A憑依サーシャの記憶覗きは複数回に渡って行われていました。初回は前世の最期、ライトの復讐相手の顔、理系の知識などの重要な情報だけにしていました。それ以外はサブカルやさらなる現代知識の獲得、または技術の取り入れなどを積極的にやり、サブカルに詳しいエリーが誕生しました。淫夢語録は使いません。
記憶覗き中に葬送のフリーレンを読み、ゾルトラークに感銘を受けたエリーは開発に着手。1週間で出来上がりました。曰く、「ダンジョンコア解析の方が100倍キツかったですわ」との事。
ゾルトラークの本当のヤバさは広めやすさ。あんなものが魔術適正があれば誰でも獲得可能であるという事実はエリーを戦慄させました。
Q虐殺の時結界内で何してたの?
Aエリーのセリフがめっちゃ変わったくらいで、結果は何も変わりません。
ゴーレム砕く宣言で本当に砕いたり、最強の魔法について少し語ったりしました。
「わたくしは今まであらゆる分野の魔術、魔法を極めて来ましたが…ある本を読んで、最強の攻撃魔法とは何かという疑問に終止符が打たれました。わたくしの膨大な魔力を圧縮して、放つ。ただそれだけの魔術が、魔力のコスパも、齎される破壊も、汎用性も。全てにおいて最上位で、どうしようも無く最強でしたの。そう、このように」
と言ってゴーレムを砕きました。なお全力で魔力を込めた時の100分の1にも満たない模様。
Q今の神光バベル王国ってどうなってるの?
Aエルフ女王国を実質植民地化、獣人国も同じ。ドワーフ国は同盟、竜人、魔人国は緊張状態。いつでも開戦出来る。鬼人はノータッチ。ダークエルフはエルフ女王国と併合されてる為エルフ女王国と一緒。ちなみに悪くない研究環境が与えられてて、この作品内では某黎明卿みたいな思考をしているシオンの影響を受けたダークエルフたちは大喜びです。
魔人国『ますたー』編に移る前にエリーの変化とゾルトラークを広めたらどうなるか(序章)をやります。案の定大変な事になります。難産でした…。
Side エリー 3人称
魔人国に動きがあるまであと1ヶ月。獣人種虐殺より1週間後。
エリーとライトが『巨塔の魔女』、『神光バベル王国国王』として敗戦処理を終えた頃、ライトに人種王国第一王女リリスから念話が掛かってきた。
内容は「獣人種虐殺の影響でシックス公国会議の時期が早まった」というもの。
これを受け奈落サイドは、巨塔内にて会談を行うことになった。
人種王国にはまだ間者が大量に存在しており、リリスの幼馴染であるノノでさえ間者である事実が判明した現在、間者の排除は喫緊の課題になっている。
しかし大量にいる間者の排除など一朝一夕では不可能なので、長い時間をかける前提で動くとして、間者に不審な動きを勘づかれて暗殺されないようにするためのお願いをリリスはする事になった。
一つはレベル上げ。
二つは毒殺防止のアクセサリー。
三つはシックス公国会議に護衛として同席する事。
最後のお願いはAランク冒険者にならないと同席不可能だが、これはライトなら余裕だと思われる。
もう既にライトは5票の内3票をなんとか出来てしまう現状であり、女王になる事そのものは容易であるが、暗殺問題が付き纏う。
故に上二つのお願いである。
この会談は当然配下…エリーとアオユキの巨塔管理者を連れて会談室内にて行ったわけだが、それが問題だった。会談後奈落の執務室に戻ったのだが、そこでアオユキが視線を隠しつつ、
「────主、あの女、リリスの非礼。命を以て贖うべきと愚考しますが」
とライトに直訴したのだ。
アオユキ視点では、“我が主に欲望に塗れたお願いをした。我が主を便利屋扱いにした。”という風に映り、怒りを露わにして言うアオユキ。
しかしエリーはそう思わなかった。
「わたくしは…そうは思いませんわ。確かにライト神様を都合良く扱っているのは事実ですが、人種王国にとってこの困難はあまりにも大きすぎますわ。ならば助けを借りるのは当然の思考…さらに『C』の情報や今まで直接見ることの叶わなかった
「そうだね。エリーの言う通り、人種王国には解決不能の課題だ。助けを求めるのは当然だし、公国会議も良い。何よりあの人の思想…人種の立場を上げようとする思想が唯一無二だ。妹を助けてくれたお礼はあれだけじゃ足りないと思ってたし、恩返しにも丁度いい。冒険者は少しマッチポンプする必要はあるけど、虐殺の件で評価を上げてるし。間に合わないと思ったら裏技もあるしね」
エリーとライトは同じ考えを示す。それに対しアオユキは少し不服そうにしながら、
「是。ご主人様の御意思に従います」
と言って、そのあとはライトがお願いも増長しすぎたら釘を刺すし、刺してもしてくるようなら対処すると付け足してこの場は解散となった。
密談室。
エリー、アオユキは執務室を退出はしたものの、解散とまでは行かず密談室にて密談する事になった。
奈落内であまり仲が良くないと思われている2人には珍しい事だが、思われているだけで実はそんなに関係は悪くない。ただ、関わる機会が比較的少ないだけである。
しかし今回は明確に意見が対立した。
最初にアオユキが抗議するような口調で言った。
「エリー、どう言う事だ。我が主に欲望に塗れた願望をぶつけたのだぞ。それに対して何も思わないのか?」
エリーはそれに対し理解を示すようにこう言った。
「確かに、ライト神様を便利屋扱いしたのに何も思わない訳ではありませんが…あくまでも対等に交渉しただけなのを、“欲望に塗れた”はないと思いますわ。リリス様はしっかりと自分の価値を理解している方で、今人種王国の内側にいる大きな改革派はリリス様しかいませんもの。
「対等?我が主とあの女が?」
アオユキが怒り爆発寸前な声色でエリーに問う。
この答えはアオユキから見れば、“我が主は圧倒的格下にへりくだるのが正しい”と言われているようなものであり、論理は正しかろうと我慢出来るものではなかった。
しかしエリーはそれに真っ向から否定するように、しかし冷静にこう言う。
「ええ、その通りですわ。対等ですわ。正確にはリリス様の方が下ですが…“将来の女王”と“現国王”。対等か否かは考えるまでもありません。わたくしは今立場の話をしているのであって、暴力の違いではありませんわ。
それだけで測るのは蛮族と一緒です」
アオユキは反論の言葉を必死に考えるが、何も出てこない。
確かにそうだ。自分は国家単位の暴力と、主の偉大さだけで考えていた。
アオユキには“暴力の規模が違うのだからそこも入れたら対等とは言えないのでは”という反論もあったが、この場では思いつかなかった。
そう認めざるを得ないアオユキだった。
「にゃ〜」
と不満げな猫語で誤魔化した。
エリーはさらに話したい事もあったのでそのまま続けて言った。
「ライト神様は偉大なお方ですわ。全生物がライト神様を崇めれば良いのにと思った事もありますわ。
でも…
記憶の中の、漫画と呼ばれている本の中に、こういう記述がありましたの。」
“憧れは理解から最も遠い感情だよ”
「これは、ある人物を煽るのに使われた言葉でしたが…わたくしにも刺さってしまいましたわ。
確かにそうだ、と思ってしまいましたの。わたくしは崇拝しているだけでライト神様を理解しようとしていないのでは?理想を押し付けているだけなのでは?という疑問が出て来てしまいましたの」
それを聞いたアオユキは“我が主を疑うのか”という怒りと“確かに自分もそうかもしれない”という納得感で複雑な感情を構成した。
「…………エリー、は、主を疑うのか…?」
「ライト神様の偉大さを疑うことはありませんが…ライト神様も
サーシャ様の9割9分9厘を知り、理解しているわたくしから言えば、それでは不十分です。
そしてわたくしたちは…おそらく、
わたくしたちはライト神様の為にいるのですから、ライト神様を理解し、寄り添うべきですわ」
エリーの言うサーシャが知らないライトの残りの3割は、大きな部分は割と致命的な部分で“サーシャに対する自分でも気づいていない恋心”である。そしてそれにはサーシャもライトも生涯気付く事はない。
エリーはその事に気づいていないが、エリーはサーシャを通じてある程度ライトを知っている。
ライトをある程度理解した事で形こそ少し変わったが忠誠心は変わらないが、信仰心は消え掛かっている。
現在、エリーがライト神様と呼んでいるのは癖に近く、それを自覚したのならライト様呼びになる。
その際にはライトに許可をもらいに行くだろう。
閑話休題。
「とにかく、わたくしたちは理想の押し付けをやめて、ライト神様は何が好物なのか、どんな趣味を持っているのか。どんな性格をしているのか、なぜその性格になったのか。誰のことを、どう好きなのか。ライト神様を構成する全てを理解し、どう寄り添うのかを考え、指示されるまでもなくライト神様の支えになるべきですわ」
それが、真の仲間と言えましょう。
そう締め括ったエリーに対しアオユキは、非常に困惑していた。
当然だ。今までの
これが部外者、あるいは敵に言われたのなら怒りをもって言った者を殺せばいいだろう。しかしそうはいかない。
アオユキは
エリーはライトに、
こういう事なのだろう。
そう結論を出したアオユキは、
(我が主がそんな事を思うのか?理想を押し付けているのは…いや、違う。エリーはただ、
エリーは異世界の知識を持ち思想が変わった…というより現実をより広い範囲で見ることが出来るようになった。
その結果、ライトに対する信仰は消えたが、より合理的思考を深める事が出来た。
エリーもアオユキも、当然主であるライトを嫌な気分にさせる事などしたくない。
出来る限りライトに良い環境にいてほしいというのは奈落勢力に属しているのなら、全員が思う事だろう。
エリーは少し視点が変わっただけで、それには変わりない。
「エリーは…変わってるな。だが…反逆するつもりなら殺す。肝に銘じておけ」
「反逆するつもりなど微粒子程もありませんわ。変わってるのは自覚しているつもりですが」
その会話を最後に、エリーとアオユキの密談は終わった。
いつの間にかリリスの不敬の話からライトとの向き合い方の話に変わったが、両方にとっても実りある話になっただろう。
Side サーシャ 1人称
魔人国から動きがあるまであと2週間。獣人種虐殺より3週間後。
巨塔街が数キロほどの規模になり、小さな町と断言できるような場所になった頃。
私はミヤちゃんから結構久しぶりな念話が来たので、奈落の執務室内で聞いていた。
内容は近況報告と、クオーネちゃんの魔法習得状況などである。
【女神様、私、ついに公国魔術師学院に入学する事が出来ました!】
と言われびっくりして机に足をぶつけてしまったのはしょうがない事だろう。
入る事自体は想定内だったし、してもらわないと困るのだが早すぎたのだ。
入学シーズンでもないのに入学したのはどういう事なのかというと、
公国で魔術学院に入るために先生方にゾルトラークを見せたところ先生方に詰められ、説明したところ、
「お願いだからうちの学院に入ってくれ面倒事はこっちでなんとかするから」
と頭を下げられたそうだ。
ミヤちゃんからしても夢が叶う大きなチャンスという事で、一旦兄に報告しにいったところ、兄たちも大喜び。
お金の問題もなんとかしてくれるそうで、これはもう入らない理由はないだろうという事で、入学が決まったそうだ。
今は手続き等がまだまだあるそうで、本当に入学できるのはおよそ1か月後だそう。
【おめでとうミヤちゃん!レベル90にもなって
【はい!
実はゾルトラークを教えたのは私ではなくエリーだ。
もちろん私も関わっているが、基本的に7割はエリーが教えている。
『
それはそれとしてこの世界の魔法を一応防御用途で使えるようには仕込んである。
その結果が
これはもう一流の魔術師と言っても過言ではないだろう。
こんな事が出来るのにわざわざ学院に入る理由は、主にゾルトラークの普及である。
ゾルトラークのスペックを振り返ると、
レベル差を無視して大ダメージを与えられる。(基本即死)
詠唱どころか魔法名を言う必要すらない。
魔術が使えるならレベル10からでも全然使える。
魔力が多ければそれはそれとして火力がさらにアップする。
………なんだこの魔法!?
こんな秩序を破壊しかねない魔法を広げるのはどうかと思うが、よく考えて見てほしい。
人種だけが扱えるなら大問題で、革命大量発生間違いなしだがそうではない。
もちろんレベル5000以上ともなると一撃死も出来ないしそもそも当てられるか怪しいが、弾速もかなり速い為不意打ちでやられたら超不利な状態で戦闘しなければならなくなる。*1
そんな魔法が全種族に渡った結果どうなるか。
『
相互確証破壊*2とも言うそれは、根本的な差別の原因である『
なにせ全てを過去にする攻撃魔法が、全ての種族に配られるのだ。
奈落による後方支援がない状態だと、最初に人種が革命を成功させるかが人種の未来を決めるが、奈落はそこを制御する。
まず全種族にゾルトラークを普及させてから、人種の立場向上を訴え始める。
全員平等に一撃必殺の武器を持っている訳だから、「弱い奴が何を言ってるんだ」は通用しない。
「人種は危険だ」と言って殺そうとしても
結果として、人種差別は自然消滅する。差別する理由がないからである。
レベルはもはや意味をなさず、「でもゾルトラークで一撃じゃん」が通る。
まあ色々言ったが、この長期計画…『相互確証破壊計画』の終着点は“世界平和”である。*3
計画を進める上での問題点は全て奈落において許容範囲内だ。
そういう訳でミヤちゃんには悪いが夢を利用して計画を進めてもらう事にしてもらった。
近況報告を学院に入ったら定期的にしてもらう予定だ。
ミヤちゃんは敬虔な女神教の宣教師だし、信徒も沢山増えるだろう。
……それは良い事なのか?
閑話休題。
近況報告と言ってもそんな大事な話は学院入学以外になく、少しする内に雑談になっていった。
近況報告もミヤちゃんの友達、クオーネちゃんの話になる。
クオーネちゃんはゾルトラークを無事習得出来た。
それだけならおめでとうで済む話だが、なんかクオーネちゃんのゾルトラークはミヤちゃんの使うそれよりも優れているのだそう。主に射程がすごいらしく、ミヤちゃんも負けじと頑張っているそうな。
そんなこんなで近況報告も終わった。
(ライト君も裏技使う事を決めたそうだし、公国会議まで待ちかな…)
そう思っていた。
毒はもう既に、巨塔街に入り込んでいた。
Qエリーってなんでそんなに変わったの?
A憑依サーシャもとい、現代知識を理解したからです。
心情の変化ってムズイ。
後々から言動の矛盾に気づいて修正するのをちょこちょこやっていたりしてたら遅れました…すみません。