【完結】日本国召喚IF〜フェン王国邦人救出劇〜   作:特殊匿名群

4 / 6
第四話

フェン王国 ニシノミヤコ湾

 

 フェン王国攻略軍として派遣されたパーパルディア皇国海軍の戦列艦203隻は、海岸線に陸戦隊のための物資を運び込み、その後は待機していた。

 一日目にフェン王国海軍と戦闘した時は鎧袖一触だった。皆相手を楽観視しており、今週には帰れると思っている。

 海軍提督のシウスもその一人だった。彼は夜間ということもあり、提督の自室にて睡眠をとっていた。

 そんな時、部屋の扉がノックされた。

 

「どうした?」

「お休みのところすみません!緊急事態です!」

「なに?」

 

 伝令にそう言われ、眠気が覚めたシウスは飛び起きて海軍のコートを羽織った。そして駆け足で司令官たちが集まっている部屋に駆け込んだ。

 

「状況は?一体どうなっている?」

「はっ……ニシノミヤコに展開した部隊からは、何者かの夜襲受けていると報告がありました」

「なんだ、そんなことか?」

「それが!ベルトラン将軍とも連絡が繋がらないのです!」

「なに?」

 

 通信参謀の言葉を受け、シウスは疑問符を浮かべた。

 

「(まさか暗殺者にでも寝首を掻かれたか?いや、相手があのフェンだとしてもそこまでは出来まい……まさか──)」

 

 参謀たちがシウスに注目する。この場での決断は彼に任されていた。

 

「どうします?」

「一度本国に連絡を──」

 

 彼が決断しようとしたその時。船の外で爆発の音が聞こえた。

 船室の窓から赤い光が見える。シウスは思わず窓を開け、外を食い入るように見つめた。

 

「なんだっ、何が起こった!?」

「て、敵襲です!哨戒中のフリゲートが爆発しました!」

「なんだと!?何故気づかなかった!!」

「この夜間に敵を視認するのは無理です!」

 

 シウスは突然の奇襲に苛立ちを覚えながらも、部下に警報を鳴らさせ、急いで甲板に上がる。

 すると上陸地点の外周にいる船が、次々と炎上していた。敵は暗くてよく見えなかったが、ゆらゆらと燃える炎の向こう側に、何か巨大な影が見えた気がした。

 

「見えました!あの船です!」

「敵は一隻だけ……ンッ──!?」

 

 彼らが敵を視認した時、旗艦に127mm速射砲の榴弾が降り注いだ。放たれた二発の砲弾は、正確に旗艦を撃ち抜き、中の魔導炸薬などに引火して一瞬で燃え上がった。

 海将シウスは、爆発で飛び散った木片が身体に刺さり、そのまま海に転落した。

 


 

翌日 パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

 作戦完了の後。

 約束された期限になったため、朝田は身支度を整えてホテルから第一外務局へと向かった。

 案内された先には、あの時と同様皇女レミールが居た。

 

「よく来たな。フフッ……」

 

 彼女はこちらを嘲笑うかのような、自信満々な表情をしている。人質が救出されたと知らず、呑気なことだと朝田は笑いを堪えるのに必死だった。

 

「さて、答えを聞こうじゃないか。三日も待ってやったんだ。分かっているな?」

 

 レミールがさも答えが一つであるかのような言い草をする。朝田はその前に、レミールに対してこう問いかけた。

 

「その前に、人質の様子をご覧になった方がいいのでは?」

「ふんっ、時間稼ぎのつもりか?いいだろう。貴様らの決断一つで処刑されるやもしれぬ者どもの様子を、お前に見せてやる」

 

 レミールはカッコつけか、指を弾いて秘書に例の水晶を持って来させた。レミールが水晶を撫でると、曇っていた水晶に映像が映し出される。

 

「……?」

 

 だが、映し出されたのは見覚えのない風景。床や天井が灰色の金属で構成された、謎の空間。しかし、微かに見える外の風景から、それが海の上の船であることが窺えた。

 

「な、なんだこれは……!?」

 

 水晶には、黒いバラクラバで顔を覆い隠した謎の集団が映っていた。彼らは皆見たことのない迷彩柄の銃を持っていた。

 その後ろには、自分が確保を命じたニホン人の人質たち。皆、こちらを睨みつけるかのような怒りに満ちた表情をしている。

 

『パーパルディア第一皇女、レミール殿下。貴方が首謀し、拉致した人質は全員解放させてもらった』

「な、何っ……!?」

 

 水晶に映る謎の覆面の人物が、突然喋り出した。そして衝撃の事実をレミールに告げる。

 

『我々日本国は、このような蛮行を決して許さない。これは日本国民の総意であり、決意である』

 

 覆面男の言葉が続く。

 

『よって、パーパルディア皇国は滅びの道を辿るだろう。覚悟するがいい。お前たちは終わりだ

「な、なんだ……なんなんだこれは!?」

 

 謎の覆面男たちと、助け出されたニホン人。周りに皇国兵はいない。混乱するレミールであったが、人質が日本によって攫われた事だけは理解した。

 焦ったレミールは、即座に魔導通信で責任者を呼び出した。

 

「アルデ!これは一体どうなっている!?」

『れ、レミール様!たった今、フェン攻略軍より緊急連絡があり、ベルトラン以下陸戦隊首脳部が敵に拘束されたようです!ニホン人の人質も全員連れ去られました!』

「な、何故だ……何故そんな情報が私に伝わっていないのだ!!」

『も、申し訳ありません!現地は通信網を破壊され、魔信を繋いでいた海軍の戦列艦も全滅していたようで……とにかく、フェン攻略軍は完全に孤立しています!』

「な、なん……なんだと……!?」

 

 レミールは受話器を乱雑に投げ捨てると、怒りを露わにし、朝田を睨みつけた。

 

「貴様……謀ったな!!」

「なんのことでしょう?人質が勝手に逃げ出したのでは?」

「ええい、黙れ!衛兵!コイツを拘束し──」

 

 レミールが周囲の衛兵に指示を出そうとした、その時だった。朝田の手から何か筒のようなものが、レミールの机へ投げ捨てられた。

 

「え?」

 

 その瞬間、閃光が目を覆い尽くした。

 聞いたこともない爆音も同時に襲いかかり、視界と聴力を奪われ、激しい頭痛がした。

 

「がっ、あぁっ!!」

「み、耳が……!」

 

 周りの兵士や秘書も同じように耳を押さえているのか、悶絶する。レミールは何も見えない中でも意識だけは保っていた。

 

「(な、なんだこれは……新手の魔法か!?まずい、奴が逃げ──)」

 

 視界と聴力が段々と戻ってきた時、わずかに見えた視界の中で、秘書が頭を撃ち抜かれて死んでいくのを見た。

 全てがクリアになった時、レミールは取り押さえられていた。数分間のような長い時間が過ぎたかに思えたが、実際にはわずか10秒の出来事だった。

 

「クリア」

「クリア!」

 

 謎の覆面集団が、いつのまにか部屋に入っていた。何者だ?どうやって入ってきた?警備の者は何をしていたのだ!

 

「大丈夫ですか、朝田殿?」

「ええ、大丈夫です。まだ耳が遠いですが……」

 

 耳を塞いでしゃがんでいた朝田が、その覆面集団に介抱される。そして拘束されているレミールに対し、集団のリーダーらしき男が銃を向けて近づいてきた。

 

「な、何者だ貴様ら……!」

「お前がレミールだな?貴様を集団拉致、及び軟禁の疑いで拘束する!」

 

 覆面男はレミールに対して手錠をかけた。レミールは取り押さえられて暴れ始める。

 

「は、放せっ!貴様ら、こんなことしてタダで済むと──」

「少し黙ってろ」

 

 まだ口答えするレミールに対して、覆面男はその顔面に対し、思いっきり拳を打ちつけた。鈍い音が響き、レミールは気絶した。

 


 

同時刻 パラディス城

 

 そんな騒ぎが起こっているとは露知らず、パラディス城では皇帝ルディアスが頭を抱えていた。

 彼の目の前には、軍の最高司令官であるアルデが跪いている。ルディアスは彼に問いかける。

 

「アルデよ。フェンで一体何が起きている?」

「ル、ルディアス様……これは、その……」

「何故列強たる我が国が、フェン如きに後手を喰らった?えぇ?相手は誰だ?原因は掴んでいるのか?」

「げ、原因は目下調査中であり……」

「いい加減にしろ。私はお前が今後どうするのかを聞いているのだぞ!」

 

 責任逃れのようにカビ臭い言い訳を並べ立てようとしたアルデを、ルディアスは叱咤した。アルデは恐怖で蹲る。

 

「も、申し訳ありません!しかし、夜間にこのような組織的な襲撃を、フェン如きができるはずもなく……」

「それはわかる。なら、今回の件はだれか別の勢力によるものなのか?」

「ムーやミリシアルなら可能かとは思いますが、我が国と敵対する理由がありません」

「それもそうだ。なら誰が?」

 

 その疑問はもっともだ。フェン王国如きが、夜襲とはいえ此処まで高度な作戦ができるとは思えない。

 報告によると、相手は夜間に侵入し夜間に攻撃を行っていた。夜目が効いていたとしても無理がある。

 

「……現場にはニホン人の人質が多数いました。まさか、ニホンがこの短時間で──」

「馬鹿者が。相手は音の出ない銃を使い、夜間に弾を当ててきたと聞くぞ。文明圏外の国がそのような高度な魔法技術を持っているわけが──」

 

 ルディアスが馬鹿げた話だと切り捨てようとした辺りで、街の方から何か悲鳴のような声が聞こえた。

 

「ん?なんだ、街が騒がしいな?」

「民衆が騒いでいるようですが……」

「これは悲鳴か?いや、微かに魔導銃の音も──」

 

 ルディアスが城の外を見て、冷静に状況を分析しようとしたその時、伝令が慌てて駆け込んできた。

 

「ルディアス様!大変です!皇都に侵入者です!顔を隠した集団が我が軍を攻撃しています!」

「な、なんだと……!?」

 

 ルディアスはその報告に耳を疑う。皇国が、それも首都たる皇都が敵の襲撃を受けるなど、過去数百年は無かった話だ。

 

「我が国は列強だろうが!なぜ奇襲を許した!?」

「分かりません!何者かの手引きがあったとしか……とにかく、敵はこの城を目指して一直線に来ています!裏手からお逃げください!」

 

 伝令兵にそう言われ、ルディアスは歯軋りをした。皇帝としてのプライドが逃亡を許せなかった。

 

「ええいっ、列強の皇帝たるこの私がおめおめと……!アルデ!皇都周辺の皇国軍を動員しろ!侵入者を蹴散らせ!」

「か、かしこまりました!直ちにエストシラント陸軍駐屯地へ動員要請を──」

 

 アルデが指示を出そうとしたその時、皇都エストシラントの陸軍駐屯地の方から大爆発が響いた。

 彼らが慌ててその方角を見れば、青い塗装をした飛行機械らしきものが、凄まじい速度で基地を爆撃し通り過ぎて行った後だった。

 

「なっ……駐屯地が……!」

「アルデ、あれはなんだ!?皇都の防空体制はどうなっている!?」

「と、とにかくお逃げください!今はこの城も危険です!早く!急いで!!」

 

 いきなりの襲撃に伴い、皇国軍の対応は後手に回っていた。皇都の防空体制は死んだも同然だろう。

 アルデはルディアスに責任を追及されるのを恐れ、かと言って置き去りにはできないので、彼の背中を押して逃げるように急かしたのだった。

 


 

同時刻 皇都エストシラント

 

 いきなり皇都を戦場にされたパーパルディア皇国軍だったが、一部の部隊は異変を察知して素早い行動をしていた。

 陸将メイガは街での騒ぎを聞きつけ、駐屯地に配備されていた騎兵を市街地へ展開させていた。自身も馬に乗り、爆撃される直前に駐屯地を脱出していた。

 

「将軍!ご無事でしたか?」

「ああ……駐屯地はやられたが、一部の騎兵は私の独断で皇都に展開済みだ。私が直接指揮を取っている」

 

 メイガは馬を走らせ、部下の参謀と合流を果たした。馬を降りて臨時で設営された指揮所のテントに入る。

 

「状況は?」

「敵勢力は散発的に皇都に侵入。荷車のような物に乗って市街地を高速で移動しているようです」

「近衛兵団より連絡です。ルディアス様を皇都より外へ逃す行動を開始したとのこと。侵入者を一刻も早く排除せよ、との事です」

「分かっている。それより、奴らは今どこに?」

「通信によりますと、奴らは大通りを避けて裏道を──」

 

 通信参謀が言葉を続けようとしたその時、外の兵士たちが騒がしくなっていた。

 

「おい、アレはなんだ?」

「こっちに向かってくるぞ!」

「おい、どうし──」

 

 メイガが外の様子を見ようとしたその時だった。突然、体が熱くなり頭が激しい痛みに襲われな。

 

「がっ、な、なんだ……?」

「頭が……痛い……!!」

「き、気持ち悪い……吐き気が……」

 

 更には吐き気も襲ってきて、視界もぼやけ始めた。次第に黒く塗りつぶされていく。

 

「め、目が見えない……!」

 

 メイガが混乱しながらも状況を把握しようとしたその時、遠くで素早い足音が聞こえてきた。

 

「マイクロ波、照射止め!突入!!」

 

 薄れる視界の中、銃を持った謎の集団がメイガに銃口を向けた。メイガの意識はそこで途絶えた。

 

「クリア」

「クリア!」

 

 メイガを撃ち殺したのは、陸上自衛隊の特殊作戦群で構成された部隊の隊員だった。

 皇国兵が荷車と称したのは、特殊作戦群が保有する汎用軽機動車に対人マイクロ波照射装置を搭載した改造品。

 その車両に作戦のガイドとして乗り合わせていた第1外務局長のエルトは、見たことない類の魔法で敵を制圧した日本の特殊部隊に驚嘆の声を漏らす。

 

「凄まじいですね……今のは幻惑魔法ですか?」

「ええ。我が国が作ったものじゃありませんがね」

 

 彼女の護衛として運転席に座っていた隊員は、苦笑いをしながらそう言った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。