転生したらざまぁされるエルフになっていた件   作:琥珀

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Cは邪神勢力という認識ですがそれでいいんですかね?

あと今回すごい長いです。


Q.『C』ってなんですか?A.なんでしょうね?分からない事は、とりあえず推測しておきましょう。

ドワーフ王国。深夜。

ナーノが勝手に発狂死しないように今日大急ぎでナーノ復讐計画を決行した。

とは言っても、計画そのものは完成しているので、懸念点の人種商人をケア出来ないのが非常に痛いが、

人に見られない環境と外部干渉が無ければ確実にライト君の計画が成功する細工も既に施してある。

外部干渉があった場合、最低でもナーノを行動不能以上にはさせて、専用の場所でじっくりと復讐する予定だ。

あと、念の為の()()と初実戦も兼ねたある人物を投入している。

そんな事を決めながら、私はライト君がナーノを誘導してこの場所に連れてきてくれるのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

数分後。ドワーフ王国スラム街。

ナーノとライト君が来た。もう既に周りにはサイレントと人払いの結界をカードで貼っている。

私は透明になっており、出番になったら出てくるつもりだ。

「街中だからといって油断するなど冒険者として2流、いや3流のやることだわい。例えば……街中でも儂のように襲ってくる者がいるかもしれぬというのに、の!」

ナーノはそう言ってライト君に斬りかかるも、杖で止められる。まだだ。まだ出る時じゃない。

それで出来たナーノの隙を付くようにライト君が蹴り上げる。普段と比べて8割引きの弱いキックだ。

それでもナーノは呆気なく吹き飛び、壁に叩きつけられた。

そしてライト君が正体を明かす。

 

 

「鍛冶の腕はともかく、戦闘の腕は昔と殆ど変わっていないようだね」

「ッ!? ば、馬鹿なその声! オマエ、生きておったのか!?」

そしてライト君は驚くナーノに宣告する。

「久しぶりだねナーノ。……奈落の底から復讐するために戻ってきたよ」

「ほ、本当にライトなのか?」

驚いたナーノがライト君に聞く。

「本物だよ。幻覚や偽者でもないし、双子の兄弟ってオチでもないよ」

「し、しかしあれから約8ヶ月経っているのだぞ。なのにどうしてまったく成長していないのだ……。人種の子供が8ヶ月も経てばもっと成長するはずだろ? 身長も全く昔と同じとは、あ、ありえん……」

「オマエ達に裏切られた事実を忘れないため、体、精神が拒んだせいで昔のまま成長が止まってしまったんだよ。僕を裏切り、ゴミのように捨て殺そうとしたオマエ達にどうしても復讐がしたくてね」

「僕が奈落の底で生き残れたのは、サーシャさんのおかげだよ。出てきて良いよ」

実に分かりやすい合図だった。そのまんまじゃないか。

私は透明化を解除してナーノの前に出る。

 

 

「ごきげんよう。ナーノ。そしてさようならだ。貴方は何の罪も無い人種の子をゴミを捨てるかのように殺そうとした。しかも私の家族同然のライト君を、だ。お前は生きて帰れない」

本当はそう思ってないが、気難しいコイツに振り回された記憶が演技を迫真にしていく。*1

「お前は…サーシャ!?姿が変わらないのは分かるが、なぜ奈落のモンスターを相手に生き残れたのだ!」

ナーノが聞いてくる。

「あの程度のモンスター、私の敵じゃないのよ。そう、今の貴方のように。ゴミ未満の妖刀に心を奪われ、ただ人を害す為だけに動く…それはもう、ただのモンスターよ。駆除すべき害獣よ」

「貴様ッ!この天才鍛冶師たるワシの最高傑作をゴミ未満じゃと!?ワシは()()()()()()()()()()秘宝級(アーティファクト・クラス)の剣を創り出した世界最高の鍛冶師!そのワシをモンスター!?いいや違う!モンスターは貴様らじゃ!この剣の為に殺される為の、血袋のモンスターなんじゃぁぁぁ!!」

 

【まだステイだよ!地雷踏まれて今すぐに殺したいのはわかるけど!】

女神様の祝福を受けたと言ったあたりで殺気が漏れ出た保険ちゃん事ミヤちゃんを止める。

そして激昂してこちらに突っ込んでくるのを見て、それを軽々回避したあと、その妖刀を貶める為の演技を始める。

秘宝級(アーティファクト・クラス)?ああ、これらの事?」

 

そう言ってアイテムボックスから取り出したのは、大量のゴミのように積まれた秘宝級(アーティファクト・クラス)の剣の山。中には幻想級(ファンタズマ・クラス)もあるだろうけど、分からない。これは奈落から出る時に適当にそれっぽいものを大量に放り込んだもので、常備してるわけじゃない。容量の無駄だからね。

「見なよ。こんな安売りされてるみたいななのがお前の持ってる剣…ああ、最高傑作なんだってね?ごめんごめん!君のその剣と一緒には見えなかったよ!ごめんね!」

ライト君が煽るようにいう。

そしてそれに我慢の限界が来たのか、ナーノが叫びながら突っ込んできた。

 

【場所を移すよ。せーのっ】

私たちは一緒に突っ込んでくるナーノの頭を蹴った。ボールみたいに跳ねてたが、死んでないか少し心配だ。

場所を移すとは、ナーノを気絶させて別の場所に移す事だ。そこで改めてじっくり絶望させる。

まだ剣は折ってない。それをするには決定的な場面でだ。

そしてナーノが止まって動かなくなった時、ついにアイツが来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~、無事に釣れたようでよかった、よかった」

裏路地から、まるで闇からするりと湧いて出てきたように帽子を被った細めの人種ヒューマン青年が姿を現した。

 身長は170cm前後、細身で着ている衣服も極々普通だ。

 全体的に特徴が少ない人種ヒューマンで、強いて言えば糸のように細い目をしており、笑みが胡散臭いという程度だろうか。

【人種商人の姿と一致する!】

【ナーノを唆した疑いがあるやつか!】

私たちは一気に警戒度を高める。一応糸状の共振武器を隠れて展開し、裏からこっそり刺しておく。

これでほとんどアイツは詰んだが、警戒を緩めない。

ミヤちゃんも裏で待機してるので、アイツは完全に詰んだように思える。

 

メイが鑑定してくれてるらしいので、正体が判明するまで警戒を緩めない。正体次第で殺す。

人種商人は早口で、

「ふむふむ、レベル1000…………ちょっとか。うーん、エルフ女王国『白の騎士団』を壊滅させるには少々物足りないレベルですな。となると君たちのような存在が複数居て数で『白の騎士団』を壊滅させたのか? 上手く策を練って嵌めたのか。それとも君達は『巨塔』とは関係ない存在なのか……。だとしたらもう少し粘って他の仲間達も姿を現してから押さえるべきでしたかね。でも、あまり欲をかいて逃がすよりはマシでしょうか」

と言った。そう言えば私たちはステータス画面を偽っていた。名前と年齢くらいで、私はレベルを偽っていない。

なのでコイツはいきなり初対面の人の情報を知ってるアピールと失礼にあたる“勝手に鑑定”をしている。

今のところ怪しい域を過ぎないが…。

 

 

「何を言ってるんだ?」

まさにその通り。

アイツの言ってる事は的外れだが、偽りのステータスと今出回ってる情報を見たらそんな風に映るのだろう。

貴重な第三者視点から映る巨塔事件を知れたが、そんな事はどうでもいい。

さらに人種商人…あっメイから鑑定結果来た。フレッシュゾンビ、ヒソミ。レベル5000…。

レベル5000!?

 

「……演技なのか、知らされていないのか、無意識に操られているのか……まぁ詳しいことは場所を移して体や精神に聞くことにしましょうか。あっ、変な意味ではありませんよ。小生はノーマルなので。あくまで拷問などの意味で言ってるだけですから」

ヒソミが何か言った気がするがライト君と情報共有する。

【ライト君コイツレベル5000だよ!『ますたー』の何かを知ってるかも知れない!】

【さっきから意味のわからない事ばっかり言ってるのはそういう事か!】

「ちょっと待ってください!」

 

困惑している演技をしているのかそんな様子で話す。

「貴方は本当に何者なのですか!? 僕たちはただそこで気絶しているナーノに裏切られ、殺されかけた。その復讐が出来ればいいだけです。捕まって拷問される謂われなど無い。もし聞きたいことがあれば素直に答えましょう。なのでまず対話させてください」

「こちらには十分以上にあるんですよね……敵対する理由が」

「何故ですか?初対面の人にいきなり敵対される謂れはないつもりですが」

ヒソミはその言葉に応対する気はないのか、

「『C』の隷下、コマの可能性大っぽいですが、どうも無意識タイプのようですね。その態度が演技の可能性も捨て切れませんが。この手のタイプが放置すると一番面倒なんですよねぇ。碌に情報もなく、相手に一方的に情報を吸われるだけとか。ただでさえ小生達は手が足りないのに……。これだから『C』は厄介なんですよね」

おおよそコミュニケーションになっていない返答だった。『C』?

 

【コイツ明らかに情報を持ってる!捕獲しよう!】

【OK。ナーノへの復讐はその後にしよう】

「『C』って何ですか?」

「Cのコマに教えるわけないですよね。とりあえず時間もないのでその復讐をさっくり終わらせてくれませんか?」

こちらにも敵対する理由が出来た以上、これ以上は捕獲してから聞くべきだろう。

私は隠れてるミヤちゃんに指示を出す。

【ミヤちゃん。右腕】

そう指示すると、ギリギリ反応出来たのか肩まで持っていけはしなかったが、左腕の方が切られた。

(ミヤちゃんちょっとミスってる…)

「こちらにも貴方に聞きたい事が出来たのでね、捕獲させていただくよ」

私はそう宣告する。

「クソ!Cの罠かっ!」

そう言って急いで背中から何かを展開しようとするヒソミ。

 

【ミヤちゃん。少し近づいて、下半身】

展開寸前になった時、ヒソミの下半身が千切れた。

千切れたところでヒソミの背中から6本の触手が飛び出してくる。

ここで私はミヤちゃんに大きな移動を指示する。

【ミヤちゃん。アイツの真横に移動して、触手を一本ずつ。焦らないで】

触手はとても気持ち悪く、鳴き声も生物とは思えなかった。

攻撃が私たちに届く前に根本が同じなせいでいっぺんに全部切られた。

ここで出血多量でヒソミが気絶する。

 

死んだら困るので、治療カードを用いて治す。綺麗な切断面だったので、そこまで後遺症は残らなさそうだ。

「ミヤちゃんすご…」

指示を出した私が言うのもなんだが、余りにも強い。特に今回のような状況では、

ミヤちゃん1人と囮を用意すればそれで全てが片付いてしまう。

「ミヤちゃん凄いな…僕も使えるやつ?あれ」

「使えるんじゃない?切れるって思った物は何でも切れる魔法だしあれ」

「エリーが言ってた魔法か。復讐相手にならなんであっても使えそうだな…」

ミヤちゃんが透明化を解除して近づいてくる。

 

「女神様!私の魔法どうでしたか?」

「強いにも程があるくらい!ミヤちゃんが使ったらレベル9999の敵も殺れるよ!」

「ほんとですか?やったー!」

あんな凶悪な魔法を使ったとは思えないほど無邪気に喜ぶミヤちゃん。

ミヤちゃんが使った魔法はエリーが実験で教えた『大体何でも切る魔法(レイルザイデン)』。

エリー曰く、

「これはゾルトラークの応用ですわね。異世界の魔法とこちらの魔法は異なりますから、

色々制限をつけてやっと燃費の良さと最大火力の高さを両立出来ましたわ」

との事。つまり漫画原作の魔法より弱い状態であんな事が出来るのだ。

しかもミヤちゃんが使えるって事は大体の魔法使いの人種が扱える汎用性まである。

ちなみにミヤちゃんは『偽物を殺す魔法(ゾルトラーク)』も使えるらしい。

この世界にゾルトラークを防げる防御魔法、防具は存在しないので、戦場において猛威を振るうだろう。

ちなみに制限の内容はライト君が言うよう命令しても言わなかったので、外部には言えない制限を付けたのだろう。

 

 

 

 

そんな感じで結果的に懸念点をケア出来て外部から干渉される心配が無くなったので、これ以上何かが起こる前にナーノとヒソミを回収して、ヒソミを奈落に、ナーノは専用の場所に移そうとしたその時…

 

 

 

ヒソミの口から触手が出てきて、ミヤちゃんをふっ飛ばそうとしていた。

ライト君が咄嗟に庇い、モロに触手の攻撃を受けてしまった。

幸いライト君もミヤちゃんもなんの怪我もないようだ。

ヒソミの口から出た触手は、失った部位を補うためか巻き付く?ように補填していった。

そんな光景を見て私は、

(これ捕獲行けるか?)

と思い、

【『C』っていうワードが気になるけど、それもヒロが知っているかも知れない。ここでヒソミは殺してもいいんじゃない?それに、断頭くらいなら蘇生範囲内かもしれないし】

ライト君は迷ったような顔をした後、

【『C』の詳細はヒロに後で聞いてみるか。ヒソミはあまり知らなさそうだし、これを受けてヒロサイドがどう動くのかも気になる】

という事で断頭して最悪殺す事になった。

迷ってる内に触手が纏わりつき終わったのかこちらに襲いかかってくる。

非常に気持ち悪い。しかも身体能力が強化されたのかありえないスピードどパワーで襲いかかってくる。

私はミヤちゃんを持って飛び退き回避する。

そしてミヤちゃんに指示する。

「ミヤちゃん!首を狙って!」

「了解!」

ミヤちゃんの視線がヒソミの首あたりに集中する。

ミヤちゃんの呼吸が乱れる。

顔は凄い緊張している表情だ。

「大丈夫よミヤちゃん。()()()()()()()

そういうと安心したのか、表情が和らぐ。それと同時に、ヒソミの首が飛んだ。

【エリー、あれ蘇生範囲内?】

【体が崩壊していってますわね…それ以前の問題かと】

エリーの言う通り、ヒソミの体が崩壊していってる。このまま消滅するのは時間の問題だろう。

あれでは記憶調査など不可能だ。

「体が崩壊していってる…元々捕獲は難しかったか」

「そうね」

ライト君のその言葉に同意する。

捕獲が難しいのに情報がない可能性があるやつを無理に捕獲する事はないだろう。

チャンスはあるのだ。ここはスルーしよう。

それはミヤちゃん以外の全員の総意であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナーノの復讐場所。ミヤちゃんは家に帰してあげた。

あれから10分後。ヒソミの妨害もあったがナーノに復讐する時が来た。

万全の状態で絶望してもらうため治療を施している。

あの剣…『畏怖の剣(フィア・ソード)』というのだが、それは起きた時目に映る位置で、いつでも砕けるようにしてある。

そして普段は奈落で家事などをしている妖精たちも呼んで、待機させている。

「妖精ちゃんたち、頼んだよ」

「お任せください!普段使ってる包丁がどれくらいかは分かりませんが、多分幻想級(ファンタズマ・クラス)はあるでしょう!」

逆に使いずらいだろうそれは。私は苦笑しながら突っ込む。

そんな微笑ましい事をしていたら、ナーノが目覚める予兆を見せる。

妖精たちに隠れるよう指示してナーノとまた対峙する。

 

 

 

 

「ぐ、ぬぅ……」

うめき声を上げ立ち上がるナーノ。そして周りの様子を見たのち、畏怖の剣(フィア・ソード)の近くに立っているライト君に、

「ライト!貴様ァ!!!よくもワシの最高傑作の伝説の武器になる畏怖の剣(フィア・ソード)をゴミと呼んでくれたなァ!」

「その最高傑作で伝説の武器とやらは、今からゴミのように砕かれるんだよ?こんな下等な呪いの武器なんて、いくら金を払われても持ちたくない。」

今からライト君はあの剣を砕くようだ。少し付け加えよう。

「単刀直入に言って、気持ち悪いわ。遺跡には、人の命を使わずともこれより素晴らしい武器なんてごまんとあるわ。ただの外道。それが今の貴方よ」

「黙れ黙れ黙れ黙れェ!!!!ワシの剣は砕けん!お前らのようなその剣の価値もわからんゴミにィ!」

激昂してそんな事をいうナーノ。じゃあ、ライト君に壊して貰おうかな?

ライト君は畏怖の剣(フィア・ソード)()()()()2()()()()()()()()()()

剣を取り返そうとナーノが走ってくる。

「やめろライト!その汚い手でワシの『伝説の武器』に触れるな!」

「そんな叫ぶなよ。思わず砕きそうになっちゃうだろ。」

ライト君は器用に武器をそのまま保持したままナーノを蹴り飛ばす。

ナーノは吹き飛び、しかし意識は失わず、腹部のダメージですぐには動けない状態になる。

 

 

そしてライト君は、指に力を入れる。

それを見たナーノは、必死に、

「ら、ライト、お、お主、自分が何をしようとしているのか理解しているのか? 伝説の、後世に延々と伝えられるかもしれぬ伝説の剣を破壊しようとしているのだぞ! どれだけ罰当たりなことをしているのか分かっているのかッ!?」

と剣を砕かないように説得を試みる。私としても大変気分が悪いので早めに砕いて欲しい。

ライト君はまだ呪いの剣を伝説の武器と勘違いしているナーノに向けて、

「伝説の武器?ナーノはまだ理解してなかったんだね」

そしてこう続ける。

 

「ナーノが作ったのは『伝説の剣』なんかじゃないよ。人種ヒューマンの命を無駄に使った『駄作』っていうんだ。こんなあからさまに呪われそうな武器が『伝説の武器』になって、後世に永遠に伝えられる訳ないだろ。常識で考えろよ。むしろこの世に1秒だって存在しちゃいけないただの駄作だ。議論するだけ時間の無駄だ。さっさと破棄されて当然のレベルじゃないか。だから――」

「やめろ!やめろ!ワシの伝説の武器を!最高傑作を!やめろおおおおおおおおおお!!!」

ライト君はそのまま指に力を入れて剣を砕いた。

「ああぁ! あぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁッ!!!」

ナーノは絶望してなかったのか、激しい怒りを持って立ちあがろうとする。

それを絶望に変えるため、私は、

「貴方のいう自称『伝説の武器』は、子供の指2本で砕かれた。貴方がいうには後世に永遠に残るはずの『伝説の武器』が、あんなにあっさりと。それって、貴方の作った剣がただの弱い呪いの武器だったって事じゃないの?考えて見て?幼い頃教えてもらった常識で」

「ふざけるなァ!そんな訳がないだろ!?お前の虚言もいい加減にしろ!!」

それでも騒ぎ続けるナーノにライト君は、選択肢を提示する。

 

「ナーノ、貴様がどれだけ騒いだところで、これから先、選べる道は3つのどれかだけだ」

ライト君は剣を砕いた指を上げ、ゆっくりと説明する。

「ひとつ目は、罪を認めて大人しくドワーフ王国の司法に身を任せることだ。もちろんドワーフ王国には僕が手を回しているから、どういう罪になるかは蓋を開けてのお楽しみだけど、死刑以上なのは間違いないかな。

そしてふたつ目は――僕に首を差し出せ。偽りだったとはいえ一時世話になったこともあるからな。

その慈悲として首を差し出せば楽に殺してやろう」

 

説明中に立ち上がりそうだったので、また腹を蹴って動けなくする。

ライト君は続ける。

「そして最後の3つ目は――戦うことを選ぶ、だ。僕を殺すことができれば、この『奈落』最下層から逃げ出すことができるかもしれない。3つ目は億が1つにも逃げられる可能性はないだろうけど、生き残るにはこの3つ目を選ぶしかない。さあ、どうする? ナーノはどれを選ぶのかな?」

ナーノは説明されてる途中で腹蹴りとは関係なく顔が青ざめていった。

そう…ここは奈落の底。正確に言うなら奈落拠点訓練場。

冒険者時代の私なら十分に物資を持てば脱出はギリギリ可能と言える場所。

『種族の集い』最強だった私がそうなのだから、戦闘力が低い方だったナーノには絶望的な知らせだ。

「嘘を…嘘を言うな!そんなはずが…奈落の最下層じゃと!?さっきまでドワーフ王国に居たではないか!?前人未到の地にそんな短時間で行けるはずがない!」

「信じる、信じないはそっちの勝手だ。僕は事実しか口にしていない」

 

ライト君の言葉を理解しようとしないナーノは、的外れな予想(現実逃避)をし始める。

「どうせ近くの廃坑跡地か何かに連れてきただけの癖に、嘘を付きおって。これだから卑しいヒューマン(劣等種)は……。第一、他2つは理解できるが、一番最初の選択肢はなんだ。どうして儂が国の法で裁かれなければならぬ。何もしておらんのに!」

え???辻斬りを正当防衛だと思ってるのお前もしかして??????

ナーノの意味不明な言葉に私は動揺する。

「本気で言ってるのか…?」

ライト君も呆れてるし、こいつマジ?幼い頃教わった常識がこの世界の常識じゃない可能性があるな…。

ライト君はある程度知識を持ってるなら当たり前の常識を説明してあげる。

「……人種を材料に『禁忌の剣』を作り出しただろう。あれは明確な6ヶ国協定違反だろ。それに辻斬りもして、多くの人種やドワーフ種を殺害している。どうして裁かれないと考えられるんだ」

「そうよ。正当化しようがないわ。どうしてそうなるの?」

私もそう思う。殺人罪はよっぽどじゃない限り罪は軽くならない。

偶然出来た呪いの剣に操られて、本当のナーノの意思は深いところで眠ってるとかだったら司法で裁かれるのが1番だが、呪い治療を受けた以上その線も無くなった。つまり正気の状態だ。

 

「辻斬りで同胞を殺害したのは、まぁ悪かったと思うぞ? しかしヒューマン(劣等種)を剣の材料にしたからといってなぜ罪に問われる。可笑しいだろ!?」

いや、同胞殺害だけでも死刑だと思うけど…?焦っているのか、支離滅裂な言葉が飛び出してくる。

さらにナーノは自己正当化する醜い説明を続ける。

ヒューマン(劣等種)なぞ、鉄くずと一緒じゃ! その鉄くずを使って天才鍛冶師である儂が『伝説の武器』へと生まれ変わらせてやったんだぞッ! 6ヶ国協定は呪われた『禁忌の剣』を作り出すことが問題のはず。『伝説の武器』なら問題はない! 故に礼を言われることはあっても、罪に問われる謂われは無いはずじゃっ!」

「その武器、ただの呪いの武器なのでは…?」

思わず率直な意見が出る。

 

 

当然だが、人種の殺害は立派な犯罪だ。それが例え奴隷であっても、器物損壊罪に問える。

法律より自分が正しいと思ってる…?エゴイストすぎない?

「本気でそう思ってるの…?きちんとドワーフ王国の法律にもちゃんと、人種の殺害は犯罪だって書いてあるわよ?今からでも法律書持ってきましょうか?」

「黙れェ!伝説の武器を作った天才鍛冶師のワシは、法律より正しいに決まってる!!!」

あーもう言い訳が最悪に見苦しくなってきた。

 

ライト君も終わらせにかかる。

「言い訳はいいから早く選べよ、ナーノ」

「……ふん! 答えなど最初から決まっておるわい!」

そして、ナーノは最悪の選択肢を選ぶ。

「当然3つ目じゃ。ライト、サーシャ、貴様らを殺して儂はさっさと外へ出る。儂には『伝説の武器』を作る使命があるからなぁ!」

「ライト!!貴様は多少強くはなったようだが、所詮ヒューマン(劣等種)!つまりこの場でサーシャを殺せれば、外に出られる!」

 

ライト君は出来るはずもない事を言ったナーノに、

「……本当に3つ目でいいんだな?」

と確認する。それにナーノはこの状況を何も分かってない表情で、

「あん? むしろ、それ以外の選択肢をなぜ儂が選ぶと思ったのだ? そんなことも分からぬほどの無能なのか?」

ライト君はその愚かな発言に対して、

「そうか――ならば、その勇気に免じてハンデをあげようじゃないか」

多分さらに絶望させるためだろうけど、良いのかな…?

そう思う私を置いて、ライト君は続ける。

「僕をここから一歩でも動かすことが出来たならナーノの勝ちにしてあげるよ。ナーノが勝ったら、素直に解放しよう。僕、ライトの名において約束しようじゃないか」

その発言に私は念話で声をかける。

【私戦わなくて良いの?】

【いいよいいよ。ねーちゃんに危険を犯させる訳にもいかないし】

との事だった。まあ結果は分かり切ってるからいいか…。

 

ハンデ戦が始まった。戦力差は奈落vs記録者レベルで隔絶しているが、記録者戦と違うのは挑戦者に万に一つも勝ち目が無い事だ。

殴りかかるナーノをライト君が軽く投げて、勝ち目が無いのにまた愚直に突っ込むナーノ。

(降参すればいいのに…)

私はそう思ったがナーノには秘策があったらしい。

手にナイフを持って突進してくる。

「やはりヒューマン(劣等種)ヒューマン(劣等種)だな!天才鍛冶師である儂が作り出したのが『畏怖の剣(フィア・ソード)』だけだと思っていたのか!?馬鹿めッ!秘宝級(アーティファクト・クラス)のナイフを最初に作っておったんだよ!そうとも知らず気絶させたのに儂の身体チェックもしていないとはッ!無能なヒューマン(劣等種)め! 無能! 無能! 無能ォォォォォォオオォォォォッ!」

勝ち誇った顔でナイフを心臓に突き刺そうとするナーノ。

しかしナイフは心臓に刺さらなかった。

「何を狙っているかと思えば……つまらない策だな」

「……はっ?」

それが効くのは少し格上だけなんだよなぁ…。

ライト君はナイフが通らず呆然としているナーノの腕を掴み、手刀を振り下ろす。

メギィと嫌な音を立ててナーノの腕が千切れた。

「ぎぃゃやぁああぁぁああぁッッ!!」

ナーノが悲鳴をあげる。

「儂のッ! 儂の『伝説の武器』を作る右腕がぁぁぁあぁぁぁぁあぁッ!!!」

そう叫びながら地面を転がるナーノ。

 

 ナーノはライト君に切断された右腕を、無事な左手で押さえ悲鳴をあげる。

 右腕を切断された痛みと喪失感で体中から脂汗を流しつつも声をあげる。

 

「き、貴様! ライト! 自分が何をしたのか理解しているのか!? 儂の……儂の右腕を『伝説の武器』を作り出すことが出来る右腕を切断するとは!? どれだけ世界の損失になるか!」

「世界の損失? ナーノの腕が無くなった所で、世界には何の損失も、痛手もないよ。むしろこれ以上犠牲者が出なくて、平和になるさ」

「素人の貴様に何が分かる! 第一、なぜ秘宝級(アーティファクト・クラス)のナイフが刺さらないのだ! 服の下にドラゴンの皮膚でも貼り付けているのか!?」

「そんなモノ身に着けていないよ。単純に僕のレベルが高いから刺さらなかっただけださ」

「れ、レベルが高いだと?」

 

そしてライト君はレベルを公開する。

それにナーノは嘘だと言うが、すぐに論破される。

 

「全てお前達がゴミスキルと言っていた僕の『無限ガチャ』の力だ。不老の腕輪、そして多くの仲間達……僕はお前達に殺されそうになってから、この『奈落』の底で力を溜めてきたんだ。そう、全てはお前達『種族の集い』メンバー達に復讐するために! そして『なぜ僕が殺されなければならないのか、国がどうして『ますたー』を探しているのか?』、その真実を知るために、『奈落』最下層で僕は仲間と共に修行しレベル9999まで至ったんだよ! そして――これが僕の積み上げてきた力だ!」

 

そしてみんなが出てくる。気づかなかった…。

そしてライト君に危害を加えていたと言う事実が嫌悪感を加速させたみんなが、口々に冷たい言葉を吐いていく。

 

『この男がライト様を殺そうとした大罪人なのね』

『ああ、なんという無能そうな顔をしたドワーフ種なの』

『本当に顔から無能という言葉が溢れているわ。これじゃ鍛冶の腕とやらも大したことないわよね。努力するだけ無駄な無能だわ』

『聞けばゴミにしかならない秘宝級(アーティファクト・クラス)だがなんだかの武器を作って喜んでいたとか?』

『そんなゴミこの奈落にならいくらでも転がっているのにね。ああ、この前台所に行ったら包丁が秘宝級(アーティファクト・クラス)だったわよ? だから私言ってやったの。そんなナマクラで料理をしていたら恥ずかしいわ、って。せめて叙事級(エピック・クラス)で料理しないとライト様にお出しできないわ、って』

『この『奈落』じゃ幻想級(ファンタズマ・クラス)ですら大量にあって余っているっていうのに……その下の下の秘宝級(アーティファクト・クラス)じゃね。ゴミよゴミ』

『それに、この無能ドワーフが作っていたのは、秘宝級アーティファクト・クラス秘宝級(アーティファクト・クラス)と言っても呪われる『禁忌の剣』だったそうよ? 他人を犠牲にして呪い付加という底上げの手を使って、その程度しか作れないの? 無能といっても限度があるわよね。よくこの世の中で生きていて恥ずかしくないわね?』

『呪いの剣なんて創っても何の意味もないどころか、世の中に有害よね? なにが『伝説の武器』よ、ゴミ以下の有毒産業廃棄物よ。ああそれは本人もか』

『その自称『伝説の武器』って、ライト様の指で砕けちゃったんでしょ? ちょっと力入れただけで砕けちゃうなんてガラス細工以下? そんなの大事にして自慢してたなんてほんと、ばーっかみたい』

『それにさっき見てたけど、ご自慢のナイフでライト様の皮一枚すら貫けてなかったわよ? なにが『天才鍛冶師』よ。これじゃ垢擦りの布の方が垢がとれるだけまだマシだわ』

『ほんと無能中の無能よね。よくライト様の前で息が吐けるわよね、恥ずかしげもなく。今すぐこの爪で引き裂いてやりたいわ。そうすればこの世からゴミが一つ消えるものね? ほんの少しだけれどもこの世の中が綺麗になるわ』

「ひ……ひィッ!」

みんな殺意がすごい。もう私の出番は無さそうかな?

ライト君はこう続けた。

「お前が無能だというのは、ここにいる皆だけじゃない。ドワーフ王国国王ダガン、それからドワーフ種の技術者全てが同じことを言っていたよ? 『禁忌の剣』の呪いが抑え込めるなど妄想でしかないということは技術者全員が知っていることなのに、その基本中の基本すら知らない無能が同じドワーフ種にいるなど恥ずかしい、とね。さらにドワーフ種や人種ヒューマンを多数殺害したお前は、死刑以上が確定している。ほら、ドワーフ国王の王印が押されている正式な書類だ。ドワーフ国王直筆の書類だよ。『犯罪者ナーノに対する全ての刑の執行は、ライト殿に任せる』ってさ」

シンプル犯罪者な上に死刑ほぼ確定だもんなあ。

死刑になったらライト君もスッキリしないし、いい結果になったんじゃないのかな?

 

この後はヒソミについて聞いたり、一思いに殺せと斬新な命乞いをしていたりしたが、分からないことがあればエリーの記憶調査で十分だし、そもそもライト君は徹底的に苦しめる事しか考えていなかったため、

ガルーと同じように独房へと連れて行かれた。なんでもナーノの体で剣を作るらしい。弱そうだなぁ。

 

 

こうしてナーノへの復讐は、ヒソミによる妨害を受けながらもそれ以外はスムーズに成功するのだった。

*1
ライト君には演技だと思われてる。実際そう。そっちの方が絶望させやすいから良いとも思ってる。




Q冒険者時代の憑依サーシャそんな強いの?
A戦闘力だけで言うならS級はあります。大成した『ますたー』に対してワンチャンありますし。
というかアイテムボックスと十分な物資があれば奈落最下層に普通に到達出来ます。
モンスターは脅威じゃないですから。

Q長くない?
Aナーノ復讐をヒソミ戦含めて全部やろうとしたらこうなってました…。
一応サーシャがいる以外は原作と同一の部分も多いです。

Q台所の包丁のランクは?
A普段使いは遺物級(レリック・クラス)。切れ味が必要な場合は幻想級(ファンタズマ・クラス)
ランクが高すぎると調理器具ごといっちゃうので、使い分けてます。
独自設定です。

次回、獣人編。と、ユメちゃんとの日常。ここでミヤちゃんが聖女扱いされますが、ここでは信仰先が明確に存在するのと超強化入ってるので色々変わると思います。
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