「ぐわっ──」
「なっ──」
「や、奴ら夜でも見えてるのか……!?」
また味方が倒れていくのを見て、小隊長の顔は恐怖に歪んだ。そして彼もまた頭部を貫かれ、地面に伏した。
「リントヴルムを前に出せ!盾にするんだ!」
「砲兵!魔導砲を持って来い!!」
敵の攻撃が夜間でも見えていることをが判明したため、皇国兵たちは作戦を変えざる得ず、大通りに銃弾を防げる外鱗を持ったリントヴルムを出した。
今度は銃弾を弾いてくれているのか、ほとんど倒れずに進めた。そしてリントヴルムを盾にした隙に、魔導砲の砲兵が前に出る。
「魔導照明弾、撃てぇー!」
魔導砲が最初に撃ち込んだのは魔導技術で作られた照明弾だった。子弾になって地面にばら撒かれた照明弾は道に転がり、夜闇の敵を明るく照らす。
「今のうちに前へ!」
「前進だ!!」
それを合図に、皇国兵たちはリントヴルムを盾に少しずつ前進を始める。刻一刻とニシノミヤコ城が迫っていた。
同時刻 ニシノミヤコ城
ニシノミヤコ城に立て篭もる特殊作戦群の隊員たちも、流石に銃弾が効かない敵が現れ始めると苦戦を強いられていた。
さらに大通りが照明弾で照らされたのを受け、暗視ゴーグルに眩い光が映る。眩しさに目を細める隊員もいた。
『フレアだ。敵がさらに接近』
『……ダメだ。地竜は小銃じゃビクともしない』
「ヘリが来る。弾幕を張りながら後退しろ」
『了解』
彼らは一番見下ろせる陣地を捨て、少しずつ後退を始めた。そんな時、上空に黒い影をけたたましい音と共に攻撃ヘリが飛んでくるのが暗視ゴーグル越しに見えた。
「来たぞ」
『アタッカー01、攻撃開始』
攻撃ヘリが現場に到着すると、暗闇の敵に向かって機関砲を掃射した。
流石のリントヴルムも30mmチェーンガンの攻撃には耐えられず、次々と弾が貫通して肉体ごとバラバラになった。その後ろの皇国兵たちも、凄まじい火力により肉片になっていく。
『こちらアタッカー01、脅威は排除した』
『こちらアタッカー02、南側も掃討完了。ランディングゾーンの安全を確保』
「了解した。これより邦人の移送に移る。通信オワリ」
隊長が端的にそう言うと、ニシノミヤコ城の庭の一番広い場所にCH-47が降りてきた。
いつでも離陸できるよう、エンジンを回した状態で地面スレスレを滞空する。そしてその後部ハッチが開いた時、待機していた邦人に対して隊員が大声で指示を出す。
「皆さん!順番に乗ってください!」
邦人たちは二列になり、順番にヘリコプターへと乗り込んでいく。皆ホッとした表情だった。
「焦らないで!全員分のヘリがありますから!」
「子供とお年寄りは足元に気をつけて!」
「ここで止めます!ここで止めます!次の便を待ってください!」
収容を完了させた第一便が離陸を開始する。
そして間髪入れず、即座に第二便のCH-47がやってきてゆっくりと降りてきた。
『邦人収容完了!離脱します!』
邦人たちの落ち着いた動きもあり、ものの10分ほどで収容が完了。最後の便が離陸していくのを見送り、いよいよ特殊作戦群の隊員たちも撤収の時が来た。
降りてきたのは、第102飛行隊のUH-60汎用ヘリコプター。彼らは特殊作戦群の隊員たちを収容するための機体だ。
脅威の排除を確認し、北側の分隊もヘリコプターに駆けつけてきた。一人ずつヘリコプターに乗っていく。
「急げっ、撤収だ」
最後の隊員が乗り込んだ。欠員がないことを確認した隊長は、最後の便に乗り込む。
それを合図に、UH-60は離陸。現場を離れていく。
欠員、損害、負傷者なし。
作戦は完全なる成功に終った。