ユメと憑依サーシャのご飯事情
ユメちゃんの朝は早い。というか私とタイミングが一緒だ。
起きるタイミングが一緒という事で、朝ごはんも食堂で一緒に食べる。
なんならお風呂も一緒だし、なんかいっぺんにやった方がタイパがいいという意思を感じる。
まあそれは気のせいだろうが、ユメちゃんは私という同年代に見える人がいるおかげで寂しくなる事はなく奈落で過ごせている。
それは朝ごはんの時でも今日やる事だったり、勉強の話だったり、雑談しながら朝ごはんを食べる。
しかし今日はユメちゃんの苦手なメニューが出てきてしまったようで、すごい渋い顔をしている。
「ユメちゃん、それ、苦手?」
「うん…苦手…食べれなくも無いけど…うーん」
曰くそれは家で出てきた時もいっつも水で流しているんだそう。
味わうと吐きそうになってしまうから家では申し訳なさそうに食べるのだという。
私は好き嫌いの場合、結構偏食なのだが、食べられるかどうかになると私は急に雑食を超えて悪食になる。*1
しかし食事の時間こそ娯楽であって欲しいので、メイド妖精には好き嫌いを伝えて出来るだけ好物を出してもらうよう努力してもらっている。
食べれない訳では無いので嫌いなものも出しても良いとは言ってあるが、土を食べる感覚で食べる程嫌いな食べ物はまだ出てきていない。
しかしユメちゃんはそんな心得など得ていないので、水で流す、鼻をつまむなど可愛らしい方法で食べようとしていた。
「ユメちゃんユメちゃん、どんなに苦手なものでも食べられる方法があるんだけど、聞きたい?」
「! ほんと!?聞きたい!」
私が悪食にまでなれるその魔法の方法は、文字通り魔術を用いて味覚を封印する方法だ。
しかし全部封じてしまうとゴムか何かを食べている感覚になるため、それをするのは最終手段だ。
私はユメちゃんが嫌う苦味やえぐみを封印する方法を伝授していく。
「魔術を使うんだけどね…ベロのところに、味蕾っていう味を感じるための部分があるの。
そこに軽い封印魔術をかけて、感じたくない味を感じなくするの」
「でも私…魔術使えない…」
「それはこれから練習すればいいのよ。今は私が掛けてあげるから」
そう言ってべって舌を出したユメちゃんの舌に封印魔術を掛けてあげる。
掛けたあと、ユメちゃんが野菜を恐る恐る食べる。
するとユメちゃんは、最初こそ渋い顔をしていたのだが、徐々に喜ぶ顔になり、そしてすぐなんとも言えない顔に変化していった。
「味何にも感じない…」
「そりゃ封印したからね…でもどう?これで野菜食べられるでしょ?」
「うん!味があるよりは全然食べれるよ!」
それは良かった。
ユメちゃんの好き嫌いは子供ならではで、大人になるに連れていずれ克服していくだろう。
人参、玉ねぎは食べられるようだし。
ちなみに村にいた頃はパンとスープを主に食べて、たまに野菜や肉が出てくるらしい。
外食に行った際にも野菜は避けるんだそう。甘味はまだ食べたことがないらしく、結構警戒しているらしい。
その後も普通に雑談したりだとか勉強の話だったりで盛り上がるのだった…。
ユメと魔術の勉強
ユメちゃんはこの奈落生活も結構楽しんでいるようだ。
とはいっても、勉強はつまらないといつもぼやいてるし、メイドに世話されるのも、何も出来なくて逆に疲れるらしい。ナズナお姉ちゃんと遊びたいとも言っていた。
なんか申し訳無いので、勉強の先生として参加したり、休憩時間に色々ボードゲームをしたりなど、ユメちゃんを退屈させないように色々頑張っている。
ナズナとは体を動かすのではなく、花を育てたり、一緒に料理したりするらしい。私は1人で食べる用の大雑把な料理しか出来ないので、多分これには参加しなくて大丈夫だろう。食べる係で参加した事もあったが、普通に美味かったし。
閑話休題。
そんな事は起こり得ないと思うが、もしもユメちゃんが戦闘しなければならなくなった時に備えて、エリーによる魔術教室が開かれる事になった。
「という事で、ユメ様のための魔術教室を開きますわ〜!」
「いえーい!パチパチパチ!」
「い、いえーい…?」
生徒側兼教師側として参加する事にした私は、エリーからユメちゃんに改めてこの教室の意図を説明する。
「ユメ様、最初に言った通り、この魔術教室はサーシャ様が魔術の基本を改めて知る事も兼ねてますわ。
でも基本はユメ様のための教室ですし、基本的にあなたはアシスタントとして扱いますわ」
そしてエリーは最後にこう付け加えた。
「そして、魔術を教えるにあたり、教師として厳しくユメ様に接しさせて頂きますの。これも全てユメ様の魔術師としての力を上げ、魔術に対抗する術をしっかりと学んで頂くため! そしてライト神様がそれをお望みになったためですわ! 例えユメ様に恨まれても絶対に手を抜きませんの!」
こうしてユメちゃんの為の魔術教室が始まった。
最初に分類の説明から入り、魔術の才能はあるのか、どの魔術に対して才能を発揮できるか、そしてどの魔術を習得するか…。
おさらいの部分は普通に勉強になったが、今日に限って言えば私は要らなさそうだ。
今日の授業が終了し、今日をエリーと一緒に振り返る。
「まさかユメちゃんが天才の部類とは…予想できなかった…」
「そうですわね。でも手がかからないのは良い事じゃありませんの」
そうだね。と私は返答しつつ、今後ユメちゃんが習得する魔法について話す。
「幻影魔術かあ…いっぱい悪さ出来そうな魔術だねぇ…」
「言っておきますが、そんな使い方はさせませんからね?ユメ様の心をなんだと思っているのですか…」
私の言う悪さは詳細は省くが、幻影魔術は他の種族を問答無用で従わせられる方法を実践できる魔術なのだ。
しかも人種で。*2
まあそれは置いておこう。
今後どう習得させるのか、どこで躓きそうなのかをエリーと話し合うのだった…。
3日後。
あれから特に躓く事なく、ユメちゃんは普通に幻影魔法の一つを習得した。
習得して初めてやった事は、私の頭の上に猫耳を生やす事だった。
それを見たライト君や奈落の仲間たちがかわいいかわいい言うものだから、私はとても恥ずかしくなってしまった。
同時に、あんな悪意の塊を思いついた私と善に満ち溢れてるユメちゃんの使用方法の違いでも恥ずかしくなってしまったのだった…。
目先の問題
私はユメちゃんの魔術教室の教師をしたり、勉強したり、一緒にご飯を食べたりして、まあ平和な時間を過ごしていた訳だが…。
冒険者計画を進めたり、復讐相手の情報を集めたりなど、割と忙しいのだ。基本はライト君が動いているが、私も動かなければならない。
とは言っても冒険者計画の方は2大巨頭の竜人種と魔人種の国が厄介で、あまり情報が集まらない。
入国は簡単だが、核心に迫る情報が全く集まらないのだ。
復讐相手のドラゴとディアブロは偽『ますたー』の件で高い地位を獲得しており、国の機密性の高いところまで上り詰めてしまっている。
つまり今は、“大きな動きが無く、復讐しようにも情報が無さすぎて計画が立てられない”状態なのだ。
同じくヒロも、度々外に出るからある程度情報は集まっているが、それ以上が無い。無理やり情報を集めるとなると戦争を仕掛けて混乱している隙に乗じるくらいしか手段が無くなる。
ゴールドとネムムの方も特に何も情報が集まらず、魂を喰らう龍が出現したらしいが、それはもうライト君によって討伐済みだ。
特に目先の問題は発生せず、強いて言うなら世界各国の人種奴隷の扱いくらいだが、それも国家計画で解決する予定なので今すぐにとはいかず。
特に成果もないままランクアップ待ちの生活になると思っていた────────
2ヶ月後。奈落の訓練場。
仮想空間でエリーやナズナなどの超高レベルの仮想敵にどう対抗するのかの訓練をライト君を教師にして行なっていたところ、ミヤちゃんから念話が来た。
【すみません女神様…少しお力添えして頂きたい事態が発生したのですが…】
【どうしたのミヤちゃん?今すぐ来て欲しいなら行けるけど】
「ごめんライト君、ミヤちゃんから念話来た」
少し訓練を中止してミヤちゃんとの念話に集中する。
【それが…獣人種の冒険者に友人を誘拐されてしまったのです…一応私も誘拐されてますけど、友人の方は抵抗が出来ないので…私は大丈夫でも友人の方が不安なので…どうすれば…】
「ライト君、ミヤちゃんとミヤちゃんの友達が獣人種に誘拐されたって」
ライト君たちが驚いた表情をする。
【誘拐されるまでに獣人種の冒険者を切らなかったの?】
【誘拐犯とはいえ、一応冒険者の身分の人を殺してしまうのはエルフモドキとやっている事が同じになってしまうと思い…一応非殺傷の魔法で抵抗は試みましたが、少し怪我させるだけで終わってしまいました…】*3
ミヤちゃんとの会話内容を伝える。
「とりあえずその友達は保護するとして…獣人種…一体何がしたいんだ…?」
とりあえずその場では獣人種全体の動きなのか、その冒険者の個人的な愚かな動きなのかは確定しなかった。
ミヤちゃんには悪いが少し我慢してもらい、詳しく調査する時間を設ける事になった。
翌日。ライト君と私の執務室。
調査結果が出た。エリー、メイ、アオユキと一緒に確認する。
どうやら巨塔事件…というか「人種絶対独立主義」を重く見た獣人族が、それを撤回させる為に神光バベル王国に戦争を仕掛けるらしい。*4
それがミヤちゃん誘拐と何が関係するのかと言うと、どうやら人種を人質にして戦争を有利に進める算段らしい。
曰く、
「『人種絶対独立主義』を逆手にとって、人種の兵士を作るんだ。そんな主義を掲げてるんだから、人種に攻撃は無理だろう」
との事。舐められてる。*5
獣人種が人種奴隷にやっていた事もチェックしていたのだが、これがまあ酷いこと。
やってる事は中世ヨーロッパの処刑を超酷くしたバージョンと言えばいいのだろうか、とにかく酷い。
ライト君も凄い怒ってるし、私もそう。
「獣人種共は一体何を考えている! 家族や恋人を人質に取って戦わせるだと? いくらなんでも許されないだろ! それともそんな悪魔のような所業は、人種に対してならば許されると言うのか!? だとすれば僕達は家畜以下の存在だとでもいうのか!? クソがッ!」
家族を大切にするライト君の逆鱗に触れた獣人種は、絶滅しなければまあいいだろう。
「見せしめにする。『人種絶対独立主義』に刃向かえばこうなるという見せしめにしてやる。
鏖殺だ!」
そう建前を付けてライト君は獣人種虐殺宣言をしたのだった。
そうと決まれば話は早い。
人種奴隷や人質の捜索をし、救出の手段、救出後に巨塔に迎え入れる準備など、次々と何をするのかを決めていく。
概ね何をするのかを3分で決めたのち、解散となった。
2人になった執務室で話す。
「ライト君。絶滅はダメだよ?」
「分かってる。精々戦場に出る獣人種全てを殺すくらいに留めておくよ」
それが良い。
私はそう返しつつ、ミヤちゃんに何をしてもらうのかを考えるのだった…。
Q原作ミヤちゃんと違う点は?
Aミヤちゃんは村に帰った後全力で女神(憑依サーシャ)の祭壇を作り、そこで祈りを捧げてます。
あと貰ったアクセサリーは、本物だけ自分が持ちつつレプリカを大量に奈落に作って貰っていました。
布教する為、レプリカを常に20個くらい持ち歩いていますが、兄のエリオにはドン引きされています。
しかし差別がなくなって欲しいという思いはあるので、ミヤちゃんほど敬虔ではないにしろ、入信はしています。
クオーネにアクセサリーを要求された際には普通にレプリカを渡しており、原作とは逆にグイグイくるミヤちゃんに押されつつも、普通に良い友達になっています。ちなみに入信しました。一緒に祈りを捧げる仲です。
誘拐される時も特に恐怖する事はなく、友達の身をただ心配していました。
ゾルトラークもクオーネは習得しかけていましたが、この時点ではまだ完全に習得出来ません。
しかし発動そのものはできます。2秒くらい溜めが必要なだけで。
次回、獣人編。ここから原作と相違点がいっぱい出てくるはず…きっと。