Q.赤ちゃんの時に何が出来ますか?A.大人の意識が入ってても大事は起こせません。
この世界では人種、獣人種、竜人種、エルフ種、ドワーフ種、魔人種の6種が存在した。その中でも人種はレベルが上がり辛く一般的に他種族から見下され、差別を受けていた。
これを聞いた時、貴方はどう思うだろうか。あーはいはいよくあるファンタジー系ね?と思うだろうか?それとも、レベルってなんだよと思うかもしれない。
そんな世界に転生してしまったと知人に言われたら、その人の精神状態を心配するだろう。
しかし事実としてそういう状況になってしまっている。
今の俺《わたし》の状況は、「寝て起きたら美人のエルフの赤ちゃんになっていた」というものであり、現代日本で話したとしたら精神病院を紹介されるだろう状況だった。
「
「どうしたの?
何故自分が赤ちゃんになっている?何故明らかに自分のものではない名前を自分に呼んでいる?
家族はどうした?何故こんな事になっている?頭の中から疑問が一気に溢れ出てくる。
しかしそれらは一つの答えに収束される。
自分が転生したから。
この答えを出した瞬間、私を覆ったのは大きな不安だった。家族を置いて行ってしまったことの罪悪感、よく分からないものに囲まれている未知への恐怖、家族はどうしているかの心配……それらが混ざりあって現実の方で思い切り泣いてしまい、さらに思考に収拾が付かなくなってしまった。
5分後……
赤ちゃんの体に引っ張られたのか中身が大人なのに泣いてしまった自分は、改めて状況を整理してみた。
・昨日は休日で、なんて事はなく家で過ごし、そして普通に寝た。この時、体調は良かった。
・目覚めたら美人のエルフの赤ちゃんになっていた。身体の感覚もしっかり赤ちゃんだった。
…………よく分からない事しか分からなかった……。
とりあえず母に抱き抱えられながら据わらない首を動かして周りを見渡してみる。
小さいテーブルの上に花瓶が置いてある。花は見たことがない。
窓の外を見てみる。玄関前の噴水と中世くらいに見える街並みが少しだけ見える。
クローゼットらしきものを見る。良く分からないが、高そうだ。
淡い緑色の天井を見てみる。照明がない…。
分かったことは、この時代は中世くらいの文明であること。この家の持ち主は貴族である可能性が高いこと、そしてこれは夢では無い事だ。
………分かってどうなる。一緒にいて当たり前だと思っていた家族を失った。大学の友達ももう2度と会えない。ここに自分の知っている人はいない。日常は帰って来ない。
そんな風に自分は、失った痛みを消化しようとしていった………。
2年後
自分の心に整理を付けた。失ったものは帰って来ない。なら、今あるこの現実を見るべきでは無いか。そう考える事にした私は、2年間の間に新たに知った事をまとめる。
・レベルという概念がある。
・魔法がある。
・日本語が全く分からなくなっている。
・貴族の家なのが確定した。ロケット家というらしい。
・扱いがすごく悪い。使用人の雑談から聞いた限りで考えると自分の母親が庶民の出だかららしい。
まず・レベルという概念がある。驚いた事に、この世界にはレベルという概念があるらしい。
RPGの世界だな…と思いつつ1人で生きていく為にはレベルが高くなければいけないとも考えた。
次・魔法がある。これを知った時、レベルの概念といい、完全にファンタジーの世界だなと思い、少しだけワクワクした。
・日本語が全く分からなくなっている。 衝撃的だった。文字を教えられている時に発覚した。記憶の中にある文字でさえ、この異世界の言語に侵されていた。私は異世界で言語を学ばなくてもいいと無理矢理ポジティブに思う事にして、考えるのをやめた。
・扱いがすごく悪い。使用人の雑談から聞いた限りで考えると自分の母親が庶民の出だかららしい。
これらは食事が他と比べて少し貧相だったり、母が嫌がらせを受けていたりしていた事からそう考えた。これから自分が成長していくにつれてその矛先が自分に向いていく事を考えると恐ろしい。
貴族の娘(母親が庶民)に生まれたのに酷い人生が確約されている事を思うと憂鬱になるが、対処法を考えなければ最悪死ぬ危険まであると思い、気配を消す方法、気配を感じる方法を独学でやってみる事にした…………。
3年後
5歳になった。しっかり走れるようになり、自分の意思を伝えられるようになった。
それはそれとして使用人達から本格的に嫌がらせを受けるようになってきた。
とは言っても、廊下ですれ違う度に笑われたり、嫌味や足を引っ掛けられるくらいで、自分が想定している程酷いものではなかった。水をかけるのは酷いとは思うが、やはり表立ってやるものではないからだろうか。
そう思って少し慢心していたある日、使用人に物置に呼ばれた。なんでも“手伝って欲しい”というなんともまあ「今から嫌がらせしますよ」アピールがすごいが、行かなければ「手伝えといったのに無視された」とかの口実を与えてしまい更なる嫌がらせを受けそうだったので行くことにした。
物置についたのは部屋を出てから10分後である。女児の足の遅さを舐めてはいけない。
物置には初めてくるが、薄暗い。所々に蜘蛛の巣が張り巡らされている。
そして、所狭しと積まれた木箱、私を待ち構えている使用人が2人…。赤髪のエルフの使用人と、紫色のエルフの使用人だ。この2人は私に結構な頻度で嫌がらせをしてくる。
「遅い」と声をかけられたのは物置に入ってからで、結構な大声だった為少しびっくりした。
「約束の時間からかなり過ぎているわ。庶民の娘は時間に余裕があるようで何より」と正確に約束の時間を設定していないにも関わらずそんな嫌味を言った赤髪の使用人。
「やっぱりくるなんて。馬鹿じゃないのあいつ」紫色の方がそういうと、自分はついに暴力を振るわれるのかと少し恐怖した。
「手伝って欲しい?こんな奴に?ありえないわそんなの」
「お前でストレス解消してやるだけよ」
私は逃げるべきか迷った。しかし口実を与えてしまう。ここは甘んじて受けるしかないか────そう思っていると赤髪の方が自分の服を引っ張り無理矢理出口から1番遠いところ、つまり壁際まで引っ張り、自分を囲むようにして立ち塞がった。
そしてついに、
自分に暴力が振るわれた。最初はお腹への蹴りだった。
そこから使用人の2人ははうずくまる私を罵倒しながら何度も何度も蹴った。
そして数分が経った後、使用人達は満足したのか木箱を持って物置から出ていった。キイイと音を立てて閉まるドア。全身がこれまで経験した事がないほど痛む。どうして自分がこんな目にあわなければならないのか。そんな不毛な思考が頭の中を埋め尽くす。更に数分経って頭が落ち着いた後、自分はこう思った。
(これ以上嫌がらせがエスカレートすると死ぬ……でもどうすれば?)
私はここで魔法というのがこの世界にある事を思い出した。
(そうだ…魔法…魔法を覚えなくては…)
こうして私は自衛手段を手に入れる為、魔法について知ろうとしたのである。
体の痛みがある程度収まった後、自分と母の部屋に戻った。
自分は母に「ねえ…どうしてわたしたちがこんなめにあわなきゃいけないの?」
そう聞くと母はとても申し訳無さそうに、
「ごめんねサーシャ…今は耐えるしかないの……」
と言った。(やはり私達じゃ自衛くらいしかできないか…)
「ねえママ」
「なぁに?」
「まほう、おしえてほしいの」
母は少し驚いた素ぶりを見せた後、
「どうして?」
私はさっき物置でされた事を話し、最後に、
「じぶんも、ママもまもりたいの」
と言って締めた。すると母は少しだけ悩んだ顔を見せ、
「良いわ、ママも魔法は少ししか使えないけど…それでも死なないための方法なら教えられるわ」
(よし!)
こうして、母から魔法の基礎の基礎について教えてもらえる事となった。
1ヶ月後
あれから一ヶ月が経った。時々暴力を振られる事もあったが魔法の基礎までしっかり勉強し、ほんの少しだけだが自分を守る手段を得ることが出来た。
特に大きな収穫は、母が独学で作った
そして練習をしていた時に気づいた事だが、自分のこの体は、一度でも出来た事なら寸分は違うが再現が可能な才能に恵まれているらしい。*1
これも勉強中に発覚した事だが、自分には
私は母に攻撃魔法はないかと質問するが、
「攻撃魔法は…何も分からないわ…ごめんなさい…」
とのことだった。
「攻撃魔法が知りたいのなら…書斎があるわ…行き方は教えるけど勿論誰にもバレないようにね…?」
その答えに頷いた私は、今夜静かに書斎に向かう事になったのだった………。
夜
時計がないので分からないが*3とにかく夜だ。書斎へのルートは頭に入ってる、侵入する勇気もある。気配探知も気配隠しも今できる限界までやる。私はベッドから抜け出し、静かに部屋から出た…。
気配がびっくりするくらいない。いや、正確には外に集中してる。内側がガラ空きで助かったが、これで良いのか…?そう思いつつ警戒は緩めず、私は忍足で駆ける。正しい走り方*4で走ったので4分で書斎に辿り着いた。鍵は…掛かっていない。そのまま書斎に入る。
光魔法(ランプくらいの明るさ)で部屋を照らしつつ目的の魔導書を探す。………とても広い。目星をつけなければ時間がかかりすぎるだろう。
そうして目星を運任せでつけて自身の目的に沿った魔導書を探していくと、「火属性魔法初級」と書かれた本を見つけることに成功した。最近購入したのか、他の本よりも新しく感じる。おそらく正室の妻から生まれた貴族の娘に魔法を教えているのだろう。この本を読む事にした。
…………ためになる内容ばかりだ。魔法陣、魔力の注ぎ方、失敗の例など。分かりやすく説明してくれるこの本は、まさに初級者向けの本と言えるだろう。
こうして本を読み進めていく内に警戒が緩んでいたのか、自身の気配を察知したのか、この部屋に近づいてくる足音が聞こえる。1人だけか。勿論学んだ攻撃魔法をその使用人に試すことはしない。恨んではいるが、理性を失うほどじゃない。私は本を元の場所に戻し、今まさに侵入したみたいなふうに装った。使用人が書斎に入ってくる。「何をやってんだお前は!」と怒鳴られた。
言い訳がいくつも浮かんでくるが、「主人の書斎だぞここは!」ここは────
今後のために言い訳をして嫌がらせが加速しないようにしよう…!
「ただ…私は魔法が知りたかっただけなんです!」
「黙れ!どうせご主人様を暗殺したかったんだろう!」
どうしてそうなる!?まずい、最悪の認識になってしまった。ここはどうする…。
「私に主人に害を加えられるほど力はありません、そんな事は考えた事もないです!」
そう言って私はステータス画面を見せる。
「こんな奴が…主人を暗殺出来る筈がありません!たかが本を少し読んだくらいで!」
使用人は悩む素ぶりを見せた後、
「……それもそうか。だが問題行動には間違いない。何よりも、お嬢様がまだ学んでいない攻撃魔法を覚えようとした事。それが気に入らん」
バレている…!*5使用人は閃いたような顔をした後に
「そういえば…過去にご主人様が『この魔法はハズレだ。うちの娘が扱うものじゃない』と仰っていた魔法の本があったなあ…」
そういうと使用人は“振動魔法の始点と終点、またはここから”と表紙に書かれている本を取り出した。
「お前にはこの魔法がお似合いだよ」
そう言って私に本を押し付けた。私は逃げ出すように書斎から出ていった。
翌日
昨日使用人から押し付けられた“振動魔法の始点と終点、またはここから”を読み始めた。
………書いていることの一部が理解出来ない。初級編らしきところで専門用語使うんじゃない。母にも聞いてみるが、
「ごめんなさい。分からないわ」
とのことだった。だがある程度は読み取れたので振動魔法の最初の魔法
1年後
「どうしよう…この魔法終わってる」
1年かけて読破した感想がこれだった。ハズレと言われる要因が容易に分かった。
というより巻末に載っていた。“『膨大な魔力が必要で難しいのに出来る事が敵味方関係なくバランスを崩させる魔法?そんなのするくらいだったら別の魔法でいいわ』私はこれを否定する為に────”
この魔法の終点は
詰まるところ燃費が悪すぎる上に死ぬほどムズイ魔法なのだ…!
更に振動魔法じゃない方の魔法で更に大きな地震を起こしたり出来るのだ…!これ以外は直接戦闘に使えない魔法ばかりで、攻撃魔法の本じゃ無いのではと疑った事もある程だ。
私は考えた。振動魔法を燃費良く使うにはどうすれば良いのか…。
ここで前世のサブカルを思い出そうとしてみる。
(振動で戦う…あっ、財団神拳!)
(共振か…固有振動数…だった気がする。それに合わせたら効率的に破壊力を生み出せる!)
そう考えた私は新たなる魔法を生み出そうと考える。
(固有振動数を変える魔法、そして振動をそれに合わせる魔法、色々あるけど…出来る!)
と意気込んだ─────
1年後
私は必要だと思った魔法を練習した。研究もした。幸いにも一度できたことはいつでも再現可能なので、習得自体はスムーズに進んだ。問題は無いように思えた……がしかし、母が急に病死してしまった。
ついにこの屋敷から味方が居なくなってしまった。そう思った瞬間、自分を覆ったのは孤独感だった。
母から貰った魔法、
(私は、前を向かなければならない)
(形にはなっていない繋がりがある。だから、大丈夫)
そう思う事にした。
時間は止まってくれない。母がストッパーになっていたのか、嫌がらせが苛烈になってきた。
暴力を振るわれる回数が多くなり、「親なし」「妾の娘」などと言われるようになってきた。
私は確立された戦闘スタイルをより鍛える為に、というより近接戦になる事が確定しているので、使用人に暴力を振るわれる時に抵抗をする事にした。
結果的に喧嘩にしか見えない状態で主人に怒られるまでがセットだったが近接戦を鍛える事には成功した。
8年後
エルフの成人年齢は15歳である。私は15歳…つまり成人だ。7歳からはずっと魔法の研究と練習、あと近接戦闘技術を磨いてきた。つまり特筆すべき事が何も起こらなかったのだ。
成人すると屋敷から追い出され、こじんまりとした一軒家が与えられた。私はここで、エルフ女王国の実態を改めて知る事になる。
荷車を人間が引いている。話かけてみると、その人間は奴隷だと言う。
(聞いてはいたけど…ここまで酷いとは…)
私はそう思った。そして私はこうとも思った。
(人間の中から圧倒的に強いのが生まれたら間違いなくここは真っ先に攻撃される。攻撃される理由しかない)
そしてそうなったらこの国は落ちぶれるか最悪滅ぶだろう。そう危惧した私は情報収集の手段、1人で生存するための力を手にする為に冒険者になる事を決意あるのだった─────
何を鑑定するかを決めたらそこから168時間(一週間)そのことしか鑑定出来ない。ただしレベルや秘匿など一切関係なくあらゆるものを鑑定出来る。その上鑑定された事に気付く事ができない。なお転生特典は一種鑑定と草の字の劣化と日本語変換のみである。
Q赤ちゃん時代何してたの?
Aお世話されながら心の整理をしていました。
Q突然しっかり喋り始めてる…
A成長したんです。子供の成長は早いです。
Q原作には10歳になるとギフト与えられるって書いてあるけど?
A作者の見落としです…すみません。この世界では種族毎にギフトを与えられるタイミングが違うという事にしておいてください…。