ぼくらハグルマ団!03~世界一周レースの裏で~   作:madron

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※ この作品は、アークライト様のアナログゲーム「のびのびTRPG スチームパンク」の二次創作です。
イベントや世界観の発想など、「のびのびTRPG スチームパンク」の二次創作であることには間違いありません。

また、この作品はChatGPTを用いて文章を書き、修正・加筆を手作業で行っています。

ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.



02 荒くれ物の気配

第二章 荒くれ物の気配

 

 

世界一周レースの出発地となるこの街は、いつもよりわずかにざわついていた。広場では準備に追われるスタッフたちの声、道端では商人たちがレース関連の商品を売り出し、子どもたちは紙製の旗を振り回してはしゃいでいた。

 

そんな日の朝、セリルは少し早めに宿を出た。

 

出場車両の預り所へ向かって歩を進め、スクーターを預ける。

 

今回の出場は、耐久試験だ。

 

自分のスクーターの丈夫さを証明する。それがヴィクトルの目的であり、セリルもそのために付き合うつもりだった……だったのだが。

 

けれど、スクーターに貼りつけられた広告の数々は、すっかりその志を覆い隠していた。

 

レース出場者の車の大半も似たようなものとはいえ、レースは多くの人の目が集まるため、多くの参加者にはスポンサーがついており、大量の広告が張り付けられている。

セリルのバイクにも勿論それらは貼られており、書いた本の紹介ポスター、博物館のステッカー、古代文明研究会のロゴに至るまで、車体は広告だらけ。もはや移動する掲示板と化したスクーターを預け、セリルは苦笑いを浮かべながら預り所を出た。

 

町に詳しくないセリルは早めにスクーターを預け、今日、町に着くはずのヴィクトルと合流するため、余裕を持って待ち合わせ場所であるネウジェルゼィ岩のある広場へと向かっていた。

 

 

――そして。

 

 

預り所からを出て、しばらく歩いた頃、耳に何か引っかかる声が届いた。

 

 

 

「だからよ、今すぐってわけじゃねえんだ。けどさ、もうだいぶ待っただろ?」

 

「そうそう、こっちも大変なんだよ。何回も顔出すのもさあ、手間だしな?」

 

言葉尻こそ穏やかだったが、声の調子には、どこかじわじわと追い詰めるような圧があった。

 

セリルは足を止め、声の方へ視線を向け、近づいていった。

 

路地の奥、そこには一人の若い女性が立っていた。背筋を強張らせ、両手をぎゅっと握っている。その前に、がっしりとした体格の男が立ちはだかっていた。笑みを浮かべてはいるが、目が笑っていない。

更にもう一人、痩せた男が彼女の横に立ち、煙草を咥えながらニヤニヤと笑っている。

 

「別に、金がないならないでいいんだよ? その代わり、代わりになるもん…あるよなぁ?」

 

女は顔を伏せて、かすかに首を振る。

 

「……ごめんなさい、でも次の返済日には…」

 

「おーおー、謝るのは得意だなぁ。でも、それで済む話じゃねえんだって。あんたも大人なんだしさあ、な?」

 

痩せた男が、彼女の肩に手をかけようとする。

 

——そのとき。

 

「…どういう状況だ?」

 

関わり合いになるべきではないのかもしれないが…セリルは関わりに行った。

 

「……こんな朝っぱらから不穏な声が聞こえると思ったら…

 

 やめときな。せっかくレースに賑わってるってのに、町の評判が落ちるぞ。」

 

なるべく穏やかに声をかける。あくまで説得で終わらせたかった。

 

「何だよ、おまえ」

 

がっしりした男が不機嫌そうに言った。

 

「ただの通りすがりだが…状況が状況だけに、見るに見かねてな。」

 

セリルはゆっくりと女性の方に視線を向ける。

 

「その人、困ってるように見えるだろ? それでもって無理やり何かをしようってんなら、止めないわけにもいかないだろ?」

 

痩せた男が肩をすくめた。

 

「無理やりぃ? おいおい、こっちはちゃんと“話し合い”してるだけだろ。な? 借りたもんは返すって、当然の理屈じゃん?」

 

「しかも、こっちは優しくしてやってんだぜ? ちょっと脅したみたいに言われると、心外だよなぁ?」

 

男たちは、言葉の上では穏やかだ。だがその“話し合い”という言葉の裏には、明確な力関係と、一方的な圧力があった。

 

セリルはその空気を感じ取り、鼻で軽く笑った。

 

「なるほど。だが貸し借りの話なら、まず町中じゃなく、机の前でやるべきじゃないか?」

 

「……てめぇ、何様のつもりだ?」

 

がっしりした男が、ゆっくりと足を踏み出した。馬鹿にされたとでも感じているのか、額に欠陥を浮かべ、怒りを隠しもせず視線を這わせてくる。

 

痩せた男が、後ろ手にゆっくりと近づいてくる。背中に棒かナイフを隠してるのか、まさか銃ということはないと思いたいが……

 

セリルはわずかに腰を落とし、荷物を地面に置くと、懐に手を添えた。だが、まだ刃物は抜かない。

 

「お前、やる気かよ?」

 

「いや。やる気じゃない。ただし、やられたら反撃する。」

 

沈黙のあと、がっしりした男が怒声を上げて突っ込んできた。

 

セリルは動かない。距離が詰まった瞬間、右足を滑らせ、相手の肩の外側に身を移動させると、肘で男の脇腹を突き、体勢を崩す。

 

男がぐらついたところへ、膝の裏側から蹴りを入れる。男が呻いて倒れ込むと、更にもう一撃入れようとするが、痩せた男が背中に隠していた棒を振り上げて突進してきた。

 

「てめえっ!」

 

セリルは前屈みになり、そのまま肩口に突っ込んでいった。振り下ろされた棒が背をかすめたが、勢いを殺さず、体ごと相手を壁へ押しつける。空いた右手で拳を振るい、脇腹へ一撃。

 

男の手から棒が滑り落ちた。

 

セリルは少しだけ肩を回し、はぁ、と息をつく。

 

「……運動不足だな。随分と鈍ってる。」

 

息を整えながら、拳を開いて、閉じてを繰り返す。

 

すると、女性がおそるおそる近寄ってきた。

 

「す、すみません……ありがとうございます……でも、その……」

 

「…気にするな。俺が勝手に、首を突っ込んだことだ。

 

 ただ、こんな奴らに追われてるなら、誰かに相談しな。組合でも、町の人でもいい。」

 

 女性はかすかに頷き、何度も頭を下げた。

 

 セリルはもう一度、倒れ込んだ男たちに目をやる。二人は壁にもたれたまま、忌々しげにこちらを睨んでいたが、立ち上がって反撃する様子はなかった。

 

 放っておいても大丈夫だろう。荷物を拾い、路地を出ようとして…立ち止まった。

 

「あぁ…そうだ、ちょっと教えて欲しいんだが……ネウジェルゼィ岩って、どこにあるかわかるかな?」

 

「…はい、わかります! そうだ、案内させてください!」

 

「いや、場所を教えてくれれば…」

 

「助けてくださったお礼です。これくらい、させてください」

 

しっかりとした口調で言い切られて、セリルは一瞬だけ戸惑った。だが、彼女の目がまだ、怯えた様子を残していることに気づくと、肩をすくめて笑った。

 

しばらく、落ち着くまで一緒に居た方がいいな。

 

そう思ったセリルは、ありがたくその申し出を受けることにした。

 

「なら……お願いするよ。あ、俺はセリル。君は?」

 

「私は、フラーグムです。本当に、ありがとうございました、セリルさん」

 

二人は並んで歩き始めた。路地裏から表通りに出ると、町は再びいつもの日常を取り戻していた。

 

行商人の声、子どもの笑い声、香ばしいパンの匂いが風に乗って流れてくる。

 

 

 

 

 

フラーグムの案内は迷いがなく、歩調も穏やかだった。

 

「ネウジェルゼィ岩って、変わった名前だな。」

 

「はい。このあたりじゃ、ちょっとした待ち合わせの目印になってるんです。昔、空から落ちてきた隕石なんですって。」

 

「へえ、そうなのか……」

 

フラーグムの様子もすっかり落ち着き、さっきまでとは逆に、楽しそうに話を続ける。

 

「観光名所ってほどでもないけど、ちょっとした噂もあるんです。触れば願うが叶うとか。

 

 なんでも、遠くの国には流れ星が消える前に願いをかけると叶う、なんて伝説があるみたいで。

 

 消えないで残った流れ星に、願いを託すみたいです。」

 

「……じゃあ、俺も触っておくか。さすがに願いはないけど」

 

「ふふっ、きっと良いことがありますよ」

 

そんな何気ないやりとりを交わしながら歩くうちに、大きな岩が見えてきた。町の一角、公園のように整備された広場の奥に、それは静かに鎮座していた。

 

「ここです。ネウジェルゼィ岩。」

 

「ありがとう。助かったよ、フラーグム。」

 

セリルがそう言うと、フラーグムは少し照れたように笑い、小さく手を振った。

 

「じゃあ、私はこれで。またどこかで。」

 

「あぁ。またな。」

 

彼女は踵を返し、来た道を軽やかに戻っていった。セリルはその背中を見送り、フラーグムの笑顔を思い返しながら、岩に手を伸ばした。

 

「……願いが叶う、ね」

 

彼はそっと手を岩に触れた。石の感触は冷たく、しっかりと大地に根を張ったようにそこにあった。

 

次の瞬間、彼の視線はもう一度あたりを見回す。

 

遠くに、こちらへと歩いてくるヴィクトルの姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

そして、数時間後。

 

 

 

レースの手続きの確認と、食事をするために訪れた冒険者組合。

 

その建物の中にある食堂で、先程の少女はエプロン姿で忙しそうに立ち働いていた。

 

「あ……!」

 

お互いに目が合い、驚きとともに笑みがこぼれる。

 

「まさかの再会だな…いや、この町に住んでるんなら普通か? とはいえ、こんなところで会うとはね…」

 

「あはは……まあ、いろいろあるの…」

 

フラーグムは笑って、ごまかすように言ったが…ここに来るまでの間に、彼女の事情はある程度知れた。

 

借金まみれの両親。

 

働かされ、働いたお金は親に搾取され、家には居場所もない少女。

 

それでも働き、仕事場では笑顔を絶やさず、精一杯働く彼女。

 

町の人間たちが嘆くように言う。「誰か、あの子を連れて逃げてくれないものかねぇ」と。

 

そんな中、彼女が楽しそうに、男と歩いてた。そう、セリルだ。

 

ヴィクトルと合流するまでに、彼にフラーグムとの関係を聞き、彼女の事情を説明してくれる者までいた。

 

 

 

セリルは何も言えなかった。まさか、今日であったばかりの少女を連れて逃げるなんてこともできない。

 

 

 

今は、レースが最優先だ。だが、彼女の存在は、どこか心に引っかかっていた。

 

――そうだ、レースが終わったら、もう一度、彼女に会いにこの街に来よう。

 

 

 

 

だが、そんな気持ちが一瞬で消えるほどの会話が耳に飛び込んできた。

 

「また殺されたらしいよ……今度は宿屋の主人の息子だって……」

 

 




※ この作品は、アークライト様のアナログゲーム「のびのびTRPG スチームパンク」の二次創作です。
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